ユーロ円-2023年相場予想と戦略-

【ECBと日銀の政策スタンス、ウクライナ情勢次第】

※本記事は2021年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。

【2022年のユーロ円相場を振り返って】

 2022年のユーロ円相場は、予想外の円安相場にも、ユーロドルの下落傾向が上値を抑える展開に留まりました。

 年初は、NY株が史上高値を更新するなどリスクオン・ムードでスタートしましたが、突然ともいえるロシアのウクライナ侵攻が、大きなショックを巻き起こし、西側先進諸国がロシアに対する経済制裁を次々と実施。大口の資源供給国であるロシアからの供給が滞るとの見方で原油や天然ガス価格が高騰、特にロシアからのエネルギーの輸入に依存するドイツなど欧州経済を圧迫するとの見方から、ユーロ円相場は、2022年の安値となる124.40まで売り込まれまた。その後3月にFOMCが、ゼロ金利政策を解除、2018年12月以来の利上げを発表。ドル円相場が、2015年6月以来の高値となる125.85を越えて上昇を強めたことで、ユーロ円も一時144.27まで反発しました。ただ、ウクライナ情勢が混沌とする中、欧州天然ガスが史上最高値を更新。欧州経済への懸念が続いたこと、安倍首相の襲撃事件もあって、リスクオフの動きに133.39まで下落するも、この位置が下値を支え、7月にはECBが約11年ぶりに利上げを実施、その後も2会合連続で0.75%の利上げを継続、またFOMCが過去に例をみない4会合連続で、0.75%の利上げを実施した一方、日銀は強力な金融緩和スタンスの維持を表明したことで、ドル円相場の上昇が続き、10月21日には一時151.95の高値をつけ、ユーロ円相場も、148.40の年初来高値をつけました。

 しかしながら、これも急速に拡大する円安に警戒感を強めていた財務省が、異例となる海外市場での円買い介入や早朝からの連続円買い介入を実施するなど、強力に円安をけん制する姿を示したことで、ドル円相場上げ渋りをみせ、加えて暗号資産取引所のFTXがチャプター11を申請、仮想通貨相場が暴落的な下げを演じ、株価も大きく調整を強めたことでユーロ円も、リスクオフ的に上げ渋る展開。加えて本年最後の日銀金融政策決定会合において、YCC政策よる10年物国債変動幅の拡大を発表したことが、大きなサプライズとなり、ユーロ円相場は調整的な展開で2022年の取引を終了しようとしています。 

【2023年の主な材料】

 以下が現在、知り得る来年のイベントや材料です。注目度の高いものは太字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので、変更されることがあります。 

 リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2022年は、米国の中間選挙を始め、欧州や日本の選挙、中国の共産党大会など大きなイベントがありましたが、2023年は材料の少ない年となりそうです。
一応2023年は、クロアチアがユーロを通貨として導入します。これは後程申し上げますが、2022年後半のユーロ相場を支えたようです。ただ、この影響は年を明けると早々と織り込まれてしまいます。その他ではスペインの地方選挙ぐらいしかなく、やはり2023年のユーロ円相場は、ECBと日銀の金融政策の行方やウクライナ情勢次第となりそうです。 

【2023年の注目点】

 2022年の相場展開を踏まえて、2023年のユーロ円相場の注目点をまとめてみました。

・ ECBの金融正常化
・ 日銀の政策スタンスに変化はあるのか?
・ ウクライナ情勢
・ 日本の国際収支

〇 ECBの金融正常化

 ECBもユーロ圏の物価上昇受けて、「パンデミック緊急購入プログラム」や「資産購入プログラム(APP)」を終了、7月の11年ぶりの利上げから、2会合連続で0.75%の利上げを実施、12月の会合では0.50%の利上げ幅に留めましたが、来年も利上げを継続する意向を示しています。また、2023年には、今まで購入していた資産を売却する「QT(量的引き締め)」を開始すると言われています。2023年はこういった面が、ユーロ相場を支えるか大きな焦点とりそうです。

 それでは、ユーロ圏を代表するドイツの10年物国債のテクニカルもチェックしておきましょう。最低金利となる-0.660%からは上昇が2,2528%まで拡大しましたが、現状はトピッシュとなり調整気味です。また下段のスロー・ストキャスティクスも金利面では上昇し過ぎから、デッド・クロス気味です。テクニカル面からは、ECBの正常化の動きから大幅低下はないとしても、更なる上昇は当面難しそうです。

 また、日本とドイツの金利差が、ユーロ円相場にどういった影響を見せるか、下記の日独10年物国債利回りとユーロ円相場の2006年から動きを見ておきましょう。
 2013-16年は、若干連動性が低いですが、これはアベノミクス・黒田バズーカで、大幅に日経平均が上昇して、円安が進んだ時期です。その他では総じて連動性が高い形が見えると思います。現在も比較的連動しています。ただ、前述の通りテクニカル的には、独10年物国債利回りは、上げ渋りが見える中、12月の会合で日銀がサプライズ的に、YCCの変動幅を±0.50%へ拡大しました。これを受けて日本の10年物国債利回りは、0.477%程度まで上昇しており、今後も上昇を続ける可能性がありそうです。そうなると独日金利差が縮小する可能性が高く、今後の日銀の金融政策次第も、こういった面がユーロ円相場の圧迫要因となりそうです。

参考にECB理事会の日程を掲載します。

ECB理事会(議事録公表日)
02月02日(03月02日)
03月16日+ECBスタッフの成長率見通し公表(04月06日)
05月04日(06月01日)
06月15日+ECBスタッフの成長率見通し公表((07月06日)
07月27日(08月24日)
09月14日+ECBスタッフの成長率見通し公表((10月05日)
10月26日(11月23日)
12月14日+ECBスタッフの成長率見通し公表(

〇 日銀の政策スタンスに変更はあるのか?

 2022年12月20日の日銀金融政策決定会合で決定した「国債買入れ額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を、従来の±0.25%程度から±0.50%程度に拡大するとの措置は、市場に大きなサプライズとなりました。これ以前に黒田総裁は、「YCCの変動幅の拡大は、実質利上げになる」と話していただけに、市場は日銀のスタンスの変貌と捉えたようです。ただ、同総裁は記者会見において、「これは利上げではない」と明言しています。

 この真意は不透明ですが、直近では東京市場で、10年物国債の取引が成立しない日があったり、国債入札で応札が募集に満たない「札割れ」が発生したりと、日本の国債市場で流動性の低下が発生していました。確かに日銀が、日本国債の発行残高の半分も買ってしまっていることで、市場流動性が低下するのは必然といえますが、あくまで市場の健全な育成を司る金融当局としては、由々し難い事実であり、今回の措置はあくまで、流動性を確保するためのテクニカルな措置であったともいえそうです。そうなると日本銀行が、現在のマイナス金利政策を放棄し本当の利上げに踏み切ると考えるのは時期尚早なのかもしれません。

 一方来年4月には、黒田総裁の任期が到来します。2023年2月頃には、この候補者が絞り込まれる見通しですが、現在日銀のプリンスと呼ばれてきた雨宮正佳現副総裁と幅広い国際的人脈を持つ前副総裁の中曽宏大和総研理事長の2名が有力候補とされています。 

 過去日銀総裁人事は、財務省と日銀の出身者がたすき掛けで総裁に就く慣例がありましたが、今回の候補2名は日銀のプロパーです。黒田総裁の評価は高かったとしても、財務省畑の出身で、現実的にも異例の2期10年となる過去最長の就任期間に、インフレ目標やデフレの克服ができたとは言えません。次の日銀出身総裁に対する期待感も高まりそうです。また次の総裁には、現在行っている異例規模の国債買入や世界的に唯一マイナス金利を導入している日銀の出口戦略が、大きな課題となりそうです。新総裁就任後、本当の意味で日銀が利上げスタンスに変貌する日が訪れるかもしれません。その場合円相場にも大きなインパクトを与えると思います。

 2023年は、長らく市場から全く注目を集めなかった日銀金融政策が、大きな注目となる1年となりそうです。
以下は2023年の日銀金融政策決定会合や議事録の公表日です。しっかりと押さえておきましょう。

日銀金融政策決定会合(議事録公表日)
(01月23日)
01月17日-18日+展望リポート(03月10日)
03月09日-10日(05月08日)
04月08日:黒田総裁任期
04月27日-28日+展望リポート(06月21日)
06月15日-16日(08月02日)
07月27日-28日+展望リポート(09月27日)
09月21日-22日(3月10日)
10月30日-31日+展望リポート(12月22日)
12月18日-19日

〇 ウクライナ情勢

 2022年2月24日に、ロシアがウクライナへ侵攻。一時はロシアが圧倒的なパワーで、ウクライナを短期に制圧して侵攻を完了すると見られていましたが、欧米の多大な支援もあって、現状はウクライナが攻勢を強めています。
2022年は、この影響で原油価格や天然ガスなどのエネルギー価格が大幅上昇、更に穀物市況の高騰につながり、世界的に物価高騰が、マーケットの大きな材料となりました。 2023年には、どういった形であれ、この戦況が終息を迎えることが出来るのか大きな焦点となりますが、2021年のパンデミック・リスク、2022年はウクライナ侵攻と、2年連続で、市場の想定しない「ブラック・スワン」がマーケットに出現、市場を大混乱に招いています。そうなると2023年も3年連続で、この「ブラック・スワン」が、市場に降り立って来るのか大注意となりそうです。

 ただ、確かに「ブラック・スワン」は、誰も「想定しないリスク」のことを指していますが、ロシアの苦戦から戦術核兵器を使用する可能性が残っていることを考えると、まだまだ安心できる状況ではありません。もし大規模な戦争にまでで拡大するなら、金融市場に大激震が走るでしょう。こういったことが起こらないことを切に望みますが、その場合株価の暴落などリスクオフの動きが強まることは留意しておきましょう。 

〇 日本の国際収支

 日本の国際収支は、過去長らく黒字を維持していましたが、2014年には、東北大震災の影響もあって一時赤字に転落。その後回復も見えていましたが、新型コロナウィルスの蔓延を受けたワクチンの購入や訪日外国人観光客の激減、更にロシアのウクライナ侵攻を受けた資源・商品価格の上昇、加えて大幅な円安の悪影響もあって、再び赤字転落が定着化してきています。

 一応2023年に向けては、資源・商品価格の落ち着き、円安によるJカーブ効果などもって、一定の改善が期待されますが、直近ではまた、懸念材料が持ち上がっています。

 それは、岸田政権が打ち出した「防衛費2倍」政策です。
 過去歴代政権が、軍事費の目安としてきた「GDP比1%枠」の倍増を目指すもので、「5年で43兆円」の財源が不足するとされています。この財源に関しては、法人税や復興税の活用が話題となっていますが、一方為替市場の影響を考えると、この増額分のほとんどが、装備等購入費や維持費に充当されると見られています。しかも、この90%は海外からの調達となるようです。具体的にどういったタイミングで決済されるかは不透明ですが、現在の想定では、来年以降年間で5兆円程度の海外調達が実施され、しかもこれが全てドルで決済されることになりそうです。

 この代金に関しては、過去潤沢に日本政府が保有する外貨準備を利用することはなく、市場からのドル調達で賄われています。来年以降、訪日外国人数はある程度回復するとしても、この防衛費の増額が、円の上値を抑える可能性には、注目しておきましょう。

【ユーロドルのサイクル】

 ユーロ円相場に、大きく影響を与えるユーロドル相場のサイクルに注目してみましょう。
 以下は2008年のユーロドルが最高値をつけた後の現在までの月足チャートです。
 枠で囲った位置は、赤が1年のサイクル、青が2年のサイクルを示しています。ぴったりとしているわけではありませんが、ざっくりと2年の上下の動き、その後2年の上昇、1年急落、2年の横ばい、1年の上昇から2年の下落、2020年は1年の反発が、示現して現在は、2021年からの2年の下落過程にあります。そうなると2023年は、一年か2年からは分かりませんが、少なくとも反発の年となるか注目しましょう。

【テクニカル面】

≪ユーロドル≫

 次にユーロドル相場の1999年からの月足チャートです。
 歴史的な高値1.6040からの調整を、1.0341の安値で一旦支えるも、反転が2018年2月の1.2555や1.2349の戻り高値でダブル・トップを形成。その後0.8225からのサポートを割れて、0.9536まで下落しました。ただ、この位置はユーロドルの歴史的な安値からの反発時のネック・ラインとなる0.9596-0.9601を若干割れた位置です。一定の達成感があること、また、下段のスロー・ストキャスティクスが、ゴールデン・クロスを示現しようとしています。一旦この位置は下値つきの可能性が高く、今後は上昇期待となりそうです。ただ、上昇しても0.8225から1.0341を結んだサポート・ラインが今後ファンラインとして上値を抑える可能性からは、1.1603から1.1704レベルは、レジスタンスからも上値を抑えるポイントとなりそうです。

 以上を踏まえて、ユーロドルの2023年の想定レンジを1.0000から1.1500としたいと思います。

≪ドル円≫

 テクニカル面からは、1989年からのドル円相場の月足チャートを見てみましょう。
 ドル円相場は、1990年の160.35の高値から、2011年10月の75.31まで下落後、2022年10月には、160.35の高値と、147.66や125.86の高値を結んだレジスタンスを越えて、151.95まで急反発しました。

 特にこのチャートで注目して頂きたいのは、チャート形状から「F」の75.31をボトムとしたリバースH&Sを形成していることです。また現状は、このショルダー部分となるネック・ラインとなる「D」と「C」をクリアして、151.95の上ヒゲで、アーム部分「H」の形成を完了しています。このチャートの75.31の安値を基準に、ロールシャッハ・テストのように、左右対称を考えると次の展開は、再び「B」と同様に「I」の位置まで相場が下落する可能性があるということです。ただ、過去そこまで、チャート形状がぴったりとなるケースは、記憶にありませんので、今後の焦点は「D」と「G」のネック・ラインを維持できるのか、それとも割れる動きがあるのか、来年の相場では、大きな注目点となりそうです。

 一応このネック・ラインが維持されるなら、再度「J」を目指す可能性も残っていますが、ネック・ラインを割れて来ると特に過去の動きでは急激な円高となっており、スピードが加速する可能性に注意しましょう。

 また次のチャートは、同様なチャートから、一定の波動を見たチャートです。 
160.35の高値から75.31まで下落しましたが、波動からは第7波で一旦底値を見ているようです。この話を聞くと若干不思議に思う方もいると思います。一般的にエリオット波動からは、5つの波動とABCの上下波動で最終的に完了することが定説とされています。ただ、私の経験からは為替市場では、7波や9波で相場を完了するケースが多くあります。またこの考えを除いても、既に151.95まで上昇した相場であれば、160.35からの下落は一旦終わっているはずで、そうなると次の注目は75.31からどういった波動形成となるかです。

 ただ、その場合も①の上昇後の②波の位置が、最初の段階で①を越えておらず、不透明な感じとなっています。そのため、現在では99.02と102.59を②と②‘として勘案しています。これは次の展開を見なければなりませんが、少なくとも①の高値が、逆に下値を支えると次の第5波の上昇に迎えることができるでしょう。その場合③の151.95を越える160.35がターゲットとなります。つまり前述のリバースH&Sのケースで申し上げたネック・ラインが、こちらでも重要で、2023年の相場は、これが維持されるのか、割れるのかで相場付きが大きく変わることは留意しておいてください。

 ただ、割れる動きがあっても過去の波動の中心値(赤と青の枠の価格)の平均値が114.97となりますが、総じてこういった位置は底堅い可能性に注目しましょう。 

 以上を勘案して、ドル円の2023年の想定レンジを126.00から140.00とします。

≪ユーロ円≫

 最後にユーロ円自体の月足チャートです。
 ユーロ円相場は、169.97の史上高値示現後は、94.12で下値を支えて、その後は149.79の高値から109.57まで値を下げた後も保合気味の展開が続いています。
また、テクニカル面でも不透明な点が多く、94.12から109.57を結んだサポートを割れるも、114.41で下げ止まりを見せて、169.97から149.79を結んだレジスタンスを越える状況となっています。

 総じてABCで、不揃いなH&Sとして見ても、このネック・ラインとなるACの上抜けからも更に上昇を拡大出来ていません。また下限のスロー・ストキャスティクスも買われ過ぎ圏で横ばいにあって、大きなトレンドが出るかは不透明な状況が続いています。強いて言えば、132.65-39の戻り安値圏、割れても114.41から124.40の下ひげを結んだサポートが維持する130円前後が維持されると堅調が続きそうですが、一方で148.40の高値を越えるかは不透明で、超えてもBのトップとなる149.79を上抜けるような展開とならない限りは、150円を超える動きも想定しづらいでしょう。

 一方で日足もチェックしておきましょう。
 148.40まで上昇後、124.40からのサポートを割れて、138.81まで下落も、更に下落は拡大していません。この位置が維持されると一定の反発期待となりますが、上値はでは日足の雲の下限から、上限と重なるレジスタンスが押さえると弱い状況が続きそうです。あくまで146.73の戻り高値の上抜けから148.40を越えて、更なる上昇期待となります。一方下値は、138.81を維持出来ずに、137.35を割り込むと、サイコロジカルな135円、133.40を割れてしまうと130円方向への調整となりそうです。

 また、ドル円とユーロドルの2022年の想定レンジから、マトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)をチェックしてみましょう。
 ユーロドルのコア・レンジを1.0000~1.1500、ドル円を126.00~140.00としましたので、これから算出されるユーロ円の最大想定レンジは126.00~161.00となります。ただ、ここまで大きなレンジは想定できないので、だいたい142.98を中心として、132.80から153.53がレンジとして想定されそうです。

 こういった面を勘案して、2023年のユーロ円の想定レンジを、133.00から145.00とします。ただ、不透明感が強いことで、最大レンジで130.00から150.00を見込んでおきたいと思います。

【予想レンジと戦略】

 それでは、以上を踏まえてユーロ円相場の来年の戦略についてお話します。
ユーロ円自体の想定レンジを、133.00から145.00としました。

 次に具体的な中長期戦略ですが、前提としては
・ECBは、2月と3月に0.50%の利上げ、5月に更に0.25%の利上げを実施し、政策金利を3.25%まで引き上げて、一旦正常化を終了すると仮定。
・一方日銀は、新総裁の元で、今までのような強力な金融緩和策から政策転換する可能性があることで、円高リスクも残りそうです。ただ、政策金利引き上げが行われる可能性は低く、円の軟調が続く見通しです。
・現状はテクニカル面で、方向感が見えづらいですが、もし、トレンドがはっきりと見えて来るなら逆張り戦略は注意しましょう。
・もし、ロシアが戦術核などを使用した場合は、この限りではありませんが、一方でウクライナとロシアが停戦で合意するような場合、ユーロ相場が急速に巻き戻す可能性に注意しておきましょう。

また、タイミング的な注意点は

① 1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いこと。
② 株価面では、アノマリーから5月の「セルインメイ」、米国の中間選挙を睨んで、年央にNY株が調整入りし易く、地政学リスクなどリスク回避の動きに注意しましょう。
③ 一方ドル円でも、例年アノマリー的に、8月中旬に瞬間的な円高が示現することが多いことは注意ですが、逆にこの時の急な円高は、年末に向けて絶好の円の売り場となることも、覚えておいてください。
④ 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期に一定の動きが見えた場合、逆張りで向かわないようにしましょう。 

 以上を勘案し2023年のユーロ円のスウィング・トレード戦略は、特定の時期は設定しましせんが、基本的に大きめの動きが見えた場合に限って逆張りする戦略です。

 まず下値は、138.81や137.35が維持されると買いも検討できそうですが、こういった位置で買っても、145円が上値を抑えるなら利食いながら対応します。理想は、こういった位置を割れるケースで、135円前後から買い場探しです。ただ、133.40を割れると130円方向となりますので、その場合再度130円までは買い下がり場を探すか、一旦カットして買い直しを検討しましょう。このストップは理想的には、124.40割れとなります。

 一方上値での売り狙いは、145円方向への上昇で売り狙いですが、このストップは146.75越えなどで対応します。また超えても148.40の高値が抑えるなら、売り狙いですが、少なくともこの高値を越えるなら止めるスタンス。超える動きから押し目買いも検討できそうですが、それも149.79の高値、150円前後が抑えると利食っておいた方が良さそうです。またこういった位置の売りは、月足の戻り高値150.58がストップ圏となります。

※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。