カナダドル円-2023年相場予想と戦略-

金融政策の正常化の行方と原油価格次第か?

【2022年のカナダドル円相場を振り返って】

2022年のカナダドル円相場は、堅調な展開となりました。

年初は、NY株が史上高値を更新するなどリスクオン・ムードでスタートしましたが、突然ともいえるロシアのウクライナ侵攻が、大きなショックを巻き起こし、西側先進諸国がロシアに対する経済制裁を次々と実施。大口の資源供給国であるロシアからの供給が滞るとの見方で原油や天然ガス価格が高騰、他の天然資源や穀物価格の上昇にもつながり、各国のインフレ率が押し上げられて世界的に中央銀行が金融引き締め政策を開始、一方で、資源国通貨であるカナダドル相場が下支えされ、加えて日銀が強力な金融緩和政策に固執したこともあって、円の独歩安がカナダドル円相場を支えました。

カナダドル円相場は、年初の89.24を安値として、カナダ中銀が3月に2018年5月来の利上げに舵を切り、4月にはQT(量的引き締め)の開始を発表、ドル円相場が、FRBが利上げ政策に転換したことで、2015年6月以来の高値となる125.85を越えて上昇を強めたことなどから、カナダドル円も102.96まで上値を拡大。加えてカナダCPIが、前年比で1991年来の7%台まで上昇、カナダ中銀は5月から利上げ幅を0.50%に拡大、原油価格が2008年来の高値まで上昇し、7月会合では1%の利上げが実施され107.65まで上昇、夏場は安倍首相の襲撃事件などでリスクオフの動きもありましたが、その後もウクライナ上昇を睨んで、天然ガス価格が高値を更新、ノルドストリームの破壊工作などもあって、カナダ中銀が利上げ幅を0.75%に拡大、再び9月にドル円相場が1998年の高値となる146.66に迫る動きとなり、カナダドル円相場は、110.53と2008年1月以来の高値まで上昇しました。ただ、その後日本の財務省・日銀が、ドル円相場が151.95の24年ぶりの高値まで上昇する流れで、1998年以来の円買い市場介入に踏み切ったこと、暗号資産取引所のFTXが破綻したことで仮想通貨が暴落、世界的に株価が軟調な展開となったこと、本年最後の日銀金融政策決定会合で、YCC政策による10年物国債変動幅の拡大を決定したことが、事実上の利上げと市場に捉えられ、ドル円相場が130円台まで急落、カナダドル円相場も上げ渋る形で2022年の取引を終了しようとしています。 

【2023年の主な材料】

以下が現在、判明している来年のイベントや材料です。注目度の高いものは太字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので変更されることがあります。

リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2022年は、米国の中間選挙を始め、欧州や日本の選挙、中国の共産党大会など大きなイベントがありましたが、2023年は材料の少ない年となりそうです。

そうなるとやはり2023年のカナダドル円相場は、カナダ中銀と日銀の金融政策、ウクライナ情勢次第を睨んだ資源価格の動向などが大きな焦点となりそうです。 

【2023年の注目点】

2022年の相場環境を踏まえて、2023年のカナダドル円相場の注目点をまとめてみました。

  • カナダ中銀の金融正常化
  • 日銀の政策スタンスに変更はあるのか?
  • 日本の国際収支
  • 加日金利差との連動性
  • 原油との連動性
  • ウクライナ情勢
〇 カナダ中銀の金融正常化

ロシアの突然のウクライナ侵攻で、西側先進諸国が、資源供給国であるロシアからの原油輸入を制限するなど経済制裁を強めたことで、原油や天然ガス価格が高騰、多くの天然資源や穀物価格の上昇も加わったこと、インフレ率が上昇率を高めたことで、早期にカナダ中銀が、金融引き締め政策を開始。2022年は資源国通貨であるカナダドル相場を支えました。

カナダ中銀は、まず3月に2018年5月以来の利上げに踏み切り、4月には0.50%の利上げを実施、加えてQT(量的引き締め)も同時に決定。その後6月に0.50%、7月は1%、9月には0.75%、10月に0.50%、12月にも0.50%の利上げを連続的に実施、政策金利を4.25%まで引き上げています。

 ただ、12月7日の声明では、「加第3四半期GDPは予想を上回っており、労働市場は引き続き逼迫、失業率は歴史的な低水準に近づいている」としながらも、「コアインフレ率の3カ月間の変化率は低下しており、物価上昇圧力が勢いを失っている可能性がある」、「理事会は需要と供給のバランスを取り戻し、インフレを目標に戻すために、政策金利をさらに引き上げる必要があるかどうかを検討する」としています。

 今後もインフレの状況次第ですが、以下の加消費者物価指数のチャートをご参照ください。原油価格などが上げ渋りを見せていることもあって、加の消費者物価も8.1%で上げ止まりを見せています。カナダ中銀がインフレ・ターゲットとする1-3%への低下はなかなか難しいですが、一定の上げ渋りがみえれば、既に政策金利も2007年レベルまで引き上げていることもあって、2023年には、利上げペースを落とす可能性があることは、留意しておきましょう。

以下は、2023年のカナダ中銀の政策金利公表予定日です。

01月05日+金融政策報告公表

03月08日

04月12日+金融政策報告公表

06月07日

07月12日+金融政策報告公表

09月06日

10月25日+金融政策報告公表

12月06日

〇 日銀の政策スタンスに変更はあるのか?

2022年12月20日の日銀金融政策決定会合で決定した「国債買入れ額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を、従来の±0.25%程度から±0.50%程度に拡大するとの措置は、市場に大きなサプライズとなりました。これ以前に黒田総裁は、「YCCの変動幅の拡大は、実質利上げになる」と話していただけに、市場は日銀のスタンスの変貌と捉えたようです。ただ、同総裁は記者会見において、「これは利上げではない」と明言しています。

 この真意は不透明ですが、直近では東京市場で、10年物国債の取引が成立しない日があったり、国債入札で応札が募集に満たない「札割れ」が発生したりと、日本の国債市場で流動性の低下が発生していました。確かに日銀が、日本国債の発行残高の半分も買ってしまっていることで、市場流動性が低下するのは必然といえますが、あくまで市場の健全な育成を司る金融当局としては、由々し難い事実であり、今回の措置はあくまで、流動性を確保するためのテクニカルな措置であったともいえそうです。そうなると日本銀行が、現在のマイナス金利政策を放棄し本当の利上げに踏み切ると考えるのは時期尚早なのかもしれません。

 一方来年4月には、黒田総裁の任期が到来します。2023年2月頃には、この候補者が絞り込まれる見通しですが、現在日銀のプリンスと呼ばれてきた雨宮正佳現副総裁と幅広い国際的人脈を持つ前副総裁の中曽宏大和総研理事長、財務省からは浅川アジア開発銀行総裁、岡本元事務次官、また初の女性総裁として翁日本総合研究所理事長などが有力候補とされています。 

過去日銀総裁人事は、財務省と日銀の出身者が、たすき掛けで総裁に就くという慣例がありましたが、黒田総裁の評価は高かったとしても、財務省畑の出身であり、現実的にも異例の2期10年となる過去最長の就任期間に、インフレ目標やデフレの克服ができたとは言えません。特に次の総裁には、現在行っている異例規模の国債買入や世界的に唯一マイナス金利を導入している日銀の出口戦略が大きな課題となりそうです。テクニカル面でも相当難しい判断が迫られそうです。その面では、副総裁を経験した日銀プロパーの2名となる可能性が高く、その場合本当の意味で、日銀が利上げスタンスに変貌する日が訪れるかもしれません。そうなるとドル円相場にも大きなインパクトを与えると思います。

2023年は、長らく市場から全く注目を集めなかった日銀金融政策決定会合が、大きな注目となる1年となりそうです。以下は2023年の日銀金融政策決定会合や議事録の公表日です。しっかりと押さえておきましょう。

日銀金融政策決定会合(議事録公表日)

(01月23日)

01月17日-18日+展望リポート(03月10日)

03月09日-10日(05月08日)

04月08日:黒田総裁任期

04月27日-28日+展望リポート(06月21日)

06月15日-16日(08月02日)

07月27日-28日+展望リポート(09月27日)

09月21日-22日(3月10日)

10月30日-31日+展望リポート(12月22日)

12月18日-19日

〇 日本の国際収支

日本の国際収支は、過去長らく黒字を維持していましたが、2014年には、東北大震災の影響もあって一時赤字に転落。その後回復も見えていましたが、新型コロナウィルスの蔓延を受けたワクチンの購入や訪日外国人観光客の激減、更にロシアのウクライナ侵攻を受けた資源・商品価格の上昇、加えて大幅な円安の悪影響もあって、再び赤字転落が定着化してきています。

 一応2023年に向けては、資源・商品価格の落ち着き、円安によるJカーブ効果などもあって、一定の改善が期待されますが、直近ではまた、懸念材料が持ち上がっています。

 それは、岸田政権が打ち出した「防衛費2倍」政策です。

過去歴代政権が、軍事費の目安としてきた「GDP比1%枠」の倍増を目指すもので、「5年で43兆円」の財源が不足するとされています。この財源に関しては、法人税や復興税の活用が話題となっていますが、一方為替市場の影響を考えると、この増額分のほとんどが、装備等購入費や維持費に充当されると見られています。しかも、この90%は海外からの調達となるようです。具体的にどういったタイミングで決済されるかは不透明ですが、現在の想定では、来年以降年間で5兆円程度の海外調達が実施され、しかもこれが全てドルで決済されることになりそうです。

この代金に関しては、過去潤沢に日本政府が保有する外貨準備を利用することはなく、市場からのドル調達で賄われています。来年以降、訪日外国人数はある程度回復するとしても、この防衛費の増額が、円の上値を抑える可能性には、注目しておきましょう。

〇 加日金利差との連動

また、以下はカナダと日本の金利差とカナダドル円相場を比較したチャートです。水色の時期は、若干連動性が薄れていますが、基本的にカナダドル円相場は、加日金利に連動して動いています。そうなると2023年もこの金利差の動向が大きな焦点となりそうです。 ただ、直近ではカナダ中銀は、金融正常化を一旦停止する可能性がある一方、日銀はこれから金融正常化をスタートします。加日金利差の縮小が、カナダドル円相場の上値を抑える可能性に注意しておきましょう。

〇 原油との連動性

カナダは、資源が豊富な国です。その中でも、オイルサンドは世界第3位の埋蔵量を誇っています。そのため、原油価格に経済が大きく影響を受けることで、カナダドル相場も連動性が高いことで知られています。

以下の2つのチャートは、カナダドルの対ドルと対円相場の動きを、原油価格と比較したチャートです。  ご覧のように、カナダドルの対ドル相場やカナダドル円相場は、直近対ドルでは、ブレが出ていますが、これはウクライナ情勢を受けて、原油価格が上げ過ぎた影響と見えますが、総じて原油価格との連動性は続いているようです。そうなると2023年のカナダドル円相場も毎月のOPEC会合や年2回開催される総会などに注目しながら、原油価格の動向を睨みながら対応することが望まれそうです。

それでは、原油価格のテクニカルをチェックしておきましょう。

 以下は、2020年から直近の原油価格の月足チャートです。

 WTI原油先物価格は、6.20ドルの安値から綺麗に波動を描いて上昇していますが、しっかりと130.50で第5波の高値をつけて現状は調整しています。ただ、下値はこのフィボナッチ・リトレースメント50%となる68.35ドル、また割れても4波の下限の61.74ドルが支えると堅調が続きそうです。ただ、こういった位置も割れると次の47.78ドルから33.64ドルを目指す動きとなるので注意です。

 一方上値は、まず93.74ドルの戻り高値が押さえると弱く、越えてもファンラインとなる100ドル前後、レジスタンスが位置する105-110ドルが押さえると、下段のスロー・ストキャスティクスも下落傾向を示しており、売りとなり易そうです。

ともかく原油相場は、ウクライナ情勢次第の面がありますが、当面60-100ドルぐらいの推移を想定します。

そうなると連動性が高い、2023年のカナダドル円は、堅調なレベルを維持すると考えられます。 

〇 ウクライナ情勢

2022年2月24日に、ロシアがウクライナへ侵攻。一時はロシアが圧倒的なパワーで、ウクライナを短期に制圧して侵攻を完了すると見られていましたが、欧米の多大な支援もあって、現状はウクライナが攻勢を強めています。

2022年は、この影響で原油価格や天然ガスなどのエネルギー価格が大幅上昇、更に穀物市況の高騰につながり、世界的に物価高騰が、マーケットの大きな材料となりました。 2023年には、どういった形であれ、この戦況が終息を迎えることが出来るのか大きな焦点となりますが、2020年のパンデミック・リスク、2022年はウクライナ侵攻と、連続で、市場の想定しない「ブラック・スワン」がマーケットに出現、市場に大混乱を招いています。そうなると2023年もこの「ブラック・スワン」が、市場に降り立って来るのか大注意となりそうです。

ただ、確かに「ブラック・スワン」は、誰も「想定しないリスク」のことを指しています。ロシアの苦戦から戦術核兵器を使用する可能性が残っていることを考えると、まだまだ安心できる状況ではありません。もし大規模な戦争にまで拡大するなら、金融市場に大激震が走るでしょう。こういったことが起こらないことを切に望みますが、その場合株価の下落などリスクオフの動きにつながり易いですが、ただ地政学的に安定しているカナダドルには、逃避資金が集まる可能性があるかもしれません。

【テクニカル面】

テクニカル面からまず、カナダドル円を構成するドルカナダ相場(カナダドルの対ドル相場)の長期月足をチェックしておきましょう。

 2007年11月の安値0.9059から反発が1.3065で抑えられて、再度調整を0.9405で維持して、1.4690と1.4668まで反発も、2つの上ヒゲがダブル・トップとなり、調整が1.2007で維持される形となっています。

現状この位置からの反発が1.3978でこのダブルトップを前に、長期のレジスタンスに抑えられています。下段のスロー・ストキャスティクスは、まだ上昇気味ですが、既に買われ過ぎ圏にあって、この高値が抑え続けるなら上値追いは厳しい状況です。あくまで1.3978を越えて、更に上昇期待ですが、1.4668-90のダブル・トップを越えるかは不透明となります。あくまで越えて1.50がターゲットとなります。

一方下値は、現状下値を支えている1.3223-26が支えると強いですが、割れると1.2958から1.2728のサポート圏が視野となりますが、こういった位置が維持できれば堅調が続きます。ただ維持できない場合1.2228-1.2518ゾーンの戻り安値までターゲットとなります。一応こういった下落でも守られれば更に調整は拡大しません。特にこの位置は、0.9405から1.4690と1.46681のフィボナッチ・リトレースメント50%となる1.2048-35と合致するレベルです。これも逆に1.2007やサイコロジカルな1.20を割り込んでしまうと、1.1279のそれ以前の高値、1.0622-1.0656の節目まで視野となりますが、最終サポートが控えており、維持出来れば更に下落は進みません。リスクは0.9634や0.9405を割れるケースとなります。

こういった面から、ドルカナダの来年の想定レンジを、1.2700~1.4000と想定します。

次にドル円相場を見ておきましょう。

ドル円相場は、1990年の160.35の高値から、2011年10月の75.31まで下落後、2022年10月には、160.35の高値と、147.66や125.86の高値を結んだレジスタンスを越えて、151.95まで急反発しました。

 特にこのチャートで注目して頂きたいのは、チャート形状から「F」の75.31をボトムとしたリバースH&Sを形成していることです。また現状は、このショルダー部分となるネック・ラインとなる「D」と「C」をクリアして、151.95の上ヒゲで、アーム部分「H」の形成を完了しています。このチャートの75.31の安値を基準に、ロールシャッハ・テストのように、左右対称を考えると次の展開は、再び「B」と同様に「I」の位置まで相場が下落する可能性があるということです。ただ、過去そこまで、チャート形状がぴったりとなるケースは、記憶にありませんので今後の焦点は「D」と「G」のネック・ラインを維持できるのか、それとも割れる動きがあるのか、来年の相場では、大きな注目点となりそうです。  一応このネック・ラインが維持されるなら、再度「J」を目指す可能性も残っていますが、ネック・ラインを割れて来ると特に過去の動きでは急激な円高となっており、スピードが加速する可能性に注意しましょう。

また次のチャートは、同様のチャートから一定の波動を見たチャートです。

 160.35の高値から75.31まで下落しましたが、波動からは第7波で一旦底値を見ているようです。この話を聞くと若干不思議に思う方もいると思います。一般的にエリオット波動からは、5つの波動とABCの上下波動で最終的に完了することが定説とされています。ただ、私の経験からは為替市場では、7波や9波で相場を完了するケースが多くあります。またこの考えを除いても、既に151.95まで上昇した相場であれば、160.35からの下落は一旦終わっているはずで、そうなると次の注目は75.31からどういった波動形成となるかです。

 ただ、その場合も①の上昇後の②波の位置が、最初の段階で①を越えておらず、不透明な感じとなっています。そのため、現在では99.02と102.59を「②と②‘」として勘案しています。これは次の展開を見なければなりませんが、少なくとも①の高値が、逆に下値を支えると次の第5波の上昇を迎えることができるでしょう。その場合③の151.95を越える160.35がターゲットとなります。つまり前述のリバースH&Sのケースで申し上げたネック・ラインが、こちらでも重要で、2023年の相場は、これが維持されるのか、割れるのかで相場付きが大きく変わることは留意しておいてください。

こういった面を考慮して、ドル円の想定レンジを126.00から140.00とします。

 加えてドルカナダとドル円の想定レンジから、マトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)を作成しています。

 ドルカナダのコア・レンジを1.2700~1.4000、ドル円を126.00~140.00としましたので、これから算出されるカナダドル円の最大想定レンジは、90.00から110.24となりますが、大きすぎるので適正レンジを93.60から105.95とします。

それでは、最後にカナダドル円の月足を見てみましょう。

 月足チャートからは、106.49をトップとした大きなH&Sの形から「C」の右肩のネック・ラインとなる93.02-26を越えて、上昇が大きく110.53まで拡大しました。この位置は不透明ですが、少なくともトピッシュな上ヒゲを出しており、一旦上値付きは間違いなさそうです。現状は102.88の下落前の安値から104.57の窓の位置が押さえると、下段に示したスロー・ストキャスティクスの買われ過ぎでのデッド・クロスもあって、弱い状況が続きそうです。あくまで109.31や110.36の戻り高値から110.53を越えて、更なる上昇期待ですが、超えた場合113.23、116.85,歴史的な高値となる125.55が視野となります。

 一方下値は95.86の現状の安値が維持されると良いですが、割れると93.02-26の「C」のネック・ラインがターゲットとなります。この位置にはサポートが控えていて、維持では更に突っ込み売りは出来ません。ただ、維持できない場合、89.24-67の戻り安値、87.19や83.59の戻り安値がターゲットとなります。また更なるサポートからは維持できれば良いですが、割れると80.15-81.58,77.62-78.22まで視野となりますが、73.82や72.16まで割り込むと68.40がターゲットとなります。

従って、マトリックス・チャートも参考にして、来年のカナダドル円の想定レンジを、93.00から105.00とします。

【予想レンジと戦略】

それでは以上を踏まえて、カナダドル円相場の来年の戦略についてお話します。

 一応来年は、過去のような新型コロナウィルスの感染拡大やウクライナの情勢が更に悪化しないとの前提でお話させて頂きます。

来年のカナダドル円の想定レンジの基本を93.00から105.00としました。

次に戦略の前提としては

・カナダ中銀は、利上げ姿勢を継続するも、来年ペースを鈍らせる可能性がある一方、日銀が金融正常化に舵を切る可能性が残ることで、加日の金利差縮小リスクがある。

・日本の国際収支の悪化や原油・資源高が、円の上値を抑える可能性がある。

・テクニカルからカナダドル円やドル円の月足のスロー・ストキャスティクスが、デッド・クロスを示しており、早期は下落リスクが高い。

・注意点としては、やはりウクライナ情勢です。もし、プーチン大統領が核の使用などに走った場合、リスクオフの動きに注意ですが、一方で早期に停戦合意となった場合は、リスクオンの動きが強まるので、このようなケースでは、相場の動きに逆らわないことが、重要となりそうです。

また、タイミング的な注意点は

  1. 1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いこと。
  2. 株価面では、来年前半は今年の流れを引き継いで弱い可能性があり、リスクオフが広がり易い。ただ、年後半に向けては、FRBの利上げ停止などが株価を支え、リスクオンの動きが期待される。
  3. ドル円は、例年アノマリー的に、8月中旬に瞬間的な円高が示現することが多いことは注意です。ただ逆にこの時の急な円高は、年末に向けて絶好の円の売り場となることも、覚えておいてください。
  4. 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期に一定の動きが見えた場合、逆張りで向かわないようにしましょう。

基本的な、カナダドル円のスウィングトレード戦略は、早期は、101.21-42ゾーンが押さえると弱く、その場合100円前後から売り場探しとなりますが、超えるケースでは105円方向への上昇があれば売り場を探しましょう。ターゲットは、現状の安値95.86が維持されると利食いとなりますが、それでも反発では売り直して、売り回転が良さそうです。また95.86を割れるならターゲットは、93.02-26を前に利食いを優先しましょう。またこの位置が維持されると買いも検討できそうですが、90円までの買い下がりの余裕を持って対応しましょう。この場合のストップは、89.24割れや87.19-45割れなどで対応して、この買いも101.21-42を超えない状況では、反発ではしっかりと利食っておいた方が良さそうです。

※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。