NZドル円-2022年相場予想と戦略-

金融正常化を睨んで底堅い展開】


※本記事は2021年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。

【2021年のNZドル円相場を振り返って】

 2021年のNZドル円相場は、新型コロナウィルスの感染拡大が、先進国の中でも比較的軽微であったことで、NZ準備銀行が、金融正常化の道のりを早めたことなどから、リスクオンの堅調な展開で終了しようとしています。
 年初は、世界的な感染拡大で、リスクオフ気味の展開からスタートしましたが、NZドル円相場は、73.65円を安値に反転地合いとなり、バイデン大統領の大規模なインフラ投資計画の発表もあって、米長期金利が急騰したことでドル円相場が110.97円まで一時反発、対ドルでのNZドル買いも追い風となり、NZドル円も79.22円まで上昇しました。ただ、長らく進んでいた円高で、機関投資家などからのやれやれの利食いも出易い位置となったようですが、これもその後NYダウが、史上初の3万5千ドル台に乗せ、NZドル円も80.19円と直近高値を更新しました。
 しかしながら6月のFOMCで、パウエルFRB議長が、「テーパリングの協議を開始する」と発言したことがサプライズとなり、早期の金融引き締めの懸念で株価が急落したこと、7月には、NZ準備銀行が、大規模資産購入プログラム(LSAP)の追加資産購入の停止を発表するも、NZでも再び感染が拡大して、NZ政府がロック・ダウンを再開、中国が「共同富裕」政策を打ち出したことで、中国経済に悪影響が出るとの見方が重なり、NZドル円は、一時74.57円まで売りに押されました。丁度この時日本の感染者数が、急拡大したこともあって、ドル円が108.72円まで調整したこともNZドル円の上値を抑えたようです。
 9月に入ると自民党総裁選を睨んで、菅総理が突然退陣表明したことが、サプライズとなり新政権に対する期待感から日経平均が31年ぶりの高値をつけドル円が上昇を強めました。また、NZのロック・ダウンが解除し、NZ中銀が10月に政策金利を0.25%から0.50%へ引き上げたことで、NZドル円82.51円の年間の高値をつけました。一方で米国のインフレ率の強い上昇で、11月のFOMCでテーパリングが本格的にスタート、来年3回の利上げを織り込む形で、NZドルの対ドル相場下落を強めたことから、NZドル円も75.97円まで再調整となりました。ただ、南アフリカで発見されたオミクロン株の拡大を懸念して、NZ準備銀行が連続利上げを決定し、世界的に株価が堅調な推移となったことが、NZドル円の下値を支えています。

有限会社フォレックスラジオ作成

【2022年の主な材料】

 以下が現在、判明している来年のイベントや材料です。注目度の高いものは赤字で表示しています。ただ、あくまで予定で、変更されることがあります。

 レポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2022年は、米国の中間選挙を始めとして、欧州の選挙や日本の参議院選挙など選挙が多く予定されています。政治の為替市場に与える影響は不透明ですが、株価面では、財政出動などの期待が高まり易く、その場合為替市場でも、リスクオン・オフの動きに一定の影響を与える可能性には注目しておきましょう。ただ、近年の米中対立の姿を考えると中国の全国人民代表大会や共産党大会での決定に、緊張を高める内容が見えた場合、株価やNZドル相場に、一定の影響を与える可能性には注意となりそうです。
 一方金融政策では、アフターコロナを睨んで、FOMCやNZ準備銀行が、「金融正常化」という難題をどう安定的に消化していけるかが大きな注目となりそうです。世界的に上昇を続けるインフレに、金融引き締めを更に強めると長期金利や株価の動向に、大きく影響を与えるので、中央銀行の声明や政策変更、中銀の要人発言には、最大の注目を払って対応した方が良いでしょう。
 その面で、来年のNZドル円相場の大きな注目は、年間を通してNZ準備銀行の姿勢の変化、対ドル相場では、年前半はFRBの金融引き締めの行方次第で、年後半は米国の中間選挙にスポットを当てた相場の流れとなりそうです。 

【2022年の注目点】

 2021年の相場環境を踏まえて、2022年のNZドル円相場の注目点をまとめてみました。

・ NZのファンダメンタルズ
・ 中央銀行の金融正常化の行方

〇 NZのファンダメンタルズ

 NZは、小さな国です。人口は世界120位、GDPで見ても50位と、新興国通貨取引で人気のあるトルコの18位、南アフリカの33位よりも低い位置にあります。
 日本と同じ島国ですが、国土は日本よりも小さく、古くからイギリス連邦加盟国として、発展してきましたが、主な産業としては、農業などの1次産業が中心です。
 特に畜産業や林業が盛んですが、その他の産業は観光を除いて、畜産物の加工工業が主流です。近年は中国に対する乳製品や畜産加工品の輸出が好調ですが、世界的に大きな企業はありません。NZ証券取引所の上場企業は170社程度しかありません。
 また地震国ですが鉱業資源は少なく、一部に豪州と並んで、資源国通貨と勘違いされていますが、これは間違いです。恒常的な経常赤字国で、歴史的に高金利を余儀なくされて来ましたが、市場規模が小さく、過去は投機の動きに市場閉鎖に追い込まれたこともあります。
 一方で政治的な安定や地政学リスクの低さから、歴史的に海外から資金を集めてきました。また現在は、歴史的な低金利ですが、新型コロナウィルスの感染を早期に食い止めたこともあって、一種のリスク回避としての安全通貨志向が相場を支えているようにみえます。

 また、以下にNZのGDPと住宅価格、失業率の推移のグラフを掲載します。
現状は新型コロナウィルスからの回復傾向が見えています。ただ、GDPや住宅価格は、大幅な落ち込みの反動の可能性も残っていることには注意ですが、失業率はリーマン・ショック以前の最低水準に迫っています。

 一方貿易収支は、一時の赤字減少から、再び増加に転じています。新型コロナウィルスからの経済回復で、輸入が増加している可能性もあります。NZドル相場との関連性は低いですが、一応赤字の増加は、NZドルの売り圧力となることは留意しておきましょう。

〇 NZ準備銀行のスタンス

 NZ準備銀行は、新型コロナウィルスの蔓延を受けて、2020年3月に、それまで1%としていた政策金利となるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を0.75%引き下げて0.25%としました。また、借入コストの低下を促す資金供給プログラム(FLP)や大規模資産購入プログラム(LSAP)で、流動性の供給を行ってきましたが、7月にLSAPの追加購入を止め、10月と11月に0.25%ずつOCRを引上げ、現在は0.75%としています。
 11月会合でのNZ準備銀行の声明では、「物価を安定化し、持続可能な最大限の雇用を支援するため、金融政策の引き締めが引き続き適切であると判断」、「インフレと雇用の中期的な見通しを考慮すると、時間の経過とともに金融政策刺激のさらなる解除を予想」としています。今後も金融政策の正常化に向けて、利上げや資産購入の停止を継続する可能性が高そうです。

 では、2022年にどこまで政策金利が引き上げられるでしょう。
 以下のNZ準備銀行の政策金利とインフレ率、NZドル相場をプロットしたチャートを見てみましょう。
 NZ準備銀行は、1-3%というインフレ・ターゲットを設定していますが、直近の消費者物価指数は、4.9%まで上昇しています。利上げは当然のように見えますが、新型コロナウィルスの蔓延で、落ち込んだ経済の反動的な結果との可能性が残っています。NZ準備銀行も、「CPIインフレ率は、短期的には5%を超え、今後2年間で中間値である2%に戻ると予想」しているようです。過去リーマン・ショック前後も5%前半でピークを見せていますので、今後上昇してもこの程度が最大値なのかもしれません。未だ推移を見る必要がありますが、若干注意しなければならない点として、NZの指標は四半期毎の発表ですので、なかなかその推移を把握しづらい点です。オアRBNZ総裁も、「政策金利について慎重に対応」と述べています。しかしながら、大手投資銀行のJPモルガンなども、2022年は「新型コロナウィルスで悪化した経済が、完全回復する」と予想しています。個人的にも2022年に、利下げ前の水準1.75%まで、0.25%を4回、オア総裁の会見が予定されている会合に合わせて、利上げを粛々と実施するのではと想定しています。

 また、以下はNZと日本の10年物国債利回り差とNZドル円相場の推移を示したチャートです。総じて金利差に準じて動いている形が見えます。特に日本の金利は当面上昇する可能性は低く、想定通りNZ準備銀行が、来年利上げスタンスを継続するならNZドル円相場にとって、フォローの年となりそうです。 

有限会社フォレックスラジオ作成

 以下がNZ準備銀行の今年の金融政策会合の予定日です。声明や総裁発言から、政策の変化に注目して対応しましょう。
02月23日・総裁記者会見
04月13日
05月25日・総裁記者会見
07月13日
08月17日・総裁記者会見
10月05日
11月23日・総裁記者会見

【テクニカル面】

 まず、NZドル円相場を形成する、NZドルの対ドル相場の月足からチェックしておきましょう。
 最安値の0.3898ドルからの上昇を、0.8842ドルと0.8838ドルでダブル・トップをつけました。その後の下落が0.3898ドルと0.489ドル5の安値から結んだ長期のサポートを割り込み0.5469ドルの安値まで下落しましたが、この位置を維持して反転。ただ、この上昇もレジスタンスを前に0.7465ドルで抑えられて、モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスが反転下落中に、上値は0.7198ドル-0.7316ドルのゾーンの戻り高値が抑えると弱いです。0.7465ドルや0.7558ドルを越えて、0.7745ドルの戻り高値、0.7889ドル-0.8035ドルの窓の下限、0.8311ドル-0.8535ドルの窓の上限が視野なりますが、上抜けは不透明となります。特に0.8842ドルと0.8838ドルのダブル・トップを基準としたショルダー・トップからは、0.8215ドルが上値を抑える可能性に注目したいです。ただ、あくまで、0.8842ドルと0.8838ドルでダブル・トップを越えて、強い上昇期待とありそうです。
 一方下値は、現状の安値0.6702ドルを割れるとと、0.6440ドルから0.6589ドル、0.6181ドルの窓の上限、窓の下限0.6181ドル、0.5843ドル-0.5920ドルの戻り安値圏がターゲットとなります。ただ、相場が硬直気味になると、新たに追加してサポートが維持されて、一旦買い場となります。安値の0.5469ドルを割れるケースです。その場合は、0.4895ドルを再度目指すこととなりそうです。 
 従って、NZドル/ドル相場の今年の想定レンジを、0.6200ドル~0.7300ドルとします。最大でも下値0.6000ドルは支えられると見ています。

テクニカル面からは、期間を変えたドル円相場の3つの月足チャートをベースにお話させて頂きます。

① 1ドル360円時代、1971年からの超長期月足チャート

 ドル円相場が、過去固定相場だったという話も、現在意識している人はほとんどいないと思いますが、第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が打ち出した物価安定・緊縮財政政策「ドッジ・ライン」によって、1米ドルは、360円に固定されていました。どうして360円に決定されたかは、諸説入り混じるところですが、「円は丸なので、丸なら360度だから1ドル360円にした」という本当かウソかわからない話があります。
 これは余談ですが、歴史的に1973年に変動相場制に移行した時点からドル円相場を考察してみましょう。(1971年に、米国がドルと金の交換を停止した「ニクソン・ショック」後、「スミソニアン協定」によって、一度1ドル=308円に切り下げられています。)
 
 どうして、この話からスタートするかと言いますと、実は古くから為替でディーラーやアナリストの間では、「ドル円相場の半値説」というのが存在します。
 これは1ドル360円の時代から、ざっくりと180円に下落、次の戻り高値の278円から139円、160円から80円、148円から74円というように動いているという話です。下記のチャートをご覧頂くと、100%ぴったりとした価格ではありませんが、総じて整合性があることが見て取れると思います。この事実は若干驚きですが、今後も円高のトレンドが継続すると仮定するなら、次のドル円相場のターゲットは、高値125.86円の半値の63円となります。この説を信じて良いのかは、未だ断言はできませんが、波動的にも、1ドル360円からの下落が、一旦120.45円で止まって、現在が160.35円からの第5波の過程にあるとすれば、まだ円高の流れが続いているとも見えます。こういった見方が、世間で円高説を唱える多くの専門家の根拠となっているように思われます。
 一応この仮定を踏まえて、次のチャートをチェックしてみましょう。

② 第2の波動となる1990年からの長期月足チャート

 では、再度この160.35円からの波動を見てみましょう。
 ここで注意しなければならないことは、良くテクニカル分析で利用される「エリオット波動」に関しての見解です。エリオット波動とは、簡単に言うと「相場は5つの波動(上昇または下落)とその終了後に、ABCの3波の大きな上下波動を形成して、ひとつの相場のサイクルが終了する」という説です。
 当然この一言でエリオット波動を全て解釈することはできません。またエリオット波動論は、株式市場で生まれたテクニカル分析手法ですので、為替市場でも適応できるかは、賛否が分かれるところです。加えて波動のカウントの仕方やスタート地点で、人によって見方が変わってしまいます。特に最後に出るABCの3波は、なかなか綺麗に出ることが少ないので、個人的は、単純なカウントを利用して見ています。この見方とすると為替市場では、たびたび7波や9波で、相場のトレンドが変わることが多いと感じています。
 この見方が正しいかはさておいて、これを前提に160.35円からの波動を、更に詳細に見てみると以下のチャートで示した波動の動きのようにも捉えることが出来ます。つまり現状は160.35円から75.31円で第7波の位置にあって、一旦円高が終了しているとの見方も出来るということです。
 この理由としては、前述の超長期のチャートで見た第3波の位置を詳細にカウントするとこの位置だけなら、綺麗な5波を完了しています。不透明なのは75.31円から125.86円のABCの動きが、はっきりとしないことで、判断が分かれることです。

 結局現状の相場が、未だ第5波の下落の中にあるのか?それとも75.31円で円高が、一旦終了して、次の波動に中にあるのかの判断が不透明なことが、現在の相場の膠着感の要因なのかもしれません。そうなると来年以降ドル円相場が一定のチャート・ポイントをブレイクできるのかが、将来的なドル円相場の見通しを左右しそうです。

 その面で、特に注目して頂きたいのが、160.35円の高値と125.86円の高値を結んだレジスタンスの位置です。この位置は一応計算式からは、チャート上の青い矢印の位置となります。月間ベースですのでブレはありますが、2021年12月の時点の117.29円から来年末に向けて、115.97円まで降りてきます。現状のドル円相場の戻り高値は115.52円ですが、この位置を来年以降超える動きがあるのか?または、超えられないで、逆に下値を支えている102.59円や更に99.02円を割れてしまうのかで、はっきりと「円高の長期トレンドが終了するのか」、それとも「未だ円高のトレンドが続くのか」結論が出て来るでしょう。

③ 史上再安値を付けた後の2011年からの月足チャート

 最後に直近2011年の歴史的な安値75.31円からの月足を見てみましょう。
 一応こちらもエリオット波動からみましょう。75.31円の安値を基準として、カウントすると現状の相場が、下記チャートのように、最後の第5波の上昇過程にある可能性があります。実は、この見方に整合性があるかは、少し自信がありません。また、現状の高値が、フィボナッチ・リトレースメント(125.86円から99.02円の61.8%)の位置となる115.52円で、上値を抑えられていますが、フィボナッチ・リトレースメントの有効性はあまり高くないこともあって、この位置がこの5波のトップとなるのかも断言はできません。
 この面では、チャートの下段に表示しているモメンタムを示す「スロー・ストキャスティクス」を見てみることが良さそうです。
 こちらは上昇を継続していますので、来年も底堅い展開が続きそうです。ただ、若干たれ気味であることから、この115.52円の直近高値が上値を抑え続ける状況が続いた場合、いずれこのスロー・ストキャスティクスが、デッド・クロスに向かう可能性があることは注意しておきましょう。あくまで現在の高値115.52をしっかりと超える動きが見えてから、②のチャートのレジスタンスを目指す動きとなります。その場合戻り高値からは118.66円がひとつの重要なポイントで、更にはフィボナッチ・リトレースメントの76.4%となる119.53円などが視野となる形です。
 一方下値は、107.45円から109.51円の位置(ピンクのゾーン)が、サポート圏として支えると堅調な相場が続きそうです。この位置は前述のフィボナッチ・リトレースメントの38.2%や23.6%と整合性がある位置です。リスクは、こういった位置を維持で出来ないケースです。その場合サポート圏は未だ低い位置ですが、将来的に②のチャートの水色で示したネック・ラインとなる102.59円や99.02円と重なることになりそうです。従って、107.45円-109.51円ゾーンを割れても、このサポートが維持されると更に下落は拡大しないでしょう。ただ、もし割り込むと大きな円高のリスクとなります。

 従って、2022年のドル円の想定レンジを、108.50円から118.50円とします。

 以下はNZドル/ドル相場とドル円相場の想定レンジから算出した、マトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)となります。 
 NZドル/ドルの想定レンジを0.6200ドル~0.7500ドル,ドル円の想定レンジを108.50円~118.50円としましたので、これらから算出されたNZドル円相場の、最大想定レンジは67.27円~86.51円となります。

 最後にNZドル円相場ですが、94.02円の高値から調整を59.61円の下ヒゲで維持して、レジスタンスを超えて82.51円まで回復も、更なる展開となっていません。
 NZD円相場の長期の月足からは、基本的には、「C」をトップとした、変形的なH&Sを形成しています。この変形型は、「A」をアームとした「B」の左肩より、「D」の右肩が高い位置で推移していましたが、45.09円の安値からのサポートを割り込んで、59.61円まで下落したことで、新たに「A」と同様な下ヒゲを描いたことで終了したようです。
 そうなると次の焦点は、豪ドル円同様、「E」をボトムとした、リバースH&S形成の次の形成となりそうです。 
 これを見ると、当面は「F」の位置で、右肩の動きを継続すると想定されます。このレンジは、「D」のレンジから、下値は69.14円-72.65円ゾーン、上値は83.80円-90円ゾーンとなり、次にこのレンジをブレイクするまでは、揉み合いが続く前提となります。この期間は、「D」が2015年6月から2020年2月までとして4年8カ月となります。ただ、あまりぴったりと来ることは少ないですが、同様に考えると「F」は、2020年6月から2025年2月まで、このレンジでの推移に留まってしまう可能性が残ることは、留意しておきましょう。
 これを前提に、上値はあくまで直近高値の82.51円を越えても、この83.80-90円が上値を抑える可能性に注目しましょう。ただ、超える動きが見えた場合、87.20円-89.26円、91.02円-92.40円なども視野となりますが、94.02円の高値を前に、上抜けは不透明となります。
 一方下値は、直近安値の74.57円を維持すれば良いですが、割れると72.72円-73.66円の窓の上限、70.52円-71.98円の窓の下限、70円のサイコロジカル、68.64-95円、66.58円の戻り安値まで割れると63.09-43円まで視野となります。また、新たに加えてサポートが位置しており、買いが入り易い位置です。ただ、前述のリバースH&Sからは、69.14円-72.65円ゾーンで支えられる可能性は高そうです。
 従ってNZドル円の2022年の想定レンジを、72.00円から84.00円とします。(前述のマトリックス・チャートのピンクの枠をある程度考慮しています)

【予想レンジと戦略】

 それでは以上を踏まえて、豪ドル円相場の来年の見通しと戦略についてお話します。
 一応新型コロナウィルスの感染が、終息に向かう前提で予想をしています。もし、更に強いウィルスが出現して、再び経済が大きく落ち込んだり、株価の大幅調整があった場合は、見直しの必要があるかもしれません。また、こういった年間の見通しは、簡単に当たるものではありません。あくまで現在の見通しの基づくものであって、くれぐれも自己責任でご参考として頂ければ幸いです。 

 来年のNZドル円相場の想定レンジを72.00円から84.00円としました。今年の値動きが8.86円程度ですので、若干広い感じはしますが、NZドル円相場の過去2010年から2020年の年間平均変動幅は13.36円となっていますので、一応適切な範囲と思われます。

 次に戦略の前提としては
・2022年は、FOMCの金融正常を睨んで、ドルの堅調、円の軟調を前提とします。
・その場合、NZドル円に対しては、単純に中立ですが、NZも金融性正常化に向かうことが想定されますので、NZドル円でも押し目買いが有効となると見ています。
・ただ、現状のNZドル円の月足のスロー・ストキャスティクスが、デッド・クロスとなっていることで早期は調整気味となり易く、リバースH&Sの下限を目指す動きもあるかもしれません。あくまで十分押し目を待って買いを狙う形が良いでしょう。

 また、タイミング的な注意点は
① 1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いです。
② 株価面では、アノマリーから5月の「セルインメイ」、米国の中間選挙を睨んで、年央にNY株が調整入りし易く、地政学リスクなどリスク回避の動きに注意しましょう。
③ 一方ドル円が、例年アノマリー的に、8月中旬に瞬間的な円高が示現することが多いことは注意です。ただ逆にこの時の急な円高は、年末に向けて絶好の円の売り場となることも、覚えておいてください。
④ 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期に一定の動きが見えた場合、逆張りで向かわないようにしましょう。 

 従って、基本的なスウィング・トレードを前提とした戦略は、あくまで押し目を待って買いを狙います。
 まず、74.57円の安値を割れるかどうか確認して、維持されるなら下げないリスクから買っても、割れるなら止めるスタンスです。できれば割れて70円方向への調整を段階的に買い下がる形が良いでしょう。ストップは68.64円とするか、66.58円割れとします。または、更にサポートとした63.09-43円まで買い下がるなら、ストップは59.61円割れとなります。ターゲットは、82.51円の戻り高値を越えないケースでは、手前への反発では利食い。超えても84円を前にしっかりと利食って、できれば買い回転と利かせるようなトレードを検討しましょう。 

※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。