スイスフラン円-2021年相場予想と戦略-

バイデン政権の中東政策とユーロ相場の行方次第

【2020年のスイスフラン円相場を振り返って】

 2020年のスイスフラン円相場は、年前半は新型コロナウイルスの問題で、下落傾向となるも年後半に向けては堅調な展開で終了しました。
年初からは、イランのソレイマニ司令官が、米国によって暗殺されたことで、一時中東の緊張が高まり、114.39まで上昇しましたが、この問題はイランが冷静な対応をしたことで、大きな問題にはなりませんでした。その後は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界的に株価が暴落的に下落、FOMCの緊急利下げもあって、ドル円相場が一時101.19まで急落する一方、ドルスイス相場がリスク回避で、0.9183まで値を下げたこともあって、スイスフラン円の下落は限定されました。
ただ、ECBも7500億ユーロ規模のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の導入を決定したこともあって、ユーロ円相場が5月7日に114.43の安値まで下落すると、スイスフラン円も、2020年の最安値となる108.70まで下落しました。
その後は徐々に新型コロナウイルスに対しての警戒感が薄れたこと、各国の金融緩和策が一定の安心感につながったことなどから、株価が下げ止まりを見せ、新型コロナウイルスの打撃を受けた加盟国への支援策として、7月21日に、返済不要の補助金3900億ユーロ、低利融資3600億ユーロ、総額7500億ユーロの復興基金の設立で、欧州連合が合意したことを好感してユーロ圏株価が上昇、ユーロ相場が反転地合いとなったことで、スイスフラン円は、117.89の高値まで上昇しました。
秋口初頭は、新型コロナウイルスの感染の再拡大や米国大統領選の行方を睨んで、総じて警戒感の強い相場となりました。また米大統領選で、予想外にバイデン氏が勝利するも、トランプ大統領が、選挙の不正を訴え、米国の政局に混乱や不安感が高まったこともあって、上値の重い状況となりましたが、ファイザーが新型コロナワクチンの開発に成功したことで、NYダウが史上初の3万ドル台、リスクオン気味の展開で12月相場を迎えましたが、ただ、スイスフラン円は、8月28日の高値を越えることはありませんでした。 

【2021年の主な材料】

以下が現在、知り得る今年のイベントや材料です。注目度の高いものはマーカーで表示しています。ただ、あくまで予定ですので、変更されることがあります。

01月01日:ポルトガル・EU議長国就任
01月05日:米ジョージア州上院議員決戦選挙
01月06日:米大統領選における選挙人投票結果開票(上下院合同会議)
01月16日:独キリスト教民主同盟党(CDU)党首選挙
01月18日:日本・通常国会、アジア金融フォーラム(香港、19日まで)
01月20日:米大統領就任式
01月24日:ポルトガル大統領選挙
01月25日:ダボス会議(29日まで)
01月XX日:米大統領・一般教書演説(26日頃?)、IMF・世界経済見通し公表

02月XX日:米大統領予算教書・経済報告書公表
02月20日:米パリ協定復帰
02月27日:G20財務相・中央銀行総裁会合

03月XX日:中国第13期全国人民政治協商会議第4回全体会議、第13期全国人民代表大会第4回全体会議(北京)
03月14日:独バーデン・ビュルテンベルク、ラインラント・プファルツ州議会選挙
03月17日:オランダ下院選挙
03月25日:東京オリンピック・聖火リレー開始(最終的オリンピックの開催可否を決定?)
03月26日:米通商代表部・外国貿易障壁報告書公表
03月XX日:バイデン政権・気候サミット開催、ECBパンデミック緊急購入プログラム期限

04月07日:G20財務相・中央銀行総裁会合(8日まで)
04月09日:IMF・世界銀行春季総会(ワシントンDC)
04月XX日:国連・世界経済状況予測公表

05月06日:英地方議会選挙(ウェールズ、スコットランド)、英ロンドン市長・ロンドン議会選挙
05月19日:欧州復興開発銀行年次総会(アルメニア・エレバン、20日まで)
05月25日:世界経済フォーラム特別年次会合(シンガポール、28日まで)
05月XX日:G7サミット(英国)、米財務省・半期為替報告書公表

06月06日:独ザクセン・アンハルト州議会選挙、メキシコ連邦下院議員・州知事選挙、イラク国民議会選挙(予定)
06月18日:イラン大統領選挙(予定)
06月28日:G20外務相会合(イタリア・マテーラ、29日まで)
06月30日:IMF・世界経済見通し公表
06月XX日:フランス地域圏議会選挙・県議会選挙、世界銀行・世界経済見通し発表、WTO閣僚会議(カザフスタン・ヌルスルタン)、OPEC総会

07月01日:オセアニア圏・新会計年度開始、スロベニア・EU議長国就任、ブルガリアとクロアチア・欧州為替相場メカニズム2(ERM2)参加
07月09日:G20財務相・中央銀行総裁会合(イタリア・ベネチア、10日まで)
07月23日:東京オリンピック開催(8月8日まで)、中国共産党結党100周年
07月31日:米債務上限の適用停止期限
07月XX日:中国北戴河会議、IMF・改訂版世界経済見通し発表

08月24日:東京パラリンピック(9月5日まで)
08月XX日:カンザス連銀シンポジウム(ジャクソンホール)

09月05日:香港立法議会選挙
09月13日:ノルウェー議会選挙
09月19日:ロシア下院選挙・統一地方選挙
09月26日:独連邦議会選挙、英国労働党大会(ブライトン。29日まで)
09月30日:菅自民党総裁任期満了、独議会・任期満了
09月XX日:東方経済フォーラム(ウラジオストク開催)、中国一帯一路サミット、メルケル首相退任、仏2022年政府予算案・社会保障会計法案発表

10月01日:ドバイ万国博覧会(2022年3月31日まで)、米新会計年度開始
10月15日:IMF・世界銀行年次総会(ワシントンDC、17日まで)、G20財務相・中央銀行総裁会合(ワシントンDC、16日まで)
10月XX日:英国保守党大会(バーミンガム)
10月21日:衆議院議員・任期満了
10月24日:アルゼンチン中間選挙
10月30日:G20首脳会合(ローマ、31日まで)
10月XX日:中国共産党中央委員会全体会議(5中全会)

11月01日:国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(英グラスゴー、12日まで)
11月XX日:APEC閣僚・首脳会議
11月29日:スイス国民議会議長・全州議会議長選挙
11月XX日:米財務省・半期為替報告書公表

12月08日:スイス連邦大統領・連邦副大統領選挙
12月XX日:中国・中央経済工作会議
12月XX日:OECD経済見通し公表、OPEC総会

【2021年の注目点】

 2020年の相場環境を踏まえて、2021年のスイスフラン円相場の注目点をまとめてみました。

・ ファンダメンタルズ格差は見るものがない
・ 地政学リスクとしての中東問題
・ ユーロ円相場の動向

〇ファンダメンタルズ格差は見るものがない

 相場の見通しを見る上では、当該通貨を構成する国の経済格差や政治状況などを見ることになりますが、スイスフラン円を構成するスイスと日本は、両国とも成熟国として、今後強い経済成長を望むような状況にありません。
ファンダメンタルズを見る上で、代表的な金利面でも、日本では、1999年にゼロ金利政策、2016年1月からは、マイナス金利政策を導入、量的・質的緩和も継続していますが、インフレが全く上昇せず、今後も長期に渡って低金利背策を余儀なくされそうです。
一方スイスも、2015年からマイナス金利を許容する政策を導入、2018年には、それまでの誘導目標となる-0.75%から+0.25%を、更にー1.25%から-0.25%と中央値ベースで、もっとも低い水準にまで引き下げています。 
現状では、コロナウイルスの感染拡大もあって、最低でも政策金利の引き上げは、当面全く想定されませんし、加えて既にマイナス金利が導入されていますので、更に大きく深堀することも難しいでしょう。

では、ファンダメンタルズ格差を見る上の例として、両国の金利差とスイスフラン相場の比較をみてみましょう。以下のチャートは、2006年からの両国の10年物国債利回り差とスイスフラン円相場の推移です。 
2014年までは、リーマンショックによるリスク回避志向の時期ですが、比較的両国の金利差に、スイスフラン円相場は連動した動きとなっています。ただ、2014年以降は、この連動性が全く機能していません。
この要因は、一概には言えませんが、恐らくアベノミクスによる日本の景気拡大やトランプ政権で強まったリスク回避の動きが、相場に影響を与えている可能性がありそうです。
つまり、現状は金利差でさえ相場に影響を与えていないわけですから、スイスフラン円の戦略において、ファンダメンタルズ格差を比較しても意味がないことになります。
 では何に着目したら良いかということですが、スイスフランと円は、両通貨ともリスク回避通貨として、市場で選好されています。ただ、リスクにも「地政学リスク」と「資産リスク」と両方の局面があります。地政学リスクが高まるならスイスフラン買い、資産リスクが高まるなら、円買いと考えると整合性が高そうです。 

地政学リスクとしての中東問題

 スイスフラン相場は、地政学リスクに敏感に反応することで有名ですが、特に中東問題は、過去においてもスイスフラン相場の波乱要因となっています。
 ただ、今年発足するバイデン政権は、中道的でバランスが取れていると見られています。トランプ政権で高まった中東問題が、一定の安定を取り戻せるか、今年のスイスフラン相場の、最初の焦点となりそうです。

バイデン氏は既に、閣僚人事を発表しています。米上院の承認が必要ですので、すんなりこの人事が通るか不透明ですが、国務長官に指名されているアントニー・ブリンケン氏と国家安全保障大統領補佐官となるジェイク・サリバン氏は、オバマ前政権下でも、安全保障を担う立場にあって、中東問題に一定の役割を担った経験があり、バイデン政権の外交政策の中核となると言われています。
 この人事を見る限り、バイデン次期政権は、トランプ大統領が反故にした2015年7月の「イラン核合意(JCPOA)」の枠組みを取り戻すことを最初のミッションとするでしょう。ただ、実現には課題も多いですが、特にイランは、核合意の復帰に経済制裁の解除を求めて来るでしょう。米国は、ユダヤ系米国人が多く、歴史的にイランと敵対するイスラエルに肩入れしていますので、議会の承認がネックとなりそうです。
また、今年6月には、イランで大統領選挙が予定されています。穏健派と言われるロウハニ大統領は、現在米国との関係悪化もあって、再選が危ぶまれています。経済制裁が解除されれば、再選の可能性が高まりますが、そうなるとバイデンの外交新チームは、この6月末までに決着をつけなければならなくなります。「トリプル・ブルー」が実現した今、議会の承認は容易との見方もありますが、一方では、イランを敵としているイスラエルの対応が問題となりそうです。
 イスラエルは、昨年8月に、アラブ首長国連邦との間で、電撃的な国交正常化を宣言しました。またこれにバーレーンが続き、今後オマーンやカタールが呼応するとも言われています。これも全てイスラエルに、強く肩入れするトランプ大統領の中東政策の一環でしたが、トランプ大統領の後ろ盾を失う今、イスラエルが強硬な態度に出る可能性も否定てきません。 
 スイスフラン相場にとって、今年も中東問題からは目が離せないようです。 

〇ユーロ円との連動性

 スイスフラン相場は、スイス中銀が、対ユーロ相場でのスイスフラン高を避けるために、市場介入を続けていることもあって、膠着気味の動きですが、特にユーロ円相場と連動性が高い通貨ペアとなっています。
 以下のチャートは、2000年からのスイスフラン円相場とユーロ円相場を比較したチャートです。乖離のレベルは、その時々の地政学リスクの状況で異なりますが、総じて同じような展開が続いています。

 そうなるとスイス円相場は、ユーロ円相場を参考にトレードしたほうが、良さそうです。
 では、以下のユーロ円相場の月足チャートを見てみましょう。
 一時94.12の最安値からのサポートを割り込みましたが、114.41で下値を維持して、反発しています。モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスも上昇しており、今後も堅調な展開が想定されそうですが、ただ、上値はかつての94.12の安値からのサポートが、ファンラインとして、上値を重くしています。また、更に超えても169.97の高値と149.79の高値を結んだが長期のレジスタンスが控えています。この位置は時期にもよりますので、若干不透明ですが、130円前後からフィボナッチ・リトレースメント(169.97~94.12)の50%の位置となる132.05近辺にあって、上値を押さえそうです。あくまでこういった位置を超えて、132.46-133.49のも戻り高値圏が視野となりますが、137.50の戻り高値の上抜けは不透明です。また超えて、138.96,141.08などが順次視野となりますが、これも148.79まで今年超える可能性は低そうです。 
 一方下値は、短期足から既に120円前後はサポーティヴです。また割れても長期のサポートが、117円前後にあって、維持されると堅調が続きます。リスクは114.41を割れるケースから110円、更に109.57を割れると100円がターゲットとなる形です。 

【テクニカル面】

テクニカル面からまず、スイスフラン円を構成するドルスイス相場の長期月足をチェックしておきましょう。
 ドルスイスは、1.0328-1.0344-1.0237が上値を押さえて、調整が0.8758まで拡大。ただ、この位置は2011年の安値と2015年のスイスフラン・ショック時の安値を結んだマイナー・サポートに位置にほぼ到達しており、更なる調整は不透明です。ただ、モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスは下落傾向を維持しています。今後0.9071-0.9188ゾーンのそれまでの下ヒゲ圏が抑えると弱く、超えても0.92896-0.9494の戻り高値や下落がスタートした位置が上値を抑えると1.0237の高値からのレジスタンスが有効で、下落リスクが継続します。超えても1.0000のパリティ前後が抑えると上値追いも厳しいでしょう。あくまで1.0237から1.0344の戻り高値を越える動きから一定の上昇期待となります。 
 一方下値は、0.8758前後のマイナー・サポートを割れると0.8000の最終サポートが視野となります。一旦この維持では更に下落は進まないと考えています。特に0.7406や0.7072は、ドルスイスの歴史的な安値圏であって、スイス中銀の介入姿勢を鑑みると割り込むことは想定しづらく、0.80前半は絶好の買い場となりそうです。
 従って、ドルスイスの今年の想定レンジは、既にこの0.8750で下げ止まっている可能性もありますが、最大では0.8000から0.9500となりますが、後述するマトリックス・チャートからは、0.80の下げは想定しづらいことで、0.8500~0.9500とします。 

次にドル円相場も見ておきましょう。まず長期の月足です。
 1989年の163.65の高値からのチャートですが、上値は147.66、145.86できっちりとレジスタンスに抑えられて、現状このレジスタンスは、115円前後にあると考えらえます。今後もこういった位置が抑えると弱い状況が続きそうです。
 特に長期のエリオット波動からパターンを想定すると、
第1波=163.65-79.75
第2波=79.75-147.66
第3波=147.66-75.31
第4波=75.31-125.86
第5波=125.86- ?

となります。現在は、最後の第5波の下落過程にありますが、その場合第3波の安値となる75.31を将来的に割り込むという想定が基本となります。ただ、第5波が短くなる可能性があること。また超長期ですから、そういった下落が実現するとしても、まだまだ先となる可能性もあることは、留意しておいてください。
また、オレンジの安値で示した101.25、101.67、99.02の安値は、一種のネック・ラインを形成しています。今後下げてもこの99.02-101.67ゾーンは、一旦支えられる可能性が高いと考えられます。このレベルが維持されると下落は、直ぐに進みませんが、ただ割り込んだ場合、75.31の安値から結ばれた最終サポートの位置となる95円前後がターゲットとなります。この位置もサポートが控えていますので、下げ止まる可能性が高いです。ただ、更に割り込むなら85-90円ゾーンまでターゲットとなります。
また、こういった円高では、一部に当局の市場介入を警戒する話が必ず出ますが、ただ、今回の円高のスピードが総じて鈍いこと。また円独歩高ではなく、ドル安であることを考えると米国から市場介入のコンセンサスを得ることは難しいでしょう。個人的には、このレベル程度なら市場介入は出来ないと思います。

 次により短期の月足チャートを見てみましょう。
 こちらは110円前後がレジスタンスとなっています。前のチャートと合わせても、110-115円は引き続き上値を抑える位置となりそうです。
 一方下値は下落チャンネルの下限と、75.31のサポートがクロスする95円前後が、一定のターゲットとなりますが、この位置は、フィボナッチ・リトレースメント(75.31から125.86)の61.8%の94.62と合致する位置です。100円のサイコロジカルを前にした50%の100.58や100円をしっかりと割り込むなら、こういった下落の可能性があることは注意しておきましょう。ただ、モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスの下落圧力が弱く、下落には、相当時間がかかりそうです。今年もじりじりとした相場展開が続きそうですが、一応今年の想定レンジを100.00~110.00とします。  

 加えてドルスイスとドル円の想定レンジから、マトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)を作成しています。
 ドルスイスのレンジを0.8500~0.9500、ドル円を100.00~110.00としましたので、これから算出されるスイスフラン円の最大想定レンジは、105.36~129.41となります。

 それでは、最後にスイス円の月足を見てみましょう。
 スイスフラン円は、過去58.80の安値から2015年の1月のスイスフラン・ショックで、一時155.37の歴史的高値を示現しましたが、流石にこれはやり過ぎとして、無視して良いと思いますが、現状は少なくともこの位置をトップに、2017年以降は揉み合いが続いています。
 このレベルの上限は、④119.18と⑤118.61-56レベルで、これがレンジの上限で抑え続けるなら、相場の上昇は難しそうです。あくまでこの位置を超えて、124円、更には126円などがターゲットとなります。
 一方下値のレンジとしては、⑥の102.00の位置は、大きく上昇した反動からのオーバーシュートの動きであって、無視すると⑦の106.66と過去の高値上限となる②の105.06が基準レベルとなります。
 これを参考にするなら105円から119円が、今後のスイスフラン円の基準レンジとなります。ただ、モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスが上昇気味(BからAの動き)ですから、短期的にサポートとして、110.00から112.00が支えると堅調が続きそうで、再度このレンジの上限を試す動きも想定されます。 
 あくまで、短期のサポートを維持出来ずに、更にこの105.06-106.66ゾーンをしっかりと割れる動きがあって、過去の戻り高値圏となる③の92.42や①の92.28がターゲットとなる形です。 

【予想レンジと戦略】

 それでは、以上を踏まえて、スイスフラン円相場の今年の見通しと戦略についてお話します。
 ただ、あくまで新型コロナウイルスの感染が、最悪の事態まで再拡大しないことを前提としています。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ファンダメンタルズ面での比較は、為替市場であまり意味をもたなくなっています。世界が正常に戻るまでは、こういった状況が続くでしょう。従ってテクニカル面を中心に、2021年の戦略を考察しています。  

前述のマトリックス・チャートからは105.26~129.41が想定レンジとなっていますが、揉み合い気味の展開の中、モメンタムからは底堅さが想定されることで、今年の想定レンジを、112.00~125.00とします。

基本的に、戦略は押し目買いですが、注意しなければならない点は、
① 1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いこと。
② 堅調な株価が続いていますが、5-6月に株価にピークが訪れる可能性が、アストロ的に指摘されています。アノマリー的にも「セル・イン・メイ」が意識される時期です。くれぐれも株価の動向には注意して対応しましょう。 
③ 夏場は、基本揉み合い気味の展開となり易いですが、8月中旬は、瞬間的な円高がアノマリー的に見えること。また、ユーロ円相場が、欧州復興基金の1周年を睨んで、欧州の政局不安が再燃するようなケースで下落するケースには注意しておきましょう。
④ 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期の動きには逆張りで向かわないようにしましょう。 

時期を考えないとしても、112円方向への下落から110円と買い下がって、ストップは106.66割れ。更に買い下がっても、102円割れとしましょう。ターゲットは、118.56-119.18、120円のサイコロジカルが抑えると利食い優先です。また超えても124-126円ではしっかりと利食いましょう。
ただ、レンジ的な展開が続くなら、押し目で買い直して、回転を利かせるのも良いでしょう。また、その場合、118.56-119.18ゾーンは売りも検討課題ですが、超えるなら止めて、124-126円ゾーンから売り場を探すことも検討しましょう。売りの場合のストップは、134.60となりますので、130円まで売り上がる余裕があった方が良いかもしれません。またこういった上昇では、118.56-119.18ゾーンが下支えするなら利食いとなるでしょう。