豪ドル円-2021年相場予想と戦略-

資源価格が好調ならリバースH&S形成へ

【2020年の豪ドル円相場を振り返って】

 2020年の豪ドル円相場は、新型コロナウイルスの感染拡大や豪州中銀の金融緩和にも、リスクオンの豪ドル買いで終了しました。
 年初は、米中通商協議第1弾の署名が行われたことやNYダウが、一時史上高値を更新したことで、リスクオンの展開も、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、世界の国々が緊急事態を宣言、ロックダウン政策などの対策が実施されたことで、世界的に株式市場が暴落的な下げを演じ、ドル円相場が101.19まで急落、豪ドル円相場も59.91の安値まで大きく値を下げました。ただ、FOMCや世界の中央銀行が利下げや資産買い入れなどの金融緩和策を発表、豪州準備銀行も、政策金利を段階的に引き下げ、豪国債を流通市場で買い入れる量的緩和策の導入と銀行に低利で資金を供給するターム物資金供給ファシリティの創設を決定したことなどから株価が反転、徐々に新型コロナウイルスに対しての警戒感が薄れたこともあって、豪ドル円相場は反発に転じました。
ただ、5月末にモリソン豪首相が、「新型コロナウイルスの発生源や感染が拡大した背景を調べるため独立した調査が必要だ」という考えを示したことで、中国側が強く反発。中国商務省が、豪州産大麦に反ダンピング関税や豪州牛肉にも輸入規制の導入を発表しましたが、豪ドル相場への悪影響は見えず、6月8日に76.79まで反発、その後も72.52を下値に、原油相場の安値圏からの反発や金価格の史上高値更新、豪州の新型コロナウイルス感染者数がピークをつけたこともあって8月31日には78.46まで値を回復しました。
 しかしながら、秋口には米大統領選を睨んで、9月1日に豪州準備銀行が、政策金利を0.25%で据え置く一方、ターム物資金供給ファシリティの総額を900億豪ドルから2000億豪ドルまで引き下げたこと、中国が、は豪州石炭や鉄鉱石の輸入にも圧力をかけるとの思惑が高まったことで、10月29日には、73.14まで下落しました。これもNYダウが3万ドル台まで上昇、米ファイザーやモデルナが、ワクチンの開発に成功、リスクオンのドル売り相場が続き、豪州準備銀行が0.10まで政策金利を引き下げるも、豪ドルの対ドル相場が、年末に向けて0.7742の年間高値まで上昇したこともあって、豪ドル円相場も79.79の年間高値圏で引ける形となりました。 

【2021年の主な材料】

以下が現在、判明している今年のイベントや材料です。注目度の高いものはマーカーで表示しています。ただ、あくまで予定で、変更されることがあります。

01月01日:ポルトガル・EU議長国就任
01月05日:米ジョージア州上院議員決戦選挙
01月06日:米大統領選における選挙人投票結果開票(上下院合同会議)
01月16日:独キリスト教民主同盟党(CDU)党首選挙
01月18日:日本・通常国会、アジア金融フォーラム(香港、19日まで)
01月20日:米大統領就任式
01月24日:ポルトガル大統領選挙
01月25日:ダボス会議(29日まで)
01月XX日:米大統領・一般教書演説(26日頃?)、IMF・世界経済見通し公表

02月XX日:米大統領予算教書・経済報告書公表
02月20日:米パリ協定復帰
02月27日:G20財務相・中央銀行総裁会合

03月XX日:中国第13期全国人民政治協商会議第4回全体会議、第13期全国人民代表大会第4回全体会議(北京)
03月14日:独バーデン・ビュルテンベルク、ラインラント・プファルツ州議会選挙
03月17日:オランダ下院選挙
03月25日:東京オリンピック・聖火リレー開始(最終的オリンピックの開催可否を決定?)
03月26日:米通商代表部・外国貿易障壁報告書公表
03月XX日:バイデン政権・気候サミット開催、ECBパンデミック緊急購入プログラム期限

04月07日:G20財務相・中央銀行総裁会合(8日まで)
04月09日:IMF・世界銀行春季総会(ワシントンDC)
04月XX日:国連・世界経済状況予測公表

05月06日:英地方議会選挙(ウェールズ、スコットランド)、英ロンドン市長・ロンドン議会選挙
05月19日:欧州復興開発銀行年次総会(アルメニア・エレバン、20日まで)
05月25日:世界経済フォーラム特別年次会合(シンガポール、28日まで)
05月XX日:G7サミット(英国)、米財務省・半期為替報告書公表

06月06日:独ザクセン・アンハルト州議会選挙、メキシコ連邦下院議員・州知事選挙、イラク国民議会選挙(予定)
06月18日:イラン大統領選挙(予定)
06月28日:G20外務相会合(イタリア・マテーラ、29日まで)
06月30日:IMF・世界経済見通し公表、2000億豪ドルのターム物資金供給ファシリティ期限
06月XX日:フランス地域圏議会選挙・県議会選挙、世界銀行・世界経済見通し発表、WTO閣僚会議(カザフスタン・ヌルスルタン)、OPEC総会

07月01日:オセアニア圏・新会計年度開始、スロベニア・EU議長国就任
07月09日:G20財務相・中央銀行総裁会合(イタリア・ベネチア、10日まで)
07月23日:東京オリンピック開催(8月8日まで)、中国共産党結党100周年
07月31日:米債務上限の適用停止期限
07月XX日:中国北戴河会議、IMF・改訂版世界経済見通し発表

08月24日:東京パラリンピック(9月5日まで)
08月XX日:カンザス連銀シンポジウム(ジャクソンホール)

09月05日:香港立法議会選挙
09月13日:ノルウェー議会選挙
09月19日:ロシア下院選挙・統一地方選挙
09月26日:独連邦議会選挙、英国労働党大会(ブライトン。29日まで)
09月30日:菅自民党総裁任期満了、独議会・任期満了
09月XX日:東方経済フォーラム(ウラジオストク開催)、中国一帯一路サミット、メルケル首相退任、仏2022年政府予算案・社会保障会計法案発表

10月01日:ドバイ万国博覧会(2022年3月31日まで)、米新会計年度開始
10月15日:IMF・世界銀行年次総会(ワシントンDC、17日まで)、G20財務相・中央銀行総裁会合(ワシントンDC、16日まで)
10月XX日:英国保守党大会(バーミンガム)
10月21日:衆議院議員・任期満了
10月24日:アルゼンチン中間選挙
10月30日:G20首脳会合(ローマ、31日まで)
10月XX日:中国共産党中央委員会全体会議(5中全会)

11月01日:国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(英グラスゴー、12日まで)
11月XX日:APEC閣僚・首脳会議
11月29日:スイス国民議会議長・全州議会議長選挙
11月XX日:米財務省・半期為替報告書公表

12月08日:スイス連邦大統領・連邦副大統領選挙
12月XX日:中国・中央経済工作会議
12月XX日:OECD経済見通し公表、OPEC総会

【2021年の注目点】

 2020年の相場環境を踏まえて、2021年の豪ドル/NZドル相場の注目点をまとめてみました。

・ 豪州のファンダメンタルズ
・ 商品価格の上昇は続くのか?
・ 中央銀行の政策に変化はあるのか?

〇豪州のファンダメンタルズ

 豪州も新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、一時大きく景況感が悪化しました。
 以下は豪州のウェストパック消費者信頼感指数の推移ですが、過去ほぼ▲8.3%から+8.5%の範囲で推移していたものが、ロックダウンの影響などもあって、▲15%以下に落ち込んだ後、プラス15%と上下しています。
 現状は、こういった景況感などの経済指標を見ても全く参考になりません。今後新型コロナウイルスの感染が終息して、経済指標が正常値に戻ってから、判断の材料にするようにしましょう。 

 一方、豪州経済は、資源輸出を通じて中国経済の影響を受け易いことは、みなさんよくご存じだと思います。
一昨年は、トランプ政権が、中国に対して、安全保障や知的財産権の侵害問題で、IT企業の形成や関税政策を強化することで制裁姿勢を強めたことで、豪ドル相場にも暗雲が高まりました。ただ、それも昨年1月には、通商協議のフェーズ1の合意に至ったことで、一安心となりました。
以下は豪州の経常・貿易収支と主な輸出先を示したチャートです。
過去赤字傾向だった豪州の経常・貿易黒字は近年プラス圏に転じています。これもリーマンショック以降、大きく対中貿易が拡大したことが要因です。この時期中国は、4兆元の経済対策を打ち出し、世界経済が大きく低迷する中、唯一強い経済を維持していました。2009年以降対中貿易が、拡大し始めていることを見ても、豪州経済が、特にこの恩恵を受けてきたことは明白です。 

そうなると中国経済が、今後も飛躍拡大できるかが、豪ドル相場には、大きな関心材料となります。
 以下は中国の財新が発表している製造業PMIの推移です。
中国武漢を発生源とした新型コロナウイルスの感染が、世界的に広がったことで、一時世界経済が大きく失速しました。ただ、この時も中国の製造業PMIは、40.3までしか低下していません。更に逆に過去の一番強い数字を上回っていることは、全く不思議です。中国の経済指標に対する信憑性は大いに疑問ですが、ともかく中国に依存している豪州経済にとっては朗報となっています。
ただ、現状は中国でも感染が再拡大しているようです。中国製ワクチンの効果も疑問視されています。中国の場合情報統制が行われているので不透明ですが、いつまでも中国経済が、強い拡大を続けるかも疑問です。一応バイデン米政権の誕生で、トランプ政権ほどの圧力はないでしょうが、今後中国経済の減速の兆しが見えるなら、豪ドル相場も影響を受けることは、留意しておきましょう。

また昨年5月に、モリソン豪首相が、「新型コロナウイルスの発生源や感染が拡大した背景を調べるため独立した調査が必要だ」という考えを示したことから、中国がこれに反発、中国商務省が、豪州産大麦に反ダンピング関税や豪州牛肉にも輸入規制の導入を発表、更に直近では、豪州産石炭や鉄鉱石に輸入にも圧力をかけるとの思惑が高まっています。
この点は、個別の会社に対する圧力の形に留まっているようですが、今後本格的に、規制が入った場合、中国経済の動向と合わせて、豪ドル相場に大きな影響を与える可能性には注意しておきましょう。 

〇商品価格の上昇は続くのか? 

豪州は資源国ということで、豪ドル相場も、資源価格の動きに、強い影響を受けます。
 以下は豪ドルの対ドル相場の推移と金、鉄鉱石、原油価格の推移と比べたものです。
 現状は金や鉄鉱石の上昇が強く、豪ドル相場は出遅れた形となっています。一方原油価格は、世界的な需要減退懸念で、軟調気味となっています。
 金や鉄鉱石は、既に高値圏にあって、あまり追いかけるような展開とは思えませんが、今後の原油価格の動向が、豪ドル相場に一定の影響を与えるか注目したいと思います。 

それでは一応原油価格に関して、テクニカル面を見ておきましょう。
 以下は、2000年からの原油価格の月足チャートです。
 2006年に147.27ドルの高値示現後は、軟調気味な展開を続けています。昨年4月の動きは行き過ぎとしても、今後戻ってもピンクで囲まれた50ドルから60ドルのゾーンは、テクニカル面からレジスタンスも控えていて、上値が抑えられる可能性が残っています。ただ66.60-65の戻り高値圏を超えると、76.90の高値を目指す可能性がありますが、それでも中長期的に環境問題から二酸化炭素の排出制限など、各国がクリーン・エナジー政策を推進しています。大きく需要が伸びるとは考えられず、投機的な動きはあっても、かつてのような100ドルなどを期待するのは難しいでしょう。
 一方でモメンタムが反転気味となっていることで、下値も33.64ドルなどが支えると堅調が想定されます。当面40-60ドルぐらいで揉み合いが続くと見ています。
 原油価格が抑えられて、金や鉄鋼性も高値警戒となるなら、豪ドル相場の上昇も、更に大きくなると見るのは難しいかもしれません。

〇豪州準備銀行のスタンス

 オセアニア圏は、南半球ということで、冬場の北半球に反して、既に新型コロナウイルスの感染拡大が終息に向かっているようです。ただ、今後、ワクチンの普及状況にもよりますが、冬場に向けて、感染の再拡大の可能性も残っています。
 パンデミックの状況次第ですが、既に豪州準備銀行は、歴史的な低金利となる0.10%までキャッシュ・ターゲットを引き下げ、資産買入や低利での銀行融資も行っています。
 以下の豪州消費者物価指数のチャートを見て頂いても、一応現在はプラス圏を回復しています。一部にマイナス金利策の導入を指摘する声もありますが、実際ECBや日銀のマイナス金利政策が、主だった成果を上げていないこともあり、導入には否定的なようです。
また、感染拡大が鎮まれば、次の利上げのタイミングがポイントとなります。ただ、豪州単体というよりは、世界経済全体が回復に向かわない限り、慎重姿勢は崩さないでしょう。 当面は、インフレ・ターゲットとなる消費者物価指数の2-3%を大幅に超えるような状況とならない限り、現状の政策を維持すると思いますが、今後中銀のスタンスの変化に、相場が敏感に反応する可能性もあります。油断せずに中銀のスタンスの変化には注目しておきましょう。 

 また、以下は豪州と日本の10年物国債利回り差と、豪ドル円相場の推移を示したチャートです。総じて連動する動きですが、現在は金利差が最低限にありますが、豪ドル円相場は、乖離しています。今後どちらの展開かと言えば、日本は今後数年政策金利を引き上げる可能性は低く、恐らく金利差の方が豪ドル円相場にサヤ寄せする可能性が高そうです。
 その場合の豪ドル円相場の上昇に期待したほうが良さそうです。

 以下が豪州準備銀行の金融政策会合の予定日です。ご参考にしてください。
02月02日キャッシュターゲット公表 -02月16日:議事録公表
03月02日キャッシュターゲット公表 -03月16日:議事録公表
04月06日キャッシュターゲット公表 -04月20日:議事録公表
05月04日キャッシュターゲット公表 -05月18日:議事録公表
06月01日キャッシュターゲット公表 -06月15日:議事録公表
07月06日キャッシュターゲット公表 -07月20日:議事録公表
08月03日キャッシュターゲット公表 -08月17日:議事録公表
09月07日キャッシュターゲット公表 -09月21日:議事録公表
10月15日キャッシュターゲット公表 -10月19日:議事録公表
11月02日キャッシュターゲット公表 -11月16日:議事録公表
12月07日キャッシュターゲット公表 -12月21日:議事録公表

【テクニカル面】

 まず、豪ドル円相場を形成する、豪ドル/ドル相場の月足からチェックしておきましょう。
 豪ドル/ドル相場は、0.4775の安値からの長期サポートを割り込むも、0.5510で下げ止まりを見せて、堅調に反発しています。サポートを切れるも騙し的な反発となっていますので、若干不透明ですが、現状は0.6992が支えると強く、割れても0.6343-0.6447ゾーン、0.60前後が支えると堅調が続きそうです。
 一方上値は、既に0.80前後のサイコロジカルで、マイナー・レジスタンスを目指す動きとなっていますが、若干スロー・ストキャスティクスが買われ過ぎに近く、更に上値追いは厳しいでしょう。ただ超えると動きがあれば0.8136-08164の戻り高値圏がターゲットとなりますが、ここから上値では、フィボナッチ・リトレースメント(0.5510~01.1083)の50%となる0.8297のクリティカルなポイントが、1.1083の高値から最終レジスタンスに控えています。上昇してもこの位置は上値を抑える位置となるでしょう。 
 従って、今年の豪ドル/ドル相場の想定レンジを0.6800~0.8300とします。 

 次に豪ドル円を構成するドル円も見ておきましょう。
 まず、1989年の163.65の高値からのチャートですが、上値は147.66、145.86できっちりとレジスタンスに抑えられて、現状このレジスタンスは、115円前後にあると考えらえます。今後もこういった位置が抑えると弱い状況が続きそうです。
 特に長期のエリオット波動からパターンを想定すると、
第1波=163.65-79.75
第2波=79.75-147.66
第3波=147.66-75.31
第4波=75.31-125.86
第5波=125.86- ?

となります。現在は、最後の第5波の下落過程にありますが、その場合第3波の安値となる75.31を将来的に割り込むという想定が基本となります。ただ、第5波が短くなる可能性があること。また超長期ですから、そういった下落が実現するとしても、まだまだ先となる可能性もあることは、留意しておいてください。
また、オレンジの安値で示した101.25、101.67、99.02の安値は、一種のネック・ラインを形成しています。今後下げてもこの99.02-101.67ゾーンは、一旦支えられる可能性が高いと考えられます。このレベルが維持されると下落は、直ぐに進みませんが、ただ割り込んだ場合、75.31の安値から結ばれた最終サポートの位置となる95円前後がターゲットとなります。この位置もサポートが控えていますので、下げ止まる可能性が高いですが、ただ、更に割り込むなら85-90円ゾーンまでターゲットとなります。
また、こういった円高では、一部に当局の市場介入を警戒する話が必ず出ますが、ただ、今回の円高のスピードが総じて鈍いこと。また円独歩高ではなく、ドル安であることを考えると米国から市場介入のコンセンサスを得ることは難しいでしょう。個人的には、このレベル程度なら市場介入は出来ないと思います。

次により短期の月足チャートを見てみましょう。
 こちらは110円前後がレジスタンスとなっています。前のチャートと合わせても、110-115円は引き続き上値を抑える位置となりそうです。
 一方下値は下落チャンネルの下限と、75.31のサポートがクロスする95円前後が、一定のターゲットとなりますが、この位置は、フィボナッチ・リトレースメント(75.31から125.86)の61.8%の94.62と合致する位置です。100円のサイコロジカルを前にした50%の100.58を割り込むなら、こういった下落の可能性があることは注意しておきましょう。ただ、モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスの力が弱く、下落には、相当時間がかかりそうです。今年もじりじりとした相場展開が続きそうですが、一応下落チャンネルの日柄からは95円までの下落は、2022年3-6月頃を想定しています。 
 従って、ドル円の今年の想定レンジを、100.00~110.00とします。 

 以下は豪ドル/ドル相場とドル円相場の想定レンジから算出したマトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)です。 
 豪ドル/ドルの想定レンジを0.6800~0.8300,ドル円の想定レンジを100.00~110.00としましたので、これから算出された豪ドル円相場の最大想定レンジは、68.00~91.30となります。

最後に豪ドル円の長期の月足チャートです。
 以前から指摘していましたが、豪ドル円は、「C」をトップとして、「B」と「D」をショルダーとした超長期のH&Sを形成しています。
 直近では、「D」のゾーンの動きが「B」の期間より長くなったことで、若干不透明感がありましたが、「E」のアームの期間が「A」のアームより短くなったことで、これを補った形となります。
 ともかく豪ドル円相場は、これで完全にH&Sを完成したこととなり、今後は、NZドル円相場同様、「E」をボトムとしたリバースH&Sの形成過程となるか注目されます。
 ただ、それには、まず102.85からレジスタンスの上抜けが必要です。この位置はだいたい80.73-83.31の戻り高値に符合する位置です。これを超えるかどうかが今後の注目ですが、モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスが、既に買われ過ぎに突入気味で、一旦上値を押さえられる可能性に留意しましょう。あくまでこの位置を超えて、「Dゾーン」のトップとなる88.18-90.73ゾーンがターゲットなります。ただ、当然この位置は当面のトップで、その後のまた長い「Fゾーン」の揉み合い形成となると見るのが自然です。
 一方下値は既に、「Bゾーン」の下限と合わせてみて、71.60-73.15が支えると強く、一時的に67.41-67.63ゾーンに下ヒゲを描いても買い場となります。当然リスクは59.91や55.13を割れるケースとなります。 

【予想レンジと戦略】

 それでは以上を踏まえて、豪ドル円相場の今年の見通しと戦略についてお話します。
 ただ、あくまで新型コロナウイルスの感染が、最悪の事態まで再拡大しないことを前提としています。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ファンダメンタルズ面での比較は、為替市場であまり意味をもたなくなっています。世界が正常に戻るまでは、こういった状況が続くでしょう。従ってテクニカル面を中心に、2021年の戦略を考察しています。  

前述のマトリックス・チャートでは、68.00~91.30と広いレンジが算出されましたが、この上限は豪ドル円のリバースH&Sのトップと重なる位置です。ただ、今年こういったレベルまでの反発は難しいと思いますので、豪ドル円相場の今年の想定レンジを、過去11年の年間平均変動幅となる14.94を参考に、70.00~85.00とします。

基本的に、戦略は押し目買いです。
ただ、現状は一定の高いレベルにあることで、上値追いは避けて、75円、70円方向への下落を丹念に買い下がる形です。理想的には70円割れに下ヒゲが描けるなら、買い下がりです。また様子見であれば、こういった位置から買えるなら尚良いでしょう。ターゲットは、81-83円が抑えると利食いながらですが、また利食ってしまっても、再度押し目で買い直して、買い回転を利かせるような戦略を想定しましょう。
理想は90円方向での利食いですが、今年こういった上昇が訪れるかは不透明です。年後半ぐらいに円安傾向が見えれば、翌年に向けて自信が持てるかもしれません。 

注意点としては、1-3月は、日本のレパトリで円高気味に推移し易いこと、4-6月は、株価の動きに注意です。また夏場は揉み合いが前提ですが、7月から豪州の新会計年度がスタートしますが、相場の流れが変わることがあるので意識しておきましょう。また、8月中旬は一時的に円高になるケースが多いことも心配です。ただそういった下落は、年後半に向けての絶好の買い場となることも注目してください。
最後に秋以降は、トレンドが出易いので、方向性が見えた場合、逆張りは避けておいた方が良いでしょう。