■短期の相場見通し
S&P500指数の向こう１カ月のターゲットは4200とします。
つまり9月に続いて10月も軟調な相場が続くと考えています。
10月のどこか、具体的には中盤から後半にかけて米国株式市場は当座の安値を付け、反発を試みると予想されます。
連邦債務上限の引き上げ問題はこれを書いている9月30日の時点では未だ解決を見ていません。ジャネット・イエレン財務長官は10月18日頃に米国の連邦政府はやりくりの限界を迎え、公務員の一時帰休や財務省証券のデフォルトに追い込まれるリスクがあるとしています。
この問題を回避するにあたって民主党はリコンシリエーションと呼ばれる臨時財政調整措置を用いるかもしれないし、用いないかも知れません。
それを使うにしろ、使わないにしろ、関係各方面との調整は複雑かつ時間がかかるので、この問題は10月18日直前までもつれこむリスクが大きいです。
そのことは逆の見方をすれば値ごろ感から焦って早く取引しても相場の自律反発は短命に終わるリスクがあるということです。
もうひとつテクニカル的な要因として市場参加者がどのくらい恐怖を感じているか？ の尺度となるVIX指数は9月29日の時点で22.56と低い位置にあります。VIXが30を超えて来なければ悲観一色とは言えません。
■米国経済の現況
米国経済には暗転の兆しが見えます。
その原因としてサプライチェーンの混乱が挙げられます。米国の主要なコンテナ港であるロスアンゼルスの南部、ロングビーチ港では沖待ちのコンテナ船で混雑しています。
コンテナ船の傭船料は高騰しています。それは企業のマージンを圧迫しています。
今回の新型コロナ後の回復局面ではマージンがスルスルと回復し、鋭角的な一株当たり利益（EPS）の伸びに大きく寄与しました。ところがそのマージンが今度は一転して縮小しているのです。
小売業にとって1年で最も重要なクリスマス商戦期間を前に、予定していた商品が入荷せず慌てている業者が多いです。
インフレは一過性の問題だと思われていたのですが、思ったよりずっと長期に渡って物価は高止まりしています。
とりわけ中古自動車の価格が、一旦は下落に転じたかに見えたのですが、ここへきて再び上昇し始めているのは不吉です。
中古自動車の価格が上昇している背景には半導体不足で新車の組み立てが遅延しており、自動車ディーラーの展示場にならぶ新車の在庫が払底している問題があります。つまり新車が手に入らないので中古車で我慢するというわけです。これは健全な価格の上昇の仕方ではありません。
インフレの高止まりに合せて長期金利も上昇しています。債券の投資家は物価への不安や連邦債務上限引き上げ問題や中国恒大集団の経営危機などを考慮に入れ高いリスク・プレミアムを要求しはじめているのです。
このような長期金利の上昇は株式バリュエーションにとってネガティブです。
■企業業績
2021年と2022年のS&P500のコンセンサス一株当たり利益（EPS）は、年初来、ずっと上昇してきました。しかし2週間ほど前から逆にコンセンサス予想が下がりはじめています。
すでにナイキ（ティッカーシンボル：NKE）、フェデックス（ティッカーシンボル：FDX）、シャーウィン・ウイリアムズ（ティッカーシンボル：SHW）、マイクロン・テクノロジー（ティッカーシンボル：MU）、ジェネラック（ティッカーシンボル：GNRC）などの企業がサプライチェーンの乱れを理由としてガイダンスを下方修正しています。
■注目ETF
トライオートETFは「売りから入る」こともできます。10月は9月に続いて波乱相場が予想されます。従って月の前半はショート（＝空売り）、マーケットが急落した後はドテン買いに転じる戦法が良いように思います。
そのようなトレードに好適なトレード対象は、米国を代表する大型株の株価指数のETFであるSPDR S&P500 ETF（コード：SPY）です。
プロシェアーズ・ウルトラS&P500（コード：SSO）はS&P500指数の2倍の動きをするように設計されています。
同様にパワーシェアーズQQQ信託シリーズ１（コード：QQQ）はナスダック100指数に連動するETFです。
プロシェアーズ・ウルトラプロQQQ（コード：TQQQ）はナスダック100指数の3倍の動きをするように設計されています。しかし往々にして設計通り3倍の動きにならないことが多いのでトレードに際しては注意が必要です。
テクノロジー・セレクト・セクターSPDR（コード：XLK）は米国の大手IT企業の株価に連動するように設計されたETFです。
なお指数の2倍、3倍の動きをするレバレッジETFは見込み違いをしたときは危険ですので直ぐに手仕舞う習慣をつけて下さい。
