川合美智子氏 11月のリアルトレード戦略

好調な経済指標が示すようにアメリカ経済は景気拡大の流れを維持しており、足元の景況感は一段と明るさを増しています。トランプ政権の減税政策実行への期待や、企業業績の好調さを受けて米国株式市場は連日の史上最高値を更新、為替市場でもドル全面高の展開となっています。法人税の20%恒久化実施により海外からの資金還流を促し、国内の設備投資と雇用を米国に戻すのが狙いとされていますが、一方で、ロシアゲート問題や側近の辞任の噂など政権維持に不安材料があること、アメリカ第一主義が世界の貿易取引に変化をもたらす可能性もあることから、下値を切り上げて来たドル円相場ですが、114115円台の上値抵抗を簡単には上抜けない可能性も高いと見られます。
一方、ユーロ圏でも緩やかな景気拡大基調が持続しており、ECBは資産買い入れ額の縮小開始を発表しましたが、状況に応じて変更する可能性も示唆しており、地域格差や難民問題、或いはカタリューニャの独立問題などの政治情勢が景気や金融政策にも影響を及ぼす可能性にも対処できるよう含みをもたせた形となっています。相対的な景況感格差を映して、為替相場は米ドル>ユーロ>円の順に通貨高の傾向が強い状態となっていますが、ここに来て日本の景況感も明るさを増していることから、相関関係が崩れる可能性にも注意が必要でしょう。

ドル/

日足は9/8に付けた107.32を直近安値として下値を切り上げる流れを維持しており、この下値抵抗が113.60-70に位置していますが、11/6の日足が114.60-70の強い上値抵抗にぶつかっており、やや下値リスクの高い形で終えています。再度114.50超えの抵抗をトライする流れを維持していますが、日足の終値が113.00を割り込んだ場合は日足の形状が悪化して下値リスクが高くなります。さらに112.50割れを見た場合は短期トレンドが変化して110111円台の下値抵抗の厚さを確認する動きが強まり易くなります。日足の上値抵抗は114.60-70115.30-40に、下値抵抗は113.60-70113.00-10112.50-60にあります。115.50超えで終えた場合は新たな上昇トレンド形成の可能性が点灯、逆に112.50割れを見た場合は短期トレンドが変化して一段のドル下落に繋がり易くなります。21日、120日、200日移動平均線は11/6現在113.17111.45111.73にあり、短・中期トレンドはドル強気の流を維持しています。

一方週足を見ると、実体が小さく下ヒゲのやや長い陽線引けとなり、下値抵抗に跳ね返された形となっています。この反動で今週は上値トライの動きが強まっていますが、週足の上値抵抗が114.50-60115.20-30に位置していることから、これをしっかり上抜けて越週しない限り、下値リスクを残します。週足の下値抵抗は113.00-10110.80-00にあります。31週、62週移動平均線は111.37110.93に位置しており、強い下値抵抗として働く可能性がありますが、両者が収縮中であることから、近々に新たな方向へ抜け出す可能性にも注意が必要でしょう。

月足は、10月足が実体の小さい陽線引けとなり続伸に繋がりましたが、強い上値抵抗を抜け切れておらず、上昇余力に欠けるものです。また、20156月に付けた125.86を起点として上値を切り下げる流れにも変化が認められず、この月足の上値抵抗が114.50114.80にあることから、これにぶつかる可能性にも注意が必要です。一方で10月足の下値抵抗が110.00±20銭にあり、これを下抜けて越月しない限り、下値余地も拡がり難いでしょう。31ヵ月移動平均線は11/6現在113.45にあり、現状はこれを上抜けた位置で推移していますが、“ダマシ”となる可能性があります。

 今月の戦略

ドル買いは113.80-90で軽く押し目買い。損切りは浅い場合で112.80、深い場合は短期トレンドが変化する112.40で撤退です。ドル売りは目先天井を確認するまで様子を見るか、114.50-60で軽く試し売り程度に。損切りは115.60で撤退です。

 【ドル/円(日足チャート)】

 

ユーロ/ドル

ユーロ/ドルは、9/8に付けた1.2092を直近高値として上値を切り下げる流れに変化が認められません。中期トレンドがユーロ強気の流れを維持していることから、急落にも繋がっておらず、1.1600-10の日足の下値抵抗も守っていますが、週足の形状がまだ安定しておらず、調整下げ終了と認められない状態です。調整下げに留まるなら1.15001.1460を大きく下抜けない可能性も高いと見られることや、下げに転じて9週目に突入していることから時間の経過とともにそろそろ下値も限られてくる可能性が高いと見ます。短期トレンドは1.18台を回復すればニュートラルな状態に戻しますが、1.20台に日足の実体を戻すまでは下値リスクを残します。21日移動平均線は1.1734に、120日線は1.1622に位置しており両者を下抜けてやや下値リスクの高い状態ですが、200日線は1.1272に位置しており、中期トレンドをサポートした格好となっています。また、31ヶ月移動平均線が1.1489に位置しており、中期的なサポートとして働く可能性があります。

今月の戦略

ユーロ買いは引き続き様子見か1.1480-1.1500ゾーンがあれば軽く押し目買い。損切りは1.1380で一旦撤退です。売りは1.1650-60で戻り売り。損切りは1.1720で浅めに一旦撤退して、1.17台後半で再度売り直すか、短期トレンドが変化する1.1820で撤退です。

【ユーロ/ドル(日足チャート)】
 

 

ユーロ/

ユーロ/円は9/22に付けた134.4110/25に付けた134.49で短期的な二番天井を確認した形となり、上値を再び切り下げ始めています。また、132.80に位置する21日移動値平均線の下にも入り込み始めており、短期トレンドは一段の下落リスクに注意が必要となっています。中期トレンドが強気の流れを維持しているため急落にも繋がっていませんが、4/17に付けた114.86を起点として下値を切り上げて来た流れからはすでに下抜けた位置で推移していることから、134.50-60の抵抗をクリアするか134.20超えで越週しない限り、一段の下落リスクに注意が必要です。日足の上値抵抗は132.80-90133.80-90に、下値抵抗は132.00-10131.50-60にあります。134.50超えに値を戻せば強気に変化、逆に131.50割れを見た場合は130円方向への一段の下落リスクに注意が必要となります。

一方週足は小陽線で続落を食い止めており、反発余地を探る動きに繋げていますが、上昇余力の強いものではないことや133.50-60134.00-20に週足の上値抵抗があり、これらをしっかり上抜けて越週するまでは下値リスクがより高い状態です。一方下値は、132.00-10に強い抵抗がありますが、これを守り切れずに越週した場合や131.50割れを見た場合は130.00前後まで下値余地が拡がり易くなります。これも守り切れない場合は長期的な下値抵抗である128.00前後まで下値余地が拡がり易くなります。31週、62週移動平均線は127.96123.44に位置しており、中期トレンドはユーロ強気の流れを維持しています。

 今月の戦略

ユーロ買いは調整下げ終了まで様子見か130.00-10があれば軽く試し買い程度に。損切りは129.40で浅めに一旦撤退です。ユーロ売りは132.80-90で戻り売り。損切りは浅い場合で133.60、深い場合は短期トレンドをニュートラルな状態に戻す134.20で撤退です。

【ユーロ/円(日足チャート)】