だいまん氏10月のリアルトレード戦略

1.イントロダクション

9月相場は、朝鮮半島リスクに揺れる中、FOMCが遂に、バランス・シートの縮小を決定。英国も強いインフレ指標を受けて、今後利上げスタンスに突入する可能性が高く、ECBもドラギECB総裁が9月の理事会で、10月にテーパリングを協議すると断言したことで、10月相場は、年末を前に、金融相場の様相を示すか注目される。

政治面で、日本では当面、日銀が低金利政策を余儀なくされる中、安倍総理が突然の衆議院解散総選挙を発表。加えて小池総理が新たに対抗勢力として「希望の党」を結成し、思わぬ布石の参入で自公の独走態勢やアベノミックスに暗雲が投げかけられるのか、株価面と合わせて大注目となる。

一方米国では、トランプ政権が、どうにか財政・減税政策案を発表した。法人減税を20%に引き下げ、本国投資法の時限立法も発表しており、こういった面がドルを支えるか焦点となるが、これはあくまで「骨子」であり、今後議会で財源問題を含めて、議会で審議に多難も想定される。年内の実行に疑問符がつけば、失望の展開には注意しておきたい。

10月相場は、既に年末を睨んだ需給の動きが焦点となるが、いろいろ重要な材料も多く、荒れた相場展開が続きそうだ。こういった面を考慮しながら、10月の私の「トレード戦略」をご紹介したいと思います。

2.10月の注目材料

10月01日:中国・国慶節(7日まで)、米2018年会計年度開始、スペイン・カタルーニャ州「分離独立是非を問う」国民投票
10月02日:日銀短観、米9月ISM製造業景況指数
10月03日:RBA理事会、トルコ9月消費者物価指数、アストロ=為替・日経平均重要変化日
10月04日:北朝鮮・秋夕(旧盆)、イエレンFRB議長講演、米9月ISM非製造業景況指数
10月06日:米9月雇用統計アストロ=満月、為替・日経平均重要変化日
10月08日:北朝鮮・故金正日総書記・就任20周年
10月09日:中国9月財新サービス業PMI、東京市場休場(体育の日)
10月10日:朝鮮労働党創建70周年記念、衆院選挙公示
10月11日:米FOMC議事録(9月19-20日開催分)
10月12日:G20財務相・中央銀行総裁会議(13日まで)
10月13日:日経平均オプションSQ、中国9月貿易収支、米9月小売売上高・消費者物価指数、第72回世銀・IMFF年次総会(15日まで)
10月15日:ファンドの45日ルール期日
10月16日:中国9月消費者・生産者物価指数
10月17日:英9月消費者・生産者・小売物価指数
10月18日:中国共産党第十九回全国代表大会
10月19日:中国第3四半期GDP及び9月小売売上高・鉱工業生産・固定資産投資、EU首脳会議(20日まで)
10月20日:第24回APEC財務大臣会合(21日まで)
10月21日:日米韓首脳会談
10月22日:衆議員総選挙
10月24日:ユーロ圏10月製造業・サービス業PMI・速報
10月25日:豪第3四半期消費者物価指数、英第3四半期GDP・速報、カナダ中銀政策金利公表
10月26日:ECB理事会、トルコ中銀政策金利公表
10月27日:米第3四半期GDP・速報、テクニカル=ドル円日足雲の捩じれ
10月30日:英MPC(11月02日結果及び四半期インフレ報告公表)
10月31日:日銀金融政策決定会合結果公表、中国10月製造業・非製造業PMI、ユーロ圏第3四半期GDP・速報、米FOMC(11月01日結果公表)
10月xx日:第2回日米経済対話(米国)、第8回日韓財務対話(日本)

※尚、指標やイベントの発表・開催は、予告なく変更になる場合がありますので、その点はご考慮ください。

まず最大の注意は、北朝鮮であり、トランプ大統領が、国連で喧嘩を売ったことで、旧盆明けの10月8日や10日の北朝鮮の祭事に合わせて、または中国の共産党大会や日本の衆議院選挙などのイベントに合わせて、ミサイル発射や核実験を実施する可能性が非常に高い。これを前に、円売りが無神経に進んでいるが、市場は、「どうせ深刻な軍事行動には至らない」と高を括っているのだろう。そのくせ、実際のミサイルが飛んだ場合や核実験が行われた場合、一時的なリスク回避の動きも出るので、基本的に円売り戦略であっても、敢えて追いかける必要はない。この「チキン・レース」は、どちらかがしびれを切らすかが大きなポイントと見るが、少なくとも本格的な軍事衝突に発展しない限り(ただ、「起こったら大変だから起きない」という見方はしない方が良いと思う)、現状は一時的なリスク回避の動きが出た場合も逆張りの戦略を狙いたい。つまり現在の円売りも10月初旬のイベントを前に、実際ミサイルや核実験が行われ無くとも、一時的なポジション調整が出るので、そういったタイミングでの押し目を待つスタンス、またその後も随意こういった考えて方で、チャンスを待つスタンスを維持していきたい。

米国

米国に関しては、10月からバランス・シートの縮小が開始されるが、この動きを受けた米長期金利の動向が焦点となる。この影響で、米長期金利が上昇すれば、当然ドルをサポートするだろうが、需給的にはまだ、金額がそれほど大きくないこと、FOMCは利上げをするとしても、12月のことであり、それまでは米長期金利が、大きく上昇すると見るのは厳しい。加えて一部ハリケーンの悪影響に対して、楽観的な意見が多いが、それなりの影響があると見るのが無難となる。また下記米10年物国債の利回り日足チャートからは、流石に金利の低下も1.874-928%のギャップは維持される見通しも、金利が上昇しても、2.344-396%、2.615-621%が上昇の目途であり、このレンジで揉み合いぐらいに見て置く方が無難だろう。そうなるとドルの下値は堅いとしても、上値も限定されると見たい。

また現状はっきりとした内容が不透明だが、レパトリ減税(本国投資法=HIA)に関しては、税率が0%とされている。米国勢は海外に2兆5億ドル相当の海外利益金を保有していると言われており、この減税が1年限りの時限立法として成立した場合、大量のドルが米国に回帰する可能性があることは注意しておきたい。その場合、恐らく来年度となるが、決まった段階から思惑的なドル買いとなるリスクが残っている。しかしながらこれも若干注意で、既に昨年来この思惑から、先んじて米国企業は、為替をヘッジしているとの噂が出ており、一部では、買いニーズがあっても、そのパワーが想定ほど強まらない場合、梯子を外される可能性は留意しておきたい。

ユーロ圏

一方ユーロ圏では、直近の経済の立ち直りも、恐らくそのペースは鈍く、慌てて緩和政策を打ち止めすると見るのは時期尚早となりそう現状10月のECBで、テーパリングを協議するとの話も、これも12月までずれ込む可能性が高い。また政治面でも、メルケル首相がどうにか政権を維持したが、保守党の躍進のあり不安定さが残る。また仏のマクロン政権にも、一時の過熱ムードが覚めており、不安感は続く。従って、ユーロドル相場も追いかけていくのは厳しいが、トレンド的にユーロ高は続くと見て、しっかりと押し目を待つスタンスを維持したい。

英国

英国では、8月の消費者物価指数が、予想外の2.9%まで上昇したことで、10月末のMPCにおいて、利上げの可能性が取り沙汰されている。そうなると思惑的には、ポンド買いとなる。ただこれもまだ1カ月も先であり、また10月17日の9月の物価指数の発表において、反動的に物価が調整を示す可能性がある。カーニー英中銀総裁は、「EU離脱の不透明感から、利上げに踏み切ってもペースは緩やかで上げ幅も限定的」と述べており、ブレグジットの不透明感も続き、ポンド相場が上昇を強めても、来月2日のMPCの結果発表がポンド相場のピークとなる可能性に注目したい。

日本

日本では、日銀短観などで良好な経済状況が示されても、インフレが盛り上がらない形は変わらず、低金利政策が継続される。ただ、株価面では、選挙に対する期待感から上昇傾向が見えるが、これも選挙が終わると過去のアノマリーからは利食いが優勢となることは留意しておきたい。その場合、ドル円相場の上昇も、選挙後は利食い場となることは留意しておきたい。

その他

その他では、中国共産党第十九回全国代表大会は、今回は人事面が焦点となることで、金融市場に対する影響は少ない。

豪州に関しては、政策金利の据え置きが続くことで、金利面で攻めるのは厳しい。また、カナダ中銀は既に2回連続利上げを実施しているが、どうも中銀筋の話からは、今月の会合では利上げはなさそう。突っ込むと失望のカナダドル売りとなる局面もあるので注意が必要だろう。

アストロ的には、今月はあまり大きなイベントはないが、10月3-6日が、中秋や満月と絡めて注意日となる。丁度米9月雇用統計も発表されるが、ハリケーンの悪影響で、非農業部門雇用者数が大幅に悪化するようなケース、北朝鮮の挑発行動なども注意しておきたい。

3.ドル円、トリプル・ボトムの後はトリプル・トップか?

ドル円相場は、108円台の安値と115円手前の高値で、月の中旬に転換するパターを続けていたが、今回はこの形が崩れた。 ただ107.32の9月8日の安値は、過去のネック・ラインとなっていること。またダブル・ボトムを割れて、騙し的なトリプル・ボトムとなっており、一旦底値つきとの見方で良いと思われる。

そうなると焦点はどこまで上値を伸ばせるかだが、現状の戻り高値は27日の113.27であるが、特別テクニカルなポイントがなく、これが上値かどうかは判定できない。一応超える動きがあれば、113.55-00ゾーンが視野となるが、押さえると上値追いは厳しい。更に超えて7月11日の高値114.49を超えると115円のサイコロジカル、115.1-20が視野となる。ただし、125.86の高値からロング・ランのレジスタンスが控えており、押さえると更なる上値追いも厳しい。また3月10日の高値115.51から115.62を超える動きとなって強気見通しも高まりそうだが、下値が「騙し的なトリプル・ボトム」からの反発であり、上値もこういった位置まで上昇しても、「逆騙しトリプル・トップ」形成の可能性もあるかも知れないので注意しておきたい。その場合ざっくり年内は、107-8円から114-115円のレンジ形成に留まるのかもしれない。

一方下値は、112.15-25の維持では良いが、割れると111.45-50が視野となるが、一応日足の雲の上限が控えており、維持では堅調も、この下方ブレイクからは、短期ストップが出易く、その場合110.95-111.15ゾーンまで視野となる。また更にこの下方ブレイクでは、投げ売りが出易く、110円方向への調整となる。ただ、こういった位置は、現状の113.27が高値となった場合だが、107.32-113.27の半値が110.30に位置しており、買いが入り易いと見るが、日足の雲が110.09から109.07まで下落基調となること、戻り安値の109.20-60ゾーンと絡めて、これに沿った調整リスクは残りそうだ。理想はこういった下落で2番底形成できるなら、絶好の買いチャンスとなると見たい。また107.32の安値を守る前提なら、108.15-20まで買い下がりの余裕を見て置けば良さと思う。

一方モメンタムを示す下段のスロー・ストキャスティクスは、日足が若干上げ渋り気味。下記チャートの月足からはも、垂れ気味となっており、今後この113.27の高値を超えない場合、反転リスクが見えて、やはり上値を追う状況ではない。あくまで超えてから一定の強気と見るのが無難となる。

従って、10月のドル円の「具体的な戦略」としては、現状の位置から113.27をストップに、113円方向の反転では売り気味から狙ってみて、超えて倍返しとなる。ターゲットは、112.15-25の維持では買い戻しも割れるなら、111.45-50程度での利食い優先。また上値で倍返しした場合も前述の通り115円方向では、現状具体的なポイントは決めないが、トリプル・トップの可能性に注目して、しっかりと利食いたい。

一方買いは、111.45-50は維持を確認して対応。または、北朝鮮問題など一時的なリスク・オフ待ちで、110.95-111.15、110円ミドル、110.30と買い下がって、ストップは110円のクリアな下方ブレイクとなる。一応こうった下落でも、月内だけを考えると既に113.27の高値を超えることは想定できず、112円方向感は利食い場。またずっと買い下がりの戦略なら割れても109.20-60ゾーン、108.50方向まで買い下がって、ストップは108.15-20割れ。または思い切って、107.32をストップに、107.50まで買い下がる形を想定したいが、更にこういった下落では、利食い位置は大幅に低くなり、その場合年内の115円と超えの可能性は大幅に低下する見通し。

4.ユーロドル、ヘッド&ショルダー形成となるか?

ユーロドル相場は、ECBの低金利政策打ち止め期待からの上昇も、1.21を前にトップをつけて調整が続いている。特に思惑先行の面も強かっただけに、今後はECBの具体的な行動が見えるかが焦点となる。一応ドラギ総裁は、インフレに自信を示し、10月の理事会で、テーパリングを協議すると断言しているが、これもあくまで協議であって、実施されるかは不透明、ECBスタッフの経済見通しが同時に発表される12月の理事会までずれ込む可能性は留意しておきたい。

一方テクニカル面でも、波動的に短期5波のトップつきの可能性があり、日足のモメンタムも下落(下記日足チャートA)基調であり、今後上値は、日足のレジスタンス(下記日足チャートBの④)が押さえると弱く、押さえて調整が続けば、総じて1.2092の高値をトップとした「H&S形成」の可能性も視野にいれておきたい。あくまで上値は1.2092の高値を超える動きが見えて、1.2210-73ゾーン、1.2355-60の月足の戻り高値で過去のネック・ライン(下記月足チャート参照)の位置が視野となる。

下値は、現状日足の雲の上限やそれ以前の高値1.1715が支えているが、特に1.1613-62の戻り安値を割れると次のサポート・ラインを形成する可能性を考慮して対応したい。ただ、こういった位置で維持されると前述の「H&S形成」が明快となり、総じて1.15から1.20のレンジ的な展開が続くか注目となる。更なるリスクは、1.1313の戻り安値や1.1268-96の安値を割れるケースとなるが、それでも200日移動平均が控える1.11台、サイコロジカルな1.10と合わせて最終サポート(下記日足チャートBの③)が支える見通し。

また、フィボナッチ・リトレースメント(1.0341から1.2092)から見ても、23.6%=1.1679は、1.1613-62のストップ圏と重なる位置、38.2%=1.1423が②のサポートを守る位置。1.1313の戻り安値が50%=1.1217、61.8%=1.1010などの最終サポートを守る位置となる。

従って戦略としては、当面は1.2092の高値をバックに、1.19-1.20ゾーンで戻り売り場を探したい。ターゲットは1.1717を維持なら買い戻しも、1.1613-62を割れるケースからは、1.15台での買い戻しは理想的。

一方買い戦略は、1.1717を維持するならこれをストップに、短期的なあや戻り期待で買っても、反発ではしっかりと利食っておきたい。できれば1.1613-62を割れるケースからは、前述の「H&S形成」の期待感や長期モメンタムが未だ買いを支持(上記月足チャート参照)しており、1.1500台で買い場を探したい。このストップは1.1470-90割れとするか、1.1313の安値、1.1268-96のそれ以前の高値、1.1119の戻り安値を睨みながら、良い買い場を探すか、さもなくば思い切って、1.10台まで買い下がることも検討したい。このストップは1.0840や1.10738割れで設定する。

5.今月の注目通貨ペア、ユーロポンドの買いは面白いか?

ユーロポンド相場が一時の高値から調整を強めている。英国の利上げの可能性から利食いが優勢となっているが、英国の利上げも一時的に終わる可能性があること。またECBが、今後テーパリングを開始する可能性があることや将来的にブレグジットに絡めて、英国はEUに対して、拠出金の支払いを余儀なくされることを考えると、未だのユーロポドの下げでは、買い狙いが面白うそうだ。

この違約金に関しては、現在600億ユーロ(約7.3兆円)に上ると言われている。英国サイドは、この支払の合法性に疑問を呈しているが、EUの態度は強硬であり、ブレグジットの交渉を優位に進めるために、いずれ一定の支払いに応じる可能性は高い。またこの金額に関しては、英国が200億ユーロ程度と主張しており、どういった結果となるかは不透明だが、正式な離脱期限となる2019年3月末を前に、早ければ2018年の初めにも両者が合意するとの憶測もある(金額面で妥協はあるかもしれない)。ともかく決定すれば、英国はポンドを売って、ユーロを調達しなければならず、その面で、じっくりとではあるが、現状のユーロポンド相場の下げは拾ってみる戦略を考えたい。

一方テクニカル面では、日足のモメンタムが未だ完全に下げ切っておらず、またサポートにも下落余地が残り、今一歩の調整を考慮しておきたい。現状の安値0.8740-50を維持するなら直ぐに下落は進まないが、割れると0.8700-20のギャップ、0.8635-55、0.8595-00、更に0.8500-25ゾーンが視野となる日足サポートから維持では堅調が続く。リスクは0.8385の戻り安値や0.8306-13のネック・ライン位置となる。

ただ、上値は既に窓の下限となる0.8895-0.8910が押さえると弱いが、超えると窓の上限となる0.8980-00が視野となるが、雲の下限が控え売りが出易い。また0.0945-50を超えて、0.9080-0.9125ゾーン、更に0.9200サイコロジカルなどが視野となるが、当面雲の上限となるこういった位置が上値を押さえる見通しとなる。 あくまで0.9200-0.9270ゾーンなどを超えないと更なる上昇期待は厳しい。

従って戦略としては、まずは下げないリスクを考慮して0.8740-50をバックに軽く買っても、割れた場合に止めて買い直し場を探すか、思い切って、順次買い下がる余裕をもって対応したい。その場合0.87前後、0.86前後、0.85前後と買い場を探すか、もう少し分散させるなら50BPごとに買い下がっても良いかもしれない。ストップは0.9306-13ゾーン割れで設定する。ターゲットは、月単位なら英MPCも11月2日に控えていることもあって、0.90を前に上げ渋るならしっかりと利食って置く。もし、来年まで持ち越すなら0.92方向が期待感となる。

(2017年9月30日執筆)