川合美智子氏9月のリアルトレード戦略

1.マーケット見通し

世界経済が緩やかな回復基調にある中で、北朝鮮問題に関する地政学的リスクに振らされる動きが見られましたが、日米ともに北朝鮮の動きを静観する構えを示唆しており、また北朝鮮側にとってみても経済的な制裁がさらに強まる可能性は避けたいところでしょうから、一触即発の可能性は後退したと見られます。9月に入り、海外の参加者も休暇明けで積極的に参入してくると見られ、為替市場でもアメリカとユーロ圏の経済、金融政策に焦点が移っていくものと見られます。

9月にバランスシートの縮小に入ることが確実視されているアメリカですが、景況感が良い中でもインフレ率が上がらないことから、今後の利上げについては年内に実施されるかどうか不透明な状況となっており、10年債利回りの2.0%割れがあるかどうかの動きにも注意する必要がありそうです。また、トランプ政権による景気拡大策や減税案については、オバマケアの見直し法案で躓いてから全く進んでおらず、9月には債務上限引き上げ交渉も本格化することから、政局面での不安材料にも引き続き注意が必要です。一方ユーロ圏は、長期に亘る量的緩和策が功を奏して景気の緩やかな拡大基調が続いており、マーケットでは量的緩和縮小期待がどうしても強まり易く、“ECBの決断”を先取りしてユーロ買いが強まる傾向にありますが、ECBも量的緩和縮小には慎重な姿勢を崩しておらず、量的緩和の縮小時期がさらに先送りされる可能性があり、短期的なユーロ売りに繋がる可能性にも注意が必要でしょう。日本については量的緩和政策に変化が見られないことから、地政学的リスクの後退とともに、足元では円安方向へ戻す動きが出て来てもおかしくありません。

 

2.ドル/円

日足は7/11に付けた114.49を起点として上値を切り下げる流れから、8/29の陽線が上抜けており、短期トレンドはドルやや強気の状態に変化しています。現状は110.60-70に日足の上値抵抗がありますが、これをしっかり上抜けて終えた場合は、さらに1~2円程度上値余地が拡がり易くなります。しかし、週足、月足の形状がさほど強い状態にないので、戻り余地を試した後の反落にも警戒が必要でしょう。21日移動平均線は109.77にあり、下値をサポートしていますが、200日線は112.48にあり、中期トレンドはドル弱気の流れに変化が認められません。1~2週間はドルの押し目買いが有効、今月中では112.50~113.50ゾーンがあれば絶好の売り場となる可能性も高いと見ています。短期トレンドは109円割れで越週した場合は下値リスクが点灯、108.00割れを見た場合は新たな下落トレンド入りの可能性が高くなります。

今月の戦略

ドル買いは109.50-60で押し目買い。下値余地を108.70~109.20近辺まで見て置く必要があります。損切りは108.40で撤退。売りは様子見か113.10-20があれば売り向かい。この場合の損切りは114.20で撤退です。或いは、108円割れを見たらドルの戻り方針に転換です。

【ドル/円(日足チャート)】

 

3.ユーロ/ドル

ユーロ/ドルは4/10に付けた1.0570を起点として下値を切り上げる流れを維持していますが、8/29の日足が1.20台乗せに失敗して押し戻された形となったことや、21日線移動平均線と120日、200日の中期的な移動平均線とのかい離が大きくなっていることから、1.20台乗せを見て一段の上昇に繋がった場合でも、1.22~1.23台にある長期的な上値抵抗を上抜けきれない可能性にも注意が必要でしょう。目先は1.1800-10に強い抵抗がありますが、1.17台を維持出来ずに終えた場合は調整局面入りの可能性が高くなります。21日移動平均線は1.1817に、120日、200日線は1.1235と1.0983にあり、短・中期トレンドはユーロ強気の流れを維持しています。

今月の戦略

ユーロ買いは1.1850-60で軽く押し目買い。損切りは浅い場合で1.1790、深い場合は1.1690で撤退です。ユーロ売りは1.2010-20で戻り売り。損切りは1.2110で一旦撤退です。或いは1.23台超えは売り場探しとなります。

【ユーロ/ドル(日足チャート)】

 

4.ユーロ/円

ユーロ/円は130.20-40の週足の上値抵抗を上抜けており、新たな上昇トレンド形成の流れに入った可能性が点灯中ですが、4/17に付けた114.86の直近安値と6/15に付けた122.40とを結ぶトレンドラインの下に入り込んだ状態にあり、この上値抵抗に8/30の陰線がぶつかっています。短期トレンドに大きな変化は見られないものの、今後の上昇余地が限られる可能性が点灯していることから、新値では利食いを着実に入れる方針で良さそう。短期トレンドは129.50割れで終えた場合は下値リスクが点灯します。この場合でも128円割れで終えない限り、ニュートラルな状態を保ちます。31週、62週移動平均線は124.03と120.50に位置しており、中期トレンドはユーロの押し目買いを支持しています。

今月の戦略

ユーロ買いは130.40-50で押し目買い。損切りはニュートラルな状態に戻す129.40で撤退です。ユーロ売りは様子見としますが、128円割れで終えた場合は、ユーロの戻り売りに転換します。この場合のターゲットを124~125円とします。

【ユーロ/円(日足チャート)】