16日、大手格付け会社ムーディーズが米国の格付けを、最上級の「Aaa」から「Aa11」へと1段階の格下げを発表しました。
この影響がどうなるか注目ですが、実際は、既にS&Pが2011年8月、フィッチ・レーティングが2023年8月に、それぞれ最上位から引き下げていて、ある意味目新しいものではありません。
ただ、今回のムーディーズの決定で、アメリカは最上位の格付けを大手3社からすべて失うことになったこと、今まで最大手のムーディーズが最上位を維持していたことで、一部に安心感がありましたが、これが覆された影響は無視できないものとなりそうです。
この要因として、ムーディーズは、「米経済は著しい強さは示しているが、10年以上にわたって財政改善が進んでいないこと。連邦債務が増大し続け、利払い負担が上昇し続けており、歴代のアメリカ政権と議会は、巨額の年間財政赤字と増大する利子コストの増加傾向を反転させる措置で合意に至っていない」と指摘しています。
トランプ政権の発足後、財政赤字の削減を目指す「DOGE」が創設され、トランプ関税により米国の財政が潤う可能性がある状況下で、この決定がなされたことは、一種の驚きとなっています。
確かに年末に期限を迎えるトランプ減税の規模なども懸念となっていますが、今回この行方がどうなるかを見届けることなく、格下げが決定されたことで、この両面からも意外感が強く、逆説的にはムーディーズが、「DOGE」や「トランプ関税」が、米国の財政赤字削減に効果を示さないと見ていることになりそうです。
この発表が米金融市場にどういった影響を与えるか、今後の相場展開に注意しなければなりませんが、恐らく最上級から転落しても、トリプルAは維持されており、一定の織り込みもあって投資家がパニックに陥ることはないと思います。ただ、今後夏に向けて、米議会で政府債務残高の上限引き上げをめぐる攻防が見込まれています。以前から繰り返されているように、単なる上限の引き上げだけでは、収まらない可能性もあります。その場合大きな混乱につながることも想定されることは注意しておきましょう。