ドル/円:短期はドル強気の流れ、中期トレンドは下値リスクを残した状態。

(分析) 

4月の米雇用統計は、失業率が4.4%と完全雇用に近い状態に、非農業部門就業者数も市場予想の+19万人に対して21.1万人の増加となり、雇用市場が堅調であることを印象付けました。また、米連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想通り政策金利を据え置きましたが、労働市場の強さが指摘され、インフレ判断を引き上げたことから、6月利上げに含みを持たせたとの見方が優勢となり、ドル円相場も一時113.05を付けた後、112円台後半で越週しています。一方で、4/28に発表された米第一四半期GDPは市場予想の1%に対して0.7%(前期比年率)に留まり、米経済の先行きに懸念を残す結果となりました。季節的な要因と受け取られており、市場は楽観的ですが、オバマケアの代替案の上院通過の難航、経済対策の遅れへの懸念も払拭出来ないこと、トランプ政権の政策実行力に疑問符が付いた状態にあること、伸び悩みを示していた欧州や日本経済も回復基調が明らかになりつつあることなどから、政局の難航や今後発表される米経済指標如何では、ドルから他通貨へシフト売る動きが強まる可能性も大いにありそうです。

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ドル/円日足チャート

170508_01_ドル円日足.pngチャートを見ると、日足は4/17に付けた108.13を起点として下値を切り上げる流れを変えていません。また4/24(月)の日足が前日に開票された第1回の仏大統領選の結果を好感して大きく”マド”を空けて寄り付いており、この足が短期トレンドに変化を生じさせています。”マド”が埋まらないまま下値を切り上げていることから、短期トレンドが強い状態にあることを窺わせ、これを埋めるのは目先天井を確認してからとなる可能性が高いと見られます。現状は日足の形状が崩れておらず、今週も上値トライの動きが強まると見られますが、112.90-00にある日足の抵抗を上抜けきれておらず、新たな上昇トレンドに入るためには、これをしっかり上抜ける必要があります。日足の上値抵抗は112.90-00、113.50-60、114.60-70に、下値抵抗は112.20-30、111.00-10にあります。短期トレンドは111円割れで変化しますが、この場合でも109円割れで越週するか値動きの中で108円割れを見ない限り、ニュートラルな状態を保ちます。21日、200日移動平均線は5/5現在110.44と109.13にあり、短・中期トレンドはドル強気の状態にあることを示唆しています。一方、120日線が113.29に位置しており、先週の上値トライでもこれを上抜けきれていないことから、これが短期的な上値抵抗として働く可能性にも注意が必要でしょう。

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ドル/円週足チャート

170508_02_ドル円週足.png週足は、3週連続陽線引けとなり、2手前の陽線が111.10-20の週足の抵抗を上抜けて一段の上昇に繋がりましたが、112.80-90に位置する週足の抵抗を実体ベースでは抜け切れずに越週しています。今週の週足の終値ベースで113円台を維持出来れば、1/3に付けた118.60を戻り高値として上値を切り下げて来た流れから頭一つ上抜けることになり、ドルの一段の上昇に繋がり易くなります。この場合でも114.50~115.50ゾーンに強い上値抵抗があることや、月足の上値抵抗が117円台にあることから、これらを全て上抜けて越月しない限り、中期トレンドは下値リスクを残した状態です。一方で、4月に108円台に位置していた62週移動平均線、200日移動平均線を守りきって反転、上昇の流れに入っており、重要ポイントを守って反転していることから、109円割れの越週とならない限り、下値余地も拡がり難い状態です。週足の上値抵抗は113.00-10、114.80-00に、下値抵抗は112.20-30、111.10-20、109.00-10にあります。31週、62週移動平均線は111.61と108.83に位置しており、中期トレンドを支えています。

一方、4月足はタクリ足の陽線引けとなり、下値トライに失敗した形で越月しています。この反動で月初から上値トライの動きが先行していますが、現状は上値を切り下げる流れからは上抜けておらず、この月足の月足の上値抵抗は113.00-20と117.00-50にあります。5月足の下値抵抗は111.00-30、110.60-70にありますが、110円割れで越月した場合は一段の下落リスクが点灯します。この下の抵抗は104.60-70にあります。

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ドル/円P&F(200ポイントリバースチャート)

170508_03_ドル円P&F.pngポイント&フィギュアの200ポイントリバースチャートは4/25に110.50超えを見て上方向へリバース中です。111.00割れで下方向へリバースしますが、109.00までの下落はニュートラルな状態を維持、108.50割れで下値リスクが点灯、108.00割れでドル弱気に変化します。

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(戦略)

今月の戦略は、ドル買いは112.20-30で押し目買い。損切りは110.90で撤退です。ドル売りは113.00-10で軽く売り向かい。損切りは113.60で十分でしょう。これが付いた場合は114.50-60超えの上値抵抗の厚さを確認する動きが強まり易くなります。