FX取引にかかる税金はいくらから?計算方法や確定申告の流れを説明

FXである程度の利益が出た場合、確定申告をして税金を支払う必要があります。

この記事では、FXで利益が出たときの確定申告のやり方や、税金を軽減する方法、確定申告をしなかったときのペナルティなどについて解説しています。FX取引にかかる税金に関して詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。

FX取引にかかる税金は何がある?

FX取引で出た利益には、所得税と住民税がかかります。また、FXの為替差益やスワップポイントの税金は、雑所得のうち「先物取引に係る雑所得等」に分類され、申告分離課税の対象です。申告分離課税は、給与などの所得とは区別され、確定申告が必要になります。

所得税会社からの給料や、個人で稼いだ所得に対してかかる税金
住民税地域社会の費用を分担するもの。地域社会の会費という位置づけ

FX取引でいくら稼いだら税金がかかる?

給与所得がある人は、年間のFXの利益が20万円、主婦や学生は48万円を超えた場合には確定申告が必要です。

ただし、この金額に満たない場合でも、住民税の申告は必要になるので注意しましょう。

住民税の申告窓口は、原則、区役所や市役所です。

FX取引にかかる税金の計算方法

FXの税金は、為替差益とスワップポイントによる利益を合計した金額から諸経費を差し引いた金額に、20.315%※1)の税率を掛けて計算します。

【計算例】

為替差益:年間30万円

スワップポイントによる利益:年間10万円

諸経費:年間2万円

{(30万円+10万円)-2万円}×20.315%=7万7,197円 ∴税金は7万7,197円 

※1)所得税15%+住民税5%+0.315%

FX取引で確定申告が必要なケース

FXで確定申告が必要になるのは、次のようなケースです。

  • 所得が一定基準を超える場合
  • 損益通算をおこなう場合
  • 損失の繰り越し控除をおこなう場合

所得が一定基準を超える場合

FXで確定申告が必要な所得基準は、会社員の場合と専業主婦や学生の場合で異なります。

【会社員で確定申告が必要な場合】

  • 年収2,000万円を超える
  • FX取引の利益を含む、給与所得と退職所得を除いた利益が20万円を超える

【専業主婦や学生で確定申告が必要な場合】

  • FX取引の利益とその他の所得が48万円を超える

 

損益通算をおこなう場合

他の所得から、赤字の所得を差し引くことを「損益通算」と言います。

例えば、不動産投資で損失が発生した場合、給与所得から不動産所得の損失を差し引くことができます。結果として給与所得が減少し、確定申告によって税金の還付が受けられるという仕組みです。

しかし、FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」に該当し、その他の「先物取引に係る雑所得等」以外と損益通算ができません。FX以外に、例えば日経225先物など、先物取引に係る雑所得等に該当する損益があれば、損益通算は可能です。

損失の繰り越し控除をおこなう場合

繰越控除とは、当年の損失を控除しきれない場合に、翌年以降の所得からも損失を差し引きすることです。

FXでは損失を翌年以降3年にかけて、先物取引に係る雑所得等の利益から控除できます。仮に2019年に120万円の損失が発生し、2020年度に40万円の利益が発生した場合、繰越控除によって前年の120万円の損失と相殺され、40万円の利益が控除されます。したがって2020年度は課税されません。

しかし、まだこの時点では相殺しきれていない80万円分の損失が残っています。そのため、2021年に30万円、2022年に35万円の利益があったとしても、相殺しきれていない80万円分と繰越控除ができるので、いずれの年度も利益は出ているにも関わらず課税されません。

FX取引で確定申告が不要なケース

FX取引で確定申告が不要なケースは、会社員の場合と、専業主婦や学生の場合で異なります。

【会社員などの給与所得者の場合】

給与所得者の場合、以下の要件を両方満たすとき、確定申告は不要です。

  • 年収2,000万円以下
  • 1カ所から給与の支払いを受けている
  • FX取引の利益を含む、給与所得と退職所得を除いた利益が20万円以下

【専業主婦や学生の場合】

  • FX取引の利益とその他の所得が48万円以下
  • (パートやアルバイトをしている場合)給与所得の合計が103万円以下

ただし所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要です。

FX取引に関する確定申告のやり方

FX取引で確定申告をするときは、以下の必要書類を準備しておきましょう。

【必要書類】

  • 年間損益(取引)報告書
  • (給与所得者の場合)給与所得の源泉徴収票
  • 申告書第三表(分離課税用)
  • 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
  • (繰越控除を利用する場合)所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)

なお、年間損益(取引)報告書は、FX会社のホームページからダウンロードできます。また、源泉徴収票は勤務先から受け取ります。

【FX取引における確定申告の流れ】

  1. 申告書B(第一表・第二表)を記入
  2. 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書を記入
  3. 申告書第三表(分離課税用)を記入
  4. 損失がある場合は、所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)を記入
  5. 税務署に提出(e-Tax、税務署に持参、郵送いずれかの方法)

源泉徴収票がある人は、源泉徴収票をもとに申告書B(第一表・第二表)を記入。先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書は、年間損益(取引)報告書をもとに記入します。先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書に、その他経費欄にFXにかかった経費の記入を忘れないように注意しましょう。

また、確定申告書を提出する際は、源泉徴収票と年間損益(取引)報告書も添付します。

FX取引の税金を確定申告しない場合の罰則

FX取引で確定申告の義務があるにもかかわらず、確定申告をしていなかったり、納税が遅れたりした場合は、ペナルティが課されることがあります。確定申告や納税に関するペナルティには以下のようなものがあります。

【ペナルティの種類】

期限内に申告をしなかった無申告加算税・50万円までの金額に対して15%の加算税
・50万円超の金額に対して20%の加算税
税務署の調査前に自主的に申告をすると5%に軽減される
期限内に申告をしたが、修正・更正があったとき(期限内に申告・納税した場合も対象)過少申告加算税・10%
・期限内申告税額または50万円のいずれか多い金額を超える分は15%
期限内に納税しなかった延滞税納付期限から2ヶ月までは7.3%、それ以降は年14.6%の税が課される
隠蔽など申告漏れの理由が悪質なとき重加算税・過少申告加算税に代えて35%
・無申告加算税に代えて40%

FX取引で節税するコツ

FX取引で利益が出た場合に、以下のような節税方法が考えられます。

  • FX取引の経費を計上する
  • iDeCoに加入する
  • 生命保険や個人年金に加入する

FX取引の経費を計上する

先に述べたとおりFXの税金は、為替差益とスワップポイントによる利益を合計した金額から、経費を差し引いた金額に税率を掛けて計算します。つまり、経費が増えれば支払う税金は少なくなるので、節税につながります。

【FXで経費になる項目の例】

  • インターネット回線などの通信費
  • FXに関するセミナーやコンサルティング料
  • FXセミナーの会場に向かうときの交通費など
  • FXに関する書籍代

iDeCo(イデコ)に加入する

iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出年金の愛称です。iDeCoは掛金を払って、自分で運用商品を選んで老後の資産形成をする制度です。原則60歳まで掛金の引き出しができない代わりに、掛金が全額所得控除になるメリットがあります。

ただし、職業や会社の企業年金の内容によって掛金に上限があります。

生命保険、個人年金保険に加入する

生命保険、個人年金保険に加入すると、それぞれ最大4万円まで所得控除が受けられます。必要に応じて生命保険、個人年金保険の加入も検討してみましょう。

まとめ

FXでは一定額以上の利益が出ると、会社員だけではなく専業主婦や学生でも税金がかかります。ただし、FX取引をする際に必要な通信費や書籍代、セミナー費用などは経費になるほか、損益通算や3年間の繰越控除が受けられることもあります。

少しでもFXの必要資金を効率的に運用するために、こうしたFXに関する知識を役立ててください。