ユーロポンド-2025年相場見通しと戦略-

英欧景況感格差と中銀の利下げスピード次第

※本記事は2024年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。

【2024年のユーロポンド相場を振り返って】

 2024年のユーロポンド相場は、年間を通して軟調な展開となりました。

年初から0.8683を高値に調整気味なスタート。欧州議会議員選挙でマクロン大統領が率いる与党が大敗、右派政党が躍進したことを受けて、議会下院を解散し総選挙を実施するも、NFP(新人民戦線)が第1党となったことなどから、政局不安がユーロポンド相場の上値を押さえました。ただ、下値は0.8497で支えて0.8645との揉み合い気味の展開が、5月中旬まで続きました。

ただ、昨年の連続的な利上げで、欧州景気に早くも陰りが見えたことで、ECBの利下げの思惑が高まり、英中銀に先んじて6月6日の会合で2019年来の0.25%の利下げを実施、ユーロポンド相場が、0.8383まで値を下げました。

一方英国では7月の英下院総選挙において、野党・労働党が単独過半数を獲得、14年ぶりに政権を奪還したことで、スターマー新政権に対する不透明感や英中銀が、8月の会合で、4年5ヶ月ぶりに0.25%の利下げを決定、ユーロポンドは一時0.8625まで買い戻されました。 

ただ、その後もECBが利下げ姿勢を継続、英中銀は、高止まりするインフレ率に利下げに慎重な姿勢を続けたこと、トランプ氏が米大統領選で勝利し、ドイツと貿易で関係の深い中国に対して追加で関税をかけると宣言、景気浮揚策で意見が対立、ショルツ独首相がリントナー財務相を罷免、3党連立政権が崩壊、独企業の相次ぐリストラの発表、仏でも予算審議が難航し、ミシェル・バルニエ内閣に対する不信任決議案が賛成多数で可決と悪材料が連鎖的に続いたことで、ユーロポンドは直近(2024年12月20日現在)で、2024年度最安値圏となる0.8223までじり安となっています。 

2025年の主な材料】

以下が現在、知り得る2025年のイベントや材料です。注目度の高いものは赤字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので変更される可能性があることは、ご了承ください。 

 リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、やはり年初から大注目となるのは、1月20日からスタートするトランプ次期政権です。トランプ氏は、既に追加関税など多くの発言をしていますが、就任当日から多くの「大統領令」に署名する見通しです。その内容次第では、市場を大きく混乱させることは間違いなさそうです。トランプ氏の政策に関しては後述しますが、2025年の相場を考える上で、特に注意を払っておく必要があるでしょう。

 また、2024年は「選挙の年」でしたが、2025年にはあまり大きな選挙はありません。ただ、ショルツ独首相の連立政権が崩れたことで、2月には独連邦議会選挙が、前倒しで実施されます。2024年、世界各国で与党勢力がことごとく選挙で敗退しています。この潮流は止まりそうもありません。保守派与党のキリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)が大敗するようなら、大きな混乱を招きそうです。その場合ユーロ相場の圧迫要因となることは留意しておきましょう。 

 一方日本では、7月に参議院選挙と東京都議会選挙が行われます。都議会選挙の影響は直接的にはありませんが、昨年の解散衆議院選挙では、裏金問題などから自民・公明両党が過半数を割れたことで、日本の政局も混乱しています。一部では衆参同時選挙の可能性も指摘されていて状況次第では、再び自公連立が過半数を維持できない可能性もありそうです。その場合石破総理の総理存続も難しくなりそうです。金融面では政局不安が、株価に悪影響を与えるでしょう。為替に対する影響は不透明としても、通常なら株価の下落がリスク・オフの円買いにつながる可能性を考慮しなければなりません。ただ、もしこれが株安、債券安、円安と「トリプル安の日本売り」に繋がるなら大惨事となりそうです。2025年は日本の政局にも注意を払っておきたいと思います。

 その他では、1月から再び米国の債務上限の期限を迎えます。この問題は、12月13日現在あまり話題となっていませんが、恐らく年内に延長され直ぐには問題にならないでしょう。ただ、2025年初頭には再び大きくクローズ・アップされる可能性があり、問題が長引けば米国債の格下げのリスクとなります。毎年のことで若干食傷気味の話題ですが、特に2025年はイーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」がスタートします。「小さい政府」を目指す共和党が、本当に米国の財政問題を解決できるのか、それとも混乱につながるのか注視しておきましょう。

 また、欧州関連では、7月からブルガリアが、通貨ユーロを導入する予定を表明しています。現在の情報ではまだ確定しているわけではありませんが、もし今後決定するようなことがあれば、ユーロを取引する場合には注意が必要です。EUの参加国が、新たにユーロを導入する場合、導入日に一気に通貨が変更されます。ブルガリアの場合、元来2025年から予定されていましたが、7月1日に一旦延期されたようです(過去の通例では1月1日に導入するのが基本)、その場合6月末のコンバージョン・ファクター(交換率)によって、一気にブルガリア内の資産・負債が、ブルガリア・シフからユーロに代わります。つまり、ブルガリアの企業や個人などは、この変更によって大きな為替リスクを負うことになります。当然それを避けるために、事前にヘッジしようとうする行為が自然に行われると思います。つまり、ユーロ・シフ相場では、7月に近づくにつれてユーロ買いが増加しユーロを押し上げる形になります。

 近年では、エストニア(2011年)、ラトビア(2014年)、リトアニア(2015年)、クロアチア(2023年)の導入時に、国の規模により影響度は限られますが、このような傾向がユーロ相場の動きに見えています。まだ2026年からの導入となる可能性がありますが、どちらにしても、もし決定された場合のユーロの動きにも注目しておきましょう。

加えて、近年では年初から大きく世界を変えるような事件や事象が起きています。2020年にはパンデミック、2022年はロシアのウクライナ侵攻、2024年は元旦から能登半島地震、年央からはイスラエルのガザ侵攻など金融市場に大きな影響を与える「リスク」が発生しています。2025年もそのような「ブラック・スワン」が起きるかは誰にもわかりません。起きて欲しくはないですが、奇しくも2025年はアストロ的に、太陽の黒点数がピークに達します。以下のチャートをご参考頂きたいのですが、太陽の黒点の数は、約11年周期で増加・減少を繰り返しています。そして増加のピークと減少のピーク時(半期)には、ぴったりではありませんが、過去ドル暴落、ブラック・マンデーやリーマン・ショックなど多くの金融ショックの発生と重なっています。これが2025-26年にピークをつけて、2031年まで減少過程に入ります。

特に黒点のピーク時は、太陽内で水爆の100万個分相当の爆発が発生し、太陽フレアによる電磁波が地球にも大きな影響を与えるとされています。それが地球を回る衛星を破壊・損失させたりすれば、GPSや通信、インターネット回線や携帯端末に過大な影響を与えるかもしれません。それが世界的に発生した場合、どういった混乱となるか恐ろしい気がしますが、特に金融関連で考えるとインターネットやコンピューターを取引の基盤としている「仮想通貨取引」に大きな影響を与えるかもしれません。それでなくても異常な高値となっていて危険ゾーンにあるような気がしますが、2024年は10万ドルを超えたビットコイン相場が暴落でもすれば、その影響は世界的な資産クラッシュの動きにつながりそうです。

またこれは蛇足ですが、日本の干支をベースとした相場格言に、「辰巳天井」という言葉があります。これは辰年と巳年の間に株価が大きなピークをつけて、下落相場に転換するというものです。日本の格言が米国や海外株式市場でも適応されるかは疑問も多いですが、辰年の2024年のNYダウやナスダック指数、日経平均株価の歴史的な高値更新やこの黒点のピークと合わせて考えると2025年、大きな金融ショックが起きる可能性も捨てきれません。悲観的過ぎるかもしれませんが、少なくとも近年は、温暖化の影響もあってか、自然災害、加えてウクライナや中東紛争などの世界的な軍事紛争が続き、自然・地政学リスクが市場の混乱につながっています。2024年7月13日に起きたトランプ氏の暗殺未遂と共に考え合わすと、トランプ氏が神がかり的に生還し、更に大統領選で勝利するという運命の不思議が、2025年以降の世界の分かれ目となるのかもしれません。

あくまで個人的な妄想ですから、信じて頂く必要はありません。ただ、それでなくとも、自然災害や紛争、金融リスクは突発的に起こることで、準備することはできませんが、常にこういったリスクも念頭に入れて、相場に臨む姿勢を維持しておいた方が得策かもしれません。

2025年の注目点】

 2024年の相場環境を踏まえて、2025年のユーロポンド相場の注目点をまとめてみました。

  • 英中銀の利下げは?
  • ECBはどこまで利下げ?
  • 金利差や景況感からはポンド優位か?

〇 英中銀の利下げは?

英中銀は、2021年12月にそれまでの歴史的な低金利政策を解除。ウクライナ情勢に端を発したインフレの急騰から、政策金利を2023年9月に5.25%まで引き上げましたが、インフレの落ち着きや急速な利上げの影響で落ち込みが見えた英経済に対する懸念もあって、2024年8月会合で0.25%の利下げを発表。その後9月には据え置き、11月に再利下げ、12月の最後の会合では政策金利を4.75%に据え置いています。

ただ、政策委員の投票では、「6対3」で3名が利下げを主張していて、ベイリー総裁は「市場の2月利下げ織り込みは合理的な出発点」と述べています。2025年以降一定の利下げの可能性は排除できないでしょう。 

それでは、英国の消費者物価指数の状況を見てみましょう。

一時11.1%まで急騰していた消費者物価は、2024年10月には英中銀がインフレ・ターゲットとする2%を瞬間割り込みましたが、2024年11月は2.6%に再び上昇してしまったことで、中銀のスタンスが様子見となっているようです。

また、以下の英製造業・非製造業PMIの動向をチェックしておきましょう。

パンデミックからの回復も、ロシアのウクライナ侵攻後のインフレの悪化、トラス・ショックなど上下していますが、直近では「55」近辺まで回復も、再び製造業やサービス業のPMIは、分水嶺となる「50」を割り込みかけています。少なくとも前述の通りインフレが若干反転していますが、単月の事ですし、今後景況感の悪化が見えた場合、英中銀は、2025年一定の利下げを余儀なくされる可能性が高そうです。

以下は2025年の英中銀金融政策委員会の予定です。議事録は同時に公開されますが、英中銀の政策を見る上で、インフレ・リポートも重要ですが、毎回の議事録で発表される9名の総裁・副総裁及び委員の投票の結果もしっかりとチェックしながら、今後の英中銀の金融政策の行方を判断するのが良いでしょう。

英中銀金融政策委員会(同時に議事録公表)

02月06日+四半期インフレ・リポート公表

03月20日

05月08日+四半期インフレ・リポート公表

06月19日

08月07日+四半期インフレ・リポート公表

09月18日

11月06日+四半期インフレ・リポート公表

12月18日

〇ECBの利下げどこまで?

ECBは、パンデミックでマイナス金利まで引き下げていた政策金利を、ウクライナ紛争の影響を受けた原油・資源価格の上昇を背景に、2022年6月から引き上げを開始。2023年9月の会合では、4.50%まで引き上げましたが、2024年6月から利下げを開始。7月の会合では据え置きましたが、9月、10月、12月と3会合連続の利下げを実施、3.15%まで政策金利を引き下げています。

 主な要因としては、中国の景気減速が、中国との貿易取引の多いドイツ経済に悪影響を与えており、加えて電気自動車への転換が遅れたことです。7月には世界第4位の自動車部品製造企業であるZFフリードリヒスハーフェンが、2028年末までにドイツの従業員数を最大1万4千人削減する計画を発表。8月には、自動車部品とタイヤのコンチネンタルが、オートモーティブ部門の分離の検討を発表。9月には、フォルクスワーゲンが、国内3工場を閉鎖、数万人の従業員を解雇、残りの国内工場も縮小する計画を発表。11月には、世界最大の自動車部品のサプライヤーであるボッシュが、世界で中期的に約5千5百人の人員削減の計画を発表しています。

 また、政治的不安も経済に影を投げかけています。

仏では、2024年6月9日の欧州議会選挙で与党が右派政党に大敗したことを受けて、マクロン大統領が国民議会を解散し総選挙を実施しましたが、2024年7月の選挙では左派連合が最大勢力となり、マクロン大統領率いる中道の与党連合は議席数を大幅に減らしました。

 このため予算審議が難航、12月に右派のバルニエ氏が首相に就任しましたが、少数連立内閣であることもあって、翌日に内閣不信任案が可決され総辞職に追い込まれています。

 一方ドイツでも、景気後退懸念からショルツ首相が財政拡張を主張するも、自由民主党のリントナー財務相がこれに反対。ショルツ首相が同氏を解任したことで、社会民主党、FDP、緑の党の3党連立政権が事実上崩壊。ドイツ連邦議会でショルツ首相の信任投票が行われましたが、反対多数で否決されたことで、2025年の総選挙が前倒しされ2025年2月23日に実施されることになっています。

 ユーロ圏2大大国である独仏の混乱が続くなら、ユーロ圏経済には厳し状況が続きそうです。

それでは、実際にユーロ圏の景況感をみておきましょう。以下はユーロ圏の製造業とサービス業PMIの推移です。

現状景気の分水嶺となる「50」を挟んだ動きとなっており、それほど悪い形には見えません。ただ、通常米英などは、製造業よりサービス業PMIが強い傾向を示しますが、製造業中心のドイツを中軸としたユーロ圏のPMIは、総じて製造業PMIの方が強い傾向となっています。そのため製造業の方が、景気の分水嶺となる「50」を割り込み、指数が「デッド・クロス」していることは問題です。この状況が続くなら今後もユーロ圏経済の足かせとなりそうです。

  物価指数についても見ておきましょう。

  一時はパンデミックやロシアのウクライナ侵攻による、原油や天然ガスの急騰などの影響で、10.70%まで上昇していた消費者物価指数ですが、現在はECBがインフレ・ターゲットとしている2%割れまで下落しており、ECBが金利を引き下げ易い状況となっています。

 12日に行われた2024年最後の理事会の声明では、「基調インフレのほとんどの指標は、インフレが理事会の中期目標である2%付近で持続的に落ち着くことを示唆」、ラガルドECB総裁の記者会見では、「最新のデータは経済の勢いが失われつつあることを示唆」、「0.50%の利下げを検討する意見もあった」としています。確かに「ECBはデータに依存し、会合ごとに政策金利を決定する」のでしょうが、恐らくECBのインフレ・ターゲットとする2%に限りなく近いレベルまで、2025年も利下げスタンスを継続しそうです。

参考に2025年のECB理事会の開催日程を掲載します。特に2025年前半は、ECBの利下げが続く可能性が高いことで、注目しておいて下さい。

ECB理事会(議事録公表日)

01月30日(02月27日)

03月06日(04月03日)

04月17日(05月15日)

06月05日(07月03日)

07月24日(08月21日)

09月11日(10月09日)

10月30日(11月27日)

12月18日(01月15日)

〇 金利差や景況感からはポンド優位か?

 以下は、英10年物国債利回りとユーロ圏を代表するドイツの10年物国債利回りとの金利差にポンドユーロ相場(ユーロポンドの逆数)を比較したチャートです。

 2011年以降の欧州信用不安の時期、直近では英国の政治不安で、一時的に連動性が崩れていますが、総じて連動性が高い状況が確認できます。ただ、直近では、英独金利差が大きく上昇していますが、まだポンドユーロ相場のポンド高は限定されているようです。

この理由に関しては、英中銀が、過去量的緩和策で、買い入れて来た英国債の保有残高を縮小していることで、長期金利の方が高止まりしていることが考えられます。その影響であれば、金利差にポンドがついていかない状況も仕方ないかとは思いますが、2025年を通じても、ECBが3%割れまで政策金利の引き下げを実施する可能性がある一方、英中銀は現状の4.75%から引き下げがあっても、3%台まで政策金利を引き下げるかは不透明で、引き下げのペースは遅れそうです。金利差の面からはポンド優位が続きそうです。

 また英欧の景況感も比べてみましょう。

 英国の製造業とサービス業PMIの平均値からユーロ圏の製造業とサービス業PMIの平均値を指し引いたもにに、ポンドユーロ相場を対比したものです。ぴったりと合致はなかなか難しいですが、少なくとも2025年の相場を見る上で、両者のPMIの格差の状況も確認しながら、戦略に取り入れるのも一考かと思います。

【テクニカル面】

≪ポンドドル≫

テクニカル面からまず、ユーロポンドを構成するポンドドル相場の月足をチェックしておきましょう。

ポンドドルは、英国が国民投票で、ブレグジットを決定した2016年から売りに押されるも下値を1.1378で支え1.4337まで反発、その後パンデミックの影響で、再度1.1412まで下落後この位置を支えて反発が、最高値2.1162からのレジスタンスを越えるも1.4251で再度抑えられて、ダブル・トップを形成。一時1.0350の歴史的安値まで急落後は、反発しましたが、1.3143-1.3434ゾーンは、過去の下ヒゲ・ゾーンで、レジスタンスを手前に上げ渋りを見せて再調整気味です。 

また、スロー・ストキャスティクスが変われ過ぎから反転下落を示現していて、今後下値トライのリスクが高まっています。下値は、1.2300や1.2037が維持出来ると良いですが、割れると1.1804、1.1141の戻り安値を再度目指す可能性となります。流石に歴史的な安値を前に、こういった位置は支えられる見通しです。ただ維持出来ない場合、下ヒゲの節目となる1.0924や1.0350の最安値までターゲットとなりますが、もしこういった位置まで割れると、パリティが視野となります。

一方上値は、1.2800前後が押さえると非常に弱く、1.3048の戻り高値を超えても、1.32前後が重くなりそうです。あくまで1.3434の戻り高値を超えて、1.3503の上抜けからフィボナッチ・リトレースメント(1.7188の高値から1.0350まで下落)の50%となる1.3769などが視野となりますが、1.4377-1.4251のダブル・トップを前に、売りが出易いでしょう。

従って2025年のポンドドルの想定レンジを1.2000~1.3000とします。 ただ、大きめの動きとなれば、1.1800から1.3200ぐらいでみておきましょう。

≪ユーロドル≫

ユーロ円を構成するユーロドル相場の1999年からの月足チャートを見てみましょう。

歴史的な高値1.6040からの調整を、1.0341の安値で一旦支えるも、反転が2018年2月の1.2555や1.2349の戻り高値でダブル・トップを形成。その後0.8225からのサポートを割れて、0.9536まで下値を拡大しました。ただ、この位置はユーロドルの歴史的な安値からの反発時のネック・ラインとなる0.9596-0.9601を若干割れた位置で、一定の反発が実現しましたが、これも1.1276と1.1214で小さなダブル・トップをつけて再度調整気味の展開です。ただ、下段のスロー・ストキャスティクスが上昇を終了、反転下落となっており、今後は軟調な展開が想定されそうです。

上値は、1.0602-1.0763-1.0937の戻り高値圏が押さえると弱い状況で、あくまで1.1276と1.1214のダブル・トップを超えて、上昇期待となりますが、それでも1.1603-1.1704ゾーンは、マイナー・レジスタンスとして上値を抑える位置となりそうです。

一方下値は、1.0094-1.0198に0.9536まで下落時の節目があって、維持出来ると更に調整は拡大しませんが、割り込むとサイコロジカルな1.0000、もし0.9536を割れると、下落は0.9298や0.9568,更に0.8344,最悪のケースは、0.8225のユーロドルの歴史的な安値割れとなります。

直近ユーロ相場は、悪材料が多く軟調な展開が続く可能性が指摘されていますが、2024年の相場レンジも、たかだか0.0879、2023年も0.0828幅しか動いておらず、ユーロ安は輸出にメリットがあることもあって、2025年も動意が薄ければ、更に大きな下落は想定しづらいのかもしれません。

以上を踏まえるとユーロドルの2025年の想定レンジは1.0000から1.1000を中心に考えます。ただ、もしウクライナ情勢に大きな変化が出た場合、この戦争が起きた2022年にユーロドル相場は、0.1959幅動いていることから、0.9500-1.1500ぐらいのレンジとなるかもしれません。当然解決の道筋が見えた場合は、爆発的な上昇が想定され、一方でロシアが戦術核を使うようなパニックとなった場合は、下値トライとなることを前提としています。 

≪ユーロポンド≫

 ユーロポンド自体の月足チャートを見てみましょう。

ユーロポンド相場は、歴史的な安値となる0.5680から0.9804の歴史的な高値まで上昇後は、下値を0.6935で支えて、一旦0.9804の高値からのレジスタンスを超えるも、0.9413、0.9307、0.9498、0.9273と上ヒゲで上値を押さえられています。一方下値も、0.8238、0.8283がダブル・ボトムとして支えていましたが、この0.8980が押さえて、再度このレベルを試す形となっています。

下値はともかく、この0.8238、0.8283と現状トライする下値が、スロー・ストキャスティクスの売られ過ぎもあって、トリプル・ボトムとして支えることが出来れば堅調を維持出来る見通しです。ただ、しっかりと割り込んだ場合、本格的な調整局面が訪れ、0.80のサイコロジカル前後、0.7691-0.7758のネック・ラインまでターゲットとなりますが、こういった位置は、0.5680から0.6935の安値を結んだサポート圏に当たり、更にフィボナッチ・リトレースメント(0.5680~0.9804)の50%が0.7742に相当することで、一旦維持される見通しです。ただ、もし0.7516-0.7590の窓の上限まで割れると、0.7252、0.7105の過去の高値圏までターゲットとなります。最大のリスクは0.6935の戻り安値割れとなります。

一方上値は、0.8625-0.8766の戻り高値圏が押さえ弱い状況が続きそうです。あくまで、0.8980の戻り高値を超えて、0.9273-0.9498ゾーンの上ヒゲ圏が視野となりますが、何度も上ヒゲで抑えられており、到底上値追いできるレベルではありません。 

≪マトリックス・チャート≫

 加えてポンドドルとユーロドルの想定レンジから作成したマトリックス・チャートを見てみましょう。

 ポンドドルの2025年の想定レンジを1.2000~1.3000、ユーロドルを1.0000~1.1000としましたので、これから算出されるユーロポンド相場の最大想定レンジは、0.7692~0.9167となります。ただ、少し幅が広過ぎるので、0.8000から0.8816を基本レンジとします。

【予想レンジと戦略】

 以上を踏まえてユーロポンド相場の2025年の見通しと戦略についてお話します。

2025年のユーロポンドの想定レンジを、0.8000から0.8600とします。少し大きめに見ると0.8000から0.8800ぐらいで見ておきたいと思います。

≪2025年の注意点≫

・トランプ次期政権を睨んで荒れた展開となる可能

・ウクライナ情勢に大きな変化が出るケース、ウクライナとロシアが停戦できれば、ユーロの買い戻しが出易く逆に混迷を深め、更にロシアが戦術核を使うなどの極端な行動に出るなら、逆に大きなユーロの売り要因となるでしょう

・クロス通貨はストレートの動き次第で、テクニカル的なポイントと合致するとは限りません。オーバー・シュート的な騙しの動きも留意してください

≪2025年のユーロポンド戦略≫

金利差や景況感からはポンド優位とみて、戻り売りが検討されます。ただ、スロー・ストキャスティクスが売られ過ぎにあることから、突っ込み売りは避けて、あくまで戻りを待って売り狙いとなります。このストップは0.8980越えで、しっかりと良い位置で売場を探しましょう。下値は、オーバー・シュートの可能性を考慮しながら、トリプル・ボトムが維持されるなら買い戻しながら売り回転を利かせる形です。しっかりと割れる動きを確認して、サイコロジカルな0.8000を前に、買い戻し場を探しましょう。また、こういった位置から0.7691-0.7758方向への下落では、スロー・ストキャスティクスの反転も伴えば、買い狙いも検討しましょう。 ストップは0.7516-0.7590の窓の上限割れやサイコロジカルな0.75割れなどで対応しましょう。ただ、こういった買いの場合の利食いは、それまで下値を支えていたダブル・ボトムの0.8238-83が抑えると逆レジスタンスとして、利食いを優先した方が良いでしょう。 

尚予想レンジの上限を0.8600から0.8800に引き上げているのは、ウクライナで停戦が合意できるようなケースを想定しています。こういった思惑では、早期はユーロ買いも検討できそうですが、ただ、この話題が終わった後は、基本的なファンダメンタルズの動きに戻ってしまうことで、短期トレードになるかもしれません。  以上、テクニカルやファンダメンタルズ面からシナリオをたてましたが、ひとつの例として考えてください。この通りとなるほど、相場は簡単ではありません。あくまで私個人の35年来の経験則から想定したイメージ的なものですので、ご理解頂ければ幸いです。