レバレッジ型ETFの仕組みとメリット・デメリット

日本でも少しずつ知名度が上がってきたETF。日本でもっとも人気があるETFって何かご存知ですか?東証で取引されているETFの中で一番売買がされているのはレバレッジ銘柄と呼ばれる(NEXT FUNDS)日経平均レバレッジ上場投信や(NEXT FUNDS) 日経ダブルインバース上場投信といった銘柄です。それ何?と思われる方もきっと多いはず。今日は刺激的なレバレッジ銘柄についてご紹介します。

1. レバレッジ型ETFとは?

 ETFはもともと、原資産の値動きに連動する上場投資信託なので、原資産の値動きをなぞるような値動きをするのが特徴なのですが、レバレッジ型ETFとはその名のとおり、原資産に対してレバレッジをかけ2倍や3倍といった値動きを実現するETFの事です。

1-1. なぜレバレッジ型ETFが誕生したの?

 ETFは小額から分散投資ができることから初心者向けの資産運用ツールとして広く人気を博しているのですが、多くの銘柄を組み合わせているため裏を返せば値動きがゆるやかになってしまい短期的に利益を狙うのが難しいという特徴があります。長期で資産形成をするにはもってこいですが短期で利益を出したい人には物足りない商品設計となっていました。そこで誕生したのがこのレバレッジETFです。

1-2.レバレッジ型(ブル)ETFの仕組み

 例えば東証でもっとも取引されている(NEXT FUNDS) 日経レバレッジ上場投信は、原資産に対して2倍の値動きをするように設計されています。つまり、原資産の日経平均株価が1上がれば2上がり、1下がれば2下がる、という値動きをします。

1-3. インバース(ベア)型ETF

  レバレッジ型ETFの中にはインバース(ベア)型と呼ばれるものが存在します。これはレバレッジ型ETFの1種なのですが、原資産が1動く時にー1倍やー2倍といったマイナス倍の動きをするように設計されています。例えば、(NEXT FUNDS) 日経レバレッジ上場投信と出来高を2分する人気銘柄・(NEXT FUNDS) 日経ダブルインバース上場投信は、日経平均株価が1上がると2下がるようになっており、原資産が下がる局面でも利益を出すことが可能です。

1-4. レバレッジ型ETFってどういう仕組み?

 では、一体どうやってこの値動きを実現しているのでしょうか?通常ETFは原資産と同じ銘柄や資産を保有することでその値動きを再現しているのですが、レバレッジ銘柄の場合は現物を保有するだけではレバレッジをかけた値動きを実現できないため、先物やスワップ、オプションといったデリバティブを利用しています。デリバティブ、と聞くと何だかとてもハイリスクな金融商品のように聞こえますが、レバレッジETFを取引するということは間接的にデリバティブの取引を行っているのと同じことなのです。

 

2.レバレッジ型ETFの種類

 世界にはさまざまな種類のレバレッジ型ETFが存在します。レバレッジ銘柄を支持する投資家は多く、レバレッジ銘柄専門のプロバイダも何社か存在するほど。中でも、米国に拠点を置くDirexonはレバレッジ銘柄に特化したプロバイダとして名を馳せており、実に○銘柄ものレバレッジ型ETFを提供しています。その原資産は金や原油といったコモディティから債券まで多種多様。中には1年で価格が100分の1以下になってしまった銘柄も・・・そんなDirexonの銘柄をいくつかご紹介します。

2-1.銘柄①Direxion Daily Brazil Bull 3x Shares(BRZU)

 Direxionの手にかかれば新興国だってレバレッジ取引の対象に。この銘柄はブラジルMSCI Brazil 25-50 Indexというブラジルの大・中型株から成る株価指数に連動し、その3倍の値動きをするよう設計されています。ブラジルだけでなく、ロシア、中国、ヨーロッパなど、様々な国の株価指数にレバレッジをかけた銘柄が存在します。

2-2.銘柄②Daily 20+ Year Treasury Bear 3x Shares(TMV)

 世界で最も安定していると言われる米国20年債、別名トレジャリーもレバレッジ銘柄が存在します。債券は株に比べ価格が動く要因が明確なので相場を読みやすい反面、値動きが小さく大きな金額で運用しなければ利益が出しにくいという難点がありました。それを、レバレッジをかけることで解消したのがこの銘柄。トレジャリーの3倍、およびー3倍の値動きをする銘柄があります。

2-3.③Direxion daily Jr Gold Miners Bear 3x(DUST)

 最後の銘柄は、Direxionのレバレッジ銘柄の中でも最もハイリスクな銘柄のご紹介です。米国ニューヨーク証券取引所に上場する金鉱株関連の銘柄を集めた指数に連動し、元の指数のー3倍の動きをするように設計されている銘柄なのですが、数年前のブームの頃は今の約100倍、3000ドル前後で取引されていましたが、現在の価格はたった40ドル前後。今でも1日で20%以上動くことも珍しくない、とってもエキサイティングな銘柄です。チャートもなかなかインパクトのある仕上がりですよね・・・

3.レバレッジ型ETFのメリットとデメリット

 原資産の値動きに対し更にアグレッシブに利益を追求したり、相場全体が低迷しているなかでも逆向きの動きをすることで利益を出したりと、運用の幅を広げてくれるレバレッジ型ETF。どんなメリットとデメリットがあるか更に詳しく見ていきましょう。

3-1. メリット

まずはメリットから見ていきましょう。

3-1-1. 相場観に自身があるときにはもってこい

レバレッジETFは原資産の日々の騰落率に対し2倍、3倍、又はマイナス1倍、マイナス2倍となる値動きになるよう、先物やオプションなどを組み合わせて設計されています。なので、例えば短期的な相場観に自信があるときには、元の指数ETFよりもレバレッジETFを使ったデイトレードの方が高い収益を見込めます。

3-1-2. 様々な相場環境でも利益を出すことができる

2倍、3倍といった銘柄だけでなく-2倍、―3倍といった銘柄もうまく利用すれば、例えばリーマンショックのような世界中の銘柄が下がっている時でも(短期的に)利益を上げることができます。通常であれば空売りやCDS(クレジットデフォルトスワップ)といった中高度な投資手法でそれなりの資金を用意する必要がある取引を小額で出来るメリットは大きいといえます。

3-2. デメリット

デメリットとしては、とにかく長期投資に向かないことが挙げられます。

3-2-1. コスト(エクスペンスレシオ)が高い

先ほどもお伝えしたとおり、レバレッジ銘柄はデリバティブを用いた複雑な設計でこういった値動きを実現しているため、コストが余計にかかるというデメリットがあります。エクスペンスレシオが一般的に高めに設定されており、長い期間の投資には向いていません。

3-2-2. 長いスパンで見ると値動きが乖離していく

原資産に対して2倍や3倍といった動きをするのは1日の中だけでの話で、複利効果やエクスペンスレシオの関係から、2日以上保有した場合の価格の動きは純粋な倍率ではなくなってしまいます。

3-2-3. 値下がり幅が大きい

原資産に対して2倍や3倍といった動きをするということは値動きも2倍、3倍になります。下の図のレバレッジ銘柄の値動きのグラフの赤線(レバレッジ型)と青線(通常)の比較をみても、赤線が通常のETFより激しいことがわかります。

レバレッジ銘柄の値動き

下のチャートは、米国で最もポピュラーな指数、S&P500に連動するETF(青線)と、その2倍の値動きをするように設定されたレバレッジETF(赤線)の値動きを比較したものです。

レバレッジ銘柄の方が相場の山はより高く、谷はより深い動きになっているのがお分かりいただけると思います。全体で見ると10年間でのパフォーマンスは大きくは変わらないので、やはり短期での値動きを追うべき銘柄だと言えるでしょう。

4.まとめ

いかがでしたか?ETFの中でも特殊と言えるこのレバレッジ銘柄。細かい値動きをとらえる自動売買や短期トレードをされる方にはもってこいの銘柄ですが、リスクもコストも高いため、初心者の方や長期運用を考えている方には正直おススメできません。まずは通常の銘柄でETFの相場感をマスターすることをオススメしています。その上で自分の用途に合わせて選択してください。

転載記事:ETF-gateway 短期トレードに最適、大人気の【レバレッジ型ETF】の全てより