高利回り社債ETFは米国経済のバロメーター

高利回り社債ETFは米国経済のバロメーター
この記事は「ETF GateWay」の広瀬隆雄氏の記事です。

■意外に下げない米国株式市場

先週金曜日に発表された雇用統計は「あっ!」と息を呑むような悪い数字でした。

また6月23日には、いよいよ英国のEU離脱に関する国民投票が実施されます。

このように、何かと不安材料の多い昨今のマーケットですが、どっこい米国株式市場はしっかりした展開になっています。

マーケット堅調の理由は、いろいろなところに求めることが出来ると思いますが、今日はその中で、見逃せない重要な要因について説明します。  

■信用度の低い企業に、ちゃんとお金は回っているか?

その要因とは「信用度の低い企業に、ちゃんとお金は回っているか?」という点です。

いまダウ工業株価平均指数に採用されるような、ピカピカの大企業であれば、アメリカの景気が良かろうが、悪かろうが、銀行から融資を受けることは問題ないでしょう。

しかしこれが社債の格付けが低い企業(=高利回り社債を出している企業)となると、そう簡単に物事は運びません。

不景気になると、体力の無い企業から順番に経営がおかしくなります。

銀行はそれを熟知しているので、そのような企業に対しては貸し渋り始めますし、高利回り社債も値を崩しやすいです。 つまり高利回り社債の値動きを見ていれば、投資家がアメリカの景気に対して、どのような考えを持っているかを垣間見ることが出来るのです。

高利回り債のETFにiシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETF(ティッカーシンボル:HYG)というのがあります。

このETFはアメリカの高利回り債1,030銘柄を組み入れたETFであり、そのチャートを見れば投資家が信用度の低い企業の先行きに関して楽観しているか、それとも悲観しているかが、たちどころにわかります。


そのチャートは、2月に大底を付けた後、じりじりと戻しています。つまり景気に対する楽観的な見方が、いまどんどん広がっているのです。

iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETFにはどんな社債が組み入れられているのでしょうか?

セクター的には、下のようになっています。


このうち特にエネルギー・セクターに関しては、シェール企業など、2014年夏以降の原油価格の下落で、かなり資金繰りが苦しくなった企業が多く含まれています。

幸いにして、心配されたようなシェール企業の大量倒産は、いまのところ起こっていません。

次にiシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETFに組み込まれた社債が、どのような格付けを得ているのかを示したグラフを掲げます。


さらに償還期限の分布を示したグラフも示しておきます。


■このETFの利用方法

さて、iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETFの利用方法ですが、第一の法則として、このETFがどんどん上昇しているときにS&P500指数に代表される米国の株価指数がどんどん下がるというような、ちぐはぐな動きをすることは、極めて稀だということを覚えておいてください。

またこのETFがどんどん上昇しているとき、米国の経済がリセッション入りするということも、普通、考えられないです。

このようにiシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETFは、株式市場や米国経済の「健康診断」をする際の、もっとも手軽なインジケーターの役目を果たしているわけです。

もちろん、iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETFそのものをトレードすることも出来ます。この銘柄は「トライオートETF」の取扱銘柄でもあります。  

この記事は「ETF GateWay」の広瀬隆雄氏の記事です。