1 ダウ理論は全てのチャート分析の基本
多くの投資家のみなさんはニュースを読んだり、チャートを見たりして相場の分析をおこなって取引をしていると思いますが、結局のところ値頃感で売買してしまうなんてことも多いと思います。
チャート分析も多少は勉強して取引しているけど、上手くいかないなんてこともありますよね。
そこで今回はチャート分析の基本になるダウ理論についてお伝えいたします。
ダウ理論だけでも多少は取引アイデアのヒントとして利用できないことはありません。
ダウ理論を理解することで真の効果を発揮するのは、みなさんがご利用されている移動平均線やRSI、出来高などによる分析の考え方に確信が持て、分析の精度が高まり売買判断に磨きがかかることで間違った売買や値頃感での取引を軽減できることにあります。
是非、ダウ理論を覚えておきましょう!
1-1 ダウ理論とは
ダウ・ジョーンズ社の創設者のひとりであるチャールズ・ヘンリー・ダウがウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説に「平均株価」という当時は画期的なアイデアを利用し「株価と景気の関係」を研究・解説してまとめたものがダウ理論です。
その分析の考え方は今でも株式・為替・コモディティ・債券相場などのチャート分析の基本として利用されています。
(出所:wikipedia)
1-2 平均株価と景気の関係について
今でこそ、日経平均やダウ平均などといった株価指数が世界中にありますが、その「平均株価」といった概念を始めて考案したのがチャールズ・H・ダウです。
個別の株式の上昇・下落はもちろんその国の景気の良し悪しにも左右されますが、景気が良い時でもその企業特有の要因などにもより株価が下落したり、景気が悪い時でも株価が上昇したりします。
そこで「平均株価」の登場です。ある国の景気が良ければ(個別株はどうであれ)その国の平均株価は上昇、逆に悪ければ平均株価は下落するということです。
当たり前と言えば当たり前ですが、まだ「平均株価」という概念が無かった100年前にこういうアイデアに至ったというのは凄いことですよね!
ちょっと端折りますが、特に「工業株平均株価」と「鉄道株平均株価」という2つの「平均株価」と景気の関係について研究したダウの結論が次の6つ+1になります。
1-3 ダウ理論の6つの法則(ダウ理論の6つの考え方)
1-3-1 平均は全てを織り込む
・需要と供給の変化により価格が変動している
・需要と供給の変化は今までに起きているあらゆる事柄の影響を受ける
・今までに起きているあらゆる事柄の影響を受けることにより価格が変動している
解説:チャート分析の前提の1つ「価格は全てを織り込んでいる」と同じ意味合いです。
その国のマクロ経済の状況やそれに対しての心理動向も全て平均株価に織り込まれているということです。
1-3-2 トレンドには3種類ある
まず、3種類のトレンドの話をする前に相場のトレンドって何かについてです。
トレンドは相場の方向性のことで上昇トレンドと下降トレンドがあり、上昇トレンドは下値が切り上がって推移、下降トレンドは上値が切り下がって推移している状況になります。
これを踏まえた上で、次の3種類の期間でトレンドがあるということです。
・プライマリートレンド・・・・・1年以上で数年間続く長いトレンド
・セカンダリートレンド・・・・・数週間から数ヵ月続くトレンドでプライマリートレンドの修正的な動き
・マイナートレンド・・・・・3週間未満の短いトレンド
解説:サイクル分析でも解説していますが、景気循環という観点から言えば、在庫循環に起因し約40カ月とされるキチンサイクルや設備投資に起因し約10年とされるジュグラーサイクル、建設や世代交代に起因し約20年とされるグズネッツサイクル、技術革新や戦争に起因し約50年とされるコンドラチェフサイクルがあると言われています。
例えば、下の図のように在庫循環は、景気が悪い時は在庫も生産も減少、景気が良い時は在庫も生産も増加ということになり、矢印のようにぐるぐるとまわります。
これが在庫循環のサイクルです。
下のチャートは経産省が発表している鉱工業の在庫循環図(2016年9月)で、大体4年ぐらいでぐるっと回ってることがわかります。
(出所:経済産業省)
また、内閣府は日本の景気循環に関して以下のように発表しています。
(出所:wikipedia)
景気拡張期は平均36カ月(約3年)、景気後退期は平均15カ月(約1年強)で、景気のサイクルは平均52カ月程度(約4年強)となります。
こういった観点から、プライマリートレンドは景気循環理論でいうキチンサイクルがベースになっていると言えます。
1-3-3 プライマリートレンドは3段階で成り立っている
第1段階
多くの投資家が悲観的な状況の中、先行型の投資家が参加し始める
第2段階
相場が急激に上昇し多くの投資家が市場に参入する
第3段階
新聞の見出しが大きくなり、一般投資家が市場に参加し出来高が急増 先行型の投資家は利食いし始める
『相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく(ウォール街の格言)』
解説:プライマリートレンドを、下のイメージ図のように値動きと投資家の投資行動で3段階に分けたものになります。
これって、マーケティングのイノベーター理論(新商品や新サービスがどれだけ市場に浸透しているかに関する理論=普及学)に似ていないですか?
株を買う場合でもなにかのブームに関しても人間にはこのような行動の傾向があるということです。
マーケティング的な考え方を1900年頃にしていたダウって天才かもです。
ちなみに、下落相場の場合は下の図ような3段階になっています。
1-3-4 工業株平均と鉄道株平均は同じような動きになる
(2つの平均は相互に確認できなければならない)
もともと景気循環を考える上で、ダウは景気動向と工業株平均株価と鉄道株平均株価の動きが同じトレンドになっていなければいけないということです。
解説:景気が良ければ、生産が増加し、また、輸送も増えるということです。
1-3-5 価格と出来高は相互に確認できなければならない
上昇トレンド時は価格の上昇時に出来高が増加し下落時に出来高が減少、下降トレンド時は価格の下落時に出来高が増加し上昇時に出来高が減少するという意味合いです。
1-3-6 トレンドは明確な反転が確認できるまで続く
トレンドの反転シグナルというものがあります。具体的には下のような価格の動きになります。
世界的に有名なヘッジファンドでチャート分析をおこないトレンドフォロー型の資産運用をおこなっているWintonCapitalと言う会社があります。
この会社のファンドの運用結果はこんな感じ。
以前、WintonCapitalの運用担当者の一人にお会いする機会があり、
「トレンド転換はどうやって確認しているのか?トレンド転換のタイミングやトレンド転換の価格水準などは予測しているのか?」
と質問したところ、
「トレンドが変化するタイミングや価格水準は予測しておらず、トレンドが続く限りポジションをホールドし、トレンドの変化が確認できたら決済するといった手法です。やってることは、移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスと同じようなことです。」
との回答でした。
トレンドは反転するまでは続く、まさにダウ理論を実践しているってことですね。
1-3-7 終値が重要
ここまでの6つに加えて、もう1つがこの終値が重要だということ。
始値、高値、安値、終値とありますが、一番重要なのは終値だということです。
その理由は、
・一番現在に近い価格
・最終的に市場に参加している投資家が合意した価格
・終値以外の価格は取引数量が少ない可能性がある=市場に参加している多くの投資家が合意した価格では無い
※為替や指数などは取引自体されていない気配値という場合もある
などになります。
2 ダウ理論で相場のトレンドを読む方法と実際の取引例
ダウ理論は、特にトレンド系の分析の基本です。
そしてトレンドライン分析や移動平均線などのトレンド系テクニカル指標で、その考え方が利用されています。ここではトレンドラインと移動平均線について具体的な取引の仕方についてお伝えしていきます。
2-1 トレンドライン
ステップ1
チャートの高安の推移からトレンドを確認する
下のチャートの水色のトレンドラインから下降トレンドだったと判断できる
ステップ2
トレンドラインなど価格が超えたら取引をする(赤い矢印)
下のチャートの水色のトレンドラインを上回ったタイミング
また、下降トレンドラインの赤い丸印で示した価格を上回ったタイミング
2-2 移動平均線
ステップ1
移動平均線の傾きと位置から相場のトレンドを確認する
下のチャートではそれぞれの移動平均線が上昇から下降に変化しつつあり
上昇トレンドが変化してきていることがわかる
ステップ2
価格が終値ベースで移動平均線を超えたら取引をする
黄色い丸印の高値を付けた後これを上回ることなく、下向きに変化しつつあるそれぞれの移動平均線を
価格が下回った矢印のタイミング
3 まとめ
ここまで見ていただいたようにダウ理論は、実務的なチャート分析で利用できないわけではありません。
しかしながら、皆さんが一般的に利用しているチャート分析の基本になっているということです。
したがってダウ理論を理解しておくことは、それぞれの分析やそれによる売買判断を強力にアシストするもの言えます。
値頃感でポジションを持ったり決済したりしないよう皆さんがご利用している分析手法の分析ポリシーとしてダウ理論の6つの法則を、是非、頭の片隅に留めておいていただければと思います。