こんにちは!インヴァスト証券テクニカルアナリストの山口です。
英国のEU離脱を受けて英国の通貨「ポンド」が下落。 下のチャートは、英ポンド/円と英ポンド/米ドルの月足チャートになりますが、7月6日ポンド/円は2011年11月以来4年8カ月ぶり、ポンド/ドルに至っては1985年6月以来31年1カ月ぶりとなる安値を更新しました。
英国の国民投票後、多くの大手金融機関は中長期のポンド相場の見通しを変更しています。
7月7日には、外国為替市場でもトップクラスの取引シェアを誇るゴールドマン・サックス・グループ、シティグループ、ドイツ銀行が以下の予想を出したと報じられています。
ゴールドマンとシティは1ポンド=1.20ドルを予想
ドイツ銀行は年末までに1.15ドルを予想
現在のポンド/ドルを1.30ドルとすれば1.20ドルで約7.7%の下落、1.15ドルで約11.5%の下落です。
今回は「このポンド下落シナリオ」をベースにトライオートETFの各銘柄を見てみようと思います。
英ポンド/ドルと各ETFの相関係数
下のマトリクスは英ポンド/ドルとトライオートETFの相関係数(そうかんけいすう)を調べたものになります。
※2016年第2四半期(2016年3月1日から2016年6月30日まで)の日足終値を元に算出
ちなみに、相関係数とは、過去一定期間における2つの銘柄の値動きが似ているかどうかを調べたものになり、その結果は−1 から 1 の間の数値となります。
相関係数が1 に近いときは正の相関(2つの銘柄は同じような値動きになっている)、−1 に近ければ負の相関(2つの銘柄は正反対の値動きになっている)があるといいます。
上記の表は相関係数を昇順で示しており、1に近い(黄色っぽい網掛け)ほどポンド/米ドルとは正の相関で、-1に近い(緑色っぽい網掛け)に近いほどポンド/米ドルとは負の相関になっていたETF銘柄だと言えます。
言い換えれば、
『黄色っぽい網掛けの銘柄はポンド/ドルが上昇すると上昇しやすく、ポンド/ドルが下落すると下落しやすい』
また、
『緑色っぽい網掛けの銘柄はポンド/ドルが下落すると上昇しやすく、ポンド/ドルが上昇すると下落しやすい』
というわけです。
英ポンドの下落で期待できるETF銘柄は?
それでは、大手投資銀行が予想するように今後更に「ポンド」が下落するのならどの銘柄が買いなのか?
過去の相関関係からみれば(こういった相関関係が今後も続くと考えれば)、負の相関となっている「(NEXT FUNDS) 日経ダブルインバース上場投信」や「SPDR® ゴールド・シェア」、「iシェアーズ iBoxx米ドル建て投資適格社債ETF」など、上のマトリクスでは上位にある緑色っぽい網掛けの銘柄になるかと思います。
更に言えば、ポンド下落を予想するなら、黄色っぽい網掛けの銘柄はあまり積極的にポジションをとりたくない銘柄だと考えられます。
ちなみに、ポンドと「(NEXT FUNDS) 日経ダブルインバース上場投信」や「SPDR® ゴールド・シェア」、「iシェアーズ iBoxx米ドル建て投資適格社債ETF」が、ここ数カ月、負の相関になりやすかった理由は、ポンド下落時は市場がリスクオフ、上昇時はリスクオンに傾きやすかったことが挙げられます。
特にポンドの下落時は、リスクオフにより「日経平均」は下落しやすく、「金(Gold)」や「債券」は買われやすい地合いにあったものと思われます。
3つのETF銘柄のチャートとチャート分析
最後にこれらの銘柄のチャートです。
【日経ダブルインバ】(1357)週足
【日経ダブルインバ】は各移動平均線が上向きで且つ価格は各移動平均線の上側で推移しており、昨年の8月以降は上昇トレンドと考えられます。
各移動平均線が位置する3,200円(26週MA)、3,120円(13週MA)、3,015円(52週MA)はサポートとして意識され、押し目買いを考えたいところです。
短期的な観点ではストキャスティクスが80%近くまで上昇していますが、ややその勢いが減速気味となっているため、スピード調整もあるかもしれません。
【SPDRゴールド】(GLD)週足
【SPDRゴールド】も各移動平均線が上向きで且つ価格は各移動平均線の上側で推移していることから上昇トレンドですが、6週連続の陽線引けとなっており、ストキャスティクスも80%を超えているため、短期的にはスピード調整による下押しがあるかもしれません。
青いラインを引いている126ドル付近は過去の高値となることが多く、目先はこの水準がサポートとして意識されそうです。
【投資適格社債】(LQD)週足
【投資適格社債】も上昇トレンド。2015年初めの高値となる123.60前後はレジスタンスとして意識されそうですが、これを上抜けてくる場合は更に上値を追う展開になるかもしれません。
また、こちらもストキャスティクスが90%をも超えているため、短期的にはスピード調整による下押しがあるかもしれません。
以上、3つの銘柄を見てみましたが、どの銘柄も中長期的な観点では上昇トレンドと見受けられます。これまでの上昇の勢いが強かった分、各銘柄ともに反落又は日柄調整の局面があるかもしれませんが、それ程大きな下落には繋がりにくいものと思われます。
是非、今後のポンドの動向とこれらの銘柄の動向もチェックして見てください。