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日経平均株価 相場レポート(2026年2月)

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1. 2026年2月中旬までの状況

1-1. 株価動向:過去最高値圏(58,000円台)

2月12日、日経平均株価は取引時間中に58,000円を上回りました。これまでの最高記録を塗り替え、これまで経験したことのない水準での推移となっています。

1-2. 政治環境:選挙後の政策期待が投資家心理を後押し

選挙後の市場では、「政府が景気を押し上げる政策を打ち出すのではないか」という期待が先行して株価に反映されています。

財政出動(政府がお金を使って経済を刺激すること)、減税、企業の投資を後押しする施策などへの期待が、「多少リスクを取ってでも株を買いたい」という投資家心理を支えています。

一方で、こうした政策が円安を進めた場合、輸入品の値段が上がり、生活に関わる物価を押し上げるリスクがあります。物価の上昇は政権への支持率にも影響するため、政策への期待と物価上昇への懸念が同時に意識される状況となっています。

1-3. 為替環境:円の急な値動きが物価・金融政策に波及

財務省は、為替の急激な変動(ボラティリティ)に対する警戒を続けています。円が短期間で大きく動く場面では、当局の発言ひとつで市場の雰囲気が一変しやすい状況です。

とりわけ注意が必要なのは、円の値動きが「為替」にとどまらず、幅広い分野に波及する点です。その流れを整理すると、次のようになります。

  1. 円安が進む → 海外からモノを買う値段(輸入価格)が上がる
  2. 輸入価格が上がる → 食料やエネルギーなど、暮らしに関わる物価が上昇する
  3. 物価が上がる → 日銀が「金利を上げてインフレを抑えるべきか」と判断を迫られる

このように、為替は物価や金融政策を通じて、最終的には株価にまで影響を及ぼす起点となっています。

1-4. 物価動向:企業間の取引価格は落ち着くも、輸入品は円安の影響が残る

企業物価指数(CGPI:企業どうしで取引されるモノの値段の動きを示す指数)は、前年からの上昇ペースが鈍化しつつあります。しかしながら、円安の影響により、海外から輸入するモノの値段には依然として上昇圧力が残っています。

国内の要因だけを見れば物価は落ち着く方向にありますが、為替の動き次第では再び物価が上がり始めるリスクがあります。

1-5. 金融政策:政策金利0.75%を維持、ただし利上げの可能性も意識される

日銀は1月の会合で、政策金利(短期市場金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標)を0.75%に据え置きました。ただし、今後の経済・物価の見通しを引き上げたことや、一部の委員が利上げを提案したことなど、「今後さらに金利を上げる方向に動く可能性」を示す材料も見られています。

植田総裁は、「賃金が上がり、それが物価の上昇につながり、企業の売上が増え、さらに賃金が上がる」という好循環がしっかり進んでいるかを見極めながら判断する方針を示しています。

1月に公表された展望レポートでは、各国の貿易政策(関税の引き上げなど)による影響もリスクとして明記されており、次にいつ、どのような条件で金利を引き上げるかは、市場参加者にとって最大の関心事となっています。

2. 現在の相場構造

本章では、いま日経平均株価を動かしている主な要因と、それぞれがどのように株価に影響するかを整理します。

2-1. 政策期待:「期待」から「中身の検証」へ移る段階

選挙後の政策への期待が株価を支える構図は続いていますが、市場の関心は徐々に「実際にどんな政策が出てくるのか」という中身の検証に移りつつあります。

景気刺激策の規模はどれくらいか、財源はどこから確保するのか、いつ実行されるのか──こうした具体的な内容が、今後の株価を左右する主な判断材料となります。

中身が市場の期待を上回れば「もっと上がるかもしれない」と買いが入りやすく(上値追い)、期待に届かなければ「期待しすぎだった」と売りが広がりやすい(調整)局面です。

2-2. 円相場:企業の利益と物価の両方に影響

円安の局面では、海外にモノを売る企業にとっては、外貨で得た売上を円に換えたときの金額が増えるため、利益の追い風になります。

しかし同時に、輸入品の値段が上がるため、家計にとっては負担が増え、日銀の金利判断も難しくなります。円高の場合はその逆で、輸入品は安くなりますが、輸出企業の円建ての利益は目減りします。

現時点では、円が高くなるか安くなるかという方向性よりも、どれくらい速く動くかが市場の焦点となっています。急激な為替変動は、企業利益・物価・金利の見通しを同時に揺さぶるため、株価の振れ幅(ボラティリティ)が大きくなりやすい点に注意が必要です。

2-3. 金融政策:金利の引き上げペースが株価の評価に影響

金利が上がると、株式投資の魅力が相対的に下がります。これは、将来の企業利益を現在の価値に換算する際に使う「割引率」が上昇するためです。

簡単に言えば、「預金や国債でも十分な利息がもらえるなら、わざわざリスクのある株を買わなくてもいい」と考える投資家が増え、特に将来の成長期待で株価が高くなっている銘柄(成長株)ほど、値下がりしやすくなります。

もっとも、日銀は現時点で「物価上昇率を差し引いた実質的な金利はまだ低い水準にあり、景気を締めつけるほどではない」との認識を維持しています。

急激な利上げよりも、経済指標の実績を見ながらの段階的な運営が見込まれますが、日銀の発言や姿勢のわずかな変化が市場の金利予想に大きく影響する状況が続いています。

2-4. 指数の性質:一部の大型株が指数全体を左右する

第1章で述べたとおり、日経平均株価は一株の値段が高い銘柄ほど指数への影響が大きい仕組みです。そのため、数社の値がさ株が好調であれば指数全体が上昇しているように見えますが、それが市場全体の幅広い上昇を意味しているとは限りません。

指数の上昇が本物かどうかは、TOPIXなど市場全体を反映する指数と見比べて確認する必要があります。

3. 今後の想定シナリオ

3-1. ベースシナリオ(最も起こりやすい展開):高値圏での一進一退

前提条件
政策への期待は維持されるものの、具体的な中身が明らかになる過程で「思ったより良い」「やや物足りない」という評価のブレが生じます。

日銀は経済指標の実績を見ながら判断する姿勢を続け、賃金・物価・為替の動きを踏まえて段階的に対応する見通しです。

想定される値動き
過去最高値圏で、新しいニュースが出るたびに「さらに上がるかも」と買いが入り(上値追い)、ある程度上がったところで「利益を確定しておこう」と売りが出て押し戻される(利益確定売り)──この繰り返しが続きやすいと考えられます。

特に、円が短期間で大きく動く場面では、企業の利益見通し・物価の見通し・金利の見通しが同時に揺さぶられ、株価の振れ幅が大きくなりやすくなります。

注目すべき観測点
・政策の具体化:景気刺激策の規模・財源・実施時期について、具体的な数字が公表されるか
・円の動くスピード:急激な変動に対して当局の警戒が強まる局面が来るか
・物価の為替への感応度:企業間取引の物価が落ち着いても、輸入品の値段が上がり続ける状態が続くか
・日銀の発信内容:次の利上げの条件について、日銀の考え方に変化の兆しがあるか

3-2. 強気シナリオ(株価がさらに上昇を続ける展開)

条件
政策が市場の期待を上回る規模とスピードで具体化し、為替が安定的に推移して企業が公表する今後の業績見通し(業績ガイダンス)も崩れないことが前提となります。日銀が市場にとって予測しやすいペースで段階的な政策運営を続けることも重要な条件です。

想定される展開
値がさ株を中心に指数が上昇基調を維持しやすくなります。政策の中身に具体的な数字が伴い、円相場の安定が続く場合、上昇が持続する可能性が高まります。

3-3. 弱気シナリオ(高値圏から大きめに下落する展開)

きっかけになり得るもの
・円高が急速に進み、海外で稼ぐ企業の利益見通しが引き下げられる
・日銀が市場の想定よりも積極的に利上げを進める姿勢(タカ派)を示す
・政策の具体策が、先に膨らんだ市場の期待に見合わない内容にとどまる
・各国の貿易政策や関税の引き上げなど、海外発の不確実性が高まる

想定される展開
高値圏での下落は、企業業績や経済の実態(ファンダメンタルズ)が悪化したからというよりも、「あらかじめ株価に織り込まれていた楽観的な期待が剥がれ落ちる」ことをきっかけに起きる傾向があります。

たとえば、「大規模な減税がある」と期待して株を買っていた投資家が、実際には小規模な減税にとどまると分かった瞬間に一斉に売る、といった展開です。

日経平均が一部の値がさ株に引っ張られて上昇してきた局面では、それらの銘柄が下がると指数全体の下落幅も大きくなりやすい点に注意が必要です。

4. 今後の注目点

  • 日銀の動き:日銀が次に金利を上げる条件として注目されている「賃金の伸び」「物価の基調的な上昇ペース」「円相場の動向」の三つに、変化の兆しが見えるか
  • 政策の具体化:景気刺激策の規模・財源・実施時期について、「方向性」レベルの発表から「具体的な数字」を伴う内容へ進むかどうかが焦点となります
  • 海外のリスク要因:各国の貿易政策や関税の引き上げをめぐる不透明感が、日本企業の業績見通しに悪影響を及ぼしていないか
  • 為替の動き方:円高・円安のどちらに向かうかだけでなく、変動のスピードが市場の不安を高める点にも注意が必要です

おわりに

本レポートの内容は、大きく3つの軸で整理すると全体像がつかみやすくなります。すなわち、①政府の政策への期待がどう変化するか、②円の値動きがどう波及するか、③日銀が金利をどう動かすか、の3つです。

また、日経平均株価だけを見ていると、一部の値がさ株に引っ張られた「見かけ上の好調さ」を、市場全体の実態と取り違えてしまうことがあります。TOPIXと併せて確認することで、上昇が幅広い銘柄に広がっているかどうかを見極めることができます。

そして、過去最高値圏で最も注意すべきなのは、企業業績や景気が実際に悪化することよりも、「期待していたほど良くなかった」という失望が広がることです。政策の具体的な中身(規模・財源・時期)を継続的に確認し続けることが、急な相場変動に備えるうえで重要と考えられます。

本レポートが、市場環境の整理と今後の見通しを検討する際の参考となれば幸いです。(2026年2月13日執筆)