緊迫する中東情勢、世界通貨セレクトへの影響は?

はじめに
2025年6月13日(金)にイスラエルがイランの核関連施設などを攻撃し、これに対してイランが報復措置に出たことから、一気に緊張が高まっている中東情勢。特に、米国がイランと核開発に関する交渉を進めている最中での軍事行動であったことから、米国や欧州を巻き込むかたちで地政学的リスクが世界的に意識され、株式市場や為替市場にも大きな影響を与えています。
このブログでは、現在の中東情勢により起きていることがトライオートの提案する「世界通貨セレクト」にどのような影響を与えているのか、これまでの値動きとあわせて解説いたします。
主な動きと「世界通貨セレクト」への影響
原油の高騰
中東の緊張激化はエネルギー供給への不安感を高め、原油価格の大幅上昇を招いています。1バレル60ドル近辺で取引されていたWTI原油は一時78ドル付近まで急騰しました。
イランはOPEC(石油輸出国機構)加盟国の中で第3位の産油国であることに加えて、過去には今回のように軍事的緊張が高まった際にホルムズ海峡の封鎖を示唆したこともあります。世界の原油の約20%が通過するこの海峡が封鎖された場合、原油供給の大きな混乱が予想されており、米JPモルガン・チェースは「原油価格は最大で130ドルに達する可能性がある」との見解を示しています。
世界通貨セレクトの通貨ペアにおいて原油高の影響を最も受けやすいのがノルウェー/スウェーデン(NOK/SEK)です。ノルウェーが主要な産油国のひとつであるためです。足元でNOK/SEKは大幅な上昇を見せており、今年3月以来となる0.96台まで大きく上昇しました。
また原油高に連動して他の資源価格も上昇傾向にあり、資源国の豪ドルやカナダドルも買われやすい環境があります。豪ドル/NZドル(AUD/NZD)は上昇方向、米ドル/カナダドル(USD/CAD)は下落方向の圧力が強まりました。
リスク回避姿勢の高まり
地政学的リスクが高まる局面では、一般的に「安全通貨」とされる米ドル、スイスフランが買われやすくなります。しかし今回は米国がイランとの核交渉を行っていた当事者であることから、米国自身も関与するリスクが意識され、一時米ドルにも売り圧力がかかる場面がありました。
その結果、米ドル/スイスフラン(USD/CHF)では、ドル売り・スイス買いの流れが強まり、下落基調を見せました。
その後、米国が一線を引く姿勢を示したことで米ドルは持ち直したものの、トランプ大統領の発言などが不安材料となり、いわゆる「有事のドル買い」の勢いは限定的となっています。

値動きは収益機会にもつながる
このように、地政学的リスクの高まりによって足元では各通貨ペアに動きが出ていますが、トライオートの「世界通貨セレクト」は、過去10年という長期の値動きをもとに、通貨ペアの選定とトレードルールの設計を行っています。
レンジ戦略では、一定の範囲内で上下動を繰り返すことをねらいとしており、そのためレンジ内での短期的な上下動は多くの収益機会につながる可能性があります。短期的なニュースや一時的な相場の変動に一喜一憂するのではなく、中長期的な視点で安定した運用を継続することが重要です。
実際、2022年に勃発したロシア・ウクライナ戦争の際にも、当初はリスク回避による安全通貨への逃避や、エネルギー不安による資源国通貨高など今回と似たような相場の反応が見られ、ボラティリティの上昇により多くの通貨ペアが大きく変動しました。しかし、その後は落ち着きを取り戻しています。
今後も中東情勢の動きに注目しつつ、引き続き長期的な視点での運用を心がけていきましょう。