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カナダドルの特徴

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カナダドルとは?

カナダドル(CAD)は、カナダの法定通貨であり、中央銀行であるカナダ銀行(Bank of Canada)が発行・管理しています。
通貨記号は「$」で表され、国際的には「CAD」として取引されています。
カナダの1ドル硬貨には、水鳥の一種「コモン・ルーン」が描かれており、これにちなみ “ルーニー(Loonie)” の愛称で親しまれています。
カナダドルの1ドル硬貨が“ルーニー”、2ドル硬貨が“トゥーニー”と呼ばれるように、数字と洒落を効かせたユーモアは国民性の一部です。

カナダはG7の一員であり、国際金融において重要な役割を担っています。
特に外為市場では、カナダドルは原油や天然ガスなどエネルギー価格の変動に影響を受けやすい「資源国通貨」として知られ、国際的にも主要通貨のひとつに数えられています。

カナダドルの歴史

1930年代の大恐慌以前、カナダには中央銀行が存在せず、大手銀行が紙幣の供給や小切手決済を担っていました。
人口が農村に分散し、少数の銀行が全国をカバーする仕組みは一見安定しており、中央銀行の必要性は強く意識されていませんでした。

しかし大恐慌と干ばつが重なり景気低迷が長期化すると、制度への不満が高まります。
国際決済の仕組みを欠くことを懸念したベネット首相の下、1933年にマクミラン卿を委員長とする王立委員会が設置され、中央銀行の設立を勧告しました。
翌1934年に「カナダ銀行法」が制定され、1935年にカナダ銀行が開業します。
当初は民間機関でしたが、1938年に国有化され、現在に続いています。

初代総裁グラハム・F・タワーズ(当時37歳)は20年間在任し、紙幣発行の権限を財務省から引き継ぎ、調査部や外国為替部を整備するなど基盤を築きました。
第二次世界大戦では戦費調達と経済安定を担い、国民に国債購入を呼びかけるなど中央銀行としての存在感を高めました。
戦後は成長に伴い役割を拡大し、1950年には主要国に先駆けて変動相場制を導入(後に固定制を経て1970年に再び変動制へ移行)。

1960年代には政府と総裁が金融政策をめぐって激しく対立する「コイン事件」が発生し、総裁辞任を経て権限関係が法的に整理されました。
1970年代のオイルショックでは高インフレに直面し、厳しい引き締め策を実施。
1980年代以降は「物価安定」を最優先に掲げ、1991年には政府と共同でインフレターゲット(1〜3%)を導入しました。

2000年代以降も金融危機や国際的な混乱に対応しつつ、紙幣の刷新や制度改革を重ね、カナダ銀行は現在まで中央銀行としての信頼を築き続けています。

カナダの経済

カナダは、ロシアに次ぐ世界第2位の国土面積と豊富な資源を持つ国です。
人口は約4,010万人で、名目GDPは2兆1,401億米ドル。
公用語は英語とフランス語の二言語です。

輸出の柱は石油・ガスを中心に、自動車、非鉄金属、航空宇宙製品など多岐にわたります。
とりわけ石油と天然ガスは経済の基盤であり、2023年の原油生産量は日量約510万バレル、天然ガスは約179億立方フィートに達しました。
2023年の原油生産量は日量約510万バレルに達し、世界第4位の産油国としてサウジアラビアや米国、ロシアと肩を並べています。天然ガスの生産量も日量約179億立方フィートで世界第5位に位置し、米国やロシアに次ぐ規模です。

資源と並んで、メープルシロップはカナダを象徴する産品の一つです。
カナダ統計局によると、2023年にはメープル製品が68か国に輸出されました。
統計を見ると、メープルシロップは単なる食卓の甘味料ではなく、カナダが世界に届けるもうひとつの「資源」であることが見えてきます。
メープルシロップの甘さは、カナダ経済の“隠し味”とも言えるでしょう。

視点を広げると、カナダ経済は資源と製造業に加え、文化とエンターテインメントの分野でも国際的な存在感を強めています。
トロントやバンクーバーは「北米のハリウッド」と呼ばれ、映画・ドラマ制作は年間100億カナダドルを超える規模に拡大しました。
Netflixをはじめとする海外大手のストリーミング企業が多くの作品を制作し、私たちが日常的に観る映像コンテンツの舞台裏で、カナダの街並みや人材が活かされています。
こうした取り組みによって年間およそ2億カナダドルが新たに国内制作へと流れ込み、映像産業の成長と文化的多様性の広がりが期待されています。

政策金利の推移

カナダ銀行は「オーバーナイト金利の誘導目標」を主要な政策手段として運用し、短期金融市場の基準金利を通じて物価安定を目指しています。

(出典:Bank of Canada「Interest rates」より、2015年~2025年の値を基にインヴァスト証券が作成)
※2025年は年途中(7月末時点)2.75%

2008年の世界金融危機では大幅な利下げで景気を下支え。
その後は回復に合わせ利上げを進めましたが、2022年以降は急速なインフレに対応するため政策金利を一気に引き上げ、2023年には5.00%に到達しました。
その後、インフレ率の鈍化を受けて2024年半ばから利下げが始まり、同年10月には3.75%へ。2025年3月以降は2.75%で据え置かれています。

金融政策決定会合について

カナダ銀行における金融政策は、ガバニング・カウンシルが担っています。
カウンシルは総裁、上級副総裁、複数の副総裁で構成され、経済・金融の安定を最優先とした政策判断を行います。

会合は年 8回の定例日程に基づいて開催され、その都度、政策金利の変更が議論されます。必要に応じて臨時会合も開かれ、経済の急変に対応できる柔軟な仕組みとなっています。

カナダドルの値動きに影響を与える要因

為替変動を左右するのは主に「米ドルとの相対的な金利差」「為替リスクの変化」「原油価格」です。
短期国債利回りが米国より1%低下すれば、投資家は米ドル建て資産を選好し、カナダドルが約1%下落する傾向があります。

加えて、為替リスクそのものの上昇も、カナダドルを下押しする要因となります。
政治や貿易政策の不透明感が高まると、投資家は為替変動に備えた保険的手段にコストをかけるようになり、そのリスクプレミアムの上昇がカナダドルの圧迫につながるのです。

さらに、カナダドルはいわゆる「コモディティ通貨」として振る舞いが強く、特に原油価格との関連性は注目されます。
カナダ銀行が示す分析によると、為替変動を説明する体系的要因として、米ドルとの為替変動、金利差、そして原油価格の動きの三つが主要な構成要素として浮き彫りになっています。

信用格付けとカントリーリスク

カナダも世界の主要格付け会社である S&P、ムーディーズ、フィッチから、いずれも最上位に近い高格付けを維持しています。
S&Pとムーディーズは「AAA」、フィッチは「AA+」を付与しており、これは世界の国々の中でも限られた存在にとどまります。
こうした評価は、カナダの財政の健全性や経済運営の信頼性が国際的に高く認められていることを示しています。
そのため、カントリーリスク(国家信用リスク)が低く、カナダドルは国家信用リスクの観点で安心感のある通貨です。

出典

Bank of Canada
Government of Canada
外務省
カナダ統計局
Canada Energy Regulator