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NZドルの特徴

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ニュージーランドドルとは?

NZドル(NZD)は、ニュージーランドの法定通貨です。
通貨のニックネームとして「キーウィ(Kiwi)」と呼ばれることがありますが、これはニュージーランドの象徴的な国鳥であり1ドル硬貨にも描かれているキーウィが由来です。
世界通貨セレクトでも豪ドルやカナダドルとペアになっているNZドル。
本記事では歴史から経済の特徴、為替に影響を与える要因、そして国際的な位置付けまでを整理します。

ニュージーランドドルの歴史

ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は1934年に設立されました。
その背景はさらに前にさかのぼります。

当時のニュージーランドには中央銀行がなく、紙幣は商業銀行が発行していました。
この仕組みも一定の役割を果たしていましたが、20世紀に入ると世界各国で中央銀行が経済政策に関与するようになり、イギリスはニュージーランドやオーストラリアにも自国のイングランド銀行を手本とした中央銀行の設立を促しました。

1930年にはイギリスの経済顧問オットー・ニーマイヤーが訪問し、中央銀行設立を提案しました。
1934年4月に「ニュージーランド準備銀行法」が成立。
同年8月に業務が開始され、初代総裁にはイングランド銀行出身のレスリー・ルフォーが就任しました。

設立と同時に商業銀行の紙幣はすべてRBNZ発行に置き換えられます。
1934年の初代紙幣は暫定的なものでしたが、1940年に正式デザインが登場し、1967年の十進法移行まで使用されました。
その後も改訂が重ねられ、1990年代には新デザイン、2000年代にはポリマー紙幣へ移行しています。
硬貨も1989年に発行権が移され、2006年には小型で軽量な鋼メッキ貨が導入されました。

当初のRBNZは一部民間所有で、主な役割は為替相場の安定でした。
しかし1935年の政権交代で国有化され、融資引受権が付与されます。
その後の法改正で、金融政策の運営や外貨準備・外国為替管理、銀行監督などを担うようになり、役割は大きく広がりました。
1970年代以降は石油危機やイギリスのEEC加盟による輸出市場の変化で経済が揺らぎ、インフレが深刻化します。
これを受けて1989年に法律が改正され、財務大臣と総裁が署名する「政策目標協定」が導入されました。
ここで金融政策の最優先目標が「インフレ抑制」と定められ、この仕組みは後に世界各国にも広がります。

その後も制度改正が進み、2009年までにRBNZは金融政策、金融システムの監督、市場運営、決済システムの管理、流動性供給、通貨発行を担う「フルサービス型」の中央銀行へと発展しました。

このようにNZドルの歴史は、制度と通貨の進化の積み重ねです。
設立時は為替安定と紙幣統一が目的でしたが、現在では金融政策から監督機能まで幅広く担い、NZドルは今も国内外で信頼される通貨として流通しています。

ニュージーランド経済の特徴

ニュージーランド経済の特徴は、農林水産品の国際的な需要に大きく左右される点にあります。
GDPに占める農林水産業の割合はおよそ5.3%と決して高くはありません。
しかし、輸出に目を向けると、その存在感は一変します。
物品輸出額の半分以上が農林水産品で占められており、同国の対外経済活動の柱となっています。

経済規模に目を移すと、2023年の名目GDPは2,490億米ドル、一人当たりGDPは47,537米ドルと、先進国の中でも比較的高い水準に位置しています。

具体的な輸出品目では、乳製品が全体の32.7%を占めて首位に立ちます。
続くのは食肉の14.2%、木材・木製品の8.6%で、いずれもニュージーランドの自然資源と農業生産力を背景にした品目です。

(インヴァスト証券作成)

さらに、キウイフルーツも同国を代表する輸出品目です。
2024年には記録的な収穫量を背景に、2024–25年度の果物・園芸部門の輸出収益は約85億NZドルに達し、そのうちキウイフルーツ産業だけで約39億NZドルを占める見通しとなっています。
キウイフルーツはニュージーランド最大の園芸輸出品であり、その持続的な成功が食料・繊維系輸出全体の成長に不可欠な存在と評価されています。

数字を追っていくと、ニュージーランド経済は一見安定した先進国の姿を持ちながら、国際市場の動向や需要変化に対して非常に敏感な構造を持つことがわかります。
乳製品や食肉、そしてキウイフルーツといった輸出の主力分野が好調かどうかが、その年の景気や成長率に直結します。

ニュージーランドを語るとき、「キウイ」という名が二つの姿を思い起こさせます。
果実として世界に広がるキウイフルーツと、森に息づく国鳥キーウィ。
自然と経済が重なり合い、ニュージーランドは豊かな風景として形を取り始めます。

政策金利推移

ニュージーランド準備銀行が運用する政策金利は「オフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)」と呼ばれ、短期金融市場の基準金利です。
OCRの変更を通じて、経済活動やインフレ率をコントロールしています。
ニュージーランド準備銀行はインフレ率を1~3%の範囲で維持することを金融政策の主要目標としています。

(出典:Reserve Bank of New Zealand「Official Cash Rate (OCR)」よりインヴァスト証券作成)

ニュージーランドドルの値動きに影響を与える要因

NZドルの値動きは、同国経済の輸出依存構造に強く影響を受けます。
輸出の半分以上を占める乳製品や食肉、木材といった農林水産品は、その国際価格が変動すると貿易収支を通じて為替レートに直結します。
また、中国、オーストラリア、米国といった主要貿易相手国の景気が輸出需要に影響し、それがNZドルの強弱につながります。

国際的な位置づけと強み

ニュージーランドは、世界の中でも高い信用格付けを得ています。
ニュージーランド財務省が公表している最新の情報によれば、ムーディーズはニュージーランドの外国通貨建て長期債務に対して「Aaa(安定的見通し)」 の格付けを付与しています。
S&P は貸家通貨では「AA+(安定的見通し)」、Fitch も「AA+(安定的見通し)」 としており、いずれも非常に高い信用度を示しています。

出典

RBNZ
外務省
Ministry for Primary Industries
New Zealand Government