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ノルウェークローネの特徴

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ノルウェークローネとは?

ノルウェークローネ(NOK)は、世界最高水準の信用格付けを持つ国、ノルウェーの通貨です。
同国は原油や天然ガスの輸出を経済の柱としているため、その通貨の値動きは資源価格や欧州経済の影響を大きく受けます。
本記事では、自動売買の中でも人気の「ノルウェー/スウェーデン」の片翼を担うノルウェークローネについて、歴史から経済の特徴、為替に影響を与える要因までを解説します。

ノルウェークローネの歴史


ノルウェークローネの歴史をたどると、そこには小さな王国が自立した経済を築き上げていく、ひとつの物語があります。

その歴史は、中世にまでさかのぼります。
紀元 1000 年頃、オラフ・トリュッグヴァッソン王のもとで鋳造されたペニーが、現存する最古のノルウェー硬貨として知られています。
当時、貨幣の鋳造は国王の特権でしたが、その後長らく国内での生産は行われず、外国の貨幣が日常の取引を支えていました。

近代に入り、1628 年にはクリスチャニア(現在のオスロ)に造幣所が設立され、コングスベルグの鉱山で産出された銀が硬貨づくりに使われました。
1686 年には造幣所がコングスベルグへ移転し、現在も同地でノルウェー造幣所が稼働を続けています。

通貨制度を支える制度的基盤として、1816 年には中央銀行「ノルゲバンク」が設立されました。
議会の管理下にある民間株式会社としてスタートし、その目的は安定した通貨供給と金融秩序の確立にありました。

設立当初の本店はトロンハイムに置かれました。
これは、首都クリスチャニアに政治権力が集中していたため、銀行を独立的に運営する意図があったとされています。
その後、1897 年には本店をクリスチャニアへ移転しました。

ノルゲバンクは設立直後から銀行券の発行権を持ち、1818 年には紙幣発行と融資などの業務を開始。
19 世紀末の 1892 年には法制度の改正が行われ、「銀行の銀行」としての役割が明確化され、商業銀行への流動性供給や政府の財務代行といった中央銀行機能が整備されました。

また、同時に小切手決済など、民間銀行間の決済システムを統括する役割も担うようになり、近代的な中央銀行としての位置づけが固まりました。

通貨史における大きな転機は 19 世紀後半に訪れます。
1873 年、デンマークとスウェーデンが金本位制に基づくスカンディナヴィア通貨同盟を結成し、共通通貨「クローネ」を採用しました。
1875 年にはノルウェーもこれに加盟し、3 か国間で通貨を交換できる体制が整いました。
この時導入された「クローネ」が、現在のノルウェークローネの起源です。

しかし、スウェーデンが 1931 年に金本位制を廃止したことで通貨同盟は形骸化しました。
同年にノルウェーもスウェーデンに追随し金本位制を廃止。
変動相場へ移行し、ここからノルウェークローネは独立した通貨として本格的に運用されていきます。

その後は、1930 年代にポンドや米ドルに通貨を固定する時期を経て、1946 年にはブレトン・ウッズ体制に参加し、固定相場制のもとで安定を模索します。
ところが 1971 年にこの体制が崩壊すると、一時的に変動制へ戻ることに。
翌 1972 年には欧州諸国との協調を目指し「通貨スネーク」に加わりますが、1978 年末に離脱し、各国との貿易比重を反映した複数通貨参照の「通貨バスケット制」へと移行しました。

1990 年には欧州通貨単位(ECU)へのペッグ制を導入しましたが、1992 年末に固定を放棄し、完全な変動相場制へ転換。
為替の柔軟性を確保しながら独自路線を歩みます。
さらに 1999 年から 2001 年にかけては、物価安定を最優先としつつ景気変動にも配慮するインフレターゲットを段階的に導入し、現在の金融政策の基盤が築かれました。

用語 解説
通貨スネーク 1970年代に欧州諸国が為替変動幅を一定範囲に抑えるために行った協定。
通貨バスケット制 複数の国の通貨を組み合わせ、その平均的な価値に自国通貨を連動させる制度。
ペッグ制 自国通貨の為替レートを、特定の外国通貨や通貨バスケットに対して一定の比率で固定する制度。
変動相場制 通貨の価値を市場の需要によって決める制度。

ノルウェーの経済

北欧の国ノルウェーは、面積およそ 38.6 万平方キロメートル、人口約 560 万人の国です。
2022 年の名目 GDP は 5,793 億米ドルで、一人当たり約 11 万米ドルに達します。
日本(人口約 1 億 2,344 万人、名目 GDP609 兆円=約 4 兆 600 億米ドル、一人当たり約 3 万 2 千米ドル)と比較すると、人口が少ないにもかかわらず、非常に高い経済力を有していることがわかります。

この力強い経済を支えているのが、豊富な資源です。
とりわけ石油と天然ガスは、同国を西ヨーロッパ有数のエネルギー供給国に押し上げました。

もうひとつの特徴が、国土の恵みである水資源です。
国内電力の約 88%を水力が担い、その電力を生かしてアルミニウムやシリコン、化学製品といった電力を多く使う産業が発展してきました。

資源から得られる収益は、将来のために着実に蓄えられています。
政府は石油・ガス収入を「政府年金基金グローバル(GPFG)」に積み立て、全額を海外に投資。
世界でも大手の機関投資家として知られています。
2022 年末には、その残高は約 12 兆 4,291 億ノルウェークローネ(約 161 兆 6,000 億円)に達し、国家予算の 5 倍にも及びます。

さらにノルウェーは、次の時代を見据えています。
水素エネルギー、洋上風力発電、二酸化炭素の回収・貯留(CCUS)といった新たな分野への投資が進み、資源大国から持続可能なエネルギー大国への歩みを着実に進めています。

政策金利の推移

中央銀行であるノルゲバンクは 1999 年から 2001 年にかけてインフレターゲット政策を導入し、消費者物価上昇率をおおむね 2%に維持することを目標として掲げ、政策金利を調整しています。
この政策金利は短期金融市場の基準金利となり、インフレ抑制と景気安定のための最も重要なツールと位置づけられています。

金融政策は、中央銀行の「金融政策・金融安定委員会」によって決定されます。
委員会は総裁を含む 5 名で構成されています。
会合は年 8 回、ほぼ毎月開催され、政策金利を維持するのか、引き上げるのか、あるいは引き下げるのかが議論されます。
最終的な決定は多数決によって行われ、会合後には決定内容と票の内訳が公表されます。
さらに四半期ごとに「金融政策報告書(Monetary「Policy Report)」が発表され、中期的な経済や物価の見通し、政策の方向性が示されます。
この仕組みにより、ノルウェーの金融政策は透明性と説明責任を重視して運営されており、市場や国民に対して明確なシグナルを発信する体制が整えられています。

ノルウェークローネの値動きに影響を与える要因

ノルウェーの経済は、石油・ガス資源の輸出を中心とする産業構造を持ち、これがノルウェークローネの為替動向にも影響を及ぼしています。
石油や天然ガスの国際価格は、同国の輸出収益や経常収支に直結しており、その変動が通貨市場におけるクローネの価値に反映される要因となります。

下図は、NOK/SEK(ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ)の週足と原油価格推移を比較したものです。
資源国通貨であるノルウェークローネは、原油価格の変動と一定の関連性を持つ傾向があります。
エネルギー市況の変化が為替に影響を受けやすい事が見て取れます。

   (インヴァスト証券作成)

政府は石油・ガス収入を原資とした GPFG を通じて海外資産に分散投資を行っており、外貨建てでの運用規模が大きいこともクローネの需給構造に影響を与えています。
このように、資源価格の動向や対外投資のバランスは、ノルウェークローネの安定性や方向性に関係する重要な要素と位置づけられています。

国際的な位置づけと強み

ノルウェーは S&P 、ムーディーズ、フィッチなど世界の主要格付け会社から最高位の「AAA」を維持しています。
これは世界の国々のなかでもごく限られた存在であり、財政の健全性や経済運営の信頼性が極めて高いことを示します。
そのため、カントリーリスク(国家信用リスク)が非常に低く、ノルウェークローネは国家信用リスクの観点では非常に安心感のある通貨です。
為替相場の動きは外部要因に左右される場面もありますが、通貨自体の信頼性は世界でも高い水準を誇ります。

参考文献

Norges Bank
Sveriges Riksbank
外務省
IMF