第617回 【量的緩和の縮小はなぜ見送られたのか?】

FRB(米連邦準備理事会)は、常に「マーケットとの対話」を心掛けてきました。

「マーケットとの対話」とは、FRBが発するメッセージをマーケットが的確に受け止めて行動できるようにすることです。

ところが、9月のFOMCでは、6月の時点で「9月から量的緩和を縮小する」というメッセージを発していたのに、それが見送られ、マーケットにはとまどいが生じました。

それがこのところの為替相場や株式相場に現れています。

確かに、FRBは無条件に量的緩和の縮小に着手すると言ったわけではありません。

経済指標が一定水準に達した場合という条件を付けています。

しかし、それを厳格に適用するのであれば、6月のメッセージは不要のはず。

そうした矛盾があるために、マーケットは不信感を抱き、FRBからのメッセージが信用できなくなり、戸惑っているのだ、と思います。

次の量的緩和縮小を決める機会は12月ですが、それもどうなるのかわかりません。

FRBがマーケットを「裏切った」理由は、次期FRB議長に目されていたサマーズ元財務長官の辞退が原因、と推測しています。

サマーズ氏は量的緩和の効果には懐疑的なため、FRB議長に就任すれば自身のペースで縮小速度を早めていくでしょう。

だからこそ、バーナンキ議長は自分の手でスケジュールを決めたかった。

それには9月に着手する必要があった。

だが、サマーズ氏が辞退して、バーナンキ路線を継承するイエレン副議長が最有力候補に浮上したことで、急ぐ必要がなくなった。

バーナンキ議長は、院政というと大げさですが、イエレン氏を通じて最適な速度で量的緩和の縮小が進められる、と判断したのでしょう。

また、サマーズ氏の辞退は、シリアへ対応とともに、オバマ大統領のレイムダック化を象徴する出来事でもあった、と考えています。

議会から強い反対を受けているサマーズ氏は、ごり押しして就任しても、レイムダック化した政権からでは、強力な後ろ盾を得られないと考えたのでしょう。

今秋の早い段階で決まると見られる次期FRB議長。

イエレン氏が指名された場合、量的緩和縮小がさらに遠のく可能性も見えてきました。

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(2013年9月30日東京時間01:00記述)

 

第616回 【12月までモヤモヤ感が続く】

9月17・18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備理事会)は量的緩和の縮小の先送りを決めました。

多くのマーケット関係者が予想していた9月に縮小開始という予想は外れました。

先送りの理由としてバーナンキFRB議長は
「景気や雇用情勢が持続的に改善していることをはっきりと示す指標が出るまで待つ必要がある」
としています。

また量的緩和とは別に行っているゼロ金利政策についても、失業率が6.5%を上回っている間は継続するという条件を改めて示しました。

9月18日(日本時間19日)の発表によりマーケットは動揺し、一時的に米株が買われ、ドルが売られ、新興国株は上昇しました。

しかし、バーナンキ議長は「年内にも縮小の第一歩を踏み出す可能性はある」という姿勢は変えていないので、次の議長会見がある12月まで延期されたという見方が濃厚です。
(10月と予想する向きもある)

そのため、量的緩和縮小開始後を見据えたトレンドや考え方には大きな変化はありません。

FRBはQE3により米国債と住宅ローン担保証券を毎月850億ドルずつ買い入れていますが、仮に12月から縮小に踏み切った場合、縮小の幅を毎月100億ドルずつの減額(マーケットに供給されていた資金を絞る)とすると、8カ月から9カ月でQE3が終わることになります。

このことがアメリカ経済に与える影響は限定的でしょうが、国内に行き場が無く新興国に流れていた資金が引き揚げられていることになり、新興国に投資していた人々は厳しい状況に追い込まれるでしょう。

量的緩和の縮小は時期がずれただけで、いずれ始まります。

その先には金利引き上げも見えています。

金利引き上げに着手するのは秋に決まる次期FRB議長ですが、サマーズ氏が辞退したため、バーナンキ議長の路線を継承するイエレン副議長が有力ですが、誰に決まるのかは、ふたを開けてみるまでわかりません。

今回のFRBの決定により当面モヤモヤ感が続きそうです。

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(2013年9月26日東京時間10:30記述)

第615回 【FOMCの結果は、量的緩和政策縮小延期】

市場の最大の注目点は、9月17日・18日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)でした。

「量的緩和政策の縮小に9月から着手するのかどうか?」

オリンピックの招致同様に、ふたを開けてみないと分からないことなのですが、バーナンキFRB議長は、6月のFOMC後の会見で「年内縮小」を明言しているし、判断基準となる各種統計には景気の改善傾向が現れています。

例えば、失業率は目標の6.5%には届いていないものの、今年1月の7.9%から8月の7.3%へ着実に低下しています。

だから、9月からスタートするのだろう、と考えていました。

ところが、昨日(9月18日)発表された結果は、量的緩和政策の縮小延期。

米国株式は急騰し、為替は大きく「ドル安」に振れました。

しかし、9月の時点では、量的緩和政策の縮小は延期されたものの、引き続き、年内にスタートする可能性が高い状況です。

延期された理由は、米国経済の回復が思っていた程ではない、ということ。

米株や新興国株・通貨に対する配慮したこともあるのでしょうが、米国の金融政策は世界経済のために実施するものではないので、純粋に、米経済の回復が想定した程ではないことが大きかったのだ、と考えます。

目先の相場は、大きく「ドル安」振れましたが、それでも年内に縮小が始まる可能性は高いのだから、為替相場のドル回帰という大きな流れには変わりは無いのではないか、と考えています。

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(2013年09月19日東京時間10:45記述)

 

第614回 【最重要課題は、9月17・18日のFOMC】

9月の注目材料のうち、6日に発表された8月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったものの失業率は前月より改善されており、全体としては改善方向にあることが確認されました。

8月非農業部門雇用者数の事前予想が+18.0万人に対し、発表された結果は+16.9万人でした。

前月の非農業部門雇用者数は、+16.2万人から、+10.4万人に下方修正されました。

8月失業率の事前予想が7.4%に対し、発表された結果は7.3%で、こちらは改善しています。

9月7日に2020年五輪開催都市は東京に決まり、日本株が大幅に上昇しています。

シリアに対する米軍介入問題は、目先、棚上げされています。

残る材料は最重要課題の量的緩和の縮小です。

FRB(米連邦準備理事会)は、9月17・18日に開くFOMC(米連邦公開市場委員会)で量的緩和縮小の時期について議論します。

そのためFOMCで何らかの結論が出るまでは、余計なリスクを取らないようにポジションを縮めておくことが重要です。

それならポジションを取らなければいいという意見もあるでしょうが、それでは利益を得るチャンスを逃してしまいます。

このような先行き不透明な相場と向かい合っている時は、思惑が外れた時にいつでも損切りができる態勢で臨むことが重要です。

そして、FOMCで結論が出て方向性が決まったら、流れに乗ったポジションを構築したり、増やすというやり方がセオリーです。

個人的な思惑では、9月17・18日に開くFOMC(米連邦公開市場委員会)で量的緩和の縮小が宣言されると思っていますが、万が一先送りされても、12月スタートが確認されたということに過ぎないので、
『為替相場はドル回帰』
『新興国通貨への投資は避ける』(新興国の株式も当然避ける)
という考え方に変わりはありません。

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(2013年09月12日東京時間11:20記述)

第613回 【9月は為替相場にとって重要な材料が目白押し】

9月は為替相場にとって重要な材料が目白押しです。

先週末6日金曜日の米国雇用統計発表、7日日曜日の五輪開催都市を決めるIOC総会、9日以降に予定される米国上院本会議でのシリアに対する武力行使決議案採決、そして17・18日に開催されるFOMCというように。

まず米国雇用統計。

失業率は遅行指標のため大きくぶれることはなく、これまで通り改善傾向を示す良い数字が出ると楽観視していました。

もちろん中身を精査すれば就職をあきらめた人が増えている、就職できても正社員ではなくパートだったというネガティブな要素を指摘することができるのでしょうが、大きな目で見ればやはり雇用統計の数字は改善されており、為替相場にとってはドル高要因となる、
と事前に考えていました。

実際の値動きでは、非農業部門雇用者数(NFP)が、事前予想よりも少し悪かったことで、「ドル売り」に振れました。

しかし、失業率が改善しており、トータルで見れば、ニュートラルと考えます。

先週末6日金曜日の米国雇用統計発表直後の値動きでは、「円高」に振れましたが、過剰反応と判断しています。

2020年五輪開催都市については、選挙結果はふたを開けるまで誰にも分からない、と考えていました。

IOC委員の多くは原発事故処理に懸念を抱いていると言われていたからです。

日本人から見れば東京と福島間は距離があるし、汚染水問題も開催までには対策が終わると思うでしょうが、世界から見れば不安でしょう。

しかし、安倍首相が、プレゼンテーションで東京の安全を確約したことが、東京開催を決定づけた、と考えます。

2020年オリンピックが東京に決まったことは、日本株の上昇材料であり、それと連動して円安傾向が強まる、と考えます。

シリアに対する武力行使について、混沌としています。

オバマ大統領は、議会の承認を得る努力をしていますが、仮に否決されてもオバマ大統領は、何かしらの行動を取るのではないか、と考えています。

ただ地上戦は行わないということなので、すぐに終息するはずですが、武力行使が為替相場に与える影響はわからないというのが正直な感想です。

そして、FOMCでは、金融緩和の縮小を9月に始めるという方向で結論が出るのではないでしょうか。

そうであれば基本的にはドル買い、米株売り要因となります。

このような不透明感の強い環境では、過度なリスクを取らない投資姿勢が重要です。

とりわけ新興国通貨と新興国株は危険です。

インドは為替介入を実施しているようですが、介入効果は一時的なもので大局を変えることはできません。

むしろ、投機筋に新興国通貨売り/ドル買いのチャンスを提供することになります。

このような状況下では、新興国投資は避けるべき、と判断します。

既に、新興国に投資している場合は、すぐに撤退を敢行するべき、と考えます。

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(2013年9月9日東京時間12:00記述)

 

第612回 【「ドル/円」を買うということ、「ドル/円」を売るということ】

通貨(お金)は、さまざまな国が発行しています。例として、私たちに最も身近な円(JPY)とドル(USD)で考えてみましょう。

日本の大手輸出企業は、日本でつくられた自動車や家電製品を米国に輸出します。

米国で、それらの製品を購入するのはアメリカ人ですから、彼らが支払うお金はドルです。

だから、製品を輸出した企業は、ドルを代価として受け取りますが、それをそのまま日本に持ち帰っても、日本では使えません。

ですから、そういった輸出企業は、ドルを円に交換します。

この交換することを「為替」と言います。「為替」という言葉は「交わす」、つまり「交換する」ことを意味します。

外国の間で「為替」が行われるので、「外国為替」とも呼びます。

日本の輸入企業が、米国から牛肉や小麦、大豆などを輸入する場合には、ドルを支払います。

しかし、日本の企業はドルを持っていませんから、持っている円をドルに交換して、そのドルで支払いを行います。

ここでも、為替(外国為替)が起こっています。

日本は、石油のほぼ100%を輸入に頼っていることは、みなさんもご存知でしょう。

中東の産油国サウジアラビアの自国通貨はサウジ・リアル(SAR)、クウェートの通貨はクウェート・ディナール(KWD)ですが、産油国である中東の国々は、原油の代価をドル(USD)で支払うことを要求します。

ですから、日本の石油会社は、円をドルに交換して、中東諸国に支払いを行います。

相手国が米国に限らなくても、円とドルの為替が必要になることが、理解できたでしょうか。

なる通貨を使う二国間の貿易取引の場合、外国為替が必要になります。

もっと身近な例で、みなさんが、ニューヨークに行く場合を考えてみてください。

みなさんがニューヨークを旅行する場合は、持っている円をドルに交換して持っていくはずです。

ドルを持っていないと、ニューヨークに着いてから、バスやタクシーにも乗れませんし、レストランで食事をすることも、ホテルに宿泊することもできません。

ですから、ニューヨークに行く場合にも、外国為替(通貨の交換)が必要になります。

ここで考えて欲しいのですが、円をドルに交換するということは、みなさんが銀行に行って、円を支払って、ドルを買うということです。

円もドルも、どちらもお金ですから、「お金でお金を売買する」ことになります。

通貨と通貨の取引は、少し慣れないと違和感があるかもしれませんが、「円をドルに交換すること」と「円を支払って、ドルを買うこと」は、実はまったく同じことを意味し、表現しているのです。

もう1つ、日本の投資家が、米国株式や米国債券に投資することを考えてみてください。

米国株式や米国債券に投資するとは、それを購入することです。支払いの代価は、ドルです。

日本の投資家はドルを持っていませんから、持っている円をドルに交換して、そのドルを支払いに使って、米国株式や米国債券を受け取ります。

つまり、日本の投資家が米国株式や米国債券に投資する場合は、円でドルを買って、その購入したドルで支払いを行います。

逆に、米国の投資家が日本の株式や日本の債券に投資する場合は、ドルで円を買って、その購入した円で支払いを行います。
外国為替取引とは、異なる通貨を交換する取引のことです。ドルと円で言えば、次のようになります。

●ドル(USD)を受け取って、円(JPY)を支払う取引が、ドル/円(USD/JPY)を「買う」ということ

●円(JPY)を受け取って、ドル(USD)を支払う取引が、ドル/円(USD/JPY)を「売る」ということ

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(2013年9月5日東京時間11:00記述)

第611回 【シリア情勢を注視】

9月になりました。

毎年、夏休み相場は、ロンドンのレイト・サマー・ホリデー(8月の最終週の月曜日)までです。

だから、夏休み相場が終わり、先週からマーケットには市場参加者が出そろっています。

とはいえ、多くの市場参加者は、いきなり全力でポジションを取ることはせずに、リハビリを兼ねてマーケットを調査していたところでしょう。

そういった状況の下、突如として、化学兵器を使用した疑いのあるシリアに軍事介入する可能性があるという材料が出てきました。

ロシアの反対で国連の安保理決議は得られそうになく、イギリス議会は軍事介入に関する議案を否決しましたが、アメリカは単独で武力行使する可能性も排除していません。

しかし、オバマ大統領は、武力行使の手段・規模・期間等は明確にしておらず、多くの市場参加者は対応に戸惑っていました。

そして、9月になって、オバマ大統領は、シリア攻撃に議会の承認を求める決定をしました。

議会は今月9日の週より前に採決を行わない見通しなので、シリアで新たな化学兵器がしようされるなどの大きな情勢変化がなければ、軍事行動は先送りされた格好です。

こうした突発的な出来事の場合、「こう対応するべき」というセオリーは無く、軍事介入の実施(あるいは断念)という結果が出てから反応するしかありません。

投資という視点だけで言えば、幸いに、夏休み明けのポジションが軽い状態の時に出た材料なので、当面は無用なリスクを取らず事態を見守るしかありません。

かつては、「有事のドル買い」という言葉がありました。

戦争のような非常事態が起こった時は、ドルを買って万が一に備えよという格言です。

しかし、それはアメリカが直接火の粉を被るような立場でなかった時代だったから通用したのだろう、と考えます。

湾岸戦争以降は、米国自身が当事国になるケースが目立ち、有事は、米国の財政赤字拡大の元凶となるため、ドル売り方向に圧力がかかるようになりました。

そのため、今は「有事のドル買い」ではなく、ポジションを縮めてリスクを抑え、結果を見てから行動するようにした方が良い、と考えます。

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(2013年9月2日東京時間09:50記述)

 



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