【緊急寄稿】6月23日(木)英国国民投票実施!スイスショック時の再来も懸念されるポンド。

EU残留か離脱か!?英国国民投票の実施にともない、為替市場に大きな変動が予想されております。ポンドのお取引に十分ご注意いただくため、緊急レポートを作成しましたのでご覧ください。

レポートのポイント
●「残留」か「離脱」か、英国国民投票の行方は24日(金)の結果判明まで不透明な状況が続く。
●もし「離脱」ということになれば、スイスショックの再来か!? 極端な流動性の低下も。
●スプレッドの拡大等も懸念されるため、両建てではなくポジション管理に十二分の注意を!

■英国の国民投票の行方

6月23日(木)に予定されている英国国民投票の行方が混沌としています。

市場では、6月6日(月)に複数の世論調査で英国のEU離脱支持派が残留支持を上回ったことでポンド売りが強まったかと思えば、翌7日(火)には市場関係者から「誤発注では?」と噂される急騰が見られるなど、ニュース等のヘッドラインにも過敏に反応する、神経質な展開が見られています。

英国の世論調査会社「YouGOV」の調査においては、EU残留支持派、離脱支持派の割合は長らく拮抗した状態が続いています。

今年3月の時点では英国の代表的な企業団体、英産業連盟(CBI)から、英国がEUから離脱した場合、2020年までに1000億ポンド(約16兆円)、95万人の雇用が失われるといった試算も公表され、少なくとも英国以外においては「結局、残留する方が経済的に利にかなっている」という見通しが大勢であったように思われます。

英国は通貨ユーロこそ批准していないものの、すでにユーロ圏と経済的に密接なつながりがあり、今さら(EU離脱により)人とモノの自由な往来をさえぎることは経済的に大きな損失と考えられたからです。

ところが、
「EU残留によりEU加盟国が財政難に陥った時に金融支援に参加させられる」
「EUを離脱すれば、EUへの拠出金を国内政策に充てることができる」
といった離脱派の主張もかなりの支持を集めています。実際、離脱派には多くの募金が寄せられており、テレビ広告なども展開されています。

前述のYouGOVの調査においても、態度を決めかねている層が10%以上あり、国民投票の行方はどちらに転ぶか分からない、予断を許さない状況が投票結果判明まで続くものと思われます。


投票は24日(金)午前6時(日本時間)に締め切られます。午前8時半以降、大勢は順次発表される予定となっており、最終的な結果が判明するのは午後2時ごろと想定されていますが、当然前後する可能性が高いです。

テレビ局による出口調査は行われないようですが、一部ヘッジファンドなどが民間の調査会社を利用して出口調査を行う可能性も指摘されており、ポンドの値動きは荒いものになることが想定されます。


■2015年1月のスイスショックの再来を危惧する声も

「EU離脱」の影響を予測することは極めて困難です。
加盟国の脱退がEU創設以来初めての試みとなるため、その影響度合いを測ることは難しく、難民問題や財政問題など数多くの課題を抱えるEUにとっても甚大な影響を及ぼす可能性があります。

実際に当社へ為替レートを提供しているカバー先金融機関にヒアリングしたところ、もし離脱となった場合には、もっとも楽観的な見通しでも5円以上、悲観的なものだと30円以上の値動きを予想する声が寄せられました。

国民投票の結果が判明した際には、いったん市場から為替レートは一斉に消え、状況によっては2015年1月のスイスショック時のようにレート自体が長時間配信されないような状況も十分に起こり得るとしています。

ここで少し、2015年1月のスイスショックの値動きについて振り返りたいと思います。

当時スイスの中央銀行(SNB)は2011年9月よりスイスフランに対してユーロの下限を1.2000と設定し、無制限に介入し、ユーロを買い支えるという方針を取っていました。

ところが2015年1月15日、SNBはこの無制限介入の方針を突如撤廃することを発表しました。先進国の中央銀行としては異例の対応とされ、為替市場は大混乱に陥り、ユーロスイス相場の急落(ユーロの下落、スイスフランの上昇)を招きました。

くりっく365を取り扱う東京金融取引所においても、流動性の消失からこのスイスがらみの取引が30分以上約定しませんでした。また他の国内FX取扱業者においても長時間の価格配信停止などが発生しました。

その後の値動きの急変においては、預けた証拠金以上の損失を出す事例が多発しました。金融先物取引業協会の発表によると、預託金以上の損失が個人口座・法人口座合わせて30億円以上発生したことが判明しました。

ユーロ/スイス 日足 (2014年11月~2015年4月)

※ブルームバーグのレートよりインヴァスト証券作成

スイス/円 日足 (2014年11月~2015年4月)

※ブルームバーグのレートよりインヴァスト証券作成

スイスショックの際には一瞬のうちにユーロスイスで3,000pips以上、スイス円においては20円以上の値動きが発生しました。
そして、今回の英国国民投票の結果次第では同じような急変が起こり得ると指摘する声が実際にあります。


■値動きの混乱で証拠金額以上の損失が発生する可能性も

国内のFX取引業者においては最大レバレッジが25倍と定められており、事前のロスカットルールなども整備されています。そのため、平常時においては、預けた証拠金額以上の損失を被る可能性は抑えられています。

ところが、スイスショック時のように市場が混乱した際には、「レートが存在しないため、ロスカットしようにもロスカットが行われない。」「値段が飛んで約定したことで、預けた証拠金以上の損失が発生」ということが起こりえてしまいます。


実際の取引事例でもって考えてみます。
ポンド円の取引に必要な証拠金を1万通貨あたり6.5万円とします。

仮に6.5万円を預けて1万通貨の買いポジションを保有していた際に、ポンド円がいきなり窓を開けて20円の下落が起こったとすると、▲20万円の損失が発生します。

預けた証拠金を差し引いても▲13.5万円の未払い金が発生します。これにより、預けた6.5万円の損失のほかに、さらに▲13.5万円の未払い分の損失を支払わなければいけなくなってしまうのです。

これが100万通貨の取引となれば、650万円で運用していたところ、20円の下落により▲2000万円の損失が発生します。預けていた650万円の損失のほかに▲1350万円の未払い金が発生することになります。

これらは極端な事例となりますが、2015年1月のスイスショック時にスイス円で20円以上の値動きがあったことを踏まえると決して空想の話ではありません。

いかに証拠金に余裕を持たせていたとしても、スイスショック時に匹敵するような値動きがあればすべてを吹き飛ばしてしまう可能性もありますので、保有ポジションを縮小、調整などをご検討いただいた方が良いかもしれません。

■両建てしているから安心と言うわけではない!

また、一部のお客様におかれましては買いと売りを同時に保有する「両建て」を行っているから大丈夫と言う方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、通常の値動きであれば、買いポジション、売りポジションの評価上の利益と損失が相殺されるますので問題無いように見受けられます。

しかしながら、スイスショック時には売値と買値の差(スプレッド)も大きく開きました。国内外の金融機関もなかなかレートを提示できず、いきおい数十銭、場合によっては数円といったスプレッドとなってしまう可能性もあります。

買いポジションは売りのレート(BID)、売りポジションは買いのレート(ASK)で評価されるため、評価損益が悪化することでロスカットを招く可能性があることを認識しておく必要があります。

■ポンド、ユーロだけでなく他のクロス円にも重大な影響か?

なお、仮に「EU離脱」となった際には、ポンドから多くの資金が流出すると想定されます。
当然、関係国であるユーロも影響を受けざるをえません。

ではその際に、流出した資金がどこに向かうかと言うと、ドルだけでなく、安全資産の象徴である円やスイスフランに向かうとも考えられ、ポンドがらみの通貨ペアだけでなく、その他の通貨ペアの取引においても細心の管理が必要となります。

お客様におかれましてはこういった大きな変動が予測されていることを踏まえて、お取引やポジションの保有に関して、これまで以上に十分なリスク管理をご配慮いただきますよう、何卒よろしくお願いいたします。