2017年のドル円相場は、円安か?円高か?

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

『2018年の米ドル円の年間相場見通しと戦略』はこちらのブログをご確認ください。

【2016年の米ドル円振り返り(米ドル/円 月足チャート)

2016年の米ドル/円相場は120.24で始まり、中国や欧州株、また、NY原油は1バレル26ドルまで下落したこと、更に6月には英国のEU離脱の是非を問う国民投票の結果が離脱支持だったことを受けリスク回避的に円が買われ、一時98.195まで下落いたしました。

オリンピックを挟んだ7月から10月にかけては、100円をサポート・105円をレジスタンスに小康状態が続き、11月の米大統領選挙の結果を受けて、その後はトランプ次期政権への期待感と米国の利上げによりドルが買われる展開となりました。

米大統領選については、ヒラリー氏勝利の場合はドル円上昇後に下落を、トランプ氏勝利の場合はドル円下落後に上昇を予想していましたが、特に大統領選後のドル円相場のプライスアクションでサプライズだったのはドル円の下落が105円台から101.18までで、しかも、その下落もその日のみで101円をも下回らずに上昇し始めたことだと思います。(リスクオフにより一時的に100円を割れる展開を予想していました。また、期間的にも少なからず12月のFOMCが意識されるまでは上値の重い展開を想定していました。)

その後、米ドル円は目立った押し目も付けずに、12月15日には118.68まで上昇し、2016年末、ドル円相場は116.86で引けました。100円割れを見なかったことで、強気に転じましたが、1ヵ月弱での101円台から118円台までの上昇に乗り遅れた人は多かったのではないかと思われます。

なお、米ドル円の月足チャートには、6カ月移動平均線、24カ月移動平均線、48カ月移動平均線と、スロー・ストキャスティクス(14,3,3)を表示していますが、現在、価格はそれぞれの移動平均線を上回り、ストキャスティクスも上昇傾向で加熱感は無いため、これまでの上昇に対する調整の可能性は残すものの、中長期的に米ドル/円相場は上昇トレンドにあると見受けられます。

 

【今年の値動きは?過去の大統領選翌年の相場展開は?】

結論から言うと、今年、2017年の米ドル/円相場は上昇傾向でボラタイルな展開になると予想しています。

下のチャートは、大統領選の翌年の米ドル円相場(月足)で、1月を100として指数化したもので、共和党の大統領が選ばれた翌年(上段)と民主党の大統領が選ばれた翌年(下段)に分けています。なお、黒い線はそれらの平均値になります。

※各年1月の終値を100として指数化

※平均値について、平均値(共和党)は共和党の大統領1年目の各指数チャートを平均したもの 平均値(民主党)は民主党大統領1年目の各指数チャートを平均したもの

※ボラティリティについてはそれぞれの平均値に対する各チャートの標準偏差で比較すると、共和党の大統領1年目の方が民主党の大統領の1年目の方がバラつきが大きい

 

大統領選の翌年(大統領1年目)に起こった出来事などの影響もありますが、このデータから直接わかることは次のとおりです。

・共和党の大統領が選ばれた翌年はやや円安傾向

・共和党の大統領が選ばれた翌年はデータのバラつきが大きくボラティリティが高め

・民主党の大統領が選ばれた翌年はやや円高傾向

・民主党の大統領が選ばれた翌年はデータのバラつきが小さくボラティリティは低め

 

トランプ大統領は共和党となりますので、過去の傾向から言えば今年は円安傾向でボラティリティは高めになりやすいと考えられます。

ちなみに、今年は酉年です。相場の格言では「申酉(さるとり)騒ぐ」といいます。

上のチャートの凡例、大統領の名前に黄色い網掛けをしている年が酉年になり、過去3回の酉年ではそれぞれ円安傾向での推移となっていました。

(※辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌は笑い、亥固まる、子は繁栄、丑はつまずき、寅千里を走り、卯は跳ねる)

 

【2017年も政治リスクが目白押し】

昨年はイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票やアメリカ大統領選、また、イタリアの憲法改正に係る国民投票などもあわせ、政治イベントによって相場が大きく左右される年でした。

そして今年も昨年同様、注目される政治イベントが多く、政治リスクの影響で相場が動く可能性があります。

 

まずは、米国です。

1月20日にトランプ大統領が就任、その後の議会演説や予算教書などの内容により、これまでのトランプ期待が持続するのか、剥落するのかに注目です。

米国については、それ以外にも利上げのペースが挙げられますが、金融政策についても、間接的に政治的リスクが主に2つ絡んできます。

1つ目はFOMCの理事が2名欠員していることです。

この2名の欠員に対してトランプ次期大統領がどのような人選をするのかにより、FEDの雰囲気が変わってくる可能性があります。

2つ目はトランプ次期大統領が打ち出す財政政策によっては、FEDの利上げペースが速くなる可能性がある(イエレンFRB議長が言及)と言うことです。

FEDのFF金利についての総意は、昨年12月のFOMCのドットチャートから2017年末までに3回の利上げとなっていますがトランプ次期大統領が掲げる財政出動がある場合、ドットチャートのペース以上に利上げを加速させる必要があるというのがFEDの認識になっています。

トランプ大統領の理事の人選と財政政策によっては、利上げのペースが加速したり減速したりと、騒がしい年になりそうです。

※上記ドットチャートは2016年12月のFOMCで、2017年末、2018年末など、FFレートがどの程度が適当かを、FEDメンバー17名がそれぞれプロットしたもの。

※2016年末のFFレートは0.50-0.75%(仲値で0.625%)で、2017年末の中央値は1.375%となるため、2017年は会合あたり0.25%の利上げであれば3回と言える。

また、米国の外交政策にも注意が必要です。特に中国に対して米国が軍事・経済両面においてどのような外交政策をおこなっていくのかに注目です。

 

次に欧州ですが、イギリスについては、年明けにメイ首相がEU離脱交渉の方針について演説することになっています。

また、今年はオランダ議会選(3月)、フランス大統領選(5月)、ドイツ総選挙(秋)があります。

これらの国の中から反EUを掲げる政党が躍進、政権を握るようなことがあると、対ユーロで円や米ドルは買われやすくなります。

なお、イタリアにおいては昨年12月11日にマッタレッラ大統領がジェンティローニ外相を次期首相に指名、今年の総選挙は無くなりましたが、イタリアの大手銀行の経営問題もあり、また、来年2018年5月に総選挙を控えていることもあります。

昨年のイギリスの国民投票にしろ、米国の大統領選にしろ、イタリアの国民投票にしろ、トルコのテロにしろ、また、欧州の移民問題やテロ事件にしろ、私達日本人には想像できないくらい、世界的に自国の政治に対する国民の不満感情が高まっているのが現状のところです。

中国や韓国もそうですが、特にユーロ圏においては、今年もあちらこちらで政治・経済リスクの火種が潜んでいるため注意が必要です。

これらのことを踏まえ、今年は円安、円高というより、特に主要通貨に対し世界経済のけん引役となる米国のドルが買われやすい状況が続くと考えられ、米ドル/円もそれに引きずられた上昇トレンドとみてはいますが、昨年2016年以上に、上下に大きく振れるボラタイルな相場展開を予想しています。

なお、個人的には米ドル/円、日経平均ともに、今年はそれぞれ2015年6月の高値126円(125.87)、21,000円(20952.71)にトライする動きを予想しています。

今年も一年間よろしくお願いします。

 

【ピボットによる2017年の予想レンジ】

2017年主要通貨のピボット予想レンジです。(2016年の年足4本値で計算)

 

※PIVOTとは・・ J.W.ワイルダーが考案した「リアクション・トレンドシステム」のことで、一般的にはPIVOT(ピボット)と呼ばれています。

※PIVOTの使い方

 四本値から算出された価格から2つのモードで使い分けをします。

 1.リアクションモード

   保ち合い相場(横ばいトレンド)を想定して、B1・B2で買い、S1・S2で売ります。

   上記の表の予想レンジ1はB1とS1で、予想レンジ2はB2とS2で想定レンジ幅を表示しています。

 2.トレンドモード

   LBOP(ロウ・ブレイク・アウト・ポイント)を下回ったら下降トレンド、HBOP(ハイ・ブレイク・アウト・ポイント)を上回ったら上昇トレンドと想定(リアクションモードでの取引は停止)して、取引をおこないます。