アメリカのマーケット展望【2022年11月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは4100とします。

先月の米国株は堅調に推移しました。その理由として市場参加者のセンチメントが極端に弱気に偏っていたことに加え、連邦準備制度理事会(FRB)がそろそろ金融引締め局面の出口戦略を模索し始めるのでは? という期待が高まったことが指摘できます。

引締め局面は入口に近いか? それとも出口に近いか? と言えば出口に近いと思います。しかしFRBが自信を持って引締め完了を宣言するためには景気がハッキリと減速しているという確証が得られる必要があります。これまでのところ雇用統計も物価統計も、ほんのり減速する兆しは見せているものの、ダメ押し的な弱さは示していません。

従って月初はFRBが市場参加者に対してわざと冷淡な態度を取るリスクがあります。

11月4日(金)に発表される非農業部門雇用者数はコンセンサス予想の19万人を下回るかもしれません。その理由は既にクリスマス商戦期間に突入しており、例年、この時期は小売業を中心として雇用が伸びる時期なのですが、今年のクリスマス商戦期間は苦しい戦いを予想している小売業者が多く、新規雇用を控える気配が感じられるからです。もし非農業部門雇用者数がとても低い数字で入ってきた場合は金融引締め終了への期待からマーケットが買われる可能性があります。

11月10日(木)には消費者物価指数が発表されます。前回の数字は8.2%でしたが、今回はこれを下回ることができるかどうかに注目したいと思います。

これらの条件を満たした場合、FRBはいよいよ出口戦略を本格的に検討する必要に迫られます。

その反面、ニューヨーク市場があまりに強いと消費者のキモチが大きくなってしまい、クリスマス商戦が過熱し、結果としてインフレ抑制がじゅうぶんに出来ないリスクもあります。株高はFRBにとり不都合というわけです。

整理すれば月初は軟調に始まるけれど、経済統計次第では株がずんずん買い進まれるシナリオも起こりうるということです。

■米国経済の現況

米国経済はあらゆるところに減速の兆しが見えています。住宅価格は下落に転じていますしコモディティ価格も軟調に推移しています。クリスマス商戦期間であるにもかかわらずカリフォルニアのロングビーチ港の沖合にはコンテナ船の行列が出来ていません。これは不景気を見越して業者が商品の発注を絞り込んだ結果だと考えることが出来ます。

唯一、雇用市場のみが相対的に言えば堅調です。その理由なのですが未だアメリカ人の50%はリモートワークをしており会社に内緒で二つ、三つの仕事をかけもちしている人が多いからだという説明があります。いずれにせよ雇用市場が強く賃金の上昇プレッシャーが強い間はFRBは警戒を解かないと思います。

■企業業績

第3四半期決算発表シーズンはいつになく低調なスタートを切っています。これまでにS&P500指数採用企業の半分が決算発表を終えているのですが一株当たり利益(EPS)では71%の企業が、売上高では68%の企業が事前のコンセンサス予想を上回る決算を発表しています。しかしどちらの数字も過去の平均よりかなり低いです。

今回の決算シーズンの特徴としてはGAFAM(アルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト)の決算が総じて冴えなかった点です。デジタル広告市場の飽和、データセンターのビジネスの減速、ドル高などが原因です。

四半期EPSの前年同期比成長率は限りなく「0」に近づいています。

今後政策金利の利上げが打ち止めとなりドル安に転じる場面があれば為替はアゲンストの風がフォローの風へと変わる可能性もあります。

■注目ETF

11月の相場は前半が安く後半が高いと予想します。そこで前半はポジションを建てるのを控え、雇用統計と消費者物価指数の数字を確認したいと思います。それらの数字が予想より低かった場合、FRBは金融引締めの手を休めることが予想されるため株は買いになります。そのシナリオに限ってSPDR S&P500 ETF(SPY)、パワーシェアーズQQQ信託シリーズ(QQQ)、テクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド(XLK)、iシェアーズ・ラッセル2000 ETF(IWM)、ARKイノベーションETF(ARKK)の各銘柄をロング(買い持ち)したいと思います。