アメリカのマーケット展望【2022年9月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは3600とします。

(出典:ヤフー・ファイナンス)

ジャクソンホール経済シンポジウムでパウエル議長がスピーチしました。

その中で議長はインフレを退治するため政策金利を引き上げた後も景気に陰りが見えたからといってすぐに金融緩和に転ずることはせず、ずっと高い金利水準を維持する決意を表明しました。

この発言で米国経済がソフトランディングする可能性は「0」になったと思います。

ソフトランディングとは①インフレを抑え込むことに成功する、②経済成長は維持する、の両方に成功することを指します。

実際には成功例は極めて少ないです。

私は1988年からアメリカに住んでいますが、ソフトランディングに成功したのは1回きりです。それは1990年代半ば、グリーンスパン議長のときです。

それ以外はことごとく失敗しています。

今回もインフレ率の高さなどから考えてソフトランディングには失敗すると覚悟したほうがいいです。

さて、経済のソフトランディングに失敗するということは米国がリセッションに陥るということを意味します。つまり景気後退です。

投資家が覚えておくべきことは、ものごとの順番として、リセッションが到来する前に株式市場が大幅安するということです。つまり大きな株安が襲ってくるタイミングは今かもしれないのです。

1970年代以降6回のリセッションがありましたが、そのリセッションに先立つ株安局面では平均して直近の高値から-39%の指数の下落がありました。これをS&P500指数にあてはめると今回の下値のターゲットは2939.35になります。

加えて実績として9月は相場が安い年が多いことも頭に入れておく必要があると思います。

(出典:ストックインベスターズ・アルマナック)

■米国経済の現況

米国経済は至る所に景気減速の兆候が見え始めています。たとえば住宅市場ですが住宅ローン金利の上昇で不動産取引が不活発になっています。下の住宅着工件数(一戸建て)のチャートでも減速が確認できます。

(出典:セントルイスFRB)

次に消費に目を転じると「消費者が用心深くなっている」と指摘する小売り業者が多いです。

折悪くサプライチェーンの混乱を念頭に普段より多めの在庫を取った小売店が多く過剰在庫のリスクが高まっています。

■企業業績

第2四半期決算発表シーズンは市場予想を下回る企業が続出しました。S&P500採用企業の一株当たり利益(EPS)の伸びは前年同期比で一桁台となっており、去年までの急角度での業績の伸びとは打って変わった精彩に欠ける内容となっています。

企業業績が伸びないもうひとつの理由としてこのところのドル高でハイテク企業などを中心に海外の利益の貢献が減ったところが多いことも指摘できます。

■注目ETF

9月の相場は安いと予想します。従ってエネルギー・セレクト・セクターSPDRファンド(XLE)、パワーシェアーズQQQ信託シリーズ(QQQ)、SPDR S&P500 ETF(SPY)、テクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド(XLK)、資本財セレクト・セクターSPDRファンド(XLI)などを売り建てることを提案します。