アメリカのマーケット展望【2022年8月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは3700とします。

(出典:ヤフー・ファイナンス)

7月の米国株は金利の低下を受けて好調でした。下は10年債利回りのチャートです。

(出典:セントルイスFRB)

長期債の利回りが低下した理由は原油価格が下落に転じ、インフレ懸念が後退したためです。

(出典:セントルイスFRB)

バイデン大統領が「米国産シェールの輸出の禁止を検討している」というニュースが出た事がきっかけとなり原油価格は下落基調に転じました。輸出に回されていた原油が国内に滞留するのであれば需給関係がだぶつくと考えた投資家が多かったからです。

しかし世界的に原油が足らない時期にアメリカが世界に原油を売らないというのでは米国は国際協調の観点から(身勝手だ!)と思われかねません。バイデン大統領はそこでサウジアラビアを訪問し原油の増産を要請しました。

サウジアラビアがこの要請を受けるかどうかは8月早々の石油輸出国機構(OPEC)のミーティングで明らかになると思います。そこで増産が発表されれば米国はシェール禁輸措置を打ち出せますし、その場合WTI(ウエストテキサスインターメディエーツ=米国の指標銘柄)の価格は一層下落が予想されます。逆にOPEC+(=OPECにロシアを加えた国々)が大幅な増産を発表しないのなら米国はシェールの輸出を継続することになるでしょう。その場合、原油価格は上昇が予想されます。債券利回りは上昇、株式は下落が予想されます。

■米国経済の現況

米国経済はこのところの連邦準備制度理事会(FRB)の度重なる利上げの影響もあり、足踏みしています。先日発表された第2四半期のGDPは前期比-0.9%で、第1四半期の-1.6%に続いて2四半期連続してGDPが縮小したことになります。

英国の経済界の定義では「2期連続してGDPが縮小するとリセッションである」とされていますが、これは米国には当てはまりません。米国では全米経済研究所(NBER)に所属する著名エコノミストたちがディスカッションしたうえで、判定委員会が「これはリセッションだった」と後日宣言するという方法が採られています。この方法だと実際にリセッションになってから判定が下るまで半年から1年ものタイムラグが生じるのが常です。

従って、いまわれわれはリセッションの真っただ中にいるのかどうか? を確認することができるのはずっと先になるということです。

■企業業績

一方、第2四半期決算発表シーズンはこれまでにS&P500採用企業のほぼ半分が決算発表を終え、EPSでは73%の企業がポジティブ・サプライズを出しました。これは過去5年の平均値を下回っています。さらに売上高では66%の企業がポジティブ・サプライズを出しており、こちらも過去5年の平均値を下回っています。つまり今回の決算発表シーズンの滑り出しはいつになく不調だということです。

実際、マイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)、アルファベット(ティッカーシンボル:GOOG)、メタ・プラットフォームズ(ティッカーシンボル:META)、スナップ(ティッカーシンボル:SNAP)は相次いで悪い決算を出しました。このところ悪い決算ばかり出していたアマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)は事前の投資家の期待が低かっただけにポジティブ・サプライズを出すことができました。アップル(ティッカーシンボル:AAPL)は中国における新型コロナのロックダウンの影響が懸念されコンセンサス予想が低かったのでそれを上回ることが出来ました。全体としては冴えない決算と言うべきです。

■注目ETF

このように現在の株高はサウジアラビアの増産というシナリオ一点に期待がかかり過ぎています。もしそれが実現しない場合はインフレ懸念の再燃が心配されます。おまけに企業業績もさえないわけですから8月の株式市場は厳しい展開を予想します。トレード戦略としてはパワーシェアーズQQQ信託シリーズ(QQQ)、SPDR S&P500 ETF(SPY)、テクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド(XLK)、資本財セレクト・セクターSPDRファンド(XLI)を売り建てる反面、エネルギー・セレクト・セクターSPDRファンド(XLE)だけは買い建てるやり方が考えられます。