カナダドル円-2022年相場予想と戦略-

【逃避通貨的側面も、原油価格次第か?】

【2021年のカナダドル円相場を振り返って】

 2021年のカナダドル円相場は、新型コロナウィルスの感染拡大が続くも、ワクチンが開発されたことで接種が拡大、コロナ後の経済回復を睨んで、総じて株価が堅調な推移となり、カナダ中銀が先進国に先んじて金融正常化に踏み切ったことで、リスクオンの堅調な展開で終了しました。
 年初は、日本でも緊急事態宣言の発令が続いたことなどから、リスクオフ気味の展開からスタートしましたが、カナダドル円相場は、80.56円を安値に反転地合いとなり、バイデン大統領の大規模なインフラ投資計画の発表もあって、米長期金利が急騰したことでドル円相場が110.97円まで一時反発、4月にカナダ中銀が、政策金利を0.25%で据え置く一方、国債買い入れ額を、少なくとも週40億カナダドルから週30億カナダドルに縮小することを発表したことで88.32円にまで反発、その後もNYダウが、史上初の3万5千ドル台に上昇、金価格が1900ドルを回復したことで、ドルカナダが1.20007カナダドルと、カナダドルの年間高値をつけ、カナダドル円も91.20円まで高値を更新しました。
 しかしながら6月のFOMCで、パウエルFRB議長が、「テーパリングの協議を開始する」と発言したことがサプライズとなり、早期の金融引き締めの懸念で株価が急落したことに加えて、カナダ中銀の7月の会合で、国債の買い入れ額を週30億カナダドルから20億カナダドルに縮小するも、中国が「共同富裕」政策を打ち出したことが、中国経済に悪影響になるとの見方が重なり、86.68円まで売りに押されました。丁度この時日本の感染者数が急拡大したこともあって、ドル円が108.72円まで調整したこともカナダドル円の上値を抑えたようです。
 9月に入ると自民党総裁選を睨んで、菅総理が突然退陣表明したことが、サプライズとなり新政権に対する期待感から日経平均が、31年ぶりの高値をつけたことで、ドル円もリスクオンの動きを強め、原油価格が85ドルの高値まで上昇、カナダ円も93.03円の年間の高値をつけました。一方で米国のインフレ率の強い上昇で、11月のFOMCでテーパリングが本格的にスタート、来年3回の利上げを織り込む形となり、まだバイデン大統領が、原油の高騰を受けて、各国に石油備蓄の放出を依頼したことで、原油価格が62ドル台まで下落しました。また、ドルカナダも1.2965カナダドルまで上昇し、カナダドル円も87.45円まで売りに押されましたが、オミクロン株の拡大懸念にも、株価が比較的堅調な推移となったことや原油価格が再反発したことで、カナダドル円も87.45円で下値を支えて反転地合いで終了しました。

有限会社フォレックスラジオ作成

【2022年の主な材料】

 以下が現在、判明している来年のイベントや材料です。注目度の高いものは太字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので変更されることがあります。

 リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2022年は米国の中間選挙を始めとして、欧州の選挙や日本の参議院選挙など選挙が多く予定されています。政治の為替市場に与える影響は不透明ですが、株価面では財政出動などの期待が高まり易く、その場合は為替市場でも、リスクオン・オフの動きに一定の影響を与える可能性には注目しておきましょう。ただ、近年の米中対立の姿を考えると中国の全国人民大会や5年に1度開催される共産党大会での決定に対して、緊張を高める内容が見えた場合は、株価やリスク通貨回避通貨の円相場に一定の影響を与える可能性には注意となりそうです。
 一方金融政策では、アフターコロナを睨んで、FOMCやカナダ銀行が、「金融正常化」という難題をどう安定的に消化していけるかが大きな注目となりそうです。世界的に上昇を続けるインフレに、金融引き締めを更に強めると長期金利や株価の動向に、大きく影響を与えるので、中央銀行の声明や政策変更、中銀の要人発言には、最大の注目を払って対応した方が良いでしょう。
 その面で、来年のカナダドル円相場の大きな注目は、年間を通してカナダ銀行の姿勢の変化、対ドル相場では、年前半はFRBの金融引き締めの行方次第、年後半は米国の中間選挙に、スポットを当てた相場の流れとなりそうです。 

【2022年の注目点】

 2021年の相場環境を踏まえて、2022年のカナダドル円相場の注目点をまとめてみました。

・カナダ経済
・原油や金価格との連動性
・カナダ中銀のスタンス

〇カナダ経済

 カナダは、世界でロシアに次ぐ2番目の面積を持ち、天然資源も多く埋蔵されています。世界的にも裕福な国のひとつで、古くからG8先進国のひとつとなっています。
 経済の中心はサービス業ですが、製造業でも自動車産業・航空機産業などが盛んで、鉱物資源としてはオイルサンドはサウジアラビア、ベネズエラに次ぐ世界第3位の埋蔵量を誇っています。金、ニッケル、ウラン、鉛、カリウムなどが主に採掘されており、ウランは世界第1位の産出量です。また、広大な土地を有していることから林業も盛んで、カナダの材木がないと米国の住宅が建たないとも言われています。
 1990年代前半までは経済的混乱がありましたが、1997年以降は、失業率が低下し順調に回復を続けています。また、地政学リスクが低く、高格付けが維持されており、過去においては、高金利・資源国通貨として、本邦の投資家からの投資ニーズも旺盛でした。
ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で、カナダ経済にも悪影響を与えましたが、クリーン・エネルギーが供給不足から資源価格が上昇し、カナダ経済を支えています。
 以下は、カナダのIvey購買部協会景気指数の推移です。一時落ち込みから、過去の高水準レベルまで上昇しています。前年の急落からの反動の可能性もありますが、新しいオミクロン株などの感染が再度大きく広がらない限りは、堅調が続きそうです。

〇 原油や金価格との連動性

 カナダは資源が豊富な国です。その中でも、オイルサンドは世界第3位の埋蔵量を誇そっています。そのため、原油価格に経済が大きく影響を受けることで、カナダドル相場も連動性が高いことで知られています。
以下の2つのチャートは、カナダドルの対ドルと対円相場の動きを、原油価格と比較したチャートです。
 ご覧のように、カナダドルの対ドル相場の連動性は非常に高く、カナダドル円は、若干円相場が絡むので、リスク回避には弱いですが、連動性が非常に高いことが良くご理解頂けると思います。

 

 そうなると来年のカナダドル円相場も、原油価格の動向で左右されることが多くなりそうです。現在の減産政策が今後も続くか、年2回開催されるOPEC総会などには注目しておきましょう。

 それでは、原油価格のテクニカルをチェックしておきましょう。
 以下は、2000年からの原油価格の月足チャートです。
 2006年に147.27ドルの高値示現後は、軟調気味な展開を続けています。一昨年に、期近の先物価格が歴史上初めてマイナスとなったのは例外としても、現状の反発も85ドルで抑えられています。76.90ドルと85.41ドルが、テクニカル的にダブル・トップと見なされると更に上昇も厳しそうです。またもし超える動きがあっても、100ドル近辺はレジスタンスも控えて上値を押さえそうです。
一方下値は、40ドルから60ドルゾーンに、一種の窓が開いています。この上限となる60ドル前後が維持されると強く、割れても下限の40ドルは維持されそうです。リスクは、33.4ドルの戻り安値割れとなりそうです。
 長期的に、環境問題から二酸化炭素の排出制限など、各国がクリーン・エナジー政策を推進している中、逆に新たな設備投資が手控えられたことで、今年は予想外の原油価格の上昇となりました。ただ、クリーン・エナジーの動きが止まることはないでしょう。下値に示したスロー・ストキャスティクスも反転下落を示していることもあって、更に強い上昇は現状想定されず、当面60ドル-80ドルぐらいで揉み合いを想定しています。もし60ドルを割れても40ドルは底堅いと考えています。そうなると原油価格との連動性から、来年の豪ドル相場も更に強い上昇は難しく、総じて揉み合いの展開となるか注目しましょう。 

 一方で、金価格とカナダドル相場の動きを見てみましょう。 
 以下は、2000年からのNY金のスポット価格とカナダドルの対ドル相場の推移を比較したチャートです。ご覧のように過去比較的連動性が高かったですが、リーマン・ショックの時は、リスク回避の動きで一時的な非連動が発生しています。また、2019年頃からは、非連動性が強まっています。金価格が大幅に上昇した影響ですが、恐らくこの時トランプ元大統領が貿易赤字問題などから、諸外国に関税強化策を始めた時期と重なります。また特に中国に対しては厳しい関税政策を仕掛けたことで、一時「第2の冷戦」とまで指摘される事態まで米中関係が悪化しました。こういった面で、リスク回避資産として、金が大きく買われた影響のようです。
 現在は、再び中国と米国の緊張感が高まっています。またぞろ、リスク回避の金価格の上昇が、カナダドル相場を支えるか注目しておきましょう。

〇 カナダ中銀のスタンス

 カナダ中銀は、今年4月と7月に、先進国に先んじて資産買い入れを減額しましたが、現状は政策金利の引き上げには至っていません。
 今年12月の金融政策会合の声明では、一定の景気回復や商品価格の上昇を受けて、インフレの高まりを見るも、「国債の全体的な保有をほぼ一定に維持し、再投資を継続」、「経済は引き続き大規模な金融政策支援を必要としていると判断」とハト派的な見解を残している。また、現状は「2%インフレ目標の持続的達成のため政策金利を下限で維持」、「現時点の予測では、政策金利維持は2022年半ばまで継続」としています。
 現状の相場はこういった点を織り込んでいますが、今後の景況感次第では、タカ派に転じる可能性も残っています。また現状のオミクロン株の感染が更に拡大しなければ、隣国で経済的に関係の強い米国が、早ければ来年4月以降利上げに踏み切るかもしれません。少なくとも2022年半場には、確実に利上げに転じるでしょう。カナダドル相場は、こういった面を徐々に織り込んでいくと想定しています。 

 また、以下はカナダと日本に金利差とカナダドル円相場を比較したチャートです。水色の時期は、若干連動性が薄れていますが、再びカナダ中銀が利上げスタンスに突入するなら、連動を高める可能性もありそうです。カナダの国債利回りなどもチェックしながら対応しましょう。 

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【テクニカル面】

 テクニカル面からまず、カナダドル円を構成するドルカナダ相場(カナダドルの対ドル相場)の長期月足をチェックしておきましょう。
 2007年11月の安値0.9059ドルから反発も、1.4690ドルと1.4668ドルダブル・トップをつけて、調整も1.2062ドルと1.2007ドルでダブル・ボトムとしています。
 この下値の位置は、0.9059ドルの安値から1.4690ドルや1.3668ドルの高値のフィボナッチ・リトレースメント50%が、1.1875ドル-1.1864ドルとなっています。また同様に0.9405ドルから1.4690ドルと1.46681ドルのフィボナッチ・リトレースメント50%が1.2048-35ドルとなります。ただ、ざっくりとこの位置が支えると、スロー・ストキャスティクスも売られ過ぎで反転上昇を見えており、更なる調整は無さそうです。あくまで割れて、1.1279ドルのそれ以前の高値1.0622ドル-1.0656ドルの節目が視野となりますが、総じてサポートが位置しており、買いが入り易そうです。
 一方上値は、1.2062ドルと1.2007ドルの平均値と1.4690ドルと1.4668ドルの平均値の半値が、1.3357ドルとなりますが、この前後が抑えると弱い形。超えても1.40ドル前後にレジスタンスが控えており、上値を押さえそうです。あくまで1.4668ドルや1.4690ドルを越えて、更なる上昇期待から、1.50ドルがターゲットとなります。
 こういった面から、ドルカナダの来年の想定レンジを、1.2000カナダドル~1.4000カナダドルで揉み合いを想定します。

 次にドル円相場も見ておきましょう。
 テクニカル面からは、期間を変えたドル円相場の3つの月足チャートをベースにお話させて頂きます。

① 1ドル360円時代、1971年からの超長期月足チャート

 ドル円相場が、過去固定相場だったという話も、現在意識している人はほとんどいないと思いますが、第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が打ち出した物価安定・緊縮財政政策「ドッジ・ライン」によって、1米ドルは、360円に固定されていました。どうして360円に決定されたかは、諸説入り混じるところですが、「円は丸なので、丸なら360度だから1ドル360円にした」という本当かウソかわからない話があります。
 これは余談ですが、歴史的に1973年に変動相場制に移行した時点からドル円相場を考察してみましょう。(1971年に、米国がドルと金の交換を停止した「ニクソン・ショック」後、「スミソニアン協定」によって、一度1ドル=308円に切り下げられています。)
 
 どうして、この話からスタートするかと言いますと、実は古くから為替でディーラーやアナリストの間では、「ドル円相場の半値説」というのが存在します。
 これは1ドル360円の時代から、ざっくりと180円に下落、次の戻り高値の278円から139円、160円から80円、148円から74円というように動いているという話です。下記のチャートをご覧頂くと、100%ぴったりとした価格ではありませんが、総じて整合性があることが見て取れると思います。この事実は若干驚きですが、今後も円高のトレンドが継続すると仮定するなら、次のドル円相場のターゲットは、高値125.86円の半値の63円となります。この説を信じて良いのかは、未だ断言はできませんが、波動的にも、1ドル360円からの下落が、一旦120.45円で止まって、現在が160.35円からの第5波の過程にあるとすれば、まだ円高の流れが続いているとも見えます。こういった見方が、世間で円高説を唱える多くの専門家の根拠となっているように思われます。
 一応この仮定を踏まえて、次のチャートをチェックしてみましょう。

② 第2の波動となる1990年からの長期月足チャート

 では、再度この160.35円からの波動を見てみましょう。
 ここで注意しなければならないことは、良くテクニカル分析で利用される「エリオット波動」に関しての見解です。エリオット波動とは、簡単に言うと「相場は5つの波動(上昇または下落)とその終了後に、ABCの3波の大きな上下波動を形成して、ひとつの相場のサイクルが終了する」という説です。
 当然この一言でエリオット波動を全て解釈することはできません。またエリオット波動論は、株式市場で生まれたテクニカル分析手法ですので、為替市場でも適応できるかは、賛否が分かれるところです。加えて波動のカウントの仕方やスタート地点で、人によって見方が変わってしまいます。特に最後に出るABCの3波は、なかなか綺麗に出ることが少ないので、個人的は、単純なカウントを利用して見ています。この見方とすると為替市場では、たびたび7波や9波で、相場のトレンドが変わることが多いと感じています。
 この見方が正しいかはさておいて、これを前提に160.35円からの波動を、更に詳細に見てみると以下のチャートで示した波動の動きのようにも捉えることが出来ます。つまり現状は160.35円から75.31円で第7波の位置にあって、一旦円高が終了しているとの見方も出来るということです。
 この理由としては、前述の超長期のチャートで見た第3波の位置を詳細にカウントするとこの位置だけなら、綺麗な5波を完了しています。不透明なのは75.31円から125.86円のABCの動きが、はっきりとしないことで、判断が分かれることです。

 結局現状の相場が、未だ第5波の下落の中にあるのか?それとも75.31円で円高が、一旦終了して、次の波動に中にあるのかの判断が不透明なことが、現在の相場の膠着感の要因なのかもしれません。そうなると来年以降ドル円相場が、一定のチャート・ポイントをブレイクできるのかが、将来的なドル円相場の見通しを左右しそうです。

 その面で、特に注目して頂きたいのが、160.35円の高値と125.86円の高値を結んだレジスタンスの位置です。この位置は一応計算式からは、チャート上の青い矢印の位置となります。月間ベースですのでブレはありますが、2021年12月の時点の117.29円から来年末に向けて、115.97円まで降りてきます。現状のドル円相場の戻り高値は115.52円ですが、この位置を来年以降超える動きがあるのか、または、超えられないで、逆に下値を支えている102.59円や更に99.02円を割れてしまうのかで、はっきりと「円高の長期トレンドが終了するのか」、それとも「未だ円高のトレンドが続くのか」結論が出て来るでしょう。

③ 史上再安値を付けた後の2011年からの月足チャート

 最後に直近2011年の歴史的な安値75.31円からの月足を見てみましょう。
 一応こちらもエリオット波動からみましょう。75.31円の安値を基準として、カウントすると現状の相場が、下記チャートのように、最後の第5波の上昇過程にある可能性があります。実は、この見方に整合性があるかは、少し自信がありません。また、現状の高値が、フィボナッチ・リトレースメント(125.86円から99.02円の61.8%)の位置となる115.52で、上値を抑えられていますが、フィボナッチ・リトレースメントの有効性はあまり高くないこともあって、この位置がこの5波のトップとなるのかも断言はできません。
 この面では、チャートの下段に表示しているモメンタムを示す「スロー・ストキャスティクス」を見てみることが良さそうです。
 こちらは上昇を継続していますので、来年も底堅い展開が続きそうです。ただ、若干たれ気味であることから、この115.52円の直近高値が上値を抑え続ける状況が続いた場合、いずれこのスロー・ストキャスティクスが、デッド・クロスに向かう可能性があることは注意しておきましょう。あくまで現在の高値115.52円をしっかりと超える動きが見えてから、②のチャートのレジスタンスを目指す動きとなります。その場合戻り高値からは118.66円がひとつの重要なポイントで、更にはフィボナッチ・リトレースメントの76.4%となる119.53円などが視野となる形です。
 一方下値は、107.45円から109.51円の位置(ピンクのゾーン)が、サポート圏として支えると堅調な相場が続きそうです。この位置は前述のフィボナッチ・リトレースメントの38.2%や23.6%と整合性がある位置です。リスクは、こういった位置を維持で出来ないケースです。その場合サポート圏は未だ低い位置ですが、将来的に②のチャートの水色で示したネック・ラインとなる102.59円や99.02円と重なることになりそうです。従って、107.45円-109.51円ゾーンを割れても、このサポートが維持されると更に下落は拡大しないでしょう。ただ、もし割り込むと大きな円高のリスクとなります。
 こういった面を考慮して、ドル円の想定レンジを108.50円から118.50円とします。

 加えてドルカナダとドル円の想定レンジから、マトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)を作成しています。
 ドルカナダのコア・レンジを1.2000カナダドル~1.4000カナダドル、ドル円を108.50円~118.50円としましたので、これから算出されるカナダドル円の最大想定レンジは77.50円から98.75円となります。

 それでは、最後にカナダドル円の月足を見てみましょう。
月足チャートからは、106.49円を高値に大きなH&Sの形を形成しています。
 価格帯がぴったりとなっていませんが、左肩(A)は94.30円から72.16円のレンジ、右肩(C)は元来93.26円から74.80円で形成されていました。しかし、一昨年の3月の下落が長期サポートを割り込んだことで73.82円まで拡大しました。ただ、「A」のレンジの下限を割り込んでいません。また、「A」の期間が2009年1月から4年2か月の動き、「C」はこの73.82円まで下落した時点で、ほぼ4年6か月となっています。一応ざっくりですが、「B」をトップとしたH&Sが一旦終了した可能性が高そうです。
 そうなると次に、73.82円をリバースヘッドとした一種のリバースH&Sを形成するか注目しています。現状この判断はつきませんが、少なくとも高値が抑えられると「D」の形成の可能性が高まりそうです。
 この「D」の上値ゾーンは、「A」と「C」の高値を総合して、だいたい94.30円-93.02円ぐらいで見ています。一方下値は、スロー・ストキャスティクスがデッド・クロスを見せており、急上昇のサポートとなる87.19の戻り安値を割れると確定的となり、84.68-91円、83.59円を割れると80.15円-81.58円,77.62円-78.22円まで視野となりますが、73.82円の一応リーバスヘッドや「A」の下限となる72.16円を割り込むまでは、大きな下落とはならないでしょう。
 その場合、「A」や「C」の期間と同様なら、「D」の形成は、ざっくりと4年以上かかることとなり、2024年までこのレンジの動きとなるかもしれません。この辺は不透明ですが、ともかく今後はこのレンジのブレイクに注目して対応するのが良さそうです。
 従って、レンジの動きから未だ出ることはないとの仮定で、マトリックス・チャート(ピンクのゾーン)を参考に、来年のカナダドル円の想定レンジを82.00円から84.00円とします。

【予想レンジと戦略】

 それでは、以上を踏まえて、カナダドル円相場の来年の戦略についてお話します。
 一応新型コロナウィルスの感染が、終息に向かう前提で予想をしています。もし、更に強いウィルスが出現して、再び経済が大きく落ち込んだり、株価の大幅調整があった場合は、見直しの必要があるかもしれません。また、こういった年間の見通しは、簡単に当たるものではありません。あくまで現在の見通しに基づくものであって、くれぐれも自己責任でご参考として頂ければ幸いです。 

 来年のカナダドル円の想定レンジの基本を82.00円から94.00円としました。 

 基本的なスウィングトレード戦略は、前述の通りレンジが続くとの見方から逆張り戦略ですが、カナダは地政学リスクも低く、リスク回避的な面もあって、更に来年はカナダ中銀が利上げに動くことで、押し目は堅い状況を前提に対応しましょう。

 また注意しなければならない点は、
① 1-3月期は、2月を除いて本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いです。
② 株価面では、アノマリーから5月の「セルインメイ」、米国の中間選挙を睨んで、年央にNY株が調整入りし易く、地政学リスクなどリスク回避の動きに注意しましょう。
③ 一方ドル円が、例年アノマリー的に、8月中旬に瞬間的な円高が示現することが多いことは注意です。ただ逆にこの時の急な円高は、年末に向けて絶好の円の売り場となることも、覚えておいてください。
④ 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期に一定の動きが見えた場合、逆張りで向かわないようにしましょう。 

 具体的な戦略としては、90円-93円は売り狙いです。ストップは94.30円越え、またはざっくりと95円越えなどで対応しましょう。ターゲットは、87.19円を維持するなら買い戻しながら対応しましょう。またこの位置を維持するなら買いも検討できそうですが、割れるなら止める形です。その場合82円-85円は、売りポジションの絶好の利食い場となりそうです。一方この位置の買いは、78円-80円ゾーンまで買い下がれればベターです。ストップは、深くなりますが73.82円割れに設定できれば理想的です。こういった買いの利食いは、下げるレベルや時期にもよりますが、前述のテクニカルで見た通り、レンジ形成を前提に94.30円や95円を超えるまでは、90円方向の上昇では利食って置くのが良さそうです。

※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。