ポンド円-2022年相場予想と戦略-

【英中銀の利上げ姿勢次第】

※本記事は2021年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。

【2021年のポンド円相場を振り返って】

 2021年のポンド円相場は、ブレグジットの移行期間が終了するも、年初はEUとの物流の混乱などが想定されましたが、比較的悪影響は少なく、感染者数の増加は続いていましたが、一方で自国の英アストラゼネカ社が、ワクチンの開発に成功したこと、先進国に先んじてワクチンの接種が進んだことでなどから139.52円を年間の安値に堅調に上昇しました。また英国では段階的にロックダウンが解除され、パンデミック後を睨んで世界的に株価が上昇し、リスク回避通貨の円売りが優勢となり、5月には156.08円の高値まで上昇しました。一方スコットランドの議会選挙で、英国からの独立派が勝利しましたが、この結果による悪影響は見えませんでした。
 ただ、バイデン大統領の大規模なインフラ投資計画の発表を受けて、米長期金利が大きく上昇を強めたこと、ジョンソン首相が感染者数の減少がなかなか止まらなかったため、ロックダウンの完全解除の取り止めを発表したことで、ポンドドルが1.4228ドルとなり、年の高値をつけた後は売りが優勢となり、ポンド円も149.46円まで利食いに押されました。
 その後は、夏場の保合的な展開に突入するも、ECBが、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の大幅拡大を決定したことに加えて、供給不安から原油や欧州天然ガス価格の急騰もあって、対ユーロでのポンド買いが支えとなって、下値を148円台で維持して推移しました。
 また9月に入ると自民党総裁選を睨んで、菅総理が突然退陣表明したことが、サプライズとなり新政権に対する期待感から日経平均が31年ぶりの高値、NY株価が次々と史上高値を更新しました。また、ドル円相場がリスクオンの動きを強めたことで、ポンド円相場も、158.23円の年初来高値まで上昇しました。
 しかしながらFOMCが、米国のインフレ率の上昇もあって、テーパリングを本格的にスタートし、来年3月のテーパリング終了や市場に、FOMCの来年3回の利上げを織り込む形で、ポンドドルが売り押され年間安値となる1.3160ドルまで売り込まれました。また、南アでオミクロン株が発見され、英国でも感染者数が増加傾向を示し、ポンド円も150円割れまで再度売りに押される形となりました。ただ、一方で英中銀が、市場の予想に反して、12月最後のMPCで0.15%の利上げを決定し、どうにかポンド円の下値を支える形で、年末の取引を終了しようとしています。

有限会社フォレックスラジオ作成

【2021年の主な材料】

 以下が現在、判明している今年のイベントや材料です。注目度の高いものは太字で表示しています。ただ、あくまで予定で、変更されることがあります。

 リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2022年は、米国の中間選挙を始めとして、欧州の選挙や日本の参議院選挙など選挙が多く予定されています。また、これは決定ではありませんが、昨年5月のスコットランドの国民投票で勝利したスコットランド国民党の二コラ・スタージョン首相が、スコットランドの独立の是非を問う2回目の住民投票の実施時期を検討しているようです。こういった点が、ポンド相場の懸念となる可能性に注意しましょう。
 政治の為替市場に与える影響は不透明ですが、株価面では、財政出動などの期待が高まり易く、その場合クロス円相場に、リスクオンの良い風が吹きそうです。ただ、近年のウイグルの人権問題、香港や台湾への圧力を受けた米中の対立の姿を見ると中国の全国人民代表大会や共産党大会での決定、また対ロでもウクライナ情勢次第では、緊張感が高まるかもしれません。こういった地政学リスクの高まりは、クロス円相場に悪影響を与えますので、政治情勢もしっかりチェックしておく方が良さそうです。
 一方金融政策では、FRBや英中銀が一定の金融正常化の道を歩んでいます。金利の先高観が、ポンド相場を支える期待感はありますが、インフレの高止まりが続いた場合、中央銀行が金融引き締め姿勢を更に強めるよう動くこともありそうです。その場合株価の調整を伴って、リスクオフの動きが大きく広がる可能性にも留意して対応しましょう。  

【2022年の注目点】

 2021年の相場環境を踏まえて、2022年のポンド円相場の注目点をまとめてみました。
 
・ ブレグジットやパンデミック後の英経済
・ 英中銀の金融引き締めは続くのか?
・ 懸念は引き続き北アイルランドとスコットランド?

〇 ブレグジットやパンデミック後の英経済

 今年ブレグジット移行期間を終了して、完全なブレグジットが実現しました。一時物流やFTA交渉で混乱が想定されていましたが、この問題の金融市場への影響は、あまり見えていません。また、新型コロナウィルスの感染拡大で、各国で都市封鎖(ロック・ダウン)や行動規制が続きましたが、一方でワクチンの接種が一定の効果を示し、英国でも「ウィズ・コロナ」政策に足取りを向けているようです。
 大手の投資銀行のJPモルガンなども「2022年は世界的に完全回復の年となる」と直近のリポートで予想しています。来年は世界的に、パンデミックの流行が終了し、コロナ前の正常な状態に戻ることが期待されています。
 以下は、英国製造業・非製造業・建設業PMIの推移を示したチャートです。パンデミックでの急落から大きく戻っていますが、PMIは、アンケート調査ですので、だいたい「60」台がピークとなるケースが多く、若干調整気味となっています。また、ブレグジットの影響もあって、移民の労働力供給不足が伝えてられています。こういった面が景況感の圧迫につながる可能性あるので注意です。

 次の英RICS(英国国立鑑定士協会)の住宅価格指数の推移を見てみましょう。ブレグジット国民投票後の混乱での調整が、パンデミック・ショックで悪化に弾みがつきましたが、こちらも大分大きく回復しています。一部に中国の香港に対する政治的な引き締めの影響で、香港からの移住が増えていることが要因との指摘もあります。一方ブレグジットで移民の流入が限定されていることや英国でも少子高齢化の影響で、更なる上昇は不透明となりそうです。

 ただ、一部では2021年の「リベンジ消費」に、2022年は反動が出るとの指摘もあります。オミクロン株の影響も不透明で、また新たなウィルスの新株が発見される可能性もあることは注意しましょう。

 一方英国では、経常収支の赤字が続いています。北海油田はありますが、自動車産業は、ほとんどが外資の傘下に入っており、貿易は衰退しています。現在は過去の遺産からの収益がありますが、このように経常収支の赤字が続く限り、ポンド相場の押し下げ要因が続くことは留意しておきましょう。 

〇 英中銀の金融引き締めは続くのか? 

 英中銀は、遂に今年の12月16日の英中銀金融政策委員会(MPC)で、政策金利の引き上げを、賛成8、反対1で決定しました。それまで英中銀の要人が、さんざん利上げ発言を繰り替えしていましたが、肩透かしとなっていたことで、サプライズとなったようです。
 また利上げ幅は、0.15%と低いレベルですが、英中銀は通常0.25%ずつ政策金利を変更することが多く、最後の利下げがゼロ金利を避けるために、0.15%としたことで、それに準じたものとなっております。来年段階的に英中銀が金融引き締めを続けるかが、ポンド円相場には大きな注目となります。
 一方資産の購入に関しては、国債買い入れ枠の8750億ポンド、社債買い入れ枠の200億ポンドは据え置きを全会一致で決定しています。この点も米国が既にテーパリングの終了を来年3月に終了することを決定していることに比べると、未だ警戒感が残っているようです。 

 また英国の消費者物価指数の動向をチェックしておきましょう。 
 直近大きく前年比で5.1%まで急上昇していますが、前年の反動の面も強く、過去リーマンショック前後の上昇も5%前半がピークとなっています。また英中銀も「英インフレは4月に6%付近でピークを迎えると予想」との声明を出しています。オミクロン株の状況次第では、英中銀が慎重姿勢を続ける可能性に注意しておきましょう。 

 一応現在市場では、英中銀が、0.25%つづ2回の利上げを実施し、来年0.75%まで政策金利を引き上げると見ているようです。更に引上げペースを早めるか、テーパリングまで踏み込むかを、現状で判断することは難しですが、過去リーマンショック前の英国の金利水準が5%台だったことを考えると、0.75%でもポンド相場を支えるには、力不足かもしれません。また、英国のPMIに上げ渋りが見え、住宅価格や消費者物価指数も更に強く上昇するか不透明です。
 ともかく、今後も英中銀のMPCの発表は注意です。以下に、ご参考までに、今年の英中銀の金融政策委員会の結果発表予定日を掲載しておきます。 

02月03日:政策金利及び議事録、四半期インフレリポート公表
03月17日:政策金利及び議事録公表
05月05日:政策金利及び議事録、四半期インフレリポート公表
06月16日:政策金利及び議事録公表
08月04日:政策金利及び議事録、四半期インフレリポート公表
09月15日:政策金利及び議事録公表
11月03日:政策金利及び議事録、四半期インフレリポート公表
12月15日:政策金利及び議事録公表

〇 懸念は引き続き北アイルランドとスコットランド?

 英国が欧州から完全分離してから間もなく1年となりますが、EUとの通商問題をめぐる対立はまだ解決を見ていないようです。一応EUと英国では関税ゼロを維持していますが、「北アイルランド議定書」によって、北アイルランドでは、未だ英国からの物品に通関手続きが必要となっています。特に過去30年間にわたる北アイルランド紛争に対するセンシティヴな懸念や物理的な問題もあって、なかなか解決に至らないようです。
 英国サイドの強硬姿勢もありますが、今後EUの裁判所が英国に制裁金の支払いを命じる可能性や金融制裁を課す可能性も指摘されています。問題が複雑で詳細は省きますが、英国は、フランスとも漁業権などで問題を抱えています。現状金融市場で、あまり大きくクローズ・アップされていませんが、今後この問題が大きくあるなら注意しておきましょう。

 一方スコットランドの独立問題も注意です。
 今年の5月6日の住民投票で、スコットランド国民党(SNP)は、129議席中64議席を獲得、単独過半数にはあと1議席足りませんでしたが、連立を組む緑の党が8議席を確保したため、保守党を見事に打ち破った形となっています。
 スタージョン首相はこの時の声明で、2022年初頭に、住民投票に向けた法案を提出する可能性を除外しないと述べています。ジョンソン首相はこの問題は2014年の住民投票で決着しており、当然拒否する方針ですが、この問題が今後のポンド相場の波乱要因となる可能性が残っていることは注意しておきましょう。 

【ポンド円のアノマリー】

 以下は、日本と英国の10年物国債利回りとポンド円相場のチャートです。欧州信用不安、英国のブレグジットの移行期間、パンデミック・ショックなど金利差とポンド円相場が乖離する局面もありますが、総じて同調するようです。総じてリスクオフの時期は、金利差と乖離しますが、リスクオンの状況では連動性が高いようです。
 そうなると来年は、新型コロナウィルスからの経済回復が想定されます。一応英国は、金融正常化の流れにありますので、こういった面がポンド円相場の下値を支えるか注目しましょう。

有限会社フォレックスラジオ作成

【テクニカル面】

 テクニカル面からまず、ポンド円を構成するポンドドル相場の月足をチェックしておきましょう。
 ポンドドルは、英国が国民投票で、ブレグジットを決定した2016年から売りに押されるも下値を1.1378ドルで支え1.4337ドルまで反発、その後パンデミックの影響で、再度1.1412ドルまで下落後この位置を支えて反発が、最高値2.1162ドルからのレジスタンスを越えるも1.4251ドルで抑えられています。
 チャート形状からは、ダブル・ボトムが下値を支え、上値はダブル・トップが押さえています。つまりこのレンジ、ざっくりと1.14ドル前後や1.43ドル前後をブレイクするまでは、新たな方向感となりづらい形となりそうです。来年以降こういったブレイク・アウトが発生するかですが、それまでは揉み合いと見る方が良いでしょう。
 ただ、フィボナッチ・リトレースメントから見ると反発が1.1378ドルから1.17188ドルの50%で抑えられていること、上昇サポートを割れていること、加えて下段のスロー・ストキャスティクスが、デッド・クロスしていることを考えると2022年は弱い展開が想定されそうです。
 上値は、1.37ドル-1.40ドルゾーンが抑えるとレジスタンスが有効です。あくまで1.4251ドルや1.4377ドルの戻り高値を越えて、1.5018ドルのブレグジット国民投票時の高値がターゲットとなります。
 一方下値は、現状の安値1.3163ドルが維持されると良いがですが、維持出来ない場合、1.3135ドル,1.2676ドル-1.2855ドル、1.2073ドル-1.2360ドルゾーンの月足の戻り安値圏がターゲットとなります。その場合も1.20ドルのサイコロジカルが維持されると良いですが、1.1412ドルや1.1378ドルの安値を割れると相場が崩れ、1.0525ドルの1985年2月の安値までポイントが無くなるので注意です。
従って2022年のポンドドルの想定レンジを1.2500ドル~1.4000ドルとします。 

 次にドル円相場も見ておきましょう。
 ドル円のテクニカル面では、期間を変えたドル円相場の3つの月足チャートをベースにお話させて頂きます。

① 1ドル360円時代、1971年からの超長期月足チャート

 ドル円相場が、過去固定相場だったという話も、現在意識している人はほとんどいないと思いますが、第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が打ち出した物価安定・緊縮財政政策「ドッジ・ライン」によって、1米ドルは、360円に固定されていました。どうして360円に決定されたかは、諸説入り混じるところですが、「円は丸なので、丸なら360度だから1ドル360円にした」という本当かウソかわからない話があります。
 これは余談ですが、歴史的に1973年に変動相場制に移行した時点からドル円相場を考察してみましょう。(1971年に、米国がドルと金の交換を停止した「ニクソン・ショック」後、「スミソニアン協定」によって、一度1ドル=308円に切り下げられています)
 どうして、この話からスタートするかと言いますと、実は古くから為替でディーラーやアナリストの間では、「ドル円相場の半値説」というのが存在します。
 これは1ドル360円の時代から、ざっくりと180円に下落、次の戻り高値の278円から139円、160円から80円、148円から74円というように動いているという話です。下記のチャートをご覧頂くと、100%ぴったりとした価格ではありませんが、総じて整合性があることが見て取れると思います。この事実は若干驚きですが、今後も円高のトレンドが継続すると仮定するなら、次のドル円相場のターゲットは、高値125.86円の半値の63円となります。この説を信じて良いのかは、未だ断言はできませんが、波動的にも、1ドル360円からの下落が、一旦120.45で止まって、現在が160.35からの第5波の過程にあるとすれば、まだ円高の流れが続いているとも見えます。こういった見方が、世間で円高説を唱える多くの専門家の根拠となっているように思われます。
 一応この仮定を踏まえて、次のチャートをチェックしてみましょう。

② 第2の波動となる1990年からの長期月足チャート

 では、再度この160.35円からの波動を見てみましょう。
 ここで注意しなければならないことは、良くテクニカル分析で利用される「エリオット波動」に関しての見解です。エリオット波動とは、簡単に言うと「相場は5つの波動(上昇または下落)とその終了後に、ABCの3波の大きな上下波動を形成して、ひとつの相場のサイクルが終了する」という説です。
 当然この一言でエリオット波動を全て解釈することはできません。またエリオット波動論は、株式市場で生まれたテクニカル分析手法ですので、為替市場でも適応できるかは、賛否が分かれるところです。加えて波動のカウントの仕方やスタート地点で、人によって見方が変わってしまいます。特に最後に出るABCの3波は、なかなか綺麗に出ることが少ないので、個人的は、単純なカウントを利用して見ています。この見方とすると為替市場では、たびたび7波や9波で、相場のトレンドが変わることが多いと感じています。
 この見方が正しいかはさておいて、これを前提に160.35円からの波動を、更に詳細に見てみると以下のチャートで示した波動の動きのようにも捉えることが出来ます。つまり現状は160.35円から75.31円で第7波の位置にあって、一旦円高が終了しているとの見方も出来るということです。
 この理由としては、前述の超長期のチャートで見た第3波の位置を詳細にカウントするとこの位置だけなら、綺麗な5波を完了しています。不透明なのは75.31円から125.86円のABCの動きが、はっきりとしないことで、判断が分かれることです。

 結局現状の相場が、未だ第5波の下落の中にあるのか?それとも75.31円で円高が、一旦終了して、次の波動に中にあるのかの判断が不透明なことが、現在の相場の膠着感の要因なのかもしれません。そうなると来年以降ドル円相場が、一定のチャート・ポイントをブレイクできるのかが、将来的なドル円相場の見通しを左右しそうです。

 その面で特に注目して頂きたいのが、160.35円の高値と125.86円の高値を結んだレジスタンスの位置です。この位置は一応計算式からは、チャート上の青い矢印の位置となります。月間ベースですのでブレはありますが、2021年12月の時点の117.29円から来年末に向けて、115.97円まで降りてきます。現状のドル円相場の戻り高値は115.52円ですが、この位置を来年以降超える動きがあるのか、または、超えられないで、逆に下値を支えている102.59円や更に99.02円を割れてしまうのかで、はっきりと「円高の長期トレンドが終了するのか」、それとも「未だ円高のトレンドが続くのか」結論が出て来るでしょう。

③ 史上再安値を付けた後の2011年からの月足チャート

 最後に直近2011年の歴史的な安値75.31円からの月足を見てみましょう。
 一応こちらもエリオット波動からみましょう。75.31円の安値を基準として、カウントすると現状の相場が、下記チャートのように、最後の第5波の上昇過程にある可能性があります。実は、この見方に整合性があるかは、少し自信がありません。また、現状の高値が、フィボナッチ・リトレースメント(125.8円6から99.02円の61.8%)の位置となる115.52円で、上値を抑えられていますが、フィボナッチ・リトレースメントの有効性はあまり高くないこともあって、この位置がこの5波のトップとなるのかも断言はできません。
 この面では、チャートの下段に表示しているモメンタムを示す「スロー・ストキャスティクス」を見てみることが良さそうです。
 こちらは上昇を継続していますので、来年も底堅い展開が続きそうです。ただ、若干たれ気味であることから、この115.52円の直近高値が上値を抑え続ける状況が続いた場合、いずれこのスロー・ストキャスティクスが、デッド・クロスに向かう可能性があることは注意しておきましょう。あくまで現在の高値115.52円をしっかりと超える動きが見えてから、②のチャートのレジスタンスを目指す動きとなります。その場合戻り高値からは118.66円がひとつの重要なポイントで、更にはフィボナッチ・リトレースメントの76.4%となる119.53円などが視野となる形です。
 一方下値は、107.45円から109.51円の位置(ピンクのゾーン)が、サポート圏として支えると堅調な相場が続きそうです。この位置は前述のフィボナッチ・リトレースメントの38.2%や23.6%と整合性がある位置です。リスクは、こういった位置を維持で出来ないケースです。その場合サポート圏は未だ低い位置ですが、将来的に②のチャートの水色で示したネック・ラインとなる102.59円や99.02円と重なることになりそうです。従って、107.45円-109.51円ゾーンを割れても、このサポートが維持されると更に下落は拡大しないでしょう。ただ、もし割り込むと大きな円高のリスクとなります。
 上記を勘案して、2022年のドル円相場の想定レンジを108.50円~118.50円とします。

 それでは、ポンドドルとドル円の想定レンジから作成したマトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)を見てみましょう。
 ポンドドルの想定レンジを1.2500ドル~1.4000ドル、ドル円を108.50円~118.50円としましたので、これから算出されたポンド円相場の最大想定レンジは135.63円から165.90円となります。ただ、少し広すぎることもあって、140.98円から160.09円が適当水準とします。

 それでは、最後にポンド円の月足を見てみましょう。118.85円や116.85円の安値から195.89まで上昇も、これをトップに再度124.85円や126.52円で下値を支えている展開です。総じてこの195.89を高値(B)として、118.85-116.85円と163.09円-156.76円(A)で形成した右肩と124.85円-126.52円と156.62円-158.23円(C)で形成した左肩での一種のH&Sの形と見えます。また、その期間から見ると、左肩のスタートが2008年10月の急落(→)からとして、終了が2013年の11月(約61カ月)、右肩は2016年6月からスタートしていますので、同等の期間となるなら2021年の7月が終了ですが、実際現在までこの右肩の中にあります。こういったH&Sのパターンでは、時間的にぴったりと来ることは少ないですが、そうなると来年以降もこの右肩の中に残るのか、完全にH&Sが終了するのか、現状では判断できません。ブレイクするなら、状況的には上ブレイクが価格的に近い位置にありますが、一方でスロー・ストキャスティクスは、まだデッド・クロスしていませんが下降気味です。 
 確定するのは避けておいた方が良さそうですが、ともかくショルダーのトップ部分となる156.62円-163.09円ゾーン(オレンジの横線)は、195.89円のトップと4つの安値とのフィボナッチ・リトレースメントの50%の位置と重なっていて、整合性の高い位置です。この位置をしっかりと越える動きが見えるのかどうかで、次の展開が決定しそうです。
 上値は、このショルダーのトップ部分を越えて、164.10円の戻り高値を越えると月足の戻り高値からは、175.00-35円がターゲットとなります。
 一方下値は、現状下値を支えている148.12-98円ゾーンの戻り安値圏を維持するなら強いですが、割れてしまうと調整色が強まり、136.80円-139.52円ゾーン、133.04円-134.88円ゾーン、129.32円-131.77円ゾーンまでターゲットとなります。一応こういった位置が維持されると良いですが、リスクは当然126.52円や124.85円の戻り安値割れとなります。 

【予想レンジと戦略】

 以上を踏まえてポンド円相場の来年の見通しと戦略についてお話します。
 一応新型コロナウィルスの感染が、終息に向かう前提で予想をしています。もし、更に強いウィルスが出現して、再び経済が大きく落ち込んだり株価の大幅調整があった場合は、見直しの必要があるかもしれません。また年間の見通しや戦略は、そう簡単に当たるものではありません。あくまで現在の状況で判断したものですので、くれぐれも自己責任でご参考にして頂ければ幸いです。

 来年のポンド円の想定レンジを、マトリック・チャートを参考にして140.00円から160.00円とします。

戦略な注意点としては、
① 1-3月期(ただ、2月は一時的な円安があります)は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いです。
② 北アイルランドやスコットランドのリスクが高まるなら注意しましょう。
③ 堅調な株価が続いていますが、アノマリー的には、「セル・イン・メイ」が意識される5月から夏場にかけて、米中間選挙を前に株価に売りが出易い可能性があるので、注意しておきましょう。 
④ 夏場は、基本揉み合い気味の展開となり易いですが、8月中旬に例年一時的な円高となるケースが散見されることもあり、油断しないようにしましょう。
⑤ 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期の動きには逆張りで向かわないようにしましょう。 

基本的な考え方は、
・ファンダメンタルズ面では、日英金利差が拡大する可能性が高く、この点ではポンド買いが示唆されるが、織り込みが強まっている可能性には注意しておきたい。
・テクニカル面では、ポンドドルのモメンタムは売り、ドル円は買いとなっていることから、ポンド円自体は中立である。
・前述のH&Sの形からは、横ばいの可能性が示唆される。
・ドル円のモメンタムに今後調整の可能性が残っていること、はっきりとデッド・クロスとはなっていないが、ポンド円のモメンタムも今後下落する可能性がある。

 こういった面を考慮すると、2022年の戦略は、基本逆張りとなりますが、早期は戻り売りから検討します。160円方向への上昇を売り上がって、ストップは164.10円越えで検討します。ターゲットは148円が維持されると利食います。または、割れる状況を見てから、戻り売りを考えるのも良いでしょう。この場合のターゲットは、140円を前に下げ止まりを確認しながら利食いましょう。またこの位置の買いは139.50円割れなどをストップに対応。更なる調整では、137円前後から130円方向は買い下がり場と見ています。このストップは129.32円割れです。ただ、こういった買いの場合、下げ幅次第ですが、前述の148円台が上値を抑えると総じて利食って置くのが良さそうです。

※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。