ユーロ円-2022年相場予想と戦略-                           

【景気回復と金融正常化を巡って株価が高値を維持できるか?】

※本記事は2021年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。

【2021年のユーロ円相場を振り返って】

 2021年のユーロ円相場は、前年ロシア中銀が外貨準備をユーロにシフトすると表明したことやドル円相場が、1月6日の102.59円を年間安値として反転に転じたことで、年初の125.09円を底値に堅調な反発からスタートしました。世界的に各国でワクチンの接種が開始したことで、コロナ後の景気回復を睨んで、日米株価が堅調に上昇したこともリスク志向の動きにつながりました。
 この上昇は134.13円まで上値を拡大しましたが、ワクチンの接種にも新型コロナウィルスの感染拡大が続いたことで、3月にはECBが、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の大幅拡大を決定、ユーロドル相場が1月の高値1.2349ドルを前に1.2666ドルで上げ渋ったことで、この位置が2021年のユーロ円の高値となっています。
 ただ、その後の調整もドル円相場の底堅い動きが続いたことで、128円割れが支えられましたが、一方環境対策で欧州が進めていたクリーン・エネルギーが、悪天候の影響で供給不足になったことで、欧州天然ガスの価格が急騰したことが、ユーロ相場を圧迫する形から、130円ミドルが上値を抑え総じて揉み合い相場となりました。
 しかしこれも9月に入ると自民党総裁選を睨んで、菅総理が突然退陣表明したことが、サプライズとなり新政権に対する期待感から日経平均が31年ぶりの高値、DAXやNY株価が次々と史上高値を更新しました。また、ドル円相場もリスクオンの動きを強め114円後半まで上昇したことなどから133.48円まで再反発しました。ただ、この動きもFOMCが、米国のインフレ率の上昇もあって、テーパリングを本格的にスタートし、来年3月のテーパリング終了や市場にFOMCの来年3回の利上げを織り込む形で、ユーロドルが年間安値となる1.1186ドルまで急速に売り込まれてことで、127.39円まで売りに押されました。ただ、一方でECBが、来年3月のPEPPの終了を表明したことなどもあって、この位置を支えて2021年の取引を終了しようとしています。
 しかしながら、ロシアがウクライナ国境に軍部を増強していて、NATOとの緊張が高まっていることで、欧州天然ガス価格が、再び高値を更新しています。来年の相場の不安要素として意識されています。

有限会社フォレックスラジオ作成

【2022年の主な材料】

 以下が現在、知り得る今年のイベントや材料です。注目度の高いものは太字で表示しています。ただ、あくまで予定ですので、変更されることがあります。

 レポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、2022年は、米国の中間選挙を始めとして、欧州の選挙や日本の参議院選挙など選挙が多く予定されています。政治の為替市場に与える影響は不透明ですが、株価面では、財政出動などの期待が高まり易く、その場合クロス円相場に、リスクオンの良い風が吹きそうです。ただ、近年のウイグルの人権問題、香港や台湾への圧力を受けた米中の対立の姿を見ると中国の全国人民代表大会や共産党大会での決定、また対ロでもウクライナ情勢次第では、緊張感が高まるかもしれません。こういった地政学リスクの高まりは、クロス円相場に悪影響を与えますので、政治情勢もしっかりチェックしておく方が良さそうです。
 一方金融政策では、FRBやECBが一定の金融正常化の道を歩んでいますが、かじ取りを間違えると株価面では、大きなリスクとなります。特に世界的に株価が歴史的な高値圏にあって、インフレの高止まりが続いた場合、中央銀行が金融引き締め姿勢を更に強めるよう動くこともありそうです。その場合株価の調整を伴って、リスクオフの動きが大きく広がる可能性にも留意して対応しましょう。  

【2022年の注目点】

 2021年の相場展開を踏まえて、2022年のユーロ円相場の注目点をまとめてみました。

・コロナ後の欧州経済とメルケル後の欧州政治
・ECBの金融正常化
・株価の行方

〇 コロナ後の欧州経済とメルケル後の欧州政治

 今年も新型コロナウィルスの感染拡大が続き、年初からユーロ圏でも都市封鎖(ロック・ダウン)や行動規制が実施されましたが、一方ではワクチン接種が進み、経済自体は想定外に立ち直りを見せました。大手の投資銀行のJPモルガンなども「2022年は世界的に完全回復の年となる」と直近のレポートで予想しています。来年は世界的に、パンデミックの流行が終了し、コロナ前の正常な状態に戻ることが期待されています。
 以下は、ユーロ圏の製造業・非製造業PMIの推移を示したチャートです。一昨年の大幅なPMIの低下も、今年は、製造業で「63.3」、サービス業でも「59.8」まで回復しました。このPMIは、「50」が景気の分水嶺と言われていますが、一方で過去好況の時でも、「60」前後がピークとなっています。今回も若干ピークが見えていますが、2022年は、2021年の「リベンジ消費」に反動が出るとの指摘もあります。欧州の雇用環境も、あまり強いものではありません。ユーロ圏のPMIが「50」を大きく割れていくとは思えませんが、世界的な景気回復が、特に原油や天然ガスの海外調達に依存するユーロ圏経済を圧迫する可能性も残っています。
 下記チャートで同時にプロットしたユーロドル相場と比較してみると、若干のずれはあっても、PMIの上下と比較的連動性が高いことは注目してください。米国と異なり、欧州圏は比較的倹約や健全性を重視することから、爆発的な景気回復の期待感は強くありません。2021年の景気回復の反動的な動きが見えるなら、ユーロドルやユーロ円相場もこのPMIに連動して、低下する可能性がありそうです。

有限会社フォレックスラジオ作成

 一方政治面では、16年の長きにわたって、独首相の座にあったメルケル氏が、その座から退き、新たに社会民主党(SPD)のオーラフ・ショルツ氏が、2021年12月8日に連立政権を成立させ首相に就任しました。
 ショルツ新首相の手腕は不透明ですが、メルケル元首相と比較され易いこともあって、反メルケル色を強めるかもしれません。また新しい連立政権は、SPD、緑の党、自由民主党の各党のイメージカラー3色の組み合わせで「信号機連合」と言われているようですが、特に緑の党は、環境問題などで急進的な党です。その共同党首のアンナレーナ・ベアボック氏が、外相に就任しましたが、人権問題、香港や台湾の危機で中国に対して強硬姿勢で臨む可能性ありそうです。メルケル元首相は、中国に比較的良好な対応をしたことで、メルケル時代にドイツの対中輸出は2倍に増えたとされていますが、もし外交面で軋轢が見えた場合、ドイツ経済にも大きな影響を与える可能性は注意しておきましょう。 

〇 ECBの金融正常化

 ECBは、12月の会合で、2022年の金融正常化の予定を発表しました。現在「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」を、2022年3月末で終了します。一方従来から実施している「資産購入プログラム(APP)」は、2022年4-6月期に現行の200億ユーロから400億ユーロへ増額、7-9月期も月額300億ユーロ、10月以降も200億ユーロの購入を続ける予定です。今後の経済の行方次第で変更する可能性もありますが、このシナリオでは、2023年前半に資産購入が終了し、もし金利を引き上げるとしても、2023年中盤となりそうです。ラガルドECB総裁も、前回の理事会で、「ECBが2022年に利上げする可能性は非常に低い」と述べています。 一応ECBも徐々に金融の正常化に足取りを強めています。ただ、欧州では雇用の改善に停滞が見えること、米国に比べて景気がそれほど強くないことは留意しておきましょう。

 では、ユーロ圏を代表するドイツの10年物国債のテクニカルもチェックしておきましょう。最低金利となる-0.660%からは反発していますが、利回りの上昇も0.00%を前に上げ渋って、下段のスロー・ストキャスティクスがデッド・クロス気味です。テクニカル面からは、ECBの正常化の動きから、大幅低下はないとしても、更なる上昇は当面難しそうです。

有限会社フォレックスラジオ作成

 また、日本とドイツの金利差が、ユーロ円相場にどういった影響を見せるか、下記の日独10年物国債利回りとユーロ円相場の2006年から動きを見ておきましょう。
 2013-16年は、若干連動性が低いですが、これはアベノミクス・黒田バズーカで、大幅に日経平均が上昇して、円安が進んだ時期です。その他では総じて連動性が高い形が見えると思います。現在の離れは、ウクライナ問題の影響もありそうですが、来年この問題が落ち着けば、一定の連動性を回復するかもしれません。特に日銀の金融政策は、来年も変更する可能性は低く、独国債の金利だけを考量するなら、前述の通り更に金利差が広がる可能性は低いので、これがユーロ円相場の圧迫要因となりそうです。

有限会社フォレックスラジオ作成

 参考にECB理事会の日程を掲載します。

02月03日
03月10日(ECBスタッフの成長率見通し公表)
04月14日
06月09日(ECBスタッフの成長率見通し公表)
07月21日
09月08日(ECBスタッフの成長率見通し公表)
10月27日
12月15日(ECBスタッフの成長率見通し公表)

 既に12月のECB理事会で、一定の金融正常化のプロセスが示されていますので、粛々とこのシナリオで進めば良いですが、何か状況が変化した場合、またECBスタッフの成長率見通しやラガルド総裁の発言の変化が見えた場合には注意しておきましょう。

【ユーロドルのアノマリー】

ユーロ円相場に、大きく影響を与えるユーロドル相場のアノマリーに注目してみましょう。
以下は2008年のユーロドルが再高値をつけた後の現在までの月足チャートです。
 枠で囲った位置は、赤が1年のサイクル、青が2年のサイクルを示しています。ぴったりとしているわけではありません。また2008年から2012年は、上下の動きですので、整合性は若干不透明ですが、その後はざっくりと2年の上昇、1年急落、2年の横ばい、1年の上昇から、2年の下落、最後のところは1年の反発です。このパターンを踏襲するなら、次は2021年からの2年の下落が想定されます。これが当てはまるかは、断言できませんが、2022年もユーロドル相場が軟調な展開となるなら、円安があっても、ユーロ円相場は上がり難い状況が続きそうです。

有限会社フォレックスラジオ作成

【テクニカル面】

≪ユーロドル≫

 テクニカル面からまず、ユーロ円相場に、大きく影響を与えるユーロドルの長期の月足をチェックしてみましょう。以下はユーロドル相場の1999年からの月足チャートです。
 歴史的な高値の1.6040ドルからの調整を、1.0341ドルの安値で支えて、反転も2018年2月の1.2555ドルや1.2349ドルの戻り高値で押さえられています。この位置は、1.1640ドル-1.1876ドル-1.2042ドルのネック・ラインとも概ね一致する位置です。また、1.2555ドルや1.2349ドルの戻り高値が、ダブル・トップとして機能している可能性もあって、現状は調整気味です。下段スロー・ストキャスティクスもデッド・クロスから下落しています。1.1603ドルや1.1704ドルのそれまでの安値が、上値を抑えると弱く、超えても1.1910ドルの戻り高値やサイコロジカルな1.20では売りとなり易そうです。
 一方下値は、現状の1.1186ドルの安値が維持されると良いですが、割れると1.1100ドル、更に長期のサポートが控える0.7229-67ドルまでターゲットとなります。ただ、こういった位置が支えることが出来れば、更に下落は拡大しないと思われますが、1.0636ドルや1.0341ドルの安値まで割れると相場が崩れて、0.9600ドルまでターゲットとなります。
 以上を踏まえて、ユーロドルの2022年の想定レンジを1.0800ドルから1.2000ドルとしたいと思います。

≪ドル円≫

 次にドル円相場ですが、テクニカル面からは、期間を変えたドル円相場の3つの月足チャートをベースにお話させて頂きます。

① 1ドル360円時代、1971年からの超長期月足チャート

 ドル円相場が、過去固定相場だったという話も、現在意識している人はほとんどいないと思いますが、第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が打ち出した物価安定・緊縮財政政策「ドッジ・ライン」によって、1米ドルは、360円に固定されていました。どうして360円に決定されたかは、諸説入り混じるところですが、「円は丸なので、丸なら360度だから1ドル360円にした」という本当かウソかわからない話があります。
 これは余談ですが、歴史的に1973年に変動相場制に移行した時点からドル円相場を考察してみましょう。(1971年に、米国がドルと金の交換を停止した「ニクソン・ショック」後、「スミソニアン協定」によって、一度1ドル=308円に切り下げられています。)
 
 どうして、この話からスタートするかと言いますと、実は古くから為替でディーラーやアナリストの間では、「ドル円相場の半値説」というのが存在します。
 これは1ドル360円の時代から、ざっくりと180円に下落、次の戻り高値の278円から139円、160円から80円、148円から74円というように動いているという話です。下記のチャートをご覧頂くと、100%ぴったりとした価格ではありませんが、総じて整合性があることが見て取れると思います。この事実は若干驚きですが、今後も円高のトレンドが継続すると仮定するなら、次のドル円相場のターゲットは、高値125.86円の半値の63円となります。この説を信じて良いのかは、未だ断言はできませんが、波動的にも、1ドル360円からの下落が、一旦120.45円で止まって、現在が160.35円からの第5波の過程にあるとすれば、まだ円高の流れが続いているとも見えます。こういった見方が、世間で円高説を唱える多くの専門家の根拠となっているように思われます。
 一応この仮定を踏まえて、次のチャートをチェックしてみましょう。

② 第2の波動となる1990年からの長期月足チャート

 では、再度この160.35円からの波動を見てみましょう。
 ここで注意しなければならないことは、良くテクニカル分析で利用される「エリオット波動」に関しての見解です。エリオット波動とは、簡単に言うと「相場は5つの波動(上昇または下落)とその終了後に、ABCの3波の大きな上下波動を形成して、ひとつの相場のサイクルが終了する」という説です。
 当然この一言でエリオット波動を全て解釈することはできません。またエリオット波動論は、株式市場で生まれたテクニカル分析手法ですので、為替市場でも適応できるかは、賛否が分かれるところです。加えて波動のカウントの仕方やスタート地点で、人によって見方が変わってしまいます。特に最後に出るABCの3波は、なかなか綺麗に出ることが少ないので、個人的は、単純なカウントを利用して見ています。この見方とすると為替市場では、たびたび7波や9波で、相場のトレンドが変わることが多いと感じています。
 この見方が正しいかはさておいて、これを前提に160.35円からの波動を、更に詳細に見てみると以下のチャートで示した波動の動きのようにも捉えることが出来ます。つまり現状は160.35円から75.31円で第7波の位置にあって、一旦円高が終了しているとの見方も出来るということです。
 この理由としては、前述の超長期のチャートで見た第3波の位置を詳細にカウントするとこの位置だけなら、綺麗な5波を完了しています。不透明なのは75.31円から125.86円のABCの動きが、はっきりとしないことで、判断が分かれることです。

 結局現状の相場が、未だ第5波の下落の中にあるのか?それとも75.31円で円高が、一旦終了して、次の波動に中にあるのかの判断が不透明なことが、現在の相場の膠着感の要因なのかもしれません。そうなると来年以降ドル円相場が一定のチャート・ポイントをブレイクできるのかが、将来的なドル円相場の見通しを左右しそうです。

 その面で、特に注目して頂きたいのが、160.35円の高値と125.86円の高値を結んだレジスタンスの位置です。この位置は一応計算式からは、チャート上の青い矢印の位置となります。月間ベースですのでブレはありますが、2021年12月の時点の117.29円から来年末に向けて、115.97円まで降りてきます。現状のドル円相場の戻り高値は115.52円ですが、この位置を来年以降超える動きがあるのか、または、超えられないで、逆に下値を支えている102.59円や更に99.02円を割れてしまうのかで、はっきりと「円高の長期トレンドが終了するのか」、それとも「未だ円高のトレンドが続くのか」結論が出て来るでしょう。

③ 史上再安値を付けた後の2011年からの月足チャート

 最後に直近2011年の歴史的な安値75.31円からの月足を見てみましょう。
 一応こちらもエリオット波動からみましょう。75.31円の安値を基準として、カウントすると現状の相場が、下記チャートのように、最後の第5波の上昇過程にある可能性があります。実は、この見方に整合性があるかは、少し自信がありません。また、現状の高値が、フィボナッチ・リトレースメント(125.86円から99.02円の61.8%)の位置となる115.52円で、上値を抑えられていますが、フィボナッチ・リトレースメントの有効性はあまり高くないこともあって、この位置がこの5波のトップとなるのかも断言はできません。
 この面では、チャートの下段に表示しているモメンタムを示す「スロー・ストキャスティクス」を見てみることが良さそうです。
 こちらは上昇を継続していますので、来年も底堅い展開が続きそうです。ただ、若干たれ気味であることから、この115.52円の直近高値が上値を抑え続ける状況が続いた場合、いずれこのスロー・ストキャスティクスが、デッド・クロスに向かう可能性があることは注意しておきましょう。あくまで現在の高値115.52円をしっかりと超える動きが見えてから、②のチャートのレジスタンスを目指す動きとなります。その場合戻り高値からは118.66円がひとつの重要なポイントで、更にはフィボナッチ・リトレースメントの76.4%となる119.53円などが視野となる形です。
 一方下値は、107.45円から109.51円の位置(ピンクのゾーン)が、サポート圏として支えると堅調な相場が続きそうです。この位置は前述のフィボナッチ・リトレースメントの38.2%や23.6%と整合性がある位置です。リスクは、こういった位置を維持で出来ないケースです。その場合サポート圏は未だ低い位置ですが、将来的に②のチャートの水色で示したネック・ラインとなる102.59円や99.02円と重なることになりそうです。従って、107.45円-109.51円ゾーンを割れても、このサポートが維持されると更に下落は拡大しないでしょう。ただ、もし割り込むと大きな円高のリスクとなります。

 以上を勘案すると上値は、前述の月足のレジスタンスをベースに、オーバーシュートも見て118.50円前後、下値はピックのゾーンの中心となる108.50円として、ドル円の2022年の想定レンジを108.50円から118.50円とします。

≪ユーロ円≫

 最後にユーロ円自体の月足チャートです。
 ユーロ円相場は、169.97円の史上高値示現後は、94.12円で下値を支えて、その後は149.79円の高値から109.57円まで値を下げた後も保合気味の展開が続いています。また、テクニカル面でも不透明な点が多く、見定めづらい状況です。
 まず、赤い矢印の位置で、サポートを割れていますが下落は加速せず、一方上値も青い矢印の位置で、レジスタンスを上抜けるも上昇が加速していません。また波動のカウントも94.12円の安値からの上昇カウントが正しいのか、149.79円からの下落カウントが良いのか、釈然としない状況で、今後は以下のチャートに新たに加えた茶色のサポートと緑のレジスタンス圏での推移が想定され、再度このブレイクが2022年に実現するかが焦点なります。
 一方可能性としては、ABCで示したゾーンの動きからは、一種のH&S的な展開で、「B」をトップとした右肩の形成中と仮定すれば、今後も「C」のゾーンでの動きが続くと想定されます。ただ、下段のスロー・ストキャスティクスが、買われ過ぎから反転下落となっていますので、直近では下方リスクが残る形ですが、それも茶色のサポートである120円前後が維持される見通しとなります。リスクは114.14円や109.57円の戻り安値割れですが、総じて前述のH&Sの右肩の動きであるなら110円前後は維持されそうです。
 一方上値は、133円ミドルにあるマイナー・レジスタンスが抑えると弱い形です。134.13円や137.50円の戻り高値を超えて、140円前後のメジャー・レジスタンスがターゲットとなりますが、上値を抑えられると保合が続きます。なので、141.06円や149.79円の高値を越えて来ないと、更なる上昇は難しそうです。
 従って、来年では、総じてピックのゾーンの動きを想定したいと思います。そうなると想定レンジは、120円から140円となります。

【予想レンジと戦略】

 それでは、以上を踏まえてユーロ円相場の来年の見通しと戦略についてお話します。
 一応新型コロナウィルスの感染が、終息に向かう前提で予想をしています。もし、更に強いウィルスが出現して、再び経済が大きく落ち込んだり、株価の大幅調整があった場合は、見直しの必要があるかもしれません。

 その前に、ドル円とユーロドルの2022年の想定レンジから、マトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)をチェックしてみましょう。
 ユーロドルのコア・レンジを1.0800ドル~1.2000ドル、ドル円を108.50円~118.50円としましたので、これから算出されるユーロ円の最大想定レンジは117.18円~142.20円となります。ただ、ここまで大きなレンジは想定できないので、だいたい122.66円から136.31円がレンジの中心と見たいと思います。

 ユーロ円自体の想定レンジを120円から140円としましたが、これでは大きすぎるので、マトリック・チャートを基準に算出した122.66円から136.31円をベースに、2022年のユーロ円の想定レンジを最終的に、123円から136円とします。

 次に戦略ですが、前提としては

・近年の保合相場が続く可能性がある。
・ユーロドルの1年と2年のサイクルやユーロ円の月足スロー・ストキャスティクスからは、円安相場でもユーロ円の大きな上昇は望めない。

 また、タイミング的な注意点は

① 1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いです。
② 株価面では、アノマリーから5月の「セルインメイ」、米国の中間選挙を睨んで、年央にNY株が調整入りし易く、地政学リスクなどリスク回避の動きに注意しましょう。
③ 一方ドル円でも、例年アノマリー的に、8月中旬に瞬間的な円高が示現することが多いことは注意ですが、逆にこの時の急な円高は、年末に向けて絶好の円の売り場となることも、覚えておいてください。
④ 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期に一定の動きが見えた場合、逆張りで向かわないようにしましょう。 

 以上を勘案し2022年のユーロ円のスウィング・トレード戦略は、特定の時期は設定しましせんが、基本的に大きめの動きが見えた場合に限って逆張りする戦略です。

 まず下値は現状の安値127.39円を維持するかが焦点です。維持する状況が続くなら、上値トライが先となりそうです。この位置は丁度週足の雲の位置となっています。ただ、逆に割れるなら買いは止めるスタンスとなります。また割れた場合は、124円-125円などから買い始めて、120.00円-121円まで買う形を想定します。このストップは119.31円割れ。または、114.41円の安値を睨んで、117円まで買い下がるのも一考でしょう。買いの場合のターゲットは、買った水準にもよりますが、基本はレンジ相場なので、130.00円-132円が抑えると利食いです。超えても137.50円を越えるまでは流れは変わらないので、反発では順次利食いながら対応しましょう。
 一方上値は、130.00円-131.00円や、132円前半は売り場で、ストップは133.48円や134.13円を越えたあたりと想定します。ただこういった位置を越えると137.50円までポイントが薄くなりますので注意ですが、135円や140円などは一旦売ってみる場所です。135円の売りのストップは137.50円越えで、140円の売りのストップは141.06円越えとなります。また、こういった上昇なら、下値は127円が底堅くなるので、それを考慮して利食いましょう。

※文章中に使用されている、高値・安値等の価格につきましては、筆者が作成に利用したデータ元の価格であり、インヴァスト証券がトライオートFXにて提示した過去の価格とは異なります。