アメリカのマーケット展望【2021年12月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1カ月のターゲットは4700に据え置きます。

(出典:ヤフー・ファイナンス)

米国株式市場は11月末、新型コロナ・オミクロン株の出現のニュースで急落しました。このニュースを受けて一部の国々は渡航制限などの措置を講じています。せっかく動きはじめた人の動きが再び止まってしまうのでは? との懸念から旅行関係の株や原油価格も下落しました。

オミクロン株に罹った人が重篤になるかどうかは、これを書いている11月末の時点では判然としません。またオミクロン株の感染力の強さに関しても不明な点が多いです。もし既存のワクチンがオミクロン株に効かないということになればワクチンのデザインを変更する必要が出ます。その場合、3ヵ月前後で新しいワクチンが完成すると言われています。

オミクロン株で工場や港湾施設が影響を受けるというシナリオでは、解消にむかいつつあるかに見えたサプライチェーンの問題が再燃するリスクもあります。

ただオミクロン株のニュースを受けて米国10年債利回りは1.7%付近から1.44%まで下がってきたので、これが株式のバリュエーションを下支えするものと思われます。

12月・1月は1年のうちで株式市場がとりわけ強い時期として知られています。このため今月は強気のスタンスで臨むべきだと思います。

■米国経済の現況

米国経済は好調です。米国のGDPに占める消費の割合は70%であり、経済の先行きを占う上で小売の動向は決定的に重要です。

米国の消費者のふところは暖かく、今年のクリスマス商戦期間は好調という見方が支配的です。全米小売店協会(NRF)は「二桁台の売上成長」になるだろうという予想を発表しています。そのシナリオ通りになるかどうかに注目したいと思います。

サービス消費の動きにも注目したいと思います。サービス消費は2020年春新型コロナで外出禁止令が出た時、8.55兆ドルから6.8兆ドルまで1.75兆ドルも激減しました。

一方、モノの消費は同期間4.8兆ドルから4.18兆ドルまで0.6兆ドルの減少でした。

つまりサービスの落ち込みモノの消費の落ち込みの2.9倍だったのです。

その後、モノの消費は急速に戻し、今年3月にはコロナ前より1兆ドルも多くなっています。言い換えればオーバーシュートしているのです。その一方でサービスは現在8.4兆ドルであり、まだ戻りきれていません。

つまり経済の先行きを考える上でサービス消費、具体的にはエアライン、ホテル、レストラン、ヘルスケアなどがちゃんと復活してくるか? という点が重要になってきます。

■企業業績

第3四半期のS&P500採用企業の決算が出揃いました。EPSでは82%の企業が、売上高では75%の企業が事前のコンセンサス予想を上回る「良い決算」を出しました。

2021年のS&P500のコンセンサス一株当たり利益(EPS)は$205.28であり去年に比べて+46%成長が見込まれています。2022年は$221.97ですので+8%が見込まれています。

(出典:ファクトセット)

これらはいずれも健全な成長率であり、金融相場から業績相場へのスムーズなバトンタッチが期待できると思います。

■注目ETF

12月の米国株は高いと予想します。特に12月の半ば以降はハイテク株のパフォーマンスが良くなることが多いのでARKイノベーションETF(コード:ARKK)を買い建てることを検討したいと思います。同様に、ナスダック100指数に連動するように設計されているパワーシェアーズQQQ信託シリーズ(コード:QQQ)も面白いと思います。

新型コロナ・オミクロン株のニュースで原油価格が急落したわけですが、もしオミクロン株はそれほど脅威でないというニュースが出たらWTI原油連動ETF(コード:USO)がトレード対象として面白いと思います。

さらにクリスマス商戦期間が好調なようでしたら一般消費財セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLY)も妙味です。

最後に年末年始は小型株が上昇することが多いので、その場合はiシェアーズラッセル2000ETF(コード:IWM)も面白いでしょう。