ユーロ円-2021年相場予想と戦略-

コロナ後・ブレグジット後のEU経済の行方次第

【2020年のユーロ円相場を振り返って】

 2020年のユーロ円相場は、年間を通じて、ユーロドル相場が英国とのFTA交渉に揺れる相場の展開で、円高が続く中、新型コロナウイルスの悪影響もありましたが、総じて揉み合い気味もリスクオンのユーロ高で終了しました。
 年初は、前年から続いた英国のEU離脱が決定。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、FTA交渉が全く進展せず、イタリアやスペインなどの南欧の感染拡大で、欧州諸国がロックダウンを開始、ユーロ相場は軟調気味な展開でスタートしました。
 3月初頭にはFOMCが緊急会合を開き大幅な利下げを発表、ドル円が一時101.19まで急落、ECBも3月18日には、2020年末までの7500億ユーロ規模のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の導入を決定しましたが、欧米株価が下げ止まらず、3月23日には、NYダウが2020年の安値をつけ、ユーロドル相場も1.0636の安値まで下落したことで、ユーロ円相場も5月7日に114.43の安値まで下落しました。
 ただ、その後は徐々に新型コロナウイルスに対しての警戒感が薄れたこと、各国の金融緩和策が一定の安心感につながったことなどから、株価が下げ止まりを見せ、4月30日に、ECBが、更に貸出条件付長期資金供給オペ第3弾(TLTRO3)の最低金利を引き下げ、貸出条件無しパンデミック緊急長期資金供給オペ(PELTRO)の導入を決定したことから、リスクオン的な株価の上昇に追従する形で、ユーロ円相場も反転気味の展開となりました。
 また、5月にはフランスとドイツが、新型コロナウイルスの打撃を受けた加盟国への支援策として、5000億ユーロ規模の復興基金創設を提案、倹約を美徳とする北欧国の反対で、一時協議が難航しましたが、これが最終的に7月21日、返済不要の補助金3900億ユーロ、低利融資3600億ユーロ、総額7500億ユーロの復興基金の設立で、欧州連合が合意したことを好感して、ユーロ圏株価が上昇、ユーロ円相場も127.08まで上昇を強める形となりました。 
秋口初頭は、新型コロナウイルスの感染の再拡大や米国大統領選の行方を睨んで、ユーロ円相場は、ユーロドル相場につれて揉み合い気味の展開でしたが、予想外にバイデン氏が勝利するも、民主党による財政拡大政策に対する期待、ファイザーが新型コロナワクチンの開発に成功したことを発表したことなどから、NYダウが史上初の3万ドル台、DAXも14000ポイントまで上昇、リスクオンのドル売りからユーロドル相場が、年間高値となる1.2310まで上昇、ユーロ円も127.23の年間高値をつけて終了しました。

【2021年の主な材料】

以下が現在、知り得る今年のイベントや材料です。注目度の高いものはマーカーで表示しています。ただ、あくまで予定ですので、変更されることがあります。

01月01日:ポルトガル・EU議長国就任
01月05日:米ジョージア州上院議員決戦選挙
01月06日:米大統領選における選挙人投票結果開票(上下院合同会議)
01月16日:独キリスト教民主同盟党(CDU)党首選挙
01月18日:日本・通常国会、アジア金融フォーラム(香港、19日まで)
01月20日:米大統領就任式
01月24日:ポルトガル大統領選挙
01月25日:ダボス会議(29日まで)
01月XX日:米大統領・一般教書演説(26日頃?)、IMF・世界経済見通し公表

02月XX日:米大統領予算教書・経済報告書公表
02月20日:米パリ協定復帰
02月27日:G20財務相・中央銀行総裁会合

03月XX日:中国第13期全国人民政治協商会議第4回全体会議、第13期全国人民代表大会第4回全体会議(北京)
03月14日:独バーデン・ビュルテンベルク、ラインラント・プファルツ州議会選挙
03月17日:オランダ下院選挙
03月25日:東京オリンピック・聖火リレー開始(最終的オリンピックの開催可否を決定?)
03月26日:米通商代表部・外国貿易障壁報告書公表
03月XX日:バイデン政権・気候サミット開催、ECBパンデミック緊急購入プログラム期限

04月07日:G20財務相・中央銀行総裁会合(8日まで)
04月09日:IMF・世界銀行春季総会(ワシントンDC)
04月XX日:国連・世界経済状況予測公表

05月06日:英地方議会選挙(ウェールズ、スコットランド)、英ロンドン市長・ロンドン議会選挙
05月19日:欧州復興開発銀行年次総会(アルメニア・エレバン、20日まで)
05月25日:世界経済フォーラム特別年次会合(シンガポール、28日まで)
05月XX日:G7サミット(英国)、米財務省・半期為替報告書公表

06月06日:独ザクセン・アンハルト州議会選挙、メキシコ連邦下院議員・州知事選挙、イラク国民議会選挙(予定)
06月18日:イラン大統領選挙(予定)
06月28日:G20外務相会合(イタリア・マテーラ、29日まで)
06月30日:IMF・世界経済見通し公表
06月XX日:フランス地域圏議会選挙・県議会選挙、世界銀行・世界経済見通し発表、WTO閣僚会議(カザフスタン・ヌルスルタン)、OPEC総会

07月01日:オセアニア圏・新会計年度開始、スロベニア・EU議長国就任、ブルガリアとクロアチア・欧州為替相場メカニズム2(ERMⅡ)参加
07月09日:G20財務相・中央銀行総裁会合(イタリア・ベネチア、10日まで)
07月23日:東京オリンピック開催(8月8日まで)、中国共産党結党100周年
07月31日:米債務上限の適用停止期限
07月XX日:中国北戴河会議、IMF・改訂版世界経済見通し発表

08月24日:東京パラリンピック(9月5日まで)
08月XX日:カンザス連銀シンポジウム(ジャクソンホール)

09月05日:香港立法議会選挙
09月13日:ノルウェー議会選挙
09月19日:ロシア下院選挙・統一地方選挙
09月26日:独連邦議会選挙、英国労働党大会(ブライトン。29日まで)
09月30日:菅自民党総裁任期満了、独議会・任期満了
09月XX日:東方経済フォーラム(ウラジオストク開催)、中国一帯一路サミット、メルケル首相退任、仏2022年政府予算案・社会保障会計法案発表

10月01日:ドバイ万国博覧会(2022年3月31日まで)、米新会計年度開始
10月15日:IMF・世界銀行年次総会(ワシントンDC、17日まで)、G20財務相・中央銀行総裁会合(ワシントンDC、16日まで)
10月XX日:英国保守党大会(バーミンガム)
10月21日:衆議院議員・任期満了
10月24日:アルゼンチン中間選挙
10月30日:G20首脳会合(ローマ、31日まで)
10月XX日:中国共産党中央委員会全体会議(5中全会)

11月01日:国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(英グラスゴー、12日まで)
11月XX日:APEC閣僚・首脳会議
11月29日:スイス国民議会議長・全州議会議長選挙
11月XX日:米財務省・半期為替報告書公表

12月08日:スイス連邦大統領・連邦副大統領選挙
12月XX日:中国・中央経済工作会議
12月XX日:OECD経済見通し公表、OPEC総会

【2021年の注目点】

 2020年の相場環境を踏まえて、2021年のユーロ円相場の注目点をまとめてみました。

・ コロナ後・ブレグジット後のEU経済
・ 復興基金の行方とメルケル首相の退任
・ ECBのスタンス

〇コロナ後・ブレグジット後のEU経済

 昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大で、各国で都市封鎖(ロック・ダウン)や行動規制に踏み切ったことで、経済に大きな悪影響を与えました。
 ユーロ圏でも、大きく経済が一時落ち込みましたが、以下は、ユーロ圏の製造業・非製造業PMIの推移を示したチャートです。製造業が33.6、サービス業が11.7まで一時落ち込んだものが、急速に回復しています。これも復興基金が設立されたことなどから安心感が支えているのでしょう。確かに今後パンデミックが収まるなら更に経済が悪化するとは思えませんが、それでもEUは、英国を除いても27か国の複合体です。過去においても、何度も各国の意見がまとまらず、ユーロ解体の危機にさらされてきました。一部ブレグジットが逆にEUの危機リスクを高めたとも言えますが、北欧と南欧の経済格差も是正されていません。ともかく、今年のEU経済を考えるとこの復興基金の行方が大きな焦点となりそうです。

〇復興基金とメルケル首相退任

 この復興基金は、新型コロナウイルス感染のパンデミックで痛手を受けた域内経済の立て直しに有効との見方だけではなく、長らく問題となってきたEUの財政統合に向けて、共通債の発行に合意したこともあって、重要な一歩を踏み出したと評価されています。総額7500億ユーロの基金は、「汎欧州保証基金」や「欧州安定メカニズム」など既存の施策と併せると、域内GDPの6.5%に相当する約1.2兆ユーロの財政支出を賄うことが可能とされています。新型コロナウイルスの世界的流行がもたらした衝撃に対して、あらゆる点で、強力な施策と言えるでしょう。また、財政統合の流れが強まれば準備通貨としての魅力が高まると見られています。
 ただ、パンデミックの影響の大きい南欧の経済が、これで完全に立ち直れるかは不透明です。特に2022年の公的債務のGDP比が、最悪の場合177%までに高まろうとしているほど借金が膨れ上がっているイタリアにとって、復興基金の効果も焼け石に水となる可能性があります。またオランダ、スウェーデン、デンマーク、オーストリアなどの「倹約4ヵ国」は、この基金の配分や使途について、常に監視を続けるでしょう。パンデミックの影響が北欧にも深刻な事態を招いています。自国経済が立ち回らないのに、他国を強く支援することに批判が集まるかもしれません。政治的な論争が長引けば、支払いに問題も生じるリスクも残っています。
 現在は不透明ですが、今年の7月には、復興基金の設立から1年を迎えます。もし、資金が足りないような問題が持ち上がった場合に、通貨としてのユーロの信認が揺らぐ時期が訪れるかもしれません。その場合EUのまとめ役が重要となりますが、今まで、まとめ役として高く評価されているメルケル首相が、今年の退任を発表してます。時期は不透明ですが、恐らく9月頃と推定されますが、メルケル首相の求心力を失ったEUが、再び混乱するならユーロ相場の暗雲となる可能性に注意しておいた方が良いかもしれません。

〇ECBのスタンス

 欧州中央銀行(ECB)は、昨年12月10日に開催された理事会で、昨年3月から実施されていたパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を、これまでよりも5000億ユーロ増額して、総額で1兆8500億ユーロ(約234兆円)として、期間に関してもこれまでより9ヶ月延長し、2022年3月までとしています。
今年のECBも、デフレ圧力から金融緩和的な政策を継続すると見られますが、ただ資産購入に関しては、各国の信用格差によって、買入配分が常に問題となることなどもあって、更に増額は難しい状況にあります。買い取り期間の延長などは継続できるでしょうが、現在市場が一部指摘しているマイナス金利(預金金利に付された▲0.50%)の深掘りに関しては、金融機関の収益の悪化懸念から、日本同様導入には慎重な姿勢が続きそうです。
 またユーロ高圧力もすぐに和らぐことはなさそうです。新型コロナウイルスの感染拡大で、米国でも低金利政策が長期に渡って維持されるでしょう。ユーロ高は、輸入物価を抑え、欧州輸出企業にもマイナスです。ユーロ高を克服するために、市場介入という選択肢もありますが、これは米国が許さないこと。また、実際ECBは、2008年にユーロドル相場が、1.6040の市場高値をつけた時も、市場介入を行っていません。
 一部に日銀のように、資産購入の対象に株式のETF(上場投資信託)を組み込むことができれば、ユーロ相場の反転につながり、デフレ圧力が和らぐという指摘もあります。ただ、市場の規律を重んじるブンデスバンク時代からの流れでしょうか、恐らくECBが、満期のない株式を購入するという選択肢はないでしょう。また現状のように株高がリスクオンのドル売りを助長している中、逆効果になるかもしれません。
 そうなるとECBが取り得る方策としては、口先介入でユーロ高をけん制するしか方法がなさそうです。 

 参考にECB理事会の日程を掲載します。(出典:ECBホームページ)
01月21日
03月11日(ECBスタッフの成長率見通し公表)
04月22日
06月10日(ECBスタッフの成長率見通し公表)
07月22日
09月09日(ECBスタッフの成長率見通し公表)
10月28日
12月16日(ECBスタッフの成長率見通し公表)
※1月17日時点の予定となります。

また、これは余談ですが、ブルガリアとクロアチアが、今年7月から欧州為替相場メカニズム2(ERMⅡ)に参加します。
 欧州為替相場メカニズム(ERM)は、ヨーロッパにおける為替相場の変動を抑制し、通貨の安定性を確保することを目的として作られた制度です。一応1999年のユーロの発足を持って一旦役割は終了しましたが、今後ユーロに加盟する国のために、欧州為替相場メカニズム2(ERMⅡ)が規定されました。
 ユーロに加入しようとする国は、その最低2年前に、この欧州為替相場メカニズム2に参加が義務付けられています。これに参加するとその国の通貨は、ユーロ相場に一定の比率での変動幅を保つ義務が生まれます。
ブルガリア・レフとクロアチア・クーナは、今年の7月から対ユーロでの変動幅が、上下15%に制限されることになります。現状は変動率が大きいことや経済規模から、特段ユーロ相場に与える影響は少ないと思われますが、大きく動いた場合、ブルガリアとクロアチアの中央銀行は、市場介入で相場をコントロールしなければなりません。
まだ先の話ですが、将来的に新たに「ユーロ」に参加する国のポジションが、ユーロ相場に一定の影響を与えることは、覚えておいてください。 

【テクニカル面】

テクニカル面からまず、ユーロ円を構成するユーロドル相場の長期月足をチェックしておきましょう。

ユーロドル相場は、2018年2月の1.2555の戻り高値からの調整を1.0636と0.8225の安値から長期サポートで支えて反発。特に上値は既に1.6040からの長期レジスタンスを上抜けており、今後も上昇期待となります。
 ただ、これからの上昇では、1.1640-1.1876-1.2042のネック・ラインが控えています。この位置は時期にもよりますが、1.25前後と想定しています。このレベルが上値を抑えると更に上値追いも不透明となります。

 また、以下のチャートは、2005年11月からの米独金利差とドルユーロ相場(上がユーロ安ドル高となります)を比較してたチャートです。
 金利差の影響はまちまちですが、総じて6か月程度遅れて見えてきます。そうなると今後、金利差が更に拡大するかにもよりますが、年央にユーロドル相場が反転傾向となるか注意です。
 また、このチャートが示すもうひとつのポイントは、ドルユーロ相場が、ピンクのラインで、分水嶺となっている点です。この位置は平均価格でユーロドルでは1.22から1.23ですが、実際の市場価格からは1.1876から1.2555ゾーンで形成されています。 つまり現状のユーロドル相場(2020年の終値では1.2217)は、クリティカルな位置にあるということです。

 こういった面をまとめると、現状上昇傾向のユーロドル相場も、1.2255の高値を前に、1.25前後で上値を押さえられると上昇も厳しいということです。ただ、超えるとポイントは不透明ですが、フィボナッチ・リトレースメント(0.8225~1.6040)からは、61.8%の1.3054などが一旦ターゲットとなるでしょう。
 一方下値は、1.1602の安値の維持では堅調が続きますが、もし割れると1.1423の窓の下限、フィボナッチ・リトレースメントの38.2%の1.1210、割れても1.10前後は、最終サポートとファンラインとして維持されるでしょう。
 従って、ユーロドル相場の今年の想定レンジを1.1500~1.2500を中心とします。(強気なら1.30まで上値はあるかもしれません)

次にドル円相場も見ておきましょう。まず長期の月足です。
 1989年の163.65の高値からのチャートですが、上値は147.66、145.86できっちりとレジスタンスに抑えられて、現状このレジスタンスは、115円前後にあると考えらえます。今後もこういった位置が抑えると弱い状況が続きそうです。
 特に長期のエリオット波動からパターンを想定すると、
第1波=163.65-79.75
第2波=79.75-147.66
第3波=147.66-75.31
第4波=75.31-125.86
第5波=125.86- ?

となります。現在は、最後の第5波の下落過程にありますが、その場合第3波の安値となる75.31を将来的に割り込むという想定が基本となります。ただ、第5波が短くなる可能性があること。また超長期ですから、そういった下落が実現するとしても、まだまだ先となる可能性もあることは、留意しておいてください。
また、オレンジの安値で示した101.25、101.67、99.02の安値は、一種のネック・ラインを形成しています。今後下げてもこの99.02-101.67ゾーンは、一旦支えられる可能性が高いと考えられます。このレベルが維持されると下落は、直ぐに進みませんが、割り込んだ場合75.31の安値から結ばれた最終サポートの位置となる95円前後がターゲットとなります。この位置もサポートが控えていますので、下げ止まる可能性が高いです。ただ、更に割り込むなら85-90円ゾーンまでターゲットとなります。
また、こういった円高では、一部に当局の市場介入を警戒する話が必ず出ますが、今回の円高のスピードが総じて鈍いこと、円独歩高ではなく、ドル安であることを考えると米国から市場介入のコンセンサスを得ることは難しいでしょう。個人的には、このレベル程度なら市場介入は出来ないと思います。

 次により短期の月足チャートを見てみましょう。
 こちらは110円前後がレジスタンスとなっています。前のチャートと合わせても、110-115円は引き続き上値を抑える位置となりそうです。
 一方下値は下落チャンネルの下限と、75.31のサポートがクロスする95円前後が、一定のターゲットとなりますが、この位置は、フィボナッチ・リトレースメント(75.31から125.86)の61.8%の94.62と合致する位置です。100円のサイコロジカルを前にした50%の100.58や100円をしっかりと割り込むなら、こういった下落の可能性があることは注意しておきましょう。ただ、モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスの下落圧力が弱く、下落には相当時間がかかりそうです。今年もじりじりとした相場展開が続きそうですが、一応今年の想定レンジを100.00~110.00とします。  

 加えてユーロドルとドル円の想定レンジから、マトリックス・チャート(価格帯によるクロス円の位置)を作成しています。
 ユーロドルのコア・レンジを1.1500~1.2500、ドル円を100.00~110.00としましたので、これから算出されるユーロ円の最大想定レンジは115.00~137.50となります。

 それでは、最後にユーロ円の月足を見てみましょう。
 一時94.12の最安値からのサポートを割り込みましたが、114.41で下値を維持して、反発しています。モメンタムを示すスロー・ストキャスティクスも上昇しており、今後も堅調な展開が想定されそうですが、ただ、上値はかつての94.12の安値からのサポートが、ファンラインとして、上値を重くしています。また、更に超えても169.97の高値と149.79の高値を結んだが長期のレジスタンスが控えています。この位置は時期にもよりますので、若干不透明ですが、130円前後からフィボナッチ・リトレースメント(169.97~94.12)の50%の位置となる132.05近辺にあって、上値を押さえそうです。あくまでこういった位置を超えて、132.46-133.49のも戻り高値圏が視野となりますが、137.50の戻り高値の上抜けは不透明です。また超えて、138.96,141.08などが順次視野となりますが、これも148.79まで今年超える可能性は低そうです。 
 一方下値は、短期足から既に120円前後はサポーティヴです。また割れても長期のサポートが、117円前後にあって、維持されると堅調が続きます。リスクは114.41を割れるケースから110円、更に109.57を割れると100円がターゲットとなる形です。 

【予想レンジと戦略】

 それでは、以上を踏まえて、ユーロ円相場の今年の見通しと戦略についてお話します。
 ただ、あくまで新型コロナウイルスの感染が、最悪の事態まで再拡大しないことを前提としています。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ファンダメンタルズ面での比較は、為替市場であまり意味をもたなくなっています。世界が正常に戻るまでは、こういった状況が続くでしょう。従ってテクニカル面を中心に、2021年の戦略を考察しています。  

前述のマトリックス・チャートからは115.00~137.50が想定レンジとなっています。ほぼ整合性があるレンジだと思いますが、モメンタムからは底堅さが想定されることで、今年の想定レンジを、120.00から132円とします。上値はフィボナッチ・リトレースメントの50%を採用しました。また強気で見ても、133-5円程度かと考えています。 

基本的に、戦略は押し目買いですが、注意しなければならない点は、
① 1-3月期は、本邦のレパトリ・シーズンで円高気味となり易いこと。
② 堅調な株価が続いていますが、5-6月に株価にピークが訪れる可能性が、アストロ的に指摘されています。アノマリー的にも「セル・イン・メイ」が意識される時期です。くれぐれも株価の動向には注意して対応しましょう。 
③ 夏場は、基本揉み合い気味の展開となり易いですが、8月中旬は、瞬間的な円高がアノマリー的に見えること。また、欧州復興基金の1周年を睨んで、この問題で欧州の政局不安が再燃するようなケースには注意しておきましょう。
④ 9月のレイバーデー明けからは、年末に向けて方向性が出易い時期です。この時期の動きには逆張りで向かわないようにしましょう。 

時期を考えないとしても、120円方向への下落から、もし下がっても、117円まで買い下がって、ストップは114.41の安値割れとします。ターゲットは、130-132円が上値を抑えるなら利食い優先。また超えても、133-135円では、しっかりと利食っておきましょう。一方昨年のユーロ円の動きは、鈍い展開が続きましたが、今年もユーロドルやドル円の動きの中で、じりじりとした展開も想定されます。戻りのポイント・ポイントでは、順次売り戦略も有効かもしれませんが、総じて買い回転を利かせながら対応するのも一考かもしれません。