アメリカのマーケット展望【2020年6月度】

■短期の相場見通し

S&P500指数の向こう1か月のターゲットはこれまでの2850を3100に引き上げます。

株式市場が堅調に推移している理由は1. 連邦準備制度理事会(FRB)がフェデラルファンズ・レートを0~0.25%へ引き下げると同時に無制限の量的緩和政策を打ち出したこと、2. 議会が景気支援策を繰り出したことによります。

それに加えて新型コロナ・ワクチンの開発が進んでいるというニュースも投資家を強気にさせています。
トランプ政権は「ワープスピード計画」を打ち出し、ワクチン開発を積極支援しています。

具体的には11月に1億回(dose)、12月にもう1億回、さらに2021年1月に1億回、合計3億回分のワクチンを備蓄するというターゲットを設定しています。

ワクチンは米国食品医薬品局(FDA)の承認を得る必要があります。従ってワクチン開発の試みが成功する保証はありません。目先はワクチン開発に関するニュースが出る度に株式市場の投資家が「リスクオン」のトレードを行う可能性があります。

■経済の現況

ロックダウンが相次いで始まった3月21日の週以降の新規失業保険申請者数の累計は3863万人となっています。

このため米国の失業率は瞬間風速で20%を超えるだろうと言われています。1930年代初頭の失業率が15%だったことを考えると、今回の失業者数はたいへん深刻だということがわかります。

ただアメリカの多くの州でロックダウンは解除されており、これから経済は回復していくことが期待されます。

■企業業績

アナリストたちによる今年のS&P500指数採用銘柄のコンセンサス一株当たり利益(EPS)はどんどん下がっています。

現在、2020年のEPSは128.49となっています。

向こう12か月のEPSに基づくS&P500指数の株価収益率は20倍を超えており、マーケットは割高な水準で取引されています。

このように不況の真ん中で株式市場が割高に取引される現象はしばしば起きます。その理由は株価上昇が原因である場合もあるけれど、上のチャートに見られるようにEPSが陥没することで割高感が出ることも多いです。

株価は将来起きることを一足先に織り込む習性があります。いま市場参加者は景気回復を見越して株を買っているわけです。

このように足下の経済のファンダメンタルズと株価がちぐはぐになっているときはなかなか投資しにくいものですが、これは今にはじまったことではありません。不況の中盤から後半にかけては、現在のようなちぐはぐは必ず生じることなので、それは余り気にする必要は無いと思います。

■注目ETF

ワクチンへの期待が高まり、市場参加者が「リスクオン」のトレードをしたがる局面では資本財セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLI)とか金融セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLF)などに物色の矛先が行く可能性があります。

消費の回復を狙うのであれば一般消費財セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLY)という選択肢もあります。

ただ、ここまでのリバウンド局面を観察すると、そのような「リスクオン」が続くのは数日程度であり、後はネット株などを中心とした大型ナスダック株の方が均してみるとパフォーマンスは良いです。

そこでむしろそちらを買いたいと言うのであればパワーシェアーズQQQ信託シリーズ1(コード:QQQ)テクノロジー・セレクト・セクターSPDRファンド(コード:XLK)が良いと思います。