だいまん氏9月のリアルトレード戦略

1.イントロダクション

8月の相場は、夏休みながら、朝鮮半島問題やトランプ政権の混乱でリスク回避的な動きも、ユーロ中心にドル売りで終了しようとしている。ただ、ドル売り相場と言っても、ドル円は、108円台が堅く更に下値を拡大せず、ポンド相場は、対ユーロでのポンド売りに相場が圧迫されており、まちまちの動きとなっていることは留意しておきたい。

9月もいろいろ材料が多く、例年米国のレイバー・デー後、年末に向けて相場が、一定の方向に走り出すと言われており、本格的な胎動の動きが出て来るのか注目される。

なかなか判断に迷うところだが、「9月のリアル・トレード戦略」を、8月に続いてご紹介したいと思います。

2.9月の注目材料

  • 09月01日:中国8月財新製造業PMI、米8月雇用統計
  • 米8月ISM製造業景況指数、米議会休会(4日まで)
  • 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉・第2回会合(5日まで)
  • 09月04日:アストロ=水星の逆行終了米市場休場(レイバーデー)
  • 09月05日:中国8月財新サービス業PMI、豪第2四半期経常収支、RBA政策金利公表、トルコ8月消費者物価指数、南ア第2四半期GDP、ユーロ圏第2四半期GDP・確報、米8月ISM非製造業景況指数、テクニカル=ドル円・日足の雲の捩じれ
  • 09月06日:豪第2四半期GDP、米7月貿易収支、加中銀政策金利公表、ブラジル中銀政策金利公表、テクニカル=ドル円・日足の雲の捩じれ
  • 09月07日:ECB理事会(ECBスタッフの景気見通し公表)
  • 09月08日:日経平均メジャーSQ、日4-6月期GDP・確報、中国8月貿易収支、加8月雇用統計
  • 09月09日:北朝鮮建国記念日、米セント・レジャー・デー
  • 09月11日:トルコ第2四半期GDP、世界同時テロ・メモリアルデー、世界フォーラム・サマーダボス会議(13日まで)
  • 09月12日:英7月消費者・生産者・小売物価指数。国連総会(25日まで)
  • 09月13日:米8月生産者物価指数
  • 09月14日:豪8月雇用統計、中国8月小売売上高・鉱工業生産・固定資産投資、英MPC&議事録公表、米8月消費者物価指数、テクニカル=日経平均株価・日足の雲の捩じれ
  • 09月15日:NYダウ・メジャーSQ、米8月小売売上高
  • 09月19日:RBA議事録
  • 09月20日:日本8月貿易収支、米FOMC結果公表
  • 09月21日:NZ第2四半期GDP、日銀金融政策決定会合結果公表、南ア準備銀行・政策金利公表
  • 09月24日:仏上院議会選挙独連邦議会選挙
  • 09月27日:アストロ:重要変化日
  • 09月28日:NZ中銀政策金利公表、米第2四半期GDP・確報
  • 09月29日:中国9月財新製造業PMI、英第2四半期GDP・確報、アストロ=冥王星の逆行終了
  • 09月??日:米議会・歳出法案の成立期限、中国共産党第十九回全国代表大会

尚、指標などの発表予定・時刻等は予告なく変更になる場合がありますので、ご了承ください。

9月最大の注目はFOMCと8月の米雇用統計

やはり9月の最大の注目はFOMCとなりますが、これを前に米経済の良好さを再確認する意味では、8月の米雇用統計がまず焦点となる。ただ、以下の2011年からの月別非農業部門雇用者数の数値(速報ベース)を見て頂くと、季節的に夏場(8-9月)の非農業部門雇用者数は落ち込み易いことは留意しておきたい。

 

ただ、米国の雇用は、既に完全雇用状態であり、非農業部門雇用者数の影響は限られる可能性が高い。注目は平均時給となるが、インフレがなかなか盛り上がらない中、米8月のISM両景況指数、小売売上高や消費者物価指数などの強弱にも注意しておきたい。こういった指標が想定以上の弱い内容となった場合、急速にFOMCでの「資産縮小」の期待感が減退して、一時的なドル売りのリスクも考慮しておきたい。しかしながら、個人的には、資産縮小に関しては、市場が100%織り込んでおり、今のタイミングを失うとちょっと厳しい。恐らく9月の会合で、資産縮小を決定すると考えているが、慎重な対応が示されるなら、この影響のドル買いも限定されそうだ。

また米国では、10月の新会計年度のスタートを控えて、歳出法案の可決の期限が迫っている。議会で決着できない場合、政府窓口の閉鎖など行政機関の混乱が想定され、フィッチなどが米国債の格下げの可能性を示唆している。この面では、トランプ政権の人事面での混乱もあり、閉鎖まで達する可能性はあるが、ただ、それであっても現在は、オバマ政権時と異なり、議会に捩じれはないので、いずれ解決の方向に向かう可能性が高く、あまり心配する必要はないと思う。

ユーロ圏

一方ユーロ圏では、個別の経済指標というより、ECB理事会において、こちらも資産の縮小に関して、一定の話が出て来るか注目される。特ECBは、過去ECBスタッフの経済見通しの発表に合わせて、政策を変更することが多く、可能性は残りそう。しかし、直近ユーロ圏経済は、ユーロ高の悪影響もあって、立ち直りが「中弛み気味」となっており、今回政策の変更は無いとみておきたい。追いかけてユーロを買うのは避けた方が良いだろう。また24日の仏上院議会選挙と独連邦議会選挙も注意となるが、フランスでは、マクロン大統領のハネムーン期間が終了したが、歳出削減策が不評で、同氏の権威主義的な振る舞いに、支持率が急低下している。選挙で苦戦した場合、ユーロ相場を抑える要因となり易いが、同時にドイツでは、メルケル首相が勝利する可能性が高く、ユーロ相場に対する影響は、強弱が相殺されるのかもしれない。

各国金融政策

金融政策の発表としては、豪RBA、加中銀、英中銀、日銀、南ア準備銀行、NZ中銀などの政策金利の公表が予定されている。

現状利上げの可能性が指摘できるのは、加中銀と英中銀となるが、その後の各国のインフレ率の推移を見てみると、恐らくほとんどの中銀が、政策金利の引き上げに踏み切るとは見えない。その場合、相場に対する影響は限定されるか、一時的な失望売りのリスクがあるかもしれない。また南ア準備銀行に関しては、連続利下げの可能性があることは考慮して対応したい。

その他

その他では、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉・第2回会合では、米国が厳しい内容を突き付けて来ると、メキシコペソやカナダドルの売り要因となるが、現状は不透明。また、中国共産党第十九回全国代表大会は、このリポート作成時において、日程が不確かだが、金融市場に直接影響を与えることはないと思われる。

また北朝鮮問題に関しては、9月9日の北朝鮮建国記念日が、「Xデー」と言われており、もしこの前後に、核実験やグアムに向けて、ミサイル発射が行われた場合、緊張感が高まることは留意しておきたい。ただ、これもあくまでトランプ大統領の決断が重要で、一番危ないのは、トランプ大統領が自身の支持率低下を克服するために、一定の軍事行動を決断するケースとなる。ほとんどの人達は、「起きたら大変」的なロジックで、軍事行動は行われないという人が多いが、個人的には可能性は、ゼロではなく、個人投資家の立場としては、もし軍事衝突が起きた場合、相場が大混乱となることで、やはりそれなりの警戒感を持って対応したい。

アストロ的には、09月04日の水星の逆行の終了が、米市場の休場や米雇用統計と絡めて、一時的なドル売りとなるリスク。9月27日は冥王星の逆行終了と絡めて、重要変化日となることも留意しておきたい。

 

3.米ドル円売買戦略

ドル円相場は、108.13と108.83でつけたダブル・ボトムの片側を割れる下落となるも下値を108.60で支えて、底堅い動きを続けている。

特に直近のドル円相場は、月の中旬に底値をつけて翌月の中旬に高値を付けるパターンが継続しているが、今回の安値も8月18日につけており、このパターンとなるなら、日足のストキャスティクスの反転(下記日足チャート参照)もあり、9月中旬まで上値トライとの見方はありそう。ただ、「相場がそんなに簡単に行くか?」と思うと、この戦略の迎合するのは躊躇される。特に上値には、日足の雲の下限が111.66、上限が112.66をマックスに切り下がりを見せ、こういった位置が上値を押さえ続けるなら弱い状況が継続することは留意しておきたい。ただ、9月5-6日にこの雲が111.46-69レベルで、捩じれを発生させることで、こういった時期に上抜けが実現するなら一定の上昇期待となる。 その場合112.20を超えると112.35-45、112.65-90、113円前後が視野となるが、レジスタンスからは売りが出易い。113.55-60を超えて、114円前後が視野となるが、それでも7月11日の高値114.49や3月10日の115.51の高値を超えるまでは、本格的な上昇期待は持ちづらい。

一方下値はサポートから109円前後支えると強いが、月足のストキャスティクスが反下落気味(下記月足チャート参照)でもあり、108.60や108.13の安値を割れると相場が崩れ、その場合トランプ・ラリーで上げた分のフィボナッチ・リトレースメントからの61.8%=107.87、76.4%=105.32が視野となるが、この位置は過去の戻り高値圏となる2016年7月21日の高値107.502016年10月28日高値105.53と重なる位置で、一種のネック・ラインとなっており、中期的に支えるとの見方は変わらない。

 

 

従って、ドル円の「具体的な戦略」としては、現状の位置から109円前後が支えるなら、「下げないリスク」を勘案して買っても、9月5-6日までに雲を上抜できないなら、利食い優先。売りも検討したい。あくまで雲を超える動きを確認して、ターゲットは112円から113円前後とする。また、この日まで雲を上抜けないなら、次の108円台への調整があっても手を出さず、107円ミドル・アッパー、105円ミドル・アッパーと買いオーダーを入れてじっくりと待つ形。具体的には、107.65、107.55、107.15、106.75、106.55、106.15、105.80、105.60に、順次買い下がりのオーダーを入れて、成約しなくても良いつもりで対応する予定。このストップは104.90に置く形を想定したい。ただ、こういった位置でオーダーが成約しても、既にファン・ラインとなる110円前後が抑えると弱く、利食いとなるかもしれない。また超える動きがあっても、このような下落が示現した場合、年内115円を超えるとの期待感は持ちづらく、こういった位置も利食い場となる。

 

4.ユーロ米ドル売買戦略

ユーロドル相場は、ドラギECB総裁発言から、ECBの低金利政策打ち止め期待から、上昇が続いている。ただ、思惑先行の面も強く、既にサイコロジカル的に強烈な1.20に迫る展開となっていることや波動的に5波のエクステンションにあることは注意しておきたい。上値追いは厳しいと見るのが普通だが、テクニカル的には、今一歩上値を拡大する可能性があり、またユーロドルは、年間だいたい2000BPは、過去平均的に動くことで、今年の安値1.0341から単純に計算すると1.2341前後までの上昇は考慮しておきたい。

テクニカル的に、下値は1.1910の高値示現後の揉み合いゾーンの上限となる1.1815-1.1910ゾーンを逆サポートすると相当強いが、この下限レベルとなる1.1610-65ゾーンを割れると相場が崩れ気味となり、窓の下限の1.1555-60、1.1435-80ゾーン、1.1370-90ゾーン、1.1290-1.1315、1.1200前後がターゲットとなるが、一旦こういった維持では更に下落は拡大しない。リスクは6月20日の安値となる1.1115-20や更なる窓の上限となる1.1075-80を割れるケースだが、それでも当面200日移動平均が控える1.10のサイコロジカルは維持される見通しとなる。(下記日足チャート参照)

一方上値は、1.1950や1.2000には、大量のオプションの防戦も想定され、この位置と重なる下落時のギャップが1.1977-1.2002にあり、強い位置となることで、直ぐに上抜けるとは見えない。ただ超えると大口のストップ・ロスも出易く、一時的に大きく上ヒゲを描くことも想定されるので、安易な売り攻めは注意しておきたい。その場合の上値は、1.2210-73ゾーン、1.2355-60なども視野となるが、特に月足の過去のネック・ライン(下記月足チャート参照)からは、この1.23ミドル・レべルは、時期にもよるがレジスタンスからは良いターゲットとなると見たい。

 

従って戦略としては、あくまで高値を維持しているうちは買えるが、波動的に高値が近い可能性を示唆している可能性もあり、落ち始めたら買いは危険となることは考慮して対応したい。

まず、ECB理事会などで失望が出るなら1.1815-1.1910ゾーンを、慎重に買って、きっぱりと1.1610-65ゾーンを割れるなら止める形。一応これがワークするなら、まず1.20前後を見ながら、抑えるなら利食いも超えると1.23方向はグッド・ターゲットと見たい。また、こういった位置の売りは、軽く抜くなら良いが、高値をしっかりと確認するまでは避けておきたい。または1.1815-1.1910ゾーンや1.1610-65ゾーンを割れてから売るのも一考となるが、こういった売りも、1.14や1.12など買い戻しながら対応して、下落で買うなら1.10まで買い下がりの余裕を持って検討したい。

 

5.豪ドル米ドル売買戦略

8月から注目しているオージードルは、引き続き押し目買いを継続したい。

根拠としては、下記の月足チャートの矢印のところのように、オージードルは、何故か7月に大きく相場が転換することが多い。豪州は7月から新年度会計がスタートすることで、これと関係があるのかもしれない。また、A、Bの期間のように、2年程度揉み合い相場を経るとブレイクの後、相場が大きく変化して、3000BP近く相場が動いている。

現在はCの状況だが、0.68から0.79レンジの「2年間の揉み合い」からブレイクをスタートしている。豪州中銀は、更に政策金利を引き下げる可能性は低く、「この動き」を期待したオージードルの押し目買いは面白そうだ。

ただ、ポジションとしては、相当長く持つことになるので、あくまで慎重に押し目買いスタンスを維持するつもり。ターゲットは、3000BPは、難しいとしても月足のレジスタンスからは、0.9000ぐらいは期待している。(下記月足チャート参照)

一方日足チャートからは、既に0.7785-0.7810ゾーンが維持されると強く押し目は買っても、割れるなら一旦止める形が良さそう。その場合0.7720-50ゾーン、0.7600-30ゾーンでの買い直し。このストップは0.7565-75割れや0.7515-35割れとするか、思い切るなら0.75まで買って、0.7365-70や0.7325-30をストップとする形を想定したい。

(2017年8月27日執筆)