第632回 【日本の特異性を考察する】

製品やサービスが、日本独自の方向へ多機能・高機能・高品質化していることを指して、「ガラパゴス化」と呼ぶことがあります。

その代表であり、端緒となった製品が携帯電話です。

日本の端末メーカーが、国内市場をめぐる競争に明け暮れているうちに、ケータイがガラパゴス化し、世界のスマートフォン化の波に乗り遅れてしまいました。

日本独自のスマートフォンを、「ガラケー」と呼ぶので、読者の皆様も良くご存じと思います。

日本の主力産業である自動車についても、以前からガラパゴス化が懸念されています。

日本の購入者のニーズや好みと、海外の購入者のそれに違いがあるからです。

日本人は良く言えば繊細、悪く言えば小うるさく、過剰なサービスを「おもてなし」と言い換えて美徳としています。

それが当たり前にできることが日本人の強みなのでしょうが、反面、過剰なコストが当然ながら掛かっており、国内では戦えても、世界的な競争には負けてしまう場面が増えています。

それでも国内市場が大きく豊かなため、企業はコストの掛かる「おもてなし」を止めるわけにはいきません。

日本国内の市場で、それ(過剰サービス)を止めれば、売れなくなって、競争に負けるからです。

だから、日本の「ガラパゴス化体質」が改まって、世界標準に向かう可能性は低いでしょう。

しかし、日本市場の特異性を十分に認識して行動しないと、世界的な競争には生き残れないことも事実です。

日本の金融市場もガラパゴス化が進行していると実感しています。

世界の株式市場の中心はNY市場です。

NY市場が上昇すれば東京市場も上昇する写真相場を長い間続けていますが、NY市場が4営業日連続で最高値を更新しているのに対し、東京市場は過去最高値(3万8千円)の半分にも届いていません。

日本が失われた20年を経験したためという理由付けはできますが、ガラパゴス化体質を認識していれば、違う発展の仕方もあったのではないでしょうか?

外国為替市場にも特殊性が存在します。

12月のクリスマス相場。

今年は12月のFOMCに注目が集まっているために、このまま取引を続けたほうが良いと考えていますが、例年であれば休むことをおすすめしています。

しかし、日本では師走相場が活況に見えるために、なかなか理解を得られません。

しかし、ドル/円取引でさえも、マーケットの中心はNYでありロンドン市場である、と考えます。

日本円絡みの取引であっても、東京市場は両市場の後塵を拝しているからです。

それどころか、アジアの金融マーケットでの存在感も薄れており、シンガポール市場や上海市場が迫っています。(すでに、東京市場が負けている可能性もあります・・・)

日本は金融市場でもガラパゴス化が進行しているという認識を持って、早急にアジア市場の投資家を呼び込む規制緩和や施策を講じないと、世界マーケットから取り残されてしまうだろう、そのように大いに危惧しています。

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(2013年11月28日東京時間10:30記述)

第631回 【相場の予想レンジの信憑性】

ある証券会社が、日経平均株価の予想レンジを1万3000円-1万8000円と発表したのを見て、
「これだけワイドなレンジなら必ず当たる」
と苦笑した投資家がいました。

その気持ちは良く理解できますが、予想レンジとは、その程度のものなのです。

為替を例に説明しましょう。

ドル/円の現在値が1ドル=100円とします。

レンジの幅を3円とすれば、ブル派は100円を挟んで99円-102円のレンジを予想し、ベア派は98円-101円を予想するでしょう。

ブル派だからとって100円を外して101円-104円を予想することはないし、ベア派が96円-99円を予想することもありません。

ということは、レンジの幅をタイトにすればするほど、現在値に収れんすることになります。

現在値を含まない予想レンジは、あり得ないからです。

それは株価予想も同じです。

強い相場観を持つ人はレンジを一方に傾けて出すでしょうが、一般的には、ボラティリティが高ければワイドレンジで予想し、低ければタイトレンジで予想するだけで、中心が現在値であることに変わりありません。

違う表現をすれば、上昇トレンドではブル派が多めでベア派が少なめ、下落トレンドではベア派が多めでブル派が少なめになり、ニュートラルな相場の時は、ブル派、ベア派が現在値を中心に左右対称の釣り鐘型に分布し、その多くが現在値±標準偏差の範囲内に含まれることになると思います。

科学的根拠はないものの、常識的に考察すれば、そうなるはずです。

そうなると、身も蓋もない言い方をすれば、「今日の予想レンジ」や「今月の予想レンジ」は、投資を考える上であまり参考にはなりません。

だから、よく雑誌などの取材で、自分自身が、予想レンジを語る立場にあるのですが、個人的には、予想レンジが、役に立つ情報とは考えていません。

それよりも重要なことは、
「予想者がトレンドをどう考えているのか?」
「そう考えた根拠は何か?」
を探るほうが、ずっと相場予想の役に立つのではないか、と考えています。

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(2013年11月25日東京時間00:25記述)

第630回 【油断大敵】

昨日(11月20日)、FOMC議事録が公開されました。

「経済指標は改善しており、数か月以内の量的緩和(QE)政策縮小の可能性が高い」といった内容が明らかになりました。

バーナンキFRB議長は、今年の5月、6月頃から、量的緩和(QE)政策縮小の9月スタートの可能性を示唆していましたが、その9月のFOMCでは、量的緩和(QE)政策の維持が発表されました。

10月以降のマーケットでは、むしろ、「年内の量的緩和(QE)政策縮小スタートは無理なのではないか」という見方が強まっていました。

そして、その結果、
「来年1月になるのか、あるいは、3月まで延期されるのか?」
といった考えが主流になった感がありました。

ところが、ここにきて、「年内(=12月)スタート」の可能性が、再浮上した格好です。

もちろん、『数か月以内のスタート』であれば、「年内(=12月)スタート」も「1月スタート」も「3月スタート」も含まれるので、実質的に大差は無いのではないか、といった意見も理解します。

しかし、10月以降のマーケットでは、「もう、ほぼ、年内(=12月)のスタートは無いだろう」と考える向きが多数派を占める状況だった訳ですから、改めて、「年内(=12月)スタート」の可能性が浮上することには、唐突感があったということです。

「量的緩和(QE)政策縮小スタート」は、「ドル買い材料」です。

また、昨日(11月20日)の海外市場では、「ユーロ(EUR)のマイナス金利」が話題になっています。

ECB(欧州中銀)の関係者からの発言として、追加緩和の必要があるならば、マイナス0.1%の預金金利を検討する旨のニュースが流れました。

「ユーロ金利の利下げ」に関しては、「ユーロ売り材料」です。

「ユーロ売り材料」とは、すなわち「ドル買い材料」ですから、昨日(11月20日)の海外市場では、重要な「ドル買い材料」が二つあった、ということです。

ただし、いずれのニュースも、確定したものではなく、今後の可能性の高まりを示唆した内容なので、その取扱いには注意が必要です。

このところの相場は、こう着感が強い状況で、マーケットに対しては、『どーせ、何も無いよ・・・』『どーせ、大した値動きにはならないよ・・・』といった雰囲気があったのですが、そういった油断した時に、こういった突発的なニュースが飛び込んでくるものです。

油断大敵です。

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(2013年11月21日東京時間07:30記述)

第629回 【「テーパリング」に関する一般的な考察】

今回は、量的緩和による国債などの毎月の購入額を徐々に減額して最終的に購入額をゼロにする「テーパリング」に関する一般的な考察です。

バーナンキ議長が9月実施をマーケットに示唆していた量的緩和のテーパリングが、何のアナウンスもないまま延期されました。

外部から見て原因と思われる出来事はありました。

2014年度予算と債務上限引き上げ問題で与野党が揉めていたこと、オバマ大統領がレイムダック化して指導力を失っていたこと、サマーズ氏のFRB議長候補辞退・・・・・・などなど。

マーケットは、FRBに不信感を抱きながらも、とりあえず延期の原因に納得して、「年内は無理ではないか」という見方を強めました。

それでは来年1月になるのか、3月まで延期されるのか?

1月は暫定予算が期限を迎え、バーナンキ議長が任期満了となり、2月はイエレン氏が新議長に就任、米国政治の世界では債務上限問題で再び一悶着あるかも知れず、判断が難しい状況です。

どちらにせよ波乱の年明けになることは間違いなさそうです。

3月説のほうが、実現性が高いという意見が大きくなっていく中で、11月8日(金)に、10月の雇用統計が発表されました。

非農業部門雇用者数(NFP)が前月比20万4000人増となり、予想の12万5000人を大きく上回りました。

これにより、12月6日(金)に発表される11月の雇用統計次第では、12月17・18日のFOMCで、1月、あるいは早ければ年内のテーパリングが決まるのではないかという見方が出てきました。

ここで大切なことは、FOMCのメンバーもマーケットの参加者も、右往左往していることです。

「12月のテーパリングの開始」の思惑が強くなれば、それは、目先の「ドル買い材料」となります。

逆に、「来年に延期される」といった思惑が強くなれば、それは、直接的な「ドル売り材料」ではないけれども、「ドル買いの意欲」が下がることを、しっかり認識する必要があります。

12月6日の雇用統計の数字が良ければ、年内開始の気運が高まりドル買いが顕著になるでしょう。

その時点でのマーケットの織り込み率は半分程度と予想できるので、もう一段のドル高が起こる可能性もあります。

例年であれば、11月23日の勤労感謝の日、あるいは、11月28・29日のサンクスギビングデーあたりからクリスマス相場に入り、マーケットは徐々に閑散となるのですが、12月17・18日のFOMCで、目先の結論が出ることがはっきりしているために、休んでいるわけにはいきません。

もし、12月が見送られたとしても、「1月実施ならば、・・・」「3月まで延期されたならば、・・・」というように事前にシナリオが描けるので、それを念頭に置いた取引を行わなければなりません。

やりにくい相場が続くと思いますが、利益を確保するためには上手く乗り切るしかありません。

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(2013年11月18日東京時間02:30記述)


 

第628回 【外国為替取引は、一方を資産にして、もう一方を負債とした取引】

日本の個人投資家は、ドル/円(USD/JPY)やユーロ/円(EUR/JPY)、ポンド/円(GBP/JPY)などの対円取引をすることが多くなります。

なおかつ、その取引は、「買い」から入るケースが圧倒的です。

それには、いくつかの理由が挙げられます。

初めて、FX取引(外国為替証拠金取引)などの外国為替取引をする場合に、対円取引から始めるのは、一番無理がありません。

それは、ドル/円にしても、ユーロ/円やポンド/円にしても、自分の持っている円を支払って、外貨を受け取る(買う)というイメージをつくりやすいからでしょう。

しかし、外国為替取引をする場合には、自国通貨であるか、ないかには意味がありません。

円を持っている、持っていないは、まったく関係がないのです。

資産と負債という観点から、外国為替取引を見てみます。

たとえば、ドル/円を「買った」としましょう。

これは、取引の相手方からドルを受け取る代わりに、取引の相手方に円を支払うことです。

ドルを受け取るということは、ドルという財産(通貨=お金)を、相手方からもらうということです。

これは、ドルという財産を保有することを意味します。

つまり、ドルの資産を持つことになるのです。

ドル/円を「買った」場合は、ドルを受け取ると同時に、円を支払うことですから、円という財産(通貨=お金)を、相手方に渡すということです。

つまり、円の負債を持つことになります。

逆に、ドル/円を「売った」場合は、ドルの負債を持つことであり、同時に円の資産を持つことを意味します。

そう考えると、ドル/円では、――ドル/円に限らず、外国為替取引全般に言えることですが――買っても売っても、どちらか一方の通貨を資産として持ち、もう一方を負債として持っていることになります。

ドルも円も、どちらも通貨ですから、ドル/円を「売った」場合でも、実は、円という資産を持っていることになるのです。

ドル/円を「売った」場合は、ドルの価値が下落して円の価値が高くなれば、――為替レートの変動で言えば、「ドル安円高」になれば――持っている円の資産価値が上昇して、負債のドルの価値が下落するので、利益になります。

ところが、日本人の場合、すでに日本円を持っていますから、この「ドル/円の売り」のイメージがしにくいのです。

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(2013年11月14日東京時間11:00記述)

第627回 【期待感が、急に、高まってきました】

先週の11月7日(木)に、ECB(欧州中銀)は、0.25%の利下げを発表しました。

この決定は、サプライズ(驚き)であり、相場が急変した可能性があります。

しかし、それまでは(=11月6日までは)、「相場が面白くない」と、多くの投資家が感じていたのではないでしょうか?

12月のクリスマス相場入りを前に、しっかり利益を確保しておきたい時期なのに、「相場が面白くない」と感じさせた最大の原因は、マーケットのFRBに対する不信感だと、考えています。

5月の議会証言で、バーナンキ議長が早い段階での量的緩和の縮小開始に言及以降、FRBは様々な形での「対話」を通じて、マーケットに対し、テーパリング(量的緩和の縮小)の9月スタートを示唆してきました。

ところが、9月のFOMCでは、テーパリング(縮小開始)の延期を決定。

その理由・原因はともあれ、たった1回の「裏切り」で、FRBは長時間かけて築いてきたマーケットとの信頼関係を壊してしまったのです。

次回のFOMCは12月17・18日ですが、よほど経済指標が好転しない限り縮小開始は無い、と見る向きが増えています。

そして、来年1月には暫定予算が期限を迎え、2月には債務上限引き上げ問題が再燃、その間にはFRB議長の交代も予定されています。

そのため、FRBのスタンスがはっきりとせず(市場参加者の立場からすれば、FRBのスタンスが予測できず)、そうなると、ポジションを取るにはリスクが高い、となることから、投資家が及び腰になります。

だから、マーケットが活況になるはずの11月なのに、相場が面白くなかったのでしょう。

相場は日々の動きは分からなくても、大きな目で見れば大局に従って動いていくものです。

現在の大局は「ドル高」。

ところが11月6日までの相場は、それがワークしていませんでした。

だからやりようがない(=面白くない)と感じたのです。

そんな時は、一時退却して様子を見るというもの一つの手だ、などと考えていました。

ところが、11月7日(木)、ECBが利下げしたことで、大きく「ドル高(=ユーロ安)」に動きました。

相場が変わった可能性があります。

何もニュースが無いと、油断していると、得てして大局に沿うニュースが出るものですが、まさに、そういった感があります。

そして、今のところ、年内のテーパリング(縮小開始)は無いと見る向きが多いのは既に述べましたが、万一、12月にテーパリング(縮小開始)が決まれば、お金の流れが、決定的に大きく変わることが予想されます。

先週末(11月8日金曜日)に発表された米国雇用統計は、事前予想よりも良い結果だったので、改めて、テーパリングのスタートは12月と読む市場参加者も今後増えてくることも予想されます。

そうなると、次回のFOMCは12月17・18日ですから、クリスマス相場真っ直中になっても、相場に参戦せざるを得なくなります。

そんなことも想定できる相場つきになってきたので、改めて、気を引き締めて相場に臨もう、と考えています。

逆に、「今は休んではいけない時(=相場に集中すべき時)なのかも知れない」と期待感が、急に高まってきました。

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(2013年11月11日東京時間01:00記述)

第626回 【信用で商売する企業の歪んだ経営体質】

毎日のように明るみに出る企業の「嘘」に注目が集まっています。

阪急阪神ホテルズは、レストランでメニューとは異なる安価な食材を多数使用した料理を、7年以上も前から提供していたにも関わらず「意図的な偽装ではなく誤表示」と主張して批判を浴びました。

『意図的な偽装表示ではなく、悪意のない誤表示だから、過去に起こった偽装事件とは異なる』
というホテルの主張は、消費者には受け入れられず、社長は辞任に追い込まれました。

辞任会見では
「お客様の立場から考えれば、偽装と受け止められても仕方がない」
と事実上偽装を認める発言をしました。

一方、みずほ銀行では暴力団関係者への融資を放置していたことが問題になりました。

みずほ銀行は、当初金融庁に対し、
「問題融資の情報は担当役員止まりで、経営トップには上がっていなかった」
と説明していたのですが、再調査によって、歴代3頭取が出席した取締役会で報告を受けていたことが判明しました。

事実を隠していたことに対して、現頭取は「隠蔽ではない」と釈明して辞任を否定、当人は半年間の無報酬、他の現役役員と役員OBの大半は報酬減額という甘い処分を行って幕引きをする姿勢です。

甘い処分の大きな要因は旧3行の派閥争いの結果であるとも伝えられています。

しかし、取締役会で歴代頭取が報告を受けていたにも関わらず、金融庁に対し「担当役員止まり」と説明したことは明らかに虚偽であり、悪意を持って隠蔽したと判断すべきではないでしょうか?

派閥争いなどは、預金者や株主には全く関係のないことに過ぎません。

世間の常識に従うのであれば、頭取は辞任するのが筋で、居座るのであれば、銀行は特殊な優遇を受けているという目で見られることになる、と考えます。

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(2013年11月7日東京時間03:00記述)



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