第653回 【事実を冷徹に見て、マーケットに対応していく】

この2月にFRB新議長に就任したイエレン氏は、量的金融緩和の縮小を継続すること、事実上のゼロ金利により景気や雇用の改善を支えることを表明し、大方の予想通りに、バーナンキ前FRB議長の路線を引き継ぐ姿勢を見せました。

量的緩和縮小のペースは、今後のFOMC(3、4、6、7、9、10、12月開催)で決まりますが、過去2回の削減規模を踏襲してほぼ毎月、100億ドルずつ債券の買い入れ額を縮小することになるのだろう、と推測しています。

ところが、一部のマーケット関係者は、
「混乱する新興国市場に配慮して、FOMCが緩和のペースを緩めるのではないか?」
というリップサービス的な見方を示し、新興国投資で損失を被った投資家に期待を持たせていました。

G20が終わり、米国がそういった格別の配慮を払わなかったことから、そういった願望は、だいぶ薄れてきた、と思いますが、まだ、淡い期待感が残ってもいるようです。

しかしながら、FOMCが決める金融政策は、米国経済を成長させることが目的であり、他国の経済や市場に対する配慮ではありません。

もちろん、新興国市場の混乱が米国経済に悪い影響を与えるようになれば、米国を守るために路線変更もあり得るでしょうが、イエレン議長は、現時点では、
「著しいリスクを及ぼすとは認識していない」
という立場です。

リップサービスを鵜呑みにしたり、こうあって欲しい(ここでは新興国市場にFRBが配慮して欲しい)という願望が強い人ほど負ける理由は、願望が事実を見る目を曇らせているからです。

事実を冷徹に見て、マーケットに対応していく、という姿勢が大切だ、と感じてなりません。

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(2014年02月27日東京時間15:30記述)

第652回 【G20が終わりましたが、過度な期待を抱かず、粛々と相場に対応を】

為替も株も値動きが鈍く、投資家としてはやりようのない相場のように映ります。

米株は1万6000ドル台の高値圏にあるとはいえ、そこから抜け出ることができず、日本株も1万6000円台まで上昇して、さらなる上昇が期待されたのに垂れ下がり、今は1万4000円台で推移しています。

ドル/円も年初105円台を見たものの、100円台まで調整下落し、その後、反発していますが、現在は102円近辺にとどまるという、やりにくい相場付きが続いています。

日本の投資家にとって、この春のテーマは消費税増税でしょう。

目先の消費が好調なのは、景気が回復したためではなく、増税後の需要を先食いしているためであり、4月以降の消費の冷え込みが懸念されています。

そうした中で、2月の日銀金融政策決定会合に期待が集まったのですが、「成長産業に対する金融機関の融資を支援する制度を1年延長し、規模も2倍に拡大する」という程度の小規模なテコ入れ内容となりました。

小規模にとどまったのは恐らく、「4月以降に切り札を残した」ということなのでしょう。

自分に都合の良い期待を抱いてしまうと、冷静な判断ができなくなります。

米国のテーパリングにしても、一部の人たちは、
『FRBが、混乱が続く新興国市場を意識して、手綱を緩める(テーパリングの速度を落とす)のではないか?』
と期待しましたが、現実にはFRBは粛々と量的緩和の縮小を進めています。

そうした中、オーストラリアのシドニーで、2月22日~23日の日程で、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催されました。

G20会議が開催される前の段階では、新興国市場の混乱に対応した政策協調が主要議題になるという期待が示されていました。

しかし、個人的には、議論が行われたとしても抽象的な結論で終わり、具体案まで落とし込まれることはないと考えていました。

そして、今回のG20会議は、「今後5年でG20の経済成長率を2%幅超かさ上げする」ことを目指す共同声明を発表しました。

G20が成長率の底上げ目標を立てたのは初めてのことですが、この目標が、どの程度実効性があるのか、はなはだ疑問に思います。

つまり、結局のところ、事前に考えていた通りに、「抽象的な結論で終わり、具体案が無い」と考えます。

「具体的に、どの国が、どの程度の寄与をするのか?(するべきなのか?)」が明らかではないし、目標を達成できない場合の責任も不明です。

この成長目標は、『お題目』に過ぎず、個人的には、全く信用できない、と考えます。

これでは、今回のG20は、相場の材料にはなり得ず、結局、やりようのない相場がしばらく続くことになるのだろう、と考えます。

そうした中で、ドル/円は調整下落局面にあって、もう一段の下落に注意しなければならない状況が続いている、と考えます。

このような相場付きなので、
「過度な期待を抱かずに、粛々と取引を続けるべきところ」
と捉えています。

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第651回 【いつでも買えるし、いつでも売れる、といった柔軟な姿勢】

今月(2月)になって、ドル/円相場は100円台をつけました。

100円台を見てからは、反発して、102円台に戻しましたが、ガンガンと上昇するような勢いは感じられません。

1月初旬の104-105円台から見ると、いったん5円円高方向へ動き、その後は安値圏で持ち合っている値動き、と言えます。

大局で見れば、100円台から105円台の保ち合いが続いている状態です。

5円幅は、そこそこ大きい値幅と言えますが、2012年10月-11月の79-80円台から1年数カ月かけて25円も円安に向かったことを考えれば、今回の5円の値動きは調整局面に過ぎない、と解釈できます。

今のところ、100円台はサポートされていますが、
「今後100円割れする局面があるのか?」
「調整局面がいつ終わるのか?」
は誰にも分からず、日々の相場の中で、その都度判断して対応していくしかないため、難しい局面のように思えるかも知れません。

しかし、相場の大きな流れは今でも「ドル買い」です。

極論を言えば、今の水準で買って90円にストップロスを置いて、ほったらかしにしておけばいずれ勝てるでしょう。

もちろん、それは机上の論であり、危険であるため、実戦では、全くおすすめしません。

現実に90円をつけた時は大損をするし、また、そういった値動きは、相場の転換を示すサインなので、根本的な対処・対応が必要になるからです。

そこで実戦では「天井売らず底買わず」の相場の格言に従って、絶対水準を狙わず、
「相対的に安いところを買って、相対的に高いところを売る」
というスタンスで相場と向き合うと良い、と考えています。

そう割り切れば、
「ドル/円は、いつでも買えるし、いつでも売れる」
といった柔軟な姿勢がとれるようになります。

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(2014年02月20日東京時間11:00記述)

 

第650回 【勝てる時に勝つことの大切さ】

外国為替市場のドル/円相場は、年初の105円近辺から100円台まで調整下落したものの、現在は、101円台、102円台に落ち着いています。

ドル高期待が強いことから落胆のコメントも散見されますが、全体としてみれば、100円-105円のゾーン内で安定している、と言えます。

昨年12月のテーパリング決定、2月のFRB議長交代といった重要イベントが終わり、マーケットの集中度が落ちた中で、ロシアのソチで冬季五輪が始まりました。

多くの人たちの関心が、為替相場から離れているようにも感じています。

一方、日本株は新興国市場の混乱の影響を受けて下落したものの1万4000円台で踏みとどまっています。

ただ、その後の回復力が弱く、一進一退の状態です。

それは、4月から消費税増税が待ち構えており、景気が冷え込む可能性が高いことを先取りした値動きなのかも知れない、と危惧もしています。

マーケットも注目するソチ五輪では、モーグルの上村愛子選手が最後の五輪でメダルを手にできず、下馬評では金メダル確実といわれていたジャンプの高梨沙羅選手も4位に終わりました。

しかし、一方で、この週末には、男子フィギュアで羽生結弦選手が金メダル、男子ジャンプで葛西紀明選手が銀メダルを得ました。(ハーフパイプや、ノルディック複合の活躍も、もちろん忘れていません)

スポーツ競技は、気象条件やスタート順位といった「運」に影響される部分があって、選手が精一杯の力を発揮しても結果が出せないことがあるのですが、それでも勝てる時に勝てないと、その次の大会で結果を出すことが難しくなります。

同じ勝負事である相場も、勝てる時にしっかり勝つことが重要です。

相場は、一つの勝負が終われば、すぐに次の勝負が始まるとはいえ、今回は手を抜いて次回に賭けるというような姿勢で臨むと、調子を崩し、勝ち方を忘れてしまいます。

今はマーケットの集中度が落ちていて、為替も株も低調な感じを受けますが、大きな流れで見れば、ドル高基調に変化は無い、と考えています。

だから、今年が悪い年になるとは思っていませんが、まずは目先の2月、3月をしっかり勝っておきたい、と考えます。

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(2014年2月17日東京時間05:00記述)

第649回 【中国のシャドーバンキングは、潜在的な問題】

中国のシャドーバンキング(影の銀行)が、中国の経済の「バブル崩壊」を招くのではないかといった問題が、潜在的に懸念されています。

シャドーバンキングとは、当局の監視下にある銀行ではない企業や個人が、高利で資金を貸し付ける行為で、不動産価格高騰の大きな要因となる一方で、借金が返せず破産する借り手が急増しています。

シャドーバンキングの資金供給源となっているのが、貸出債権や債券などに投資する「理財商品」と呼ばれる高利回り商品で、残高は8兆2000億元(約130兆円)に達するという報道もあります。

昨年(2013年)には、シャドーバンキング問題が発端となって、上海株式を下落させる局面が見られました。

中国人民銀行が理財商品へ流れる資金を減らすために資金供給を絞ったために、銀行間で取り引きされる短期金融市場の金利の急騰したことが株式下落に結び付いたのです。

日本人の多くの人たちは、状況が全く同じ状況とは言いませんが、およそ25年前の日本の「バブル崩壊前夜」を思い出すのではないでしょうか?

昨年の後半以降、中国のシャドーバンキング問題は、話題(テーマ)としては下火になった印象ですが、問題が無くなった訳ではありません。

米国の出口戦略(=テーパリング)が引鉄(ひきがね)になって、新興国通貨からの資金流出が起こっている状況ですが、こういった動きがさらに加速すると、中国のシャドーバンキング問題が再注目される可能性がある、と考えています。

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(2014年02月13日東京時間10:30記述)

第648回 【イエレン新議長のお手並み拝見】

米FRBのイエレン体制がスタートしました。

新議長は、前任者のバーナンキ路線を引き継ぐというというのが大方の予想ですが、まだ何も分かりません。

ただ、歴代のFRB議長を見てもわかるように、一角の人物が起用されているので、イエレン議長も在任中に私利私欲で動くようなことのない優れた人物であろうと敬意を持って見ています。

1987年にグリーンスパン議長が就任した当時は、前任者のボルカー議長に比べると線が細い印象を受けたのですが、就任早々に起こったブラックマンデーに上手く対処して、その後の米株上昇の素地を作りました。

しかし、その政策がリーマンショックの温床となったと退任後に批判されましたが、
『それでは彼はどのような政策を採れば良かったのでしょうか?』

誰も答えを持っていません。

リーマンショック後の景気低迷は、2006年に就任したバーナンキ議長が大胆な量的緩和策を実行して、ようやく回復の兆しが見えてきました。

そして2月、イエレン議長が量的緩和の縮小と金融引き締めを実行して、FRBの金融政策を正常に戻す使命を担って登場したのですが、
『そもそも、米経済は金融引き締めに耐えられるほど強いのか?
米企業は競争力を備えているのか?』
という疑問を感じています。

『米企業は資金がじゃぶじゃぶの状態に慣れてしまって、本来の力を失っているのではないでしょうか?』

イエレン議長の就任早々、米株が大幅下落し、新興国市場も大混乱しました。

米経済の脆弱さが露呈した出来事のように映りました。

現時点に限れば、それがブラックマンデーやアジア通貨危機のような深刻な事態を招くとまでは想定していません。

しかし、マーケットは生き物です。

中国のシャドーバンキングがクラッシュするといった重大な出来事が起これば様相は一気に変わるため油断は禁物です。

イエレン議長は難しい舵取りを迫られると思いますが、どのような手腕を発揮するのか、まずはお手並み拝見というところです。

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(2014年2月9日東京時間22:20記述)

第647回 【中央銀行の金融政策の暗黙のルール】

FRBは先月からテーパリング(量的緩和策の縮小)に着手し、債券買い入れ規模を縮小しています。

FRB議長は、バーナンキ氏から、イエレン氏に代わりましたが、バーナンキ元FRB議長は、テーパリングの決定前も、決定後も、量的緩和縮小が政策金利引き上げの前触れでないということを強調しました。

また、多くのFOMCのメンバーも、利上げは2015年まで無いことを示唆しています。

では、金融政策の当事者の言葉なのだから、それを信用して、2014年は利上げが行われないという前提で取引を行うべきでしょうか?

ベテランのマーケット関係者であれば同じことを言うと思いますが、バーナンキ元FRB議長も、FOMCのメンバーも『ウソ』をついています。

誰か特定の人を陥れようという意図があるわけではなく、むしろ誰にでも公平な取引の場を提供するために『ウソ』をついているのです。

FRBに限らず、中央銀行は金融政策については、『ウソ』をついても構わないという『暗黙のルール』があります。

昨日の会見で「利上げをしない」と発言しておいて、今日の会見で利上げを発表しても、「情勢が変わった」というひと言で許されるのです。

それはなぜでしょう?

事前に利上げの時期がわかっていると、誰でも利上げで儲けようと考えます。

一般に株価は下落するので、利上げ直前に売った人は儲かるでしょうが、その逆側には、損をする人が必ずいます。

身近な例では、住宅ローンを借りる際に、不公平が生じます。

利上げ時期の情報を知っている人は、利上げ前に長期固定で借りられるので得をするし、知らない人は利上げ後の高い金利で借りて損をすることになります。

だから、中央銀行は金融政策については、『ウソ』をついても構わないという『暗黙のルール』があるのです。

ところが、今、その『ルール』を忘れている、あるいは、知らない人が増えているように感じています。

FRB議長が2015年まで利上げしないと示唆したのであれば、今年利上げが行われても対応できる態勢で臨むべきだ、と考えます。

現在の与件から判断すると、「利下げ」は考える必要がありません。

絶対水準での「利下げ」が不可能だったから、「量的緩和策」を実施したのです。

その「量的緩和策」を縮小している(現在進行形)のだから、「利下げ」は考慮する必要が全くありません。

そして、わざわざ、「量的緩和策の縮小」と「利上げ」は別と説明したのですから、その本質は、「利上げに向けた第一歩を踏み出した」と解釈すべきでしょう。

テーパリング(量的緩和策の縮小)が終了すれば、その段階で、情勢が変わる可能性も出てきます。

つまり、テーパリングが終われば、いつでも利上げが可能になるのです。

もちろん、利上げするには、米国経済が堅調という与件が必要であり、果たして、テーパリング終了後の米国経済が、どうなっているのかに因るのですが・・・。

「可能か? それとも、不可能か?」といった観点からだけ言えば、「可能」となります。

中央銀行の金融政策に関する発言は、その文言の額面通りに受け取ってはいけません。

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(2014年02月06日東京時間06:15記述)

第648回 【新興国投資から即時撤退を】

FRBの金融政策を決める1月29日のFOMCで、量的緩和に伴う米国債券などの購入額を2月も100億ドル減らして650億ドルにすることを決めました。

FOMCメンバーは、「この先も毎月100億ドルの減額を想定している」と推測できます。

だから、このペースで行けば、7月か8月、あるいは秋にはテーパリングを終えるつもりなのだ、と予測できます。

今回のFOMC直前に新興国経済の不調が伝えられました。

そのため、
『FOMCは新興国に配慮して「量的緩和の縮小を縮小する」のではないか?』
という観測が流れました。

しかし、その見方は間違っている、と考えます。

FOMCは、米国の国益に適う金融政策を議論する場であり、そこに新興国を含めた他国に対する配慮が入る余地はありません。

もちろん、FOMCメンバーは、世界の金融の知識にたけた人達の集まりですから、『量的緩和の縮小が新興国にどのような影響を与えるのか』については、十分に理解しているし、かつまた、その想定も済んでいる、と考えます。

しかしながら、その想定の結果が、他国にとって悪いものだとしても、手加減することは無い、と考えます。

いや、むしろ、手加減してはいけないのだ、と考えます。

なぜなら、自国(=米国)の国益を損ねてまで、他国(=この場合は、米国以外の国々)に配慮することは、本末転倒であり、馬鹿げた行為だからです。

自国の国益を損ねてまで、他国に配慮することは、FOMCの職務上、それは犯罪に等しい行為だ、と考えます。


日銀の金融決定会合にしても同じことです。

周辺国に配慮して日本の金融政策を決めることなどありません。
(あり得ません)

米国や欧州の金融政策に歩調を合わせることはあり得ますが、それは世界経済の動きに対応しているだけで、特定国を助けるためではありません。

もし、アルゼンチンがデフォルトしても、トルコを始めとする新興国通貨がさらに下落しても、FOMCは毎月100億ドル減額を決定する、と考えます。
(そうあるべきだ、と考えます)

もし手綱を緩めるとすれば、新興国経済の不調が米国経済に波及した時(あるいは波及する恐れがある時)だけです。

もちろん、米国自身の問題で、テーパリングのペースを減速させる場合もあり得ますが、それは、米国の経済指標などが、不調な場合など、正当な理由があるべきです。


結論として、新興国投資は今すぐ止め、損失が出ていても撤退すべき、と考えます。

昨年から「新興国投資から撤退すべき」と言い続けてきましたが、今は、はっきり「止めなさい」とアドバイスします。

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(2014年02月02日東京時間22:40記述)

 



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