第585回 【黒田総裁は、マーケットに畏怖・畏敬の念を抱かせることに成功した】

黒田東彦氏が、日銀総裁に就任して2カ月が経過しました。

就任早々の4月4日の初会合で決めた「異次元の金融緩和」は、世界の注目を集め、為替相場が円安方向へ動き出しました。

その後の対応を見ても、黒田総裁はマーケット参加者の心理を熟知し、駆け引きに長け、マーケットを思い通りの方向へ導いている印象です。

例えば、欧州中央銀行(ECB)が政策金利の0.25%引き下げを決めた時、改めて金融緩和は「デフレ脱却に必要」と発言し、ユーロの利下げの影響がドル/円に及ばないように務めました。

思い起こすと、グリーンスパンFEB前議長が結果を出すことができたのは、就任早々に起こったブラック・マンデーを切り抜けた手腕に対し、マーケットが畏怖・畏敬の念を抱いたことが大きな要因でした。

黒田総裁も就任2カ月で、マーケットに畏怖・畏敬の念を抱かせることに成功した、と考えます。

このことは、 「今後、日銀がマーケットをコントロールするための大きな力となるだろう」 と考えます。

ドル/円相場をコントロールした財務官としては、「ミスター円」の異名を取った榊原英資氏が有名ですが、黒田総裁も財務官出身であり、財務省官僚の層の厚さを見せつけられた思いがします。

懸念材料があるとすれば、異次元の金融緩和の影響で長期金利が上昇しつつあることです。

金融緩和により金利の上昇が抑えられるイメージですが、金融緩和はインフレ政策であり、インフレ期待が高まれば高まるほど長期金利が上昇することは避けられません。

国債大量購入など需給面で管理することができる短期金利とは性格が異なり、長期金利は理論値に従う傾向が強く、いかなる金融政策を用いても、この上昇を止めることはできない、と考えます。

黒田総裁のシナリオに、将来齟齬が生じるとすれば、想定外の長期金利の上昇ということになりそうだ、と考えています。

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(2013年05月29日東京時間11:15記述)

 

第584回 【出口戦略は米ドル買い材料】

先週は、日本の株価が新高値を更新して、1万6千円に迫りましたが、その後、大きく調整下落しています。

一方で、5月に入りNYダウは新高値を更新し、順調に米経済は景気回復に向かっているように見えます。

ただし、米国の雇用統計を見ると、まだ、まだら模様です。

4月の失業率は7.5%となり、2008年12月以来の低水準となったものの、FOMCがゼロ金利政策を止める目安としている「6.5%程度」には届いていません。

ターゲットは、まだまだ遠い印象です。

アメリカが先行して実施したQE1・2・3と呼ばれる量的緩和策が、一定の効果を上げていることは事実ですが、QE1から5年が経過しようとしていることから、これ以上続けても効果が得られないのではないか、という意見も多くなっています。

そんな中、FOMC(連邦公開市場委員会)の最新議事録要旨が公開されました。

多くのメンバーは、雇用の先行きに確信が持てない限りQEの縮小を行うべきではないという意見ですが、バーナンキ議長は要旨公表前の議会証言で、慎重な姿勢を見せつつ、緩和縮小の可能性についても言及しました。

アメリカが「出口」へ向かえば金利は上昇します。

一方日本は4月に「異次元の金融緩和」を決めたばかり、欧州も金融緩和を止めることはできず、短期金利は横ばいを続けるでしょう。

もちろん今すぐアメリカの金利が上昇するわけではありませんが、いずれマーケットには金利先高感が生まれ、先物市場等が反応し始めるはずです。

それは、ドル/円に関していえば「ドル買い・円売り材料」であり、ユーロ/ドルでは、「ユーロ売り・ドル買い材料」、豪ドル/ドルでは、「豪ドル売り・ドル買い材料」になることを意味します。

ごく目先の相場では、多くの外国為替市場の参加者は、日本株の上下動に注目するのでしょうが、あるいは、日本株の値動きがアジア株・欧州株・米国株に与える影響に最大限の関心を払うのでしょうが、外国為替相場に与える各国の短期金利の影響は、実は、株式相場以上に、直接的であり、その影響力は大きいということを忘れてはいけない、と思っています。

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(2013年5月27日東京時間02:30記述)

第583回 【相対的に考えれば、米国の金融緩和の出口が、一番先に訪れることになる】

5月も下旬になり、マーケットは活況です。

外国為替相場は、大きく変動しているのですが、個人的に受ける印象としては、乱高下に近いものがありますが・・・。

相場が動けば、売買(取引高)も増えるので、活況と言って良いのだろう、と考える次第です。

外国為替市場の夏休みは、米国独立記念日から三々五々始まるので、7月4日(米国独立記念日)までの6週間(1カ月半)は、頑張って利益を追求する期間です。

だから、この時期に相場が活況なのは、市場参加者にとって良いことだ、と思っています。

昨日(5月22日)は、注目されたバーナンキFRB議長の議会証言と、4月開催分のFOMC議事録が公表されました。

バーナンキ議長の議会証言では、その冒頭で、「時期尚早の引き締めは景気減速や腰折れのリスクになる」と発言したことが伝わると、金融緩和策が持続するとの思惑から、米長期金利が低下し、米株価が上昇し、「ドル売り」が先行しました。

しかし、その後、「今後数回のFOMC会合で資産購入ペースの減少もありえる」と述べたことが伝わると、金融緩和策の出口戦略が意識され、急な「ドル買い」に転換しました。

そして、バーナンキ議長の議会証言が終わると、マーケットはいったん静かになり、次のイベントであるFOMC議事録の公表に、市場の関心が移りました。

4月のFOMC議事録では、「依然として資産購入ペースの縮小には、米経済の一段の改善が必要である」とする内容で、金融緩和政策からの脱却には直接結びつくものではありませんでした。

つまり、バーナンキ議長の議会証言も4月のFOMC議事録も、どちらの材料も、おおむね事前に予想された「当面のところ現状維持」といった内容だった、と考えます。

今後発表される米国経済指標が、良い内容で、米経済に明らかな改善がみられる場合は、早期の出口戦略もあり得る、としているのは、以前から、そう表明していることなので、目新しい内容ではありません。

内容の割には、値幅が大きく上下動をした、と考えます。

多くの市場参加者は、「相対的に考えるならば、米国の金融緩和の出口が、一番先に訪れることになる」と思っています。

「異次元の金融緩和策」を行った日銀の金融緩和は、始まったばかりだし、ゴールデン・ウィークの最中(5月2日)に利下げを行ったECB(欧州中銀)が、早々に金融引き締めに転じることはあり得ません。

だから、常識的に考えるならば、「米ドル金利の上昇は、円金利やユーロ金利に先んじて起こる」といった結論になります。

その期待感は、バーナンキ議長の議会証言の前でも後でも、そして、4月のFOMC議事録の公表の前でも後でも、持続している状態だ、と考えます。

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(2013年05月23日東京時間06:00記述)

第582回 【上昇相場は始まったばかり】

アベノミクス効果により金融市場全体の活況が続いています。

日経平均株価は5年4カ月ぶりに1万5000円を回復し、ドル/円は100円を突破しました。

ただ、外国為替相場には、100円突破を機にGW明けの緊張が薄れ、一服感が漂っている、と感じています。

それでも上昇が打ち止めになったということではなく、トレンドは相変わらず円安方向です。

そこで気になるのは、「どこまで上昇するのか?」ということでしょう。

個人的な経験則で述べれば、 『「どこまで」という到達地点を、今の段階で想定する必要は、全く無い』 と断じます。

相場は絶対値を当てることが目的ではないし、それが利益につながるわけでもありません。

「トレンドがどの方向を向いているのか?」 「どのようなポジションを取れば利益に結び付くのか?」 それを考えれば良いだけなのです。

到達地点は、相場が十分に上昇して上げ止まる兆しが見えてきた時点で考えれば良い、そう考えます。

現在の相場は始まったばかりで、まだ到達地点は皆目見当がつきません。

※長期のチャートを調べれば、115円とか、124円がターゲットになることは明らかですが、100円を超えたばかりのこの時点で、真剣に考える必要が、全く無い、と思います。

通常トレンドは、短期間であっても、2~3年程度は続くものです。

株も為替にしても目に見える上昇が始まったのは、昨年(2012年)11月中旬の衆院解散決定後なので、そう考えると、まだ、たったの6カ月しか経過していません。

そして、ドル/円相場に関しては、トレンド転換が起こったのは、昨年(2012年)2月と考えています。

だから、2012年2月から計算しても、現時点で、1年3カ月程度しか経過していません。

トレンドが『短くても2~3年程度は続く』と考えると、今回の円安トレンドは、今後、1年半から2年程度は続くと考えるべきでしょう。

その前提に立つと、株価の上昇もまだ続く、と考えています。

株価に対する為替の寄与率は大きく、ドル/円の上昇は株式市場全体には追い風となります。

そうであれば、株価も1万5000円は通過点に過ぎず、さらに上昇していく、と考えるべきです。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ (2013年5月20日東京市場01:30記述)

第581回 【当面の注目ポイントを整理】

ゴールデン・ウィークが明けて、マーケットは全く通常の活況を取り戻しています。

これから夏休みまでの2カ月弱は頑張って利益を追求する期間です。

そこで当面の注目ポイントを整理しておきましょう。

ユーロはゴールデン・ウィーク中に金利引き下げが行われました。

欧州中央銀行(ECB)は5月2日に開いた定例理事会で、政策金利を過去最低の0.5%としました。

これ以上金利を引き下げることは事実上不可能なので、ユーロはぎりぎりのところまで追い込まれました。

※ドラギECB総裁が、ユーロのマイナス金利に言及しているので、マイナス金利の可能性もありますが、通常の常識で考えるならば、これ以上の金利引き下げは出来ないところまで追い込まれた、と言えます。

利下げは基本的にユーロ売りの材料となるのですが、ゴールデン・ウィークが明けて、利下げから2週間経た現時点では、十分に消化されたとはいえず、しばらくの間は注意して見ておく必要がある、と考えます。

ドルは5月3日に発表された4月の雇用統計の影響を受けています。

非農業部門雇用者の増加数が事前予想を上回る伸びとなり、景気回復期待が高まり目先はドルが買われましたが、内容を細かく見ていくと「まだら模様」で楽観できる状況ではありません。

ユーロとドルの「結果」をベースにして日本の状態を振り返った時、やはり、アベノミクスと日銀の金融政策に注目が集まります。

日銀が4月4日に「異次元の金融緩和」を決定したことで、マーケットは「円安株高」に向かいました。

5月2日に公表された金融政策決定会合の議事要旨には、委員からは異論が出なかったとあり、異次元の金融緩和策が強力に推し進められることは明らかです。

ただ、金融緩和策は現在、実行段階に入っているところであり、当面、マーケットに影響を与えるような新たな政策が出てくる状況ではありません。

私たちは進ちょく状況を見守るしかありません。

ここで注意したいことは、「円安株高」が、7月に予定されている参院選までのパフォーマンスを兼ねていることです。

一時的な調整はあるにせよ、政権与党は参院選までは是が非でも「円安株高」を維持しようとするでしょう。

「円高株安」に向かう場面があれば、政権側からリップサービス的な発言が飛び出すことも十分に予想されます。

為替に関しては、G20で為替操作を目的としないことを約束させられているので露骨な発言は控えるでしょうが、「口が滑る」ことだってあり得ます。

この点には、十分な注意が必要、と考えています。

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(2013年05月16日東京時間10:45記述)

第580回 【異次元緩和を意識した中央銀行の利下げ競争】

4月に日銀の発表した「異次元の金融緩和」は、世界の金融関係者に衝撃を与えました。

国内経済に与える影響・効果は、未知数の部分がありますが、現時点では株価は絶好調、為替も1ドル=100円を突破しました。

アメリカは、表面上は変わりなくQE3を継続しているように見えますが、異次元緩和「以前」のFRB(米連邦準備制度理事会)はQE3の出口戦略、つまり、いつ、どのような形で終了させるかという検討を行っていた形跡があります。

ところが、異次元緩和「以後」は、重要な経済指標がまだら色ということもあり、QE3を続けるとも、止めるともはっきりしない、どちらにも進めるような発言が目立ってきました。

ECB(欧州中央銀行)は、5月2日の理事会で政策金利を0.25%引き下げ過去最低水準としました。

マーケットはこれで打ち止めと見ていたところ、ドラギ総裁は追加策を講じる用意があると表明し、下限政策金利である中銀預金金利の変更を示唆しました。

そして、利下げは行わないという見方が大勢を占めていたRBA(オーストラリア準備銀行)は、5月7日、サプライズ的に0.25%の利下げを実施しました。

その背景にはインフレ率が予想よりも低く、豪ドルが歴史的な高水準にあることをあげています。

どの国の利下げにも、景気回復目的、景気後退対策という大義名分があるのですが、その一方で、世界が日銀の異次緩和を意識した利下げ競争に入ったことも事実です。

G20の声明文にも明記されているように「通貨安競争は行わない」ことが世界のルールですが、各国の中央銀行が利下げ競争に走ったことで、結果的に通貨安競争が始まりました。

この流れは、当分止まることはない、と考えています。

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(2013年5月13日東京時間09:30記述)

第579回 【GW雑感――相場は小説よりも奇なり】

ゴールデン・ウィークを終えて、マーケットは通常の状態に戻りました。

ゴールデン・ウィーク中は、市場参加者が少ない状況の下で、それなりに動いた、と感じます。

ゴールデン・ウィーク中のテレビなどの相場関連のコメントは、 「為替が円高方向へ振れたので株価は下落基調だが、アベノミクスと日銀の金融緩和を材料に、上昇トレンドを保っている」 という無理に理由をつけたように思える内容が目立ちました。

それを批判するつもりはありません。

正直に言えば、私もコメントを求められると、そのような場面では、視聴者や読者がある程度納得するような発言をすることがあるからです。

しかし、そういったコメントは偽りではありませんが、正しいと胸を張ることもできません。

実は、こういった市場参加者が極端に少ない状況下での値動きには、たいした理由などないことが多いからです。

ゴールデン・ウィーク中でも何らかの理由で大量の玉を動かす必要のある人がいると、その売買のせいでスカスカの相場がふっと動いたというだけ、といったケースが多いものです。

こういった場合の大量の玉は投機かも知れないし、実需かも知れないし、相場を動かすことを目的とした愉快犯的な売買かも知れません。

第三者からは理由は分からないし、そうした動きを事前に予測することは不可能です。

これがマーケットに厚みがある時なら玉の動きを、ショックアブソーバのように吸収して抑える働きが期待できますが、薄い時はそうはいきません。

経験則も通用しません。

このような時の相場の解説では、多くの人が納得できる理由がつけられると、実際の内容の当否に関係なく、正論としてまかり通ってしまうことが多いのです。

小説のように「さもありなん」という内容のほうが好まれるからです。

しかし、現実の事件がいつも人々を驚かすように、現実の相場では常に想定外のことが起こっています。

まさに「事実は小説よりも奇なり」と感じます。

ゴールデン・ウィークを終えたので、マーケットには市場参加者が戻り、ようやく経験則やセオリーが通用する状態に戻った、と考えています。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ (2013年5月9日東京時間10:30記述)

 

第578回 【そーいう時代よねー】

今週は、ゴールデン・ウィークの真っ最中です。

ゴールデン・ウィーク前の4月下旬のことですが、非常に気になる事件が起こりました。

4月23日午後1時(米国東部時間)ごろ、東京時間では4月24日午前2時ころに、AP通信の公式アカウントから 「ホワイトハウスで爆発があり、大統領が負傷した」 という偽ツイートが流れました。

マーケットは即座に反応し、ドル/円で約80銭、ユーロ/円で約1円程度急落しました。

NYダウも2分間で145ドル下落したといわれています。

相場が急落した瞬間、私自身何が起こったのか分からなかったのですが、しばらくして(かなりの時間が経過して)、 「公式アカウントが乗っ取られたこと」 「大統領報道官が爆発を否定したこと」 を伝えるニュースが流れました。

インターネットがなかった時代にも、噂は、電話や口コミで流れました。

しかし、そのために、世界が瞬時に騙されて、これ程に為替や株の値段が大きく動くことはほとんどありませんでした。

誰でも情報を発信できるようになった今は、情報ソースが拡大し、玉石混淆の情報が大量に流れているため、投資家はどのような基準で情報ソースを選別し絞り込めばいいのだろうか?――そんなことを考えていたところへ、今回の乗っ取り事件が起こりました。

AP通信のような信頼できる情報ソースであっても、偽情報が流れる可能性を想定しておく必要がありそうです。

相場の急落により、ストップ・ロスがついてしまったり、大損した人もたくさんいたはずです。

犯人が意図的にマーケットを乱高下させて儲けた可能性も、大いにあります。

私たち投資家は、 『情報操作ができる時代の中で取引していることを認識し、危機感を持って、相場に臨まなければならない』 ということなのだ、そう考えています。

テレビCMで、 九官鳥が、 「そーいう時代よねー」 としゃべっているシーンがありますが、 まさに、 「そーいう時代よねー」 と、感じています。

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(2013年5月2日東京時間00:30記述)



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