第569回 【明日は期末です】

いよいよ3月も末で、明日は期末です。

3月は多くの企業が決算を迎えます。

株価には一時的な調整が起こっているものの、全体としては上昇基調にあり、3月決算は明るい内容になる、と考えます。

特に、株式を大量保有する金融機関や大企業は、株価上昇による資産効果が期待でき、経営者は胸をなで下ろしていることでしょう。

資産効果は、株式をあまり保有しない中小企業や従業員には関係のないことですが、善し悪しは別にして、まず大企業の業績が回復し、そのプラス効果が中小企業に波及し、従業員の給料に反映されて、消費が拡大するのであれば喜ばしいことだと思います。

もちろん浮かれてばかりいるわけにはいきません。

「アベノミクス」の真価が試されるのはこれからだし、TPP参加交渉という難題も控えています。

欧州債務危機は先送りされているだけだし、米国の景気が回復したわけでもなく、日中関係も冷え込んだままです・・・。

それでも、真っ暗闇に一筋の光明が見えるのはうれしいことです。

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キプロス危機や、海外へ投資していた資金を自国に戻すレパトリなどの影響により、マーケットはやや円高、やや株安方向へ振れていますが、絶対的な為替水準、株価水準は、前期に比べると明らかに違うステージにあり、資産効果も働いて、2013年3月期は多くの企業が良好な決算を迎えると思います。

その牽引力となったアベノミクス、積極的な金融緩和は、イメージが先行しており、不景気、リストラ、若年層の高い失業率、就職難という暗い言葉でくくれる現状に大きな変化が起こっているわけではないのですが、「景気は気から」といわれるように、世の中の雰囲気は改善方向へ向かっており、久し振りに明るい期末を迎えられそうです。

そのせいなのか、発足から3カ月を迎えた安倍内閣の支持率は、多くの報道機関の調査で70%前後の高い水準を保っています。

反対が多いというイメージのTPP交渉参加を表明しても、高い支持率に大きな変化はありません。

それはなぜなのか?

ストレートに言ってしまっていいのか迷うところですが、TPP参加反対を声高に唱えているのは、主に農業関連団体と、彼らを支持母体とする政治家であり、サラリーマンや中小企業経営者、自営業者などのサイレントマジョリティは、TPP参加を支持しているためではないでしょうか。

もちろんサイレントマジョリティにも温度差はあるでしょうが、少なくても反対という立場ではないと思います。

来期はTPP参加、アベノミクス実施も含めて安倍内閣の真価が問われます。

日銀の積極的な金融緩和の影響も明らかになるでしょう。

来期が、本当に良い「期」になるように期待しています。

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(2013年03月28日東京時間10:40記述)

第568回 【キプロス・ショックの本質】

金融危機に陥っているキプロスに対し、ユーロ圏首脳は支援の条件として個人法人を問わず、預金残高に対して一律課税することを求めました。

その反発があまりにも大きく、すぐに対象は大口預金であり小口預金を除くという条件に緩和され、最終的にはキプロス議会によって否決されました。

地中海の小国であるキプロスが、仮に、破たんしても、その経済規模は小さいので、欧州全体を考えるならば、大きな痛手とはならないはずです。

しかし、今回人々を驚かせ危機感を抱かせたことは、ユーロ圏首脳が預金残高に対する課税を考えているということです。

このことは、スペインやイタリアの破たんを想定した予行演習ではないのか、という受け止め方をされ、マーケットにとってサプライズとなりました。

もう一点、気になることがありました。

キプロスは、ユーロ参加国の中では優等生ではないにしても、普通の国のはずでした。

危機的状況にあるとされるPIIGSの中にも入っていません。

その「化粧」が突然はがれたことで、目先流動性危機が収まった感のあるスペインやイタリアに対して、マーケットが疑心暗鬼になる可能性があり、欧州危機の再燃が懸念されます。

欧州危機は根本的な解決が行われない限り、形を変えて繰り返しクロースアップされることになる、と考えます。

根本的な解決とは、その国に新たな産業が興り、自力で借金を返済していくことです。

その条件を満たしているのはドイツしかなく、フランスでさえ借金が増えれば借り換えたり、他から借りて借金を膨らませていくしかありません。

現状を見る限り、欧州は日本の失われた20年に匹敵する、あるいはそれを上回る低迷期を迎えることになるのではないか、と心配しています。

本日(3月25日)の東京時間朝方に、「キプロス大統領とEUが支援策の大枠案で合意」との報道がありました。

このニュースを受けて、ユーロは、対ドル、対円で、大きく急上昇しています。

しかし、「支援策の合意」とは、キプロスが破たんしないように、キプロスに資金を貸し付けるだけのことです。

キプロスが、自力で借金を返済する道筋を整えた訳ではなく、本質的な意味では、何も解決していない、と考えています。

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(2013年3月25日東京時間10:00記述)

第567回 【楽観ばかりではなく、備えることも大切】

春分の日を終えて、3月の下旬になりました。期末(3月末)を迎えています。

今年は、桜の開花が早く、もう、花見が話題になっています。

日本経済も、花見のような、明るい話題が多くなった印象です。

昨年11月以降、「アベノミクス」効果によって円安トレンドが鮮明となり、日経平均株価は8000円台から1万2000円台まで急上昇しました。

おかげで株式を大量保有する金融機関を始め、3月決算の多くの会社は好決算となる見通しです。

昨年まではリストラ、解雇、賃金カットというような後ろ向きの話題が多く、働く人たちの活力を削ぐ結果となっていたのですが、今年は好業績を背景に、前向きの話題が期待できそうです。

ただし、過度に期待し過ぎないように、と留意しています。

実態が伴わなかった「欧州債務危機の一服感」がイタリア総選挙によって吹き飛んだように、日本の株価の上昇も、期待感が先行しているもので、まだ、実態を反映させたものとは言えない段階、と考えるからです。

円安効果も輸出企業にはプラスでも輸入企業にはマイナスに働くため、手放しで喜べるものではありません。

そもそも為替はニュートラルなのです。

「アベノミクス」の真価が試されるのは、予算が本格執行される来年度から、といことにも留意する必要を感じます。

日本の景気回復に期待していますが、欧州のように楽観するのではなく、多方面に気を配り、備えることが重要、と考えています。

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(2013年3月21日東京時間10:30記述)

第566回 【安倍首相のアメリカに対する譲歩と思惑】

安倍首相は、先週の金曜日(3月15日)に、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に参加することを正式に表明しました。

また、先日の衆院予算委員会では、沖縄普天間基地の県外移転は困難であるとして、計画通り名護市辺野古へ移設することを強調しました。

個人的、かつ、岡目八目的見方をすれば、アメリカに譲歩を続ける安倍首相には、「アメリカにすり寄りたい」という気持があるのだ、と思います。

なぜなら、尖閣諸島問題をきっかけに、日中関係がかつてないほど悪化しており、今はアメリカの後ろ盾が欠かせないからです。

前政権がつくった日米関係の溝を早く埋めないと、地政学的リスクが高まるばかりです。

一方、アメリカは中国に様々な圧力を掛けていますが、根本的な部分で米中関係を壊すようなことはしたくないと考えているはずです。

ましてや、日本に荷担して、軍事的な緊張を高めることは避けたい、というのが本音だからこそ、安倍首相は「すり寄る」ために、党内の強硬な反対を押し切ってTPP交渉参加を表明するのだし、沖縄に犠牲を強いる形で基地移転をすすめているのでしょう。

しかし、TPP交渉参加にしても基地移転にしても、あまりにも明確な答えが出てしまうと国内世論の反対が高まり、参院選に悪影響を与える可能性があるので、7月まではあいまいな形で進めていくのだろうと見ています。

そして、日本側の譲歩の見返りとして、日米同盟の強化に加え、現状の円安水準を認めるというアメリカの暗黙の了解が得られたのだろう、と推測しています。

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(2013年3月17日東京時間22:00記述)

第565回 【相場をやっていると、不安になるものですが・・・】

相場をやっていると、不安なときの方が勝つ確率が高いことに気が付きます。

不思議なものですが、不安に思うということは、リスクに気が付いている、ということです。

そういったときは、相場の動きや相場の変動要因となる材料、ニュースなど十分に配慮した上でポジションを取っています。

それは、相場が思惑と逆に動く場合には、「これからこういったニュースが出るはずだ」と気が付きながら、それでもあえてポジションを張っている、ということです。

リスクに気が付いていながらもポジションを持っている状態です。

ですから、不安になるのです。

こういったニュースが出たら負ける――それがわかっていながら、そんなニュースは出ないだろう、出ないはずだ、と祈りながらポジションを持っているわけです。

人間は楽観的につくられています。だから、自分だけは助かるような気がどこかしらにあります。

そういう現実があるので、本質的に楽観的であるから、相場に参加する人が途絶えることはありません。

学校のテストを思い出してください。

勉強すると、自分が知らないことに気が付きます。

一生懸命に勉強してテストに臨むと、知らないことを知っているから、テストが終わったときに、どこができなかったか、どこを間違えたかに気が付いています。

ですから、テストが終わったときに不安になるのです。

根拠のない自信があるときの方が、テストの点数は悪いものです。

間違ったところにも気が付いていないから、
「まあ、何とかなるだろう」
「一応全部埋めたし、何となくできているだろう」
といったような気分になります。

そういったときのテストは、壊滅的な点数だったりするものです。

知らないことは書けないし、できないことはできないのです。

スポーツで言えば、「練習でできないことは本番でもできない」ということです。

相場に臨んでいるときも同じです。

不安を感じることは、リスクに気が付いていることなのだ、と考えるのも大切なことです。

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(2013年3月14日東京時間10:30記述)

第564回 【冷静に聞いた日銀次期総裁の所信表明】

安倍政権が打ち出した「アベノミクス」により、為替相場は円安へ向かい、企業業績に好影響を与え、株価が上昇しています。

安倍晋三首相がデフレ脱却のために企業に要請した社員の賃金改善についても、小売売り大手のローソンやセブン&アイ・ホールディングスなどが応えました。

ファミマも追随したようです。

もっとも、小売業は賃上げによる直接的なメリットを受けられるために積極的ですが、大手製造業が追随するかどうかは未知数です。

国民のアベノミクスに対する期待は高まっていますが、その柱の一つである「強力な金融緩和」を推進するためには日本銀行のサポートが欠かせません。

そこで、日銀の人事権を持つ政府は、次期総裁候補として金融緩和派でアベノミクスに協力的な黒田東彦アジア開発銀行総裁を指名しました。

事前にさまざまな自分物の名前が挙がりましたが、黒田氏が指名されたことについてマーケットは、サプライズではなく当然の人選と受け止めました。

現在は国会による所信聴取が続いており、黒田氏は「2%のインフレ目標を2年で達成する」と表明しています。

その所信に対して、私も含めて多くの人が「そうですか」という冷静な感想を抱いたのではないでしょうか。

わずか2年という短い時間で、長期間続いたデフレから脱却して2%のインフレに転換させることは容易でないはずです。

それでも「やれるか」と聞かれれば、「やります」としか、答えようがないのでしょう・・・。

それは、「2013WBC」に臨むにあたり、山本浩二監督が「3連覇を目指す」と発言したり、本田圭佑選手が目標を聞かれて「W杯ブラジル大会で優勝する」と答えるのと同じです。

野球もサッカーも目標を達成することを心から願っているし、応援もしています。

しかし、結果は試合が終わってみなければ分かりません。

日銀の政策についても、2%のインフレ目標が正しいかどうかは別にして、「達成するためにベストを尽くす」という姿勢は当然と考えます。

もっとも、山本監督や本田選手ほどには、日銀総裁を応援しているわけではありませんが・・・。

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(2013年3月10日東京時間20:30記述)

第563回 【金融緩和政策と通貨安政策】

先月、G20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)がモスクワで開催されました。

その会合で、為替市場の混乱を防ぐために、金融緩和などの政策手段を使って自国通貨安に誘導する「通貨安競争」を回避するという声明を出しました。

しかし、金融緩和を行うと通貨が弱くなるというのが、現在の市場のコンセンサスです。

数学や化学の方程式のように証明されているわけではありませんが、ラフに見るなら金融緩和を行った国の通貨は弱くなっており、「金融緩和政策=通貨安政策」がほぼ成り立ちます。

振り返ると、リーマンショック以降の深刻な不況に対応するため、欧米は強烈な金融緩和を実施しました。

とりわけアメリカは、QE1からQE4に至る通貨安政策を実行し、大幅なドル安を実現させました。

現在も欧米の通貨安政策に変化はありませんが、相対的に出遅れていた日本が、政権交代によって安倍政権が大胆な金融緩和を掲げたことで、円安が目立っているという状況です。

G20声明では、金融政策は国内の物価安定や景気回復のために行うもので、為替誘導を目的にしないことを確認しています。

また、安倍晋三首相も金融緩和はデフレ対策が目的であり、為替誘導を目的としていないと説明しています。

それはそれで本音だと思いますが、同時に詭弁でもあります。

金融緩和政策と通貨安政策は、表裏一体で、線引きができないからです。

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(2013年03月07日東京時間8:50記述)

 

第562回 【イタリア総選挙で再確認した欧州危機】

先週の前半、ドル/円、ユーロ/ドルが急落し、結果的にユーロ/円も大きく下落しました。

原因はイタリア総選挙にありました。

2月25日から26日にかけて開票結果が順次発表されるに従い、緊縮路線を進めてきたモンティ首相率いる中道の票が伸びず、政治の混乱が予想される事態となり、マーケットでリスクオフの動きが活発になりました。

選挙前から反緊縮派のベルルスコーニ元首相の支持率が高いという、今回の結果を示唆するような予測があったのですが、欧州債の金利が危機的状況を脱したこともあり、マーケットにはお気楽ムードが漂っていました。

その間に日本株が急上昇し、米株も堅調に推移して景気回復の兆しが見えていたことも、マーケットを油断させた一因でしょう。

しかし、これまで何度も指摘しているように、私自身は欧州危機問題を楽観したことはありません。

日本の状況を思い起こしてみましょう。

バブル崩壊後の景気低迷が長引き、「失われた10年」がずるずると「20年」になり、ようやく「アベノミクス」という積極的な金融緩和策をとる政権が出てきたことで株価が上昇し、金融緩和策=通貨安政策でもあることから、為替相場が円安へ向かいました。

それでもまだ「日本が変わった」とは言えません。

株価が上昇して資産効果が得られたのは大量の株式を保有している人だけで、多くの個人は恩恵を受けていません。

円安は輸出企業の業績にはプラスに働いても、エネルギーなど輸入物価は上昇し、私たちの家計を圧迫しています。

「アベノミクス」を前向きに受け止めて、今後は景気が実態を伴って回復することを願っていますが、今はまだ楽観できる状況ではないと考えます。

ましてや欧州は、南欧の財政危機国に新しい産業が興ったわけではないし、失業率が劇的に改善したという話も聞きません。

結局、欧州の人たちは、(あるいは、市場参加者の多くは、)危機を直視したくないのでしょう。

そのことをイタリア総選挙で再確認した思いです。

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(2013年03月04日東京時間9:00記述)



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