第429回 【豪ドル/円は、『リスク回避』の動きに要注意】

8月のコラムに、豪ドル/円(AUD/JPY)に関して記述しました。

このコラムのタイトルは「ドル円ユーロ投資戦略」なのですが、「豪ドル/円」が気になっていたので、それをテーマにしたわけです。

7月下旬ころからの豪ドル/円は、そのチャートを見ての通りに激しい展開です。

当面のところは、このような激しい値動きが、まだ続くと考えています。

8月に、豪ドル/円(AUD/JPY)に関して記述した時は、スタンダード&プアーズ(S&P)による史上初の米国債格下げ、イタリア、スペインを巻き込む欧州不良債権問題の再燃など、解決が難しい金融問題が表面化したころです。

これらの大問題を材料に、世界中の金融市場(株式市場・債券市場・為替市場)で、『リスク回避』の動きが顕在化しました。

外国為替市場でも、ポジションを縮小するかスクエア(=ポジション無し)にするという『リスク回避』の動きが明確となりました。

米国債の格下げや欧州の不良債権問題は、米国やヨーロッパの問題で、一見すると、直接、豪ドル/円に関係が無いように見えるのですが、実は連動している、と言えます。

外国為替市場で、『リスク回避』の動きが鮮明になる場合は、現時点では『豪ドル/円の売り』になるということです。

つまり、それまでに積み上がった豪ドル/円のロング・ポジション(買い持ち)を、『リスク回避』のために、解消する動き(=豪ドル/円の売り)が、一気に出てくる、ということです。

振り返ると、豪ドル/円の上昇は、2009年年初のころから始まっています。

だから、過去2年半の時間をかけて、豪ドル/円の買いポジションが積み上がっている、と考えるべきでしょう。

豪ドル/円の買いポジションがどのくらい積みあがっているのか、それ次第なのですが、今後は、さらなるクラッシュが起こる可能性も想定しておくべきだ、と、引き続き危機感を持っています。

本格的な調整局面(修正局面)に突入する場合は、このところの下落のスピードと同じように、ものすごいスピードで、さらなる下値を見る可能性もあり得る、と危惧しています。

改めて、『リスク回避』の動きが顕在化する場合には、豪ドル/円のロング(買い持ち)は、すぐにでも、解消するべきと考えます。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

(2011年09月29日東京時間09:50記述)

第428回 【今回のFOMCの金融緩和策は、期待外れ】

9月20日・21日に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)により、短期債を売って長期債を買う「ツイストオペ」という金融緩和策が打ち出された。

今回の措置では、2012年6月末までに、残存期間6~30年の米国債4000億ドルを買い入れ、残存期間3年以下の米国債を同額売却する。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「ツイストオペ」(=ツイスト・オペレーション)は、長期金利に下向きの圧力(=長期金利に引き下げ圧力)を加えることが目的と考えます。

しかし、短期間の米国債を同額売却するので、短期金利には、むしろ上昇圧力がかかることになります。

しかし、FOMCは声明で景気見通しを「深刻な下振れリスクがある」としながらも、示された金融緩和策は、「ツイストオペ」だけで、もっと大胆な金融緩和策を期待していた市場参加者にとっては、「期待外れ」と言えます。

今回のFOMCでは、その開催の前から、市場筋は、「ツイストオペ」が実施されることを予想していました。

今回のFOMCの金融緩和策の内容が、マーケットの予想の範囲内にとどまったことで失望感が広がりました。

市場筋は、もっと大胆な、大幅な金融緩和策を期待していたのです。

そのため、FOMCの発表後は、世界的な景気後退懸念が強まり、米株はもちろん世界的に株が売られました。

為替は、基本的には、米ドルの金融緩和ならば「ドル売り材料」ですが、この「ツイストオペ」は、短期金利では、緩和策とは言えないので、材料としては、ニュートラル(影響なし)と考えます。

しかし、既述したように、米株が下落したことで、リスク回避(リスクオフ)の思惑が、マーケットに広がりました。

つまり、「世界経済の下振れリスク」といった懸念から、リスク回避の動きが増幅されて、ドル/円では、ドルが売られ円が買われました。

一方、ユーロ/ドルは、欧州の不良債権問題が混迷を続けているため、ユーロ売りの方向です。

ドル/円が下落方向で、ユーロ/ドルも下落方向ですから、ドル/円レートと、ユーロ/ドルレートを掛け算して求められるユーロ/円は、当然ながら下落方向です。

クロス円の代表であるユーロ/円が下落方向ですから、クロス円は全般に下落方向に集約されます。

ここで投資家として確認しておきたいことは、今回のFOMCでは、確かに、新たな金融緩和策が打ち出されたのですが、それは、市場筋が事前に思い描いていたような大幅な金融緩和策ではない、ということです。

つまり、
『この程度の金融緩和策では、たいした効果は期待できない』
ということです。

そうなると、外国為替市場での大きな流れは変わらず、当面は、それまでの流れ(FOMC前の流れ)が、そのまま持続することになるだろう、という判断になります。

そして、このままでは金融緩和策の効果が薄いとFRB(米連邦制度準備理事会)が判断すれば、次回以降のFOMCで、QE3(大幅な金融緩和策第3弾)を打ち出す可能性が高まると考えます。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

(2011年09月25日東京時間20:55記述)

 

第427回 【欧州首脳の詭弁】

先週、ドイツのメルケル首相、フランスのサルコジ大統領、ギリシャのパパンドレウ首相の3者による電話会談後、独仏首脳は、
「ギリシャは将来もユーロ圏にいると確信している」
と明言しました。

しかし、ギリシャが破綻していることは誰の目にも明らかで、独仏首脳の発言は詭弁に過ぎない、と、私は考えています。

本当にギリシャをユーロ圏に留まらせたいのであれば、ドイツが無尽蔵に資金援助するしかありませんが、それではドイツがギリシャを経済的な手段によって併呑することになり、欧州各国は過去のいきさつから鑑みても認めるわけにはいかないでしょう。

もちろん、ドイツ国民も自分たちが犠牲になってまで、勤勉さに欠けるギリシャ人を助けたいとは思わないでしょう。

となると選択肢は一つ、ギリシャをデフォルトさせるしかありません。

冷淡に聞こえるかも知れませんが、結論は明らかです。

ここから先は政治的な判断、欧州の人々の判断になるので、私たち投資家が口出しすることではありませんが、投資家の立場で言えば、
『欧州問題が決着するまで、ユーロには投資しない』
というスタンスで臨むべきでしょう。

といって景気回復が進まないドルにも投資できないことから、資金は避難通貨である円に集まっています。

スイスフランも避難通貨ですが、スイスの中央銀行が、対ユーロで、無制限の介入を宣言したために、より円に資金が向かいやすくなりました。

また、円が中国元の代替通貨と位置づけられていることも、日本の国内事情とは関係なく買われている要因です。

このように「ユーロには投資しない」とは(是非はあるかもしれませんが)、「ユーロを売る」ということです。

ユーロ/円を売っても良いのですが、ユーロ/円は、「ドル買い円売り介入」があった場合に、その影響を受けやすいので、個人的には、ユーロ/ドルの方が取引し易いと感じています。


今月の9月20日、21日に予定されるFOMC(米連邦公開市場委員会)で、米国がQE3(ドルの量的緩和策第3弾)を実施するかも知れない、あるいは、QE3は無くとも、何かしらの金融緩和策が、20日、21日のFOMCで発表になるのではないか、といった思惑から、目先の相場では、「ユーロ買いドル売り」が出ています。

しかし、目先、リバウンド(反発上昇)する局面で、ユーロ売りを行い、思惑通りにユーロが下がった局面で、利食いの買いを行う、といった戦術が、一番良い、と考えています。

(注)この文章を記述している現在の時間は、9月21日東京時間23:00です。
だから、あと数時間のうちに、FOMCの結果が発表になります。期待感を持って、FOMCの結果を待っているところです。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
(2011年9月21日東京時間23:00記述)

第426回 【形骸化したG7】

フランス・マルセイユで開催されたG7(主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議)後の記者会見で、日本は、
『円高懸念を明確に主張し、各国と緊密に協議、適切に行動することで合意した』
と発表しました。

しかし、市場では材料化されず、円高の流れは変わっていません。

このような国際会議での成果を国民に向けて華々しく発表することは、為政者の常套手段であり、具体策を伴わない玉虫色の合意は、G7の形骸化をはっきりと表しています。

かつてのG3、G5の時代は、通貨制度を大きく変化させたプラザ合意のような「意味のある合意」が行われました。

そのため、現在のG7も無視することはできないのですが、「意味のない合意」が続き、久しく「意味のある合意」は得られていません。

米国と日本は景気回復、欧州は不良債権問題処理を急がなければ、先進国は共倒れになってしまうでしょう。

「意味のない合意」に時間を費やしている余裕はありません。

投資家の立場でG7を見ると、各国が考えていることのヒントを得ることができます。

例えば、円高懸念を訴えた日本に対する各国の冷淡な反応から、欧米の為替相場に対するスタンスが明確になったと思います。

また、合意文書には米国と日本は景気対策、欧州は財政再建に力を入れることも明記されています。

目新しい内容ではありませんが、今後の投資戦略の参考にはなるでしょう。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

(2011年09月15日東京時間11:30記述)

第425回 【私見ですが、スイスの無制限介入には賛成できない】

スイス国立銀行(中央銀行)が、自国通貨高(スイスフラン高)の対策として、ユーロ/スイス(EUR/CHF)に1.2000の下限を設け、「無制限の介入を実施する」と発表しました。

※つまり、スイス中銀は、「ユーロ買いスイス売り介入」を行い、ユーロ/スイス(EUR/CHF)の下限を1.2000とする、と発表しました。

為替介入は、国家や中央銀行が自国通貨の値段を一定の水準に誘導することを目指して、市場を通じて売買することですが、日銀の例を見ても分かるように、通常は事前に介入を宣言したり、数値目標を設定して行うことはありません。

禁じられているわけではありませんが、不文律というべきものが存在しているからです。

また国家や中央銀行は通貨発行権を持っているため、「無制限の介入」は相場に大きな影響を与える可能性があります。

特に今回のような「スイスフラン売り/ユーロ買い」介入は、自国通貨を無制限に刷ることで、本当に無制限の介入が成り立ってしまいます。
(逆方向は、原則として、外貨準備の範囲内に限られます)

そのためスイス中銀の行動は、異例中の異例と言えるでしょう。

スイス中銀が無制限の介入を宣言したのは、スイスの主要産業である観光業と、時計に代表される精密機械業を守るためでしょう。

短期間に20~25%もスイスフランが高騰してしまっては観光客が減り、輸出品の時計が売れなくなります。

しかもスイスフラン高の原因が自国の経済の好調にあるのではなく、避難通貨として買われたためというのでは、しびれを切らす気持ちも分かります。

日本も同じ事情による円高問題を抱えているので、いずれ「日銀はスイス中銀を見習え」という声が上がるかも知れません。

しかし、個人的には、通貨発行権を持つ機関による介入にはおのずと限度があると考えています。

だから、スイス中銀の行動は賛成できるものではない、と考えています。

その一方で、近年の外国為替市場を見ていると、市場を通じて通貨を売買するという現在の通貨制度が疲弊し、あちらこちらでほころびが目立っているとも感じています。

といって外国為替市場に変わる制度は現在のところ考えられないので、だましだまし付き合っていくしかないのでしょう。

私見では、上記の通りに、スイス中銀のユーロ/スイス(EUR/CHF)への無制限介入は、賛成できない、と考えますが、欧州中銀(ECB)は、スイス中銀のこの介入を認めました。

いつまで、こういった介入の効果があるのかは疑問ですが、ECBが認めた以上、当面のところは、ユーロ/スイス(EUR/CHF)の1.2000の下限が守られることになる、と考えます。

公平で自由な取引が、外国為替市場の特徴です。それが最大の利点・長所なのに、それを放棄しています。

自由な売買を阻害するマーケット(市場)は、不公平なマーケット(市場)ですから、スイスフラン(CHF)絡みの取引は、当面のところ、やらない方が良い、と考えます。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
(2011年9月11日東京時間23:00記述)

第424回 【今週はG7ですが、結局、マーケットが注目するのはFOMCと考えます】

9月に予定されている「4つの重要イベント」のうち2つが終わりました。

まず、2日に発表された「米雇用統計」発表。

8月の非農業部門雇用者数は、事前の市場予測を大きく下回って増加数がほぼ1年ぶりにゼロとなり、失望感とリセッション(景気後退)懸念が高まりました。

2つ目は、5日にオバマ大統領が自動車産業の中心地・デトロイトで行ったレーバーデー(労働者の日)のイベントでの演説。

道路や橋などインフラ再建のための支出が、新たな景気・雇用対策の柱になると話しました。

詳細は、今日(8日)の議会演説で明らかになるようです。

雇用統計は、米国の景気悪化を裏付けただけでした。

「オバマ大統領の演説」は景気対策の方向性を示したものの、議会で決まった話ではなく、実現までに紆余曲折がありそうです。

最初の2つの重要イベントは、マーケットに希望をもたらすような内容ではありませんでした。

そんな経緯ですが、「3つ目の重要イベント」が、明日の9月9日からフランスのマルセイユで開催されます。

G7(財務相・中央銀行総裁会議)です。

マルセイユG7(財務相・中央銀行総裁会議)には、注目が集まっていますが、恐らく会議の内容は、事前予想通りになると思います。

つまり、米国は、世界に景気対策の協力を求め、「米国債格下げ」の影響はないという弁明を行うのでしょう。

そして、QE3(量的緩和策第3弾)を実施するために予防線を張るかも知れません。

欧州は、ユーロ加盟国の財政危機と、それに伴う金融機関の不良債権問題に対する説明と協力要請に終始するでしょう。

日本は、安住財務相が、「行き過ぎた円高が、世界経済にプラスではないことを世界の共通認識にしたい」と述べているように、円高是正への協力を求める考えですが、今回のG7では、「為替レート問題」は欧米の関心事にはなり得ないでしょう。

※日本向けの発表では、日本にとって有利(有益)なコメントが発表されるのでしょうが、欧米の合意や協力は、現在の与件からでは、あり得ない、と事前に判断します。

今回も形骸化を強く印象付けるG7になりそうです。

4つ目は、20・21日に開かれるFOMC(連邦公開市場委員会)。

QE3の実施が決まるのかどうかに注目が集まっています。

個人的には、QE2の効果の検証を行う前にQE3を実施するのは時期尚早と考えていますが、もし、QE3か、それに相当するような金融緩和策が打ち出されれば、為替はドル安方向、コモディティは上昇方向となるでしょう。

結局9月の4つの重要なイベントのうち、マーケットに影響を与えるのは最後のFOMCになりそうだ、と考えています。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

G7の形骸化は、それが指摘され始めてから20年程の時間が経過した。

G7終了後の、各国の発表は、自国向けにそれぞれが発表を行っている。

それぞれの発表は、G7に出席したメンバー(それぞれの中銀のヘッド、各国の財務相)が、他の国々に向けて発言した内容をアピールするだけで、合意や協力の約束に至ることは、ほとんど無くなった。

また、他国の発表と自国向けの発表で、矛盾点(相違点)があっても、双方が互いに相手国に敬意を表して、矛盾点(相違点)にはあえて触れない、といった不文律が存在する。
(そういった矛盾点・相違点は、過去に何度もあった)

※自国向けの発表のみに注目するのではなく、それぞれの出席者が、自国向けに発表した内容を吟味し、各国が、何を考えているのかを、判断しないと、今のG7には、その存在意義が見つけられない。

(各国が何を考えているのかを判断する材料になるので、定期的に開催されるこの会合は、市場参加者にとっては利用価値がある、と、言えるのかも知れない・・・)

しかし、歴史を振り返るならば、その昔に、G3(日米独)ないしG5(日米独英仏)で、「プラザ合意」が実行されたことを忘れてはならない。

過去に「プラザ合意」があったので、現在でも、そういった合意がなされる可能性を否定できない。

だから、G7は注目されるのだが、このところの20年程の会議では、そういった重要な合意はなされていない。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

(2011年09月08日東京時間01:00記述)

第423回 【野田新首相の政治手腕に期待】

野田佳彦氏が新首相に決まり、野田新内閣が発足しました。

過去に何度かお伝えしたように、日本の政治が外国為替市場に与える影響は、基本的にはありません。(つまり、影響はゼロです)

世界は日本の政治にほとんど関心を抱いていないからであり、常に材料を探している市場が、首相交代を目先の材料にして売買することはあっても、大局的に見れば相場が大きく動くことはないはずです。

国内マーケットでも、外国為替相場に関しては、野田新政権を売りでも買いでもないニュートラルな存在と判断するでしょう。

これは野田首相の能力を低く見ているという意味ではなく、財務大臣出身の経済通(菅前首相も財務大臣経験者でしたがそれはさておき)として認識しているので安心感があり、ニュートラルポジションに位置づけているという意味です。

外国為替市場にとって"警戒"すべき点は、財務大臣として為替介入の経験を持ち、経済界との関係修復に力を入れている点です。

経済界は現在の円高水準に不満を抱いているので、首相として安住淳新財務大臣に介入の指示を出す可能性があり、予断を許しません。

さてこれから2年間で、野田首相は失墜した民主党に対する国民の期待を挽回できるのでしょうか?

政権交代後の最初の首相となった鳩山氏は、国民の高い期待を担って登場したのですが、政治主導が過ぎたこともあり失脚。

2人目の首相の菅氏は、大震災や原発事故という難しい舵取りを求められる出来事が発生したとはいえ、本人の資質によって孤立して行き詰まってしまいました。

個人的な意見ですが、野田首相は鳩山氏や菅氏のように官僚と対決するのではなく、官僚を使いこなす政治を行うべきでしょう。

官僚の国民生活よりも省益を最優先させる体質には常々怒りを感じていますが、しかし優秀であることは間違いなく、彼らにもっと仕事をさせるべきだ、と考えます。

野田首相の手腕に期待しています。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

(2011年9月3日東京時間15:00記述)

第422回 【日本国債格下げに、市場は無反応だった】

8月24日に、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、日本国債の格付けを「Aa2」から「Aa3」へ1段階引き下げました。

それから1週間が経過していますが、外国為替市場は無反応です。

これまでは格付けの変更に対して市場は相応の反応を見せていました。

しかし、今回無反応だったのは、その前に行われた、米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)による米国債格下げの影響があったのではないか、と考えています。

つまり、米国債格下げは、私も含めて驚きを持って受け止めましたが、市場にはほとんど影響を与えませんでした。

機関投資家によっては、『最高位の「AAA」格でなければ投資しない』というルールを定めているところがあるのですが、米国債の格付けを引き下げたのはS&P1社だけで、ムーディーズも欧州系格付け会社フィッチ・レーティングスも最高位を保ちました。

だから、投資先にAAAの制限がある機関投資家も、あわてて動かなかった(動く必要が無かった)。それが、市場が冷静だった大きな要因ではないか、と考えています。


米国債の格下げですら反応しなかった市場ですから、今回の日本国債の格下げにも無反応だったことは頷けます。

もう一つの理由としては、投資家が格付け会社に対して不信感を抱いていることがあげられます。

かつて、格付け会社は、「サブ・プライムローン証券」を「AAA」と評価していました。

ところが優良なはずのサブ・プライムローン証券が焦げ付き、サブ・プライムローン・ショックが起こり、それがリーマン・ショックに発展して行きました。

多くの企業が破たんしたり、破たんの危機に見舞われましたが、格付け会社の格下げは間に合わず、後手後手に回ったという印象を残しました。

この時の格付け会社の責任は重かったはずなのに、何のパニッシュメント(処罰)もなく、今に至っています。

投資家は、後手後手に回る格付けに対して、以前のような信頼を置いているわけではありません。

ただいきなりメルクマール(指標)が無くなっても困るので、便宜上利用しているに過ぎません。

そうした危機感から、格付け会社は早めに米国債を引き下げ、欧州の国々の国債のレーティングを変更し、日本国債を格下げしたのでしょう。

まるで「羮に懲りて膾を吹く」状態です。

しかし、私たちは格付け会社に指摘されなくても、米国や日本の財政が危機的状況にあることを知っています。

目先は大丈夫でも、遠い将来はデフォルトするリスクを感じています。

その一方で、『インフレによって借金の規模が縮小するかも知れない』という希望も抱いています。

だから、(信頼できない)格付けの変更に対して一喜一憂しなくても良いだろう、とマーケットは思っているのです。

では、格付けは不要なのでしょうか?

個々の投資家自身がすべての投資対象を調べることは不可能なので、まだ利用価値はあるのでしょうが、格付けに代わる新たな評価システムが求められていることは確かだと思います。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

(2011年09月01日東京時間00:55記述)



 >   >  2011年09月