第421回 【バーナンキFRB議長、QE3には言及せず】

【バーナンキFRB議長、QE3には言及せず】
---9月のFOMC(9月20日、21日)に注目---

 

先週の米国株式市場は、比較的堅調に推移していました。

その理由は、FRB(米連邦準備理事会)のバーナンキ議長が、先週末(8月26日金曜日)にワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウムで行う講演で、新たな金融緩和(QE3)に言及するのではないか、という観測が流れていたためです。

8月上旬以降、米国債の格下げや欧州危機の再燃によってリスクオフ(リスク回避)が顕在化し、世界同時株安が起こったことから、株式市場関係者はQE3という材料によって株価が上昇することを期待していました。

もちろん、株式市場関係者からだけでなく、FRBには、株高を期待するさまざまな方面から圧力が掛けられていることでしょう。

仮に、今QE3が実施されると、金利はこれ以上下げられない水準のため、ドルをジャブジャブに供給する量的緩和しか手段がありません。

株式市場関係者は、余剰のドルが株式市場に回ることを期待しているのでしょうが、外国為替市場にとっては、ドル安要因となってしまいます。

さらにオイル価格、コモディティ価格、食料品価格などに影響を与え、インフレ懸念が高まるでしょう。

余剰のドルが流れ込む可能性が高い新興国経済にも影響を与えます。

QE2が終了してまだ2カ月、その効果の検証はこれからです。

夏になって雇用統計や住宅関連指数が悪化し、株価まで下落してあわてる気持ちも分かりますが、だからといって、『すぐにQE3を行うという発想は、あまりにも短絡的すぎるのではないか?』と、私は思っています。

『アメリカは世界的なインフレ懸念や為替への影響まで考慮して、QE3の判断を行うべきだ』
と考えている訳です。

ゆえに、
『バーナンキFRB議長は、今回の講演ではQE3については言及しないだろう』
と、私は推測していました。

結局のところ、バーナンキFRB議長は、26日の講演で、
『9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、引き続き追加の金融緩和策を検討する』
と発言しました。

QE3に言及することはなかったものの、追加の金融緩和策の可能性を残した格好になっています。

『具体策は示されておらず、あいまいであり、結論を先送りしただけ』
とも受け取れますが、
『引き続き、追加の金融緩和策を検討する』
と発言したのですから、素直に、9月のFOMCに注目すれば良い、と考えます。

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(2011年08月28日東京時間22:10記述)


 

第420回 【日本株に関しては・・・】

日本株に関しては、外国為替相場の値動きを予測するうえで、必要な情報として、いつも見ています。

しかし、私のスタンドポイントは、株の専門家ではなく、あくまでも、自分のテリトリーは、外国為替であり、次いで、金利(ドル金利、円金利など)が領域だと、自覚しています。

それを、前提にお読みください。

日本株に関しては、私は、『現状では、まだ、買いではない』と考えています。

それは、米国株式が、下落トレンドに突入した可能性があるからです。

日本株は、米国株式市場の写真相場と言われるように、日本株の価格は、米国株式の後追いをします。

米国株式が、今後、もう一段下落する場合は、日本株式の下落率は米国株式の下落よりも小さいでしょうが、それでも、後追いをして、日本株も下落することになるだろう、と考えています。

しかし、もう一つ、注目すべきポイントがあります。

明日の8月26日(金)のバーナンキFRB議長の講演です。

昨年の同時期の講演で、バーナンキFRB議長は、QE2(量的緩和政策第2弾)について話しました。

『昨年に続き、8月26日(金)にQE3に関して、何かしらの示唆があるのではないか?』
といった期待が、マーケットに広がっています。

しかし、『QE3があるのか?無いのか?』に関しては、私は、まだ、無いのではないか、と考えています。

(いずれQE3を実施する可能性を否定しませんが、今週の8月26日では、時期尚早なのではないか、と考えている次第です)

8月26日にQE3の示唆があれば、米株は、再度上昇する可能性が高まるでしょう。

そうなると、日本株にも買いの目が出てきます。

しかし、8月26日にQE3の示唆が無ければ、米株は、もう一段下落する可能性が高くなる、と考えます。

米株が下がれば、日本株も米株の写真相場で後追いをして、もう一段下落することになる、と考えます。

もちろん、バーナンキFRB議長が、QE3に言及することを期待して、彼の講演の前に、日本株を買う(買っておく)という選択(判断)もあり得ます。

しかし、私は、
『現時点では、バーナンキFRB議長は、QE3に踏み切れない』
と考えています。

だから、
『もうしばらく、日本株の買いは、待ったほうが良いのではないか』
と考えている次第です。

多くの方々にとって、あまり、意に沿うような考えではないと思いますが、あくまでも、私見です。

(2011年8月25日東京時間午前00:30記述)

 

第419回 【独仏の首脳会談】

欧州の財政不安が世界同時株安を招いていることについて、ドイツ・メルケル首相とフランス・サルコジ大統領が首脳会談を行いました。

しかし公表された合意内容に目新しさはなく、依然市場の混乱が続いています。

首脳会談の印象をひと言で表せば、EU(欧州連合)は「金の切れ目が縁の切れ目」の方向に向かいつつある、ということです。

なぜ「金の切れ目が縁の切れ目」なのか?

各国の通貨を統合してユーロが誕生した背景を突き詰めて考えると、理解しやすいと思います。

ユーロを主導したのはドイツとフランスでした。

ドイツは欧州の中では突出した鉱工業生産能力を持っていて、EU域内輸出で利益を上げたかった。

しかし、ドイツには第二次世界大戦の負い目があり、また欧州にはドイツに反感を抱いている人々が存在しています。

そのため自身が表舞台に立つことができません。

そこに目を付けたのが農業国であるフランスです。

表舞台に立ってユーロを誕生させることでEUの主導者になれるし、域内にモノがスムーズに流れるようになれば、ドイツの生産能力を奇貨として利益が得られると考えたのです。

ここに独仏の利害関係が一致しました。

通貨統合によるメリットは、為政者達によっていろいろと喧伝されました。

EUは運命共同体となり、戦争が起こりにくくなるということも、ドイツを脅威とする欧州の人々にとっては賛成する動機となりました。

一方で為政者達が隠していたこともあります。

その最たるものが、通貨統合によってそれぞれの国の金融政策が効かなくなり、経済格差が生じれば、経済的に強い国が弱い国を助けなければならないということです。

日本の場合であれば、経済的に苦しい北海道や沖縄を東京が助けることは、日本国民として当たり前の行為だし、何の疑問も抱きません。

でもEUは独立国家の集まりに過ぎないので、ドイツがドイツ国民の税金を投入してギリシャを助けることは、ドイツ国民感情として納得できないでしょう。

しかし、選択肢は二つに一つ。

通貨統合によって利益を得たドイツが救済資金を出すか、ギリシャなど財政危機国家をデフォルトさせて離脱させるかです。

その決断を下せるのはドイツとフランスしかなく、冒頭の首脳会談に至るわけですが、ドイツは救済資金を出すことを渋っていて、尻に火がついた状態のまま、今回も結論は先送りされました。

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(2011年8月21日東京時間22:00記述)

第418回 【豪ドル/円】

このコラムのタイトルは「ドル円ユーロ投資戦略」なのですが、今回のテーマは「豪ドル/円」です。

現在の外国為替市場で、気になっている通貨ペアだからです。

7月下旬ころからの豪ドル/円は、そのチャートを見ての通りに激しい展開です。

当面のところは、このような激しい値動きが続く、と考えます。

スタンダード&プアーズ(S&P)による史上初の米国債格下げ、イタリア、スペインを巻き込む欧州不良債権問題の再燃など、解決が難しい金融問題が表面化しました。

世界中の金融市場(株式市場・債券市場・為替市場)で、『リスク回避』の動きが顕在化しました。

外国為替市場でも、ポジションを縮小するかスクエア(=ポジション無し)にするという『リスク回避』の動きが明確となりました。

米国債の格下げや欧州の不良債権問題は、米国やヨーロッパの問題で、一見すると、直接、豪ドル/円に関係が無いように見えるのですが、実は連動している、と言えます。

8月上旬の動きを見れば、『リスク回避』の動きは、『豪ドル/円の売り』になるということです。

それまでに積み上がった豪ドル/円のロング・ポジション(買い持ち)を、解消する動きが、一気に出てきた、ということです。

振り返ると、豪ドル/円の上昇は、2009年年初のころから始まっています。

つまり、過去2年半の時間をかけて買いポジションが積み上がっている、と考えるべきでしょう。

豪ドル/円の買いポジションがどのくらい積みあがっているのか、それ次第なのですが、今後は、すさまじいクラッシュになる可能性も想定しておくべきだ、と危機感を持っています。

本格的な調整局面(修正局面)に突入する場合は、8月上旬に起きた下落のスピードよりも、さらに速い可能性もあり得るからです。

目先、豪ドル/円はリバウンドしていますが、改めて、『リスク回避』の動きが顕在化する場合は、豪ドル/円のロング(買い持ち)は、すぐにでも、解消するべきと考えます。

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(2011年08月17日東京時間23:00記述)

第417回 【現状のマーケット考察】

お盆休みの真っ最中です。

休暇を取っている方々は、相場から離れて、ゆっくりとお休みください。

外国為替市場の「夏休み相場」は、通常は、ロンドンの休日である『レイト・サマー・ホリデー(今年8月29日月曜日)』までです。

「夏休み相場」はポジションを取らずに、何もしないという戦術も、外国為替市場で生き残るための大局的戦略です。

何もしなくとも、マーケットの様子をよく知っておくことは、当然ながら、大切です。

この8月のマーケットの動きを振り返り、マーケットが直面している問題を整理してみましょう。

オバマ大統領は8月2日、米政府の借金枠(債務上限)を引き上げることで与野党と合意、国債の債務不履行(デフォルト)を回避しました。

この騒動は、民主党と共和党の『政治ショー』であり、合意に至ることは誰もが予想していたのですが、それでもオバマ大統領の合意発表はマーケットを安心させました。

8月5日(金)には米雇用統計が発表されました。

失業率は若干改善、非農業部門雇用者数(NFP)も良好な数字だったため、マーケットはひと息ついた感じでした。

ところが、マーケット終了後に関係者を震撼させる出来事が起こりました。

スタンダード&プアーズ(S&P)が、米国債の格付けを【AAA】から【AA+】へ引き下げたのです。

S&Pは事前に予告していたので、マーケットでは、引き下げが行われる可能性が認識されていました。

しかし、心の奥底では、すぐに引き下げは行われないだろう、引き下げるとしても、段階を踏むだろうという「油断」がありました。

金曜日(8月5日)のマーケットには格下げが織り込まれていなかったので、週明けの月曜日(8月8日)の混乱が予想されました。

しかし、週末にG7が動きました。

フランスのサルコジ大統領が、G7の財務相・中央銀行総裁による緊急の電話会談を開くことを提案して、オバマ大統領も了承しました。

オバマ大統領は、米国債の格下げに動揺しないようにというメッセージを、世界に向けて発したかった。

サルコジ大統領やドイツのメルケル首相(つまり欧州)にとっては、米国債問題は喫緊の問題ではなく、債務危機がスペインとイタリアに波及したことを懸念していた。

米国の破たんが現実味を帯びるのは10年、20年も先の話ですが、欧州各国の破たんは目の前の話です。

ギリシャなどは、今日、明日に、破たんしてもおかしくない。

しかし、欧州には救う資金がなく、G7で話し合って米国の支援を取り付ける必要がありました。

マーケットではリスク回避の動きが鮮明になり、円やスイス・フランが買われて、円高が進行していました。

そこで、日本は、この緊急のG7電話会談で、欧米が協調して円高に対応して欲しいとアピールしたのですが、それはG7のテーマにはなり得ませんでした。

ただ、G7のような国際会議では、実態はどうあれ自国に向けて成果を誇ることが常なので、野田佳彦財務相はG7が緊密に連絡を取り、適切に協力するという認識で一致したという表現をしていますが、円高阻止のために協調介入を行う約束を取り付けたわけではありません。

今後、ドル/円が歴史的最安値(76.25)を更新するような場合には、財務省・日銀は単独介入を実施することになるのでしょう。

しかし、G7の支援が得られなければ、介入の効果が限定的なことが明らかなので、財務省・日銀は、介入を実施しにくい状況に追い込まれている、というのが現状です。

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(2011年8月14日日曜日東京時間22:00記述)

第416回 【一番大きな問題は、『欧州の不良債権問題』】

【一番大きな問題は、『欧州の不良債権問題』】
---『世界同時株安』や『リスク回避』が注目されるが・・・---


この週末に、米国債の格下げが実施されたことをきっかけに、NYダウが大きく下落し、世界同時株安が進んでいます。

その結果、『リスク回避』の動きが活発になっています。

『リスク回避』を別の言葉でいうと、「質への逃避」(Fly to quality)だ。

「質への逃避」(Fly to quality)の原理・原則を述べておきたい。

金融危機(信用不安)が起こると、「質への逃避」(Fly to quality)が起こる。

つまり、リスクのある(リスクの高い)金融資産を持っている場合は、リスクの無い(リスクのより低い)金融資産に、シフト(移動)しようとする。

株式に投資している資金を、債権へシフトすることは、その典型例だ。

株式に投資している資金を、債権へシフトするには、当然のことながら、まず、株式を売り、株式を資金化(現金化)しなければならない。

今週の世界中の株式市場を見渡せば、株式を現金化する動きが活発になっている、ということだ。


「質への逃避」(Fly to quality)の原理・原則を、外国為替取引にあてはめると、外国為替のポジションを持っている場合は、それをスクエア(=ポジション無し)にする、ということだ。

外国為替のポジションが無くなれば、当然ながら、為替リスクはゼロになる。

ポジションをスクエアにできない場合には、『持っている通貨を、よりリスクの少ない通貨に換える』ということになる。

つまり、ドルと円を、現時点で比較するならば、『ドルのリスクの方が高く、円のリスクの方が低い』。

※本当に、それが事実なのか、違うのか、という疑問はあるのだが、現在のマーケット(金融市場・外国為替市場)では、『ドルのリスクの方が高く、円のリスクの方が低い』ということが、コンセンサス(=マーケットでの共通認識)となっている。

だから、ドルを売って、円に換えることになる。


ドルと円の場合、『ドルのリスクの方が高く、円のリスクの方が低い』がコンセンサス。

ドルとユーロの場合を考えると、ユーロは、ギリシャ、アイルランドを筆頭に、財政危機問題を抱えており、その危機は、スペイン、イタリアに波及しようとしている。

だから、『米国債の格下げが実施されたドルのリスクと、財政危機問題が拡大しているユーロのリスクは、いい勝負だ(同じくらいだ)』が、現在のマーケットのコンセンサスなのだろう。

しかし、あくまでも個人的な考えだが、私は、『ユーロのリスクの方が、ドルのリスクよりも高い』と考えている。

つまり、私見だが、ドル、円、ユーロの三者を比較するならば、強い順に並べると、『円、ドル、ユーロ』となる。

円が最強の通貨であり、ユーロが最弱の通貨と考えている。


今週初、8月8日(月)の東京時間早朝に、G7(日米欧の先進7カ国)は、財務相・中央銀行総裁による緊急の電話協議を行ったが、本来、この電話協議は、欧州からの提言で行われた。

欧州は、自らの財政危機問題が主なテーマで、緊急のG7会議が必要だったのだ。

S&P(スタンダード&プアーズ)が米国債を格下げした問題や、日本の介入(ドル買い円売り介入)は、たまたま偶然に、同じタイミングで持ち上がったテーマに過ぎない。

※だから、8月8日(月)のG7の緊急の電話協議で、「米国債を格下げ」や「日本の介入」は、メイン・テーマではない、と、私は推測している。


現実のマーケット(今週の実際のマーケット)では、何もかもを、一緒くたにして、結論を『リスク・オフ(リスク回避)』にしている。

その発想(その結論)は、間違いではないだろう。

しかし、一番大きな問題は、イタリア、スペインに波及しようとしている、『欧州の不良債権問題』だ、と、私は、考えている。

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(2011年08月11日東京時間11:30記述)

第415回 【債務上限引き上げ問題の次は、米国債の格下げ問題】

14.3兆ドル(約1115兆円)の借金の法定限度額が限界に達したために、新たな借金枠を確保する米債務上限法が期限の8月2日に成立しました。

薄氷を踏む展開だったように見えますが、実は「引き上げる」ことを前提とした政治ショーに過ぎません。

富裕層への増税を目指した民主党と、大幅な赤字削減を主張してきた共和党が、それぞれの支持層に向けたパフォーマンスを行い、オバマ大統領は再選を目指して上限枠のかさ上げを目指したということです。

その落としどころが最低2兆1000億ドル引き上げるという内容でした。

債務上限引き上げ問題には決着がついたものの根源的な問題が残されました。

米国はこれほど大量の国債を発行して大丈夫なのかということです。

債務上限引き上げと引き替えに、今後10年間かけて2.5兆ドル程度の財政赤字を削減する約束をしていますが焼け石に水です。

個人的には米国は債務を返済できなくなると考えています。

ただしデフォルトが明確になるのは20年、30年後。

米国が現在の覇権国の地位を保つことができれば50年後かも知れません。

かなり先の話ではあるものの、その間ドルの信任は徐々に落ちていくでしょう。

そして、米格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)は8月5日、米国の長期信用格付けを最上級の「AAA」から「AAプラス」に1段階引き下げました。

S&Pは格下げについて、財政赤字削減計画が米国の債務の安定化には不十分との見方を反映した、と説明しています。

また、S&Pは、米国の新たな格付けの見通しを「ネガティブ」としており、今後1年から1年半の間にさらなる格下げが行われる可能性が高い、としました。

世界の債券市場はTボンド(米長期国債)を基準に成り立っています。

その基準が、格下げによってズレると、他国の債券の立ち位置も変わってくるはずです。

もしかすると、ドイツ債や円債には好影響を与えるかも知れませんが、具体的な波及効果は予測がつきません。

ただし、為替に関してはドル売り要因になることは間違いありません。

ドル/円への影響を考えると、その下げ幅が1円で済むのか、3円なのか、あるいはそれ以上なのかは、週明けの実際のマーケットを、よくよく注視するべきでしょう。

「米国債の格下げ」というテーマが、大きすぎる問題なので、事前に想定ができません。

米格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)が米国債の格下げを発表した一方で、米国の大手格付け機関であるムーディーズは、米国の格付け見通しを「ネガティブ(=今後、引き下げる可能性が高い)」としたものの、米国の最上級格付けを維持しました。

だから、ムーディーズが格下げを実施するまでは、『まだ、米国債の状況は、大きく変化していない』として、問題を先送りし、多くの市場参加者が何も行動しなければ、マーケット(金融市場)が静かである可能性も残っています。

しかし、それは、問題の先送りに過ぎず、『今のところS&Pだけであっても、米国債の格下げが実施された事実に注目するべきだ』と、世間がどう考えるのであれ、個人的には考えています。

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(2011年8月7日東京時間23:00記述)

第414回 【単独介入か? 協調介入か?】

3月の大震災直後に、ドル/円は、急激に下落し、歴史的最安値76.25を付けました。

この時は、大震災の直後だったので、日本に対する世界の同情が集まり、『G7による協調介入(ドル買い円売り)』が実施され、ドル/円は、85円台後半にまで戻しました。

昨年(2010年)9月に、日銀が単独介入した際には、世界中から批判を浴びたのですが、3月の時点では、大震災という自然災害に、G7は配慮し、協調した、ということでしょう。

しかし、『G7による協調介入(ドル買い円売り)』の実施後は、再びじわじわと円高に向かい、協調介入が実施された78円、79円台を割り込み、77円台で推移しました。

そして、今週月曜日(8月1日)のニューヨーク市場では、3月の76.25円にせまる76.29円を付けています。

週末の米国の債務の上限引き上げ大枠合意を受けて、8月1日(月)の東京市場では、一時円安に向かったものの、8月1日(月)に発表された米製造業の景況感(ISM製造業景況指数)が、事前予想よりも悪化したことを受けて円高が再燃、新値を更新しそうな勢いを見せました。

結果的には、8月1日(月)のドル/円の安値は76.29円ですから、76.25円に届かず、新値更新はできなかったのは既述の通りですが。

新値を更新すれば介入が行われるのだろう、と予測しています。

その時に、
『日銀の単独介入になるのか?』
それとも、
『G7による協調介入になるのか?』
が注目点です。

単独介入では一時的に需給を歪めるにとどまり、一時的に円安に向かわせることができたとしても、円高の大きな流れを変えることはできない、と考えます。

しかし、もう一度協調介入が行われた場合はどうでしょう?

G7には、ドルの価値を維持しようという強い意図があるというメッセージをマーケットが受け取り、流れが変わる可能性があると見ています。

そのため、介入の有無ではなく、『単独介入になるのか、協調介入になるのか』に注目しています。

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(2011年08月04日記述)

第413回 【円高メリットを消費者に還元せよ!】

先週のドル/円は、1ドル76円台の超円高水準を見ています。

本日(8月1日)の東京市場の朝10:00の時点では、米国の債務上限引き上げ問題で、共和党と民主党が、「上限引き上げの合意に達した」と発表したことから、78.00近辺まで急騰していますが、それでも、その大台の絶対値は80円を割り込み、70円台にあるのですから、引き続き、超円高水準と言って良いでしょう。

メディアは、円高になると海外旅行には安く行けるが、国内経済には悪影響を与えて給料が減るので総合的には良くないこと、と解説しています。

つまり、「円高悪者説」を唱えているわけですが、本当にそうでしょうか?

日本の産業構造の中の超大企業は、自動車、重電、家電に代表されるような輸出を主力とする製造業です。

発言力の強い彼らは声高に「円高悪者説」を主張しています。

それをメディアが代弁し、国民も円高になると給料が減ってしまうと、意図的かどうかはともかく、過去から、繰り返し、繰り返し刷り込みが行われています。

しかし、よく考えてください。

円高で困る日本国民はいません。

海外の製品や農作物や資源が安く買え、国民が蓄えた国富も円という通貨が強くなることにより、相対的にですが価値を増します。

その一方で、円高によって給料が減るとされる超大手企業に勤めている人は、日本の人口の5%にも満たないはずです。

それならば、一般消費者である大半の国民にとって、円高は良いことのはず。

身近な例を挙げればビール。

国産ビールは高いので100円程度で買える発泡酒を飲む人が増えています。

円高によって、発泡酒ではない本物のビールである米国製バドワイザーが、100円で(あるいはもっと安く、80円や60円で)飲めるのなら、そのほうが嬉しいのではないでしょうか?

もちろん、350mlで200円程度の国産ビールも、店頭に並んでいて構わないのですが、100円(あるいはもっと安い、80円や60円)の米国産ビールが買えるのならば、現在発泡酒を飲んでいる人は、安い本物のビールを選ぶのではないでしょうか?

「円高メリットを消費者に還元しない仕組み」に納得がいかないのです。

それは畜産物も農作物も、あるいは価格が高止まりしているガソリンも同じです。

※今月も、電力料金とガス料金が値上げされるそうですが、本来は、円高なのだから、値下げするのが常識です。

※福島原発事故をきかっけに、原子力発電の稼働が落ちて、火力発電の依存度が高くなったために、エネルギー原材料(原油、天然ガスなど)の輸入量が増えたこと、また、エネルギー原材料価格が上昇したことが原因でしょうが、本当に、円高差益が、エネルギー原材料の輸入増加と価格上昇で吸収されて、無くなってしまったのか、明確な説明がないので、わかりません。

※これだけ円高になったのだから、電力料金やガス料金は、値下げして当然だ、と、私は考えています。

※明確な説明がないと、
『今後、支払うべき賠償金に備えて、円高差益は電力会社が内部留保して、料金の値上げをしているのではないか?』
と、疑われても仕方がない、と考えます。

※東京電力は、今回の原発事故で、嘘ばかり発表しているので、信用できません。

話を元に戻しますが、国内産業を保護することだけが国益ではなく、円高を活かして、消費者に安く商品や一般生活用品を提供することも国益ではないでしょうか?

「円高=悪」と決めつけて、円高メリットを還元しない社会の仕組みに、国民は、もっと怒りを持つべきだと思っています。

(2011年8月1日東京時間10:15記述)



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