第355回 【政治的に演出された人民元高】

この週末に、カナダのトロントで主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催されました。

米国を中心とする先進各国から中国元(人民元)切り上げを要求されていた中国は、G20前に切り上げを決定して批判封じの手を打ちました。

実際に中国元(人民元)は徐々に切り上がっていますが、1日の値幅が0.5%という値幅制限がある上に、中国の中央銀行である人民銀行が相場維持のための介入を行っており、どの程度まで中国元高(人民元高)が進むのかは誰にもわかりません。

識者からは「切り上げ幅は1~2%に過ぎない」といったコメントも出ていますが、それは根拠のない思惑絡みの発言でしかなく、おそらく中国の通貨当局者自身も様子を見ながらそろそろと介入しているというのが実情ではないでしょうか。

しかしたとえ切り上げ幅が5%であっても、10%であろうとも、実体経済に与える影響は事実上ゼロでしょう。

なぜなら米国が主張し、マーケットが想定している切り上げ幅は50%~100%というレベルであり、具体的には基準値1ドル=6.8元が、1ドル=4元、1ドル=3元になるということです。

奇しくもマーケットの想定と米国の要求は一致しているわけですが、その背景は異なります。

米国は中国元(人民元)が強いことが米製品の価格競争力を奪い、米国民の雇用を不安定にしていると分析しており、中国元(人民元)を適正レベルまで引き上げることで解決すると考えています。

中国元高(人民元高)になれば中国の輸出が減って米国の輸出が増え、企業収益が改善し、米企業の雇用が増えるという論法ですが、それは大きな間違いです。

1985年のプラザ合意では、対米貿易黒字国だった日本がターゲットになり円高を呑まされました。

日本企業は円高に苦しみながらも強くなり、米国企業は円高の恩恵を受けて復活するどころか衰退の一途をたどりました。

為替の調整では米国の雇用は守れず、米国人自身が勤勉に働くしかないことは歴史が証明しています。

今回の切り上げ決定は政治的な側面が強いため、いずれまた米国を始め先進各国からは切り上げ要求の声があがり、中国政府はお約束のように拒否し、また綱引きが行われるはずです。

投資家としては、「中国元の切り上げが続く」という方向で備えるしかありません。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

(2010年06月28日東京時間10:50記述)

第354回 【先頭を走るか、最後尾を歩く】

昨年(2009年)を通して強かった通貨はユーロと豪ドルでした。
ユーロ/ドル、ユーロ/円あるいは豪ドル/ドル、豪ドル/円には旺盛な買い需要がありました。
その最大の要因は「キャリー・トレード」によるユーロ買い、豪ドル買いです。

キャリー・トレードは金利の高い通貨を買い金利の低い通貨を売って金利差を得る取引です。

円の低金利状態が長く続いていることから、国内の投資家にも「外貨投資をすると金利が受け取れる」ということが知れ渡りました。

FX取引でも「スワップ金利で儲ける」手法が話題になりました。

確かにキャリー・トレードは儲かりますが注意すべき点もあります。

それは(1)キャリー・トレードの拡大期にはうまくいくが、(2)キャリー・トレードの拡大期は永遠には続かない、ということです。

拡大期にどんどん膨張して投資家を呼び込んだキャリー・トレード市場は、いったん破裂すると風船が萎むように急速に縮小し、その過程で逃げ遅れた投資が損害を被ってしまいます。

過去の歴史を振り返れば、キャリー・トレードの拡大と縮小は何度も繰り返され、多数の犠牲者を出していることがわかるはずです。

ところが、私がいくら飽和状態が近いと警告しても、目先で儲かっている間は我も我もと参入してしまいました。
なぜそうした人たちは歴史に学ばないのかと歯がゆく思うほどです。

この話を「レミングの集団自殺」に例えると――。私は先頭を走っているレミングのつもりで、ある地点まで来たときに「この先に崖があるぞ」と何度も叫んだつもりです。

でも多くの投資家は警告を無視して突っ走ってしまいました。
中には儲かっているときに引き留めるなんておかしい、何か裏の意図があるのではないかと疑う人もいました。
そうしたへそ曲がりの人は別にして、多くの投資家は集団の中にいて前が見えない状態になり、警告されても「まだ大丈夫」と判断してしまったのでしょう。

"集団自殺"から助かる方法は2つしかありません。
(1)先頭を走って崖の存在をいち早く見つけて横に逃げる。
あるいは、
(2)崖が埋まったのを見届けてから対岸に渡る。

集団の中にいることが安全なように思えて、実は一番危険なのです。

第353回 【人民元の為替制度改革】

先週の木曜日(6月17日)のコラムに、【変動相場制度の自動調整機能には限界がある】をアップしました。

実は、『人民元の切り上げ問題』は、目先、先送りされているが、この問題は潜在的に存在し続けるということ、つまり、『時間の問題で、必ず、人民元の切り上げは実施される』ということ、そして、さらに『人民元が切り上げされても、最終的には、米中の貿易問題は解消しない』ということ、その二点を伝えたかったのです。

思ったよりも早く、中国政府が、動き出した印象です。
まあ、想定される範囲内に過ぎませんが・・・。

想定していたから、テーマに選んだのですが、早めに(先週のうちに)、テーマに挙げておいて良かった、と思っています。


以下本題です。

【人民元の為替制度改革】

6月19日(土)のW杯「日本VSオランダ」戦で、日本代表を応援したのですが、残念ながら、惜敗。
次のデンマーク戦も応援しようと思っています。

「日本VSオランダ」戦が終わり、何気なくインターネット上のニュースを見ると、「日本VSオランダ」戦の間に、以下のニュースがアップされていました。

『中国人民銀行(中央銀行)は19日、声明を発表し、「人民元の為替制度改革を一歩進め、(相場変動の)柔軟性をさらに高める」方針を発表した。
具体的にどのような措置を講じるかは明らかにしていない。』

この時点(6月19日)で、詳細は、発表されていませんが、6月21日(月)からのマーケット(相場)に、大いに影響を与えることになるだろう、と、気を引き締めています。

詳細は、今後のこの週末にも発表される可能性がある。
もちろん、来週(6月21日月曜日の週)のマーケットが始まってから発表される可能性もある、と考えていました。

十分に注意を払って、ニュースにも目を配り、それに、どう対応するべきか、考えよう、と構えていた次第です。


6月20日(日)になって、中国人民銀行(中央銀行)は、前日に公表した人民元制度改革の方針を解説する談話を発表した。

「1回限りの大幅な調整は行わない。基本的に安定した水準に保つことが改革の重要な部分だ」と述べ、変動幅を抑えながら徐々に切り上げていく方針を示した。

また、「単純にドルによって人民元相場を決めるべきではない」と、ユーロや円などほかの通貨の動きを反映させる方針も示した。

中国政府は、短時間での急激な変動を望まないので、
『時間をかけて、徐々に人民元が上昇するように調整をする(=介入をする)』
と明言していると解釈します。

今後の人民元は上昇することは明らかだが、単純に考えないほうがよさそうだ。
(しかし、なんだかんだ言っても、最終的には、人民元は上昇するので、それをどのように利用して、収益に実現していくのかが重要なことに、変わりはないのですが・・・)

(2010年6月21日東京時間01:30記述)

第352回 【変動相場制度の自動調整機能には限界がある】

今回は、ちょっと真面目なコンテンツ。拙著「外貨崩落」からの引用です。
『なぜ、この内容を引用したのか?』には、わけがあります。
 そのわけは、読者の皆様で自由に汲み取ってください。

(以下引用)
【変動相場制度の自動調整機能には限界がある】

国と国の間での貿易や金融取引の決済に使われる通貨のことを、「基軸通貨」とか「国際通貨」と言います。
「国際通貨制度」について、お話ししましょう。
歴史的に見ると、国際通貨制度の基準になったのは「金(Gold)」です。
金の保有を通貨の価値基準とする制度を「金本位制」と言います。金を多く備蓄した経済力の強い国の通貨が、基軸通貨として使われてきました。
 19世紀にはポンド(GBP)が、20世紀になるとドル(USD)が、基軸通貨として使われるようになります。
 金本位制のもとでは、各国の通貨が、金と一定比率で交換されます。つまり、金を介在させる「固定相場制度」です。
金本位制での固定相場制度は、通貨の裏付けとなる金の備蓄が前提です。
ところが、20世紀後半になると、財政難から英国や米国は、金本位制を維持するだけの金を保有することができなくなりました。
 その結果、金本位制での固定相場制度から、現在の「変動相場制度」に移行します。
 変動相場制では、通貨の交換レート、つまり外国為替レートが、マーケット(外国為替市場)の売買によって決まります。
 変動相場制とは、マーケットで取引される通貨ペア(二種類の通貨)の交換比率(為替レート)を、一定比率に固定せずに、マーケットの需要と供給によって、自由に変動させる制度(システム)です。

 変動相場制が採択され、制度が移行した当時、変動相場制は各国間の貿易不均衡を自動的に調整する機能を持つ、と考えられていました。
 たとえば、米国の対日貿易赤字が拡大すると、それは、日本の輸出額が増大していることですから、日本からの「ドル(USD)を売って円(JPY)を買う」といったニーズが強くなります。
「ドル売り円買い」が増えるのですから、結果として「ドル安円高」の圧力が強くなって、ドル/円(USD/JPY)の為替レートが下落します。
そして、「ドル安」になれば、米国製品の輸出が増加し、「円高」によって日本製品の輸出が減少して、米国の対日貿易赤字は解消されるだろう、といった理屈です。
 しかし、現実の世界経済では、こうした自動調整機能はうまく働きませんでした。
 つまり、各国通貨間の為替レートは、必ずしも、貿易収支を均衡させる機能を果たしていない、ということです。
 各国通貨間の金利差が外国為替相場に大きな影響を与えるなど、さまざまな為替変動要因が複雑に働いているため、為替レートが予想以上に不安定になることがあります。
 しかし、そういった欠点を抱えながらも、主要通貨間の変動相場制は、現在まで維持されています。
もっとも、現在のところは、それに代わる、もっとよいシステムが考え出されていないだけで、今後、考え出されるのかもしれませんが......。

第351回  【自分だけが上手くいくなど、そうそうは起こらない】【深刻さを増す欧州危機】

欧州危機に関連した話題は過去に何度も取り上げてきました。

「ギリシャの財政危機」という表現を「もう見飽きた」と感じる投資家もいるでしょうが、現実は飽きるわけにはいかないほど深刻さを増しています。

PIIGSとひとくくりにされる『破たん予備軍』のポルトガルがメディアで頻繁に取り上げられるようになったのも「危機広がり」を示しています。

世界的な金融危機の発端は米国のサブプライムローン問題という国内の不良債権問題でした。

しかし、米国金融機関に加え欧州の主要金融機関も深く関わっていたサブプライム問題の影響は米国内にとどまらず、南欧、東欧、ロシア、中近東にも波及し、膨大な不良債権を生み出しました。

欧州が負った深い傷の一端を垣間見せたのが2009年11月のドバイショックです。

ところが、余りに突然の出来事に投資家は右往左往するだけで本質を見抜くことができず、不動産バブルに沸いていたドバイ固有の問題と片付けてしまいました。

ドバイショックが沈静化に向かうにつれて欧州投資(つまりユーロ投資)を再開させる投資家も目立ち始めました。

現在も「ユーロが十分に安くなって値ごろ感が出てきた」という理由で買っている投資家がいます。

しかし、欧州金融機関の巨額投資が紙くずになっている現実を見抜くべきです。

この問題は欧州全体を巻き込んだ金融危機に発展する可能性があります。

それは日本が血を流した不良債権処理、米国が巨額の資金を注ぎ込んだサブプライムローン問題処理に匹敵する打撃を欧州に与えることになる可能性があるのです。

この問題の備えとして個々の投資家ができることはただ一つ。

ユーロを値ごろ感で買わないことです。
今、ユーロに投資するのは「愚の極み」だと考えます。

問題が解決して、投資できる状態になったら、そうすれば良いのです。

それでは、チャンスを逃してしまう、と考える人がいるのは十分に理解します。
しかし、自分だけが上手くいくこと(自分だけが儲かること)など、そうそうは起こらないことも理解すべきです。

利益を得やすいマーケットに投資をする(誰でも儲かりやすい状態のときに投資をする)、それがマーケットで上手く生き残る術(すべ)です。

『逆もまた真なり』です。
利益を出し難いマーケットに、わざわざ投資をすれば、生き残れなくて当然です。
(2010年06月13日記述)

第350回 『ニュースはこれから出る、(のではないか?)』と、考えています

ユーロの下落が激しいのですが、ギリシャの財政問題だけが原因ではありません。

『ギリシャの財政問題は、きっかけに過ぎないのではないか?』と、早くから考えていました。(そういった考え方は、さまざまなコラムで、たびたび記述しました)

ここにきて、ポーランドの不良債権問題が浮上してきました。

そんなもの(ポーランドの不良債権や、東欧の他の国々の不良債権)は、昨年にも、一昨年にも、それ以前からあったはずなのですが、米国発のサブプライム・ローン問題で、東欧の不良債権は、さらに評価が悪化していた(はずだ)。

しかし、隠してきたので、問題にならなかった。
(表面化していないから、誰も知らないだけ。問題は存続している。)

『米国発の金融不安が収まれば、回復するのではないか・・・』
と、当事者たちは、甘い期待をして、隠し続けた(のだろう)。

ところが、ギリシャ発の財政問題が嚆矢(こうし)となり、順次、欧州各国の財政問題が浮上してきた。

いよいよ、隠しきれなくなってきた。
(今、表面化しないと、誰も助けてくれなくなるかもしれない、といった危機感が、当事者にはあるはずだ。)

具体的に換言すれば、次のように考えています。

『ドイツ、フランスや英国・スイスなどの大手金融機関が保有している東欧・ロシア方面の不良債権が、欧州の金融不安を引き起こす可能性を想定する必要があるのではないか?』

つまり、
『(こういった)ニュースが、これから出る、(のではないか?)』
ということです。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

個人的には、ユーロ/ドル下落の理由は、ギリシャ問題だけではない、と、早い段階で予測していました。

だから、必ず、新たなニュースがこれから出るだろう、と考えていました。

しかし、それは(そういった考え方は)、個人的な思惑に過ぎません。


それ(新たなニュース)は、すでに噂になっているスペインやポルトガルの問題が、あるいは、イタリアも噂に上っていますが、問題点がもっと具体的になることなのかもしれない、とも考え、それをコメントしたり、記述をしました。

こういったことが当たると(本当に、新しいニュースが出ると)、予言が当たったように感じる人が多いのですが、こういったことは、予言ではなく、過去の経験に則っているだけのことです。

こういった時には、それに見合う内容のニュースが出てくるものです。

次に出るニュースの内容を言い当てるのならば、それは予言でしょう。

私は、次に出るニュースの内容は知らないけれども、ユーロにとって、不都合なニュース(比較的重要な内容)が、これから出る可能性が高い、と予測していただけです。

まだ、本格的なニュースとは言い難いと考えています。

だから、引き続き、
『ニュースはこれから出る、(のではないか?)』
と、考えている次第です。

(2010年6月10日東京時間01:30記述)

第349回 【菅直人新総理誕生で、ドル/円は、売りか?買いか?】

辞任表明した鳩山総理の後を受けて行われた民主党の代表選挙により、「菅直人」新代表が選出され、次期総理が決まりました。

しかし、過去の経験に照らしても日本の政治の変化が外国為替相場に大きな影響を与えることはないだろう、と考えています。

なぜならマーケットは技術力に優れた企業と勤勉な従業員で構成される「経済大国日本」を評価しているからであり、多少の政治の揺らぎがあっても日本の価値は変わらないと判断しているからです。

ただ「大きな影響を与えることはない」というのは長期的視点に立った場合。

短期的には楽観視しないほうが良いでしょう。

今の日本は政治の混乱に加えて景気の停滞、緊迫する北朝鮮問題などさまざまな問題に囲まれているからです。

例えば北朝鮮問題。大方の見方どおり戦争に発展する可能性は低いのでしょうが、偶発的な衝突が起れば日本に投資されている資金はリスク回避の方向へ流れ、外国為替相場は円安となり株式市場では売り圧力が高まります。

注意するに越したことはありません。

日本は内憂外患の状態ですが、グローバルな視点で見てみると日本以上に瓦解寸前の状態に追い込まれているのがギリシャ問題に揺れる欧州です。

ギリシャのパパンドレウ首相が欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請して再生に向けた努力をアピールしても、欧州中央銀行関係者や欧州政府高官が楽観的な見通しを語ってもユーロ売りは止まりません。

なぜならギリシャ問題はたまたま浮上した欧州全体の膨大な不良債権の一部ということに投資家が気づいているからです。

欧州の大手金融機関は財政危機が噂されるPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)に加えて東ヨーロッパ諸国にも莫大な資金を貸し込み、とても公表できない量の不良債権を抱え込んでいるはずです。

金融危機の震源地となり一時期は瀕死状態にあった米国はサブプライムローン問題に端を発した不良債権の膿を、"治療手段"の良し悪しは別にしてほぼ出し切りました。

雇用情勢や住宅販売は回復していませんが、それでも膿を出し切れない欧州に比べると相対的に「まし」に見えてしまいます。

日本は冒頭でふれたように政治が混乱し景気回復が遅れ地政学的リスクにさらされています。

中国は真っ先に景気回復軌道に乗ったものの、それは(中国にとっては歓迎できない)人民元切り上げ圧力を高める方向に働いています。

一時期早期の切り上げを求めていた米国は、あまりに欧州の状況が悪いことから、経済の牽引車となっている中国の景気の腰を折らないように要求をトーンダウンさせていますが、いずれ再び圧力をかけてくるでしょう。

これらの状況を外国為替市場に当てはめてみると、まずユーロを始めとする欧州通貨は買える状態ではありません。

ドル/円は方向感がつかめない状態です。

ユーロの避難通貨として円が買われる場面があるでしょうが、ではドル/円でも「ドル売り円買い」なのかと問われると答えに窮してしまいます。

でも、わからなければ、わからないで、それで良いと考えています。

無理に答えを探す必要はなく、わからないのであれば素直にドル/円からは手を引いて、欧州通貨を売れば良い、と考えるからです。
(2010年6月7日記述)

第348回 【金利差を狙った取引は、必ず破綻する】

豪ドルは、対ドル、対円で、2008年に大暴落を起こしました。

豪ドルは、その大暴落の以降、2008年後半から2009年、2010年前半にかけて、V字型急回復をとげています。

その豪ドルの下落が、今年(2010年)のゴールデンウィーク(GW)を過ぎたあたりから目立つようになりました。

このケースは、豪ドル単独の下落ではなく、昨年(2009年)の12月ごろから始まったユーロ/ドル、ユーロ/円の下落に歩調を合わせていると解釈すべきです。

豪ドルの上昇と下落の原因は、「キャリー・トレード」にあります。

米国は景気を回復させるために、米ドル金利をゼロに誘導し、通貨の供給量であるマネーサプライを劇的に増やしました。

それは景気を刺激すると共にドル余り現象を引き起こし、余ったドルは投資先を求めて、ユーロ、豪ドル、ゴールド(金)、原油などに向かい価格を急上昇させました。

ところが、ギリシャ危機の発覚によってユーロの信頼が失われ、投資資金の引き上げと代替通貨への投資が始まりました。

代替通貨として選ばれたのは比較的経済が安定していて金利が高く、しかも資源国通貨という顔を持つ豪ドルです。

これがV字型回復の原動力となったのですが、「キャリー・トレード」はいずれ破たんすることは明らかです。

※キャリー・トレードは、大昔からあった投資手法であり、「キャリー・トレード」の拡大期には利益になるが、その縮小期になると、加速度的にそのアンワインド(巻き戻し・解消)が起こる。それは、過去の歴史が物語っている。

今回の豪ドルのケースも、2009年、2010年の時点で、何度か下落場面がありましたが、当時は豪ドルに対する「キャリー・トレード」が拡大していたため下落しては持ち直し、高値を更新する場面もありました。

しかし、このGW後に本格的な「キャリー・トレード」のアンワインド(巻き戻し・解消)が始まったという認識に立てば、今後豪ドルが高値を抜くことはなく、ユーロのような大幅な下落が続く恐れがあることに気がつくはずです。

また他の通貨が買われることも考えにくい状況です。

なぜならドルに対する代替通貨がユーロで、ユーロが下落を始めてからのユーロに対する代替通貨が豪ドルでしたが、豪ドルに対する代替通貨は存在しないからです。

ラストリゾートからの資金の逃げ場はなく、結局ドルに戻ることになるでしょう。

そこでもし値ごろ感で豪ドルに投資しているのであれば、「キャリー・トレード」のアンワインド(巻き戻し・解消)が続くことに対して危機感を持ち、早めに回収してリスクをゼロにするべきです。

その方法はただ一つ、ポジションをロングでもショートでもない状態、つまりスクエアにするしかありません。

「キャリー・トレード」のアンワインド(巻き戻し・解消)を利用して利益を追及するのならば、豪ドルのショート(売り持ち)以外に、他の手段はありません。
(2010年6月3日記述)



 >   >  2010年06月