第323回 「米国公定歩合引き上げ」をどう考えるか?

2月18日(木)、米国の中央銀行システムであるFRBは、0.50%だった公定歩合を0.25%引き上げ、0.75%とした。
米国の公定歩合の引き上げは、『米国の出口戦略』の開始を意味する。

ここで、まず、ドル金利の引き下げられた過程を振り返ってみよう。
サブプライム・ローン問題に端を発し、リーマン・ブラザースを破綻に追い込んだ金融危機(=不良債権問題・信用不安問題)は、米国の大手金融機関に公的資金(税金)を注入する形で救済する道を選ばせた。

この救済措置にしても、大手金融機関は救済したが、中小の金融機関は驚くほど倒産した(=中小は救済しなかった)。

この間、米国は不況に陥り、金融機関の救済と景気低迷に対する一石二鳥のカンフルとして、ドル金利を急激に下げた。
断続的にドル金利は引き下げられたが、その効果には即効性がなく、結果的にFRBは、事実上の「ゼロ金利政策」を採択するに至った。

金融機関、すなわち民間企業を税金で救済することは、本来は許されない行為であり、「ゼロ金利政策」は、緊急避難的な特殊な政策である。

日本の「ゼロ金利政策(あるいは、超低金利政策)」が、長きにわたり実施されていることで、いつの間にか、日本ではそれが当たり前のようになっている。
しかし、「ゼロ金利政策」は、緊急避難的な本当に特殊な政策である。
日本の常識が、世界の常識ではないことを、是非、認識してほしい。

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FRBが、『米国の出口戦略』を実行するのならば、『いずれ、公定歩合引き上げを実施するだろう』、ということは、誰にでも予想可能だ。
しかし、現在の米国の金融政策は、FF金利(フェド・ファンド・レート)と呼ばれる短期市場金利を操作することで実行されている。
そして、通常、FF金利(フェド・ファンド・レート)よりも公定歩合の方が、金利が高い。
そのあたりのバランス(つまり、FF金利と公定歩合の金利差を適正にする)を考えて、まず、第一歩として、FRBは公定歩合をいじった、と考える。
だから、FRBはドル金利の引き上げを視野に入れている、ということだ。

オフィシャルには、FRBは、(あるいは、非公式の会見でもFRB理事たちは)
「今回の公定歩合の引き上げ、金融政策の変更を意味するものではない」
としている。

もちろん、現在のFRBの金融政策は、FF金利で実行されているのだから、公定歩合は関係ない。

また、ドル金利(FF金利)の引き上げが、すぐに実施されることもないのだろう。
(米国雇用統計などの経済指標を見れば、米国の景気は回復していないから)
バーナンキFRB議長も、そういった趣旨の発言を繰り返している。

しかしながら、なぜ、公定歩合を引き上げたのかといえば、いずれ、FF金利を引き上げる際のことを想定しているからに決まっている。
(そうでないのならば、いらないものならば、公定歩合など廃止すべきだ)

米国『出口戦略』に関しては、市場の予想よりも、その開始(実行)が速かった、ということだろう。だから、今回の公定歩合引き上げは、市場のサプライズ(予想外)であった。

米国公定歩合だけが材料になる訳ではないので、外国為替市場に与える影響は、今のところ限定的と考えるが、潜在的なドル金利の上昇圧力は強くなった、と考える必要がある。

第322回 「休むこともできる」が個人投資家の最大の武器

外国為替市場の材料の扱い方

FX取引を行う時、「材料」によって、「買いポジションを建てよう」「売りポジションで戦おう」と判断している投資家は多いでしょう。

例えば、ドル/円を売買する時、米国の景気が劇的に回復していることを示す指標のような「良い材料」が出てくれば、通常はドルを買う(ドル/円を買う)という判断をするのではないでしょうか?

反対に、米国の経済指標で、米景気の悪化を示すような「悪い材料」が出てくれば、通常はドルを売る(ドル/円を売る)という判断をするのではないでしょうか?

現実の相場では、売り買いの判断が難しい材料も多い

でも現実には、売りなのか、買いなのかを、判断しやすい材料ばかりが出てくるわけではありません。

ギリシャ危機に端を発したユーロ加盟国の財政危機。
突然、ギリシャ問題が明るみに出た時はユーロ売りの材料と思えましたが、その後、ユーロ諸国が協調してギリシャを支援するというニュースが伝えられました。
これは「ユーロ買いの材料」のように見えます。
ところが具体的な支援策がなかなか発表にならなかったので、「やはりユーロは売り」と右往左往しています。

難しい材料を無理に解釈しない

このように判断に迷う材料が出てきた時、あるいは相場の方向感が定まらず難しい相場の時、無理な解釈、自分の願望を絡めた解釈をしてポジションを取ってはいけません。

個人投資家が取れる策には「ポジションを持たない」ということもあります。
つまりFX取引から一時撤退することも可能なのです。


「休むこともできる」が個人投資家の最大の武器

プロのディーラーであれば(FX市場を職業としているならば)、どんなに難しい相場の時でも、顧客からリクエストのあった通貨を仕事として売買しなければなりません。

しかし、個人投資家は自由です。
取引をする、一休みする、という判断は自分自身で下すことができます。
参加も撤退も自由ということは、プロも同じ立場で参加している外国為替市場において、個人投資家が戦うための最大の武器と言って良いでしょう。

「相場がわからないときはやらない」「相場が難しい時は一休みする」ということも、ぜひ心にとめておくことが大切だと思います。

(2010年2月22日記述)

第321回 相場の綾(あや)は、狙わない方が良い

昨年(2009年)のユーロ/ドルは、概して上昇だった。
チャートを見ると、サポート・ラインに従って、ユーロ/ドルが上昇した様子がよく分かる。

ところが、昨年(2009年)の12月に、それまでのサポート・ラインを下に割り込み、「ユーロ売りドル買い」のシグナルを発した。
その後は、「ユーロ売りドル買い」のシグナル通りに下落している。

ユーロ売りの材料・理由は、ギリシャ問題に象徴されるユーロに対する不安だった、と考えます。

昨年(2009年)のユーロ/ドル高値が1.5150アラウンドであったことを思い起こすと、このところの安値は1.35台前半だから、ユーロ/ドルの下落は、目先、かなり良い水準まで値を下げたことも事実です。

しかし、現状、ユーロ/ドルの下落は、まだ収まっていない可能性があります。


ここから、何かするとすれば、流れに従い、まだ、「ユーロ売りドル買い」だと考えます。
それでも、ストップ・ロス・オーダーを使って、不測の値動きに備えながらポジションを取るべき、と考えます。

ユーロ/ドルの1.42台を割り込んでからの下落スピードは、かなり急だったことを考えると、そのポジション調整の反発があるだろう、と想像がつきます。
現に、目先のマーケットを見れば、今週にも、そういった値動きがあります。

しかし、それでも、現時点では、そういった「調整の反発(=綾戻し)」を狙っての「ユーロ買いドル売り」は慎むべきだ、と考えます。

ギリシャ問題に端を発したユーロ不安は、ポルトガルやスペインに飛び火する可能性があるし、すでに、それ(ポルトガルやスペイン)以外の国の名前も挙がってきている。

そういった不安心理は、広がりだすと、とどまることを知らないように、信じられないほどの状況になる場合がある。

不安心理が、不安心理を呼び込むスパイラルな状況のことだ。

現在の状況は、ユーロにとって、非常に悲観的な状況ではあるが、まだ、スパイラルな状況にはなっていない。
(単に、悪いものが悪い、といったフラットな状況で、スパイラルではない)

このところ、忘れられていたような「ドバイ・ショック」も、何も改善されていない。

また、東ヨーロッパに投資された資産の不良化も、まだクローズアップされていない。

こういった問題点が、再燃する可能性がある以上は、「値ごろ感」での「ユーロ買いドル売り」は、止めた方が良い、と考えます。

繰り返すが、いずれ、「調整の反発(=綾戻し)」が、必ずある、と判断するが、それ(綾戻し)を狙っての「ユーロ買いドル売り」は、やらない方が良い。

どこで「調整の反発(=綾戻し)」が始まるのか、つまり、どの水準で「調整の反発(=綾戻し)」が始まるのか、いつ始まるのか、わからないからだ。

「値ごろ感」で買って、綾(反発)を待っても、買った水準より500ポイント下がってから、「調整の反発(=綾戻し)」が始まるのかもしれない。

だから、『それでも、どうしても、綾を狙いたい』のならば、せめて、レジスタンス・ラインを調べて、それ(レジスタンス・ライン)を明瞭に上に抜けてから、「ユーロ買いドル売り」をエントリーするべきだ、と考えます。

(2010年2月18日東京時間9:00記述)

第320回 チャートは、期間の長いものから見る

通貨ペアの値動きを記録した「為替チャート」には月足、週足、日足、1時間足、10分足、5分足など期間の長短によっていろいろな種類があります。

月足は1カ月の値動きを、週足は1週間の値動きを、日足は1日の値動きを1本のローソク足で表しています。

そのため月足のような期間の長いチャートのほうがトレンドを捉えやすく、日足のような期間の短いチャートは日々の値動きを捉えやすくなります。

ではFX取引をするときに見るべきチャートはどれでしょう?

必要なものは月足チャート、週足チャート、日足チャートチャートです。
実際の売買時に必要になる1時間足チャートを加えてもいいでしょう。

見る順番は必ず長い期間から短い期間、つまり月足→週足→日足です。
最初に月足を見て、大きなトレンドをつかむことが大切なのです。

逆に5分足、10分足のようなごく短いチャートは、実際に取引をする際には必要ない、と考えます。
「見なくても良い」ではなくて、「見ないほうがいい」と個人的には思っています。

投資家の中には5分足、10分足を見たほうが、トレードが上手くいくという人もいるでしょう。
そういう方々のスタイルを否定するつもりはありませんので、あくまでも私自身の経験則で、そのように判断しています。
ただし、多くの個人投資家の方々にとって、有益だと考えるので、自説を曲げる気持ちはみじんほどにもありませんが。

一般論では1時間チャートより短いチャートを見るのは有害だと思います。

為替相場では5分、10分で20銭、30銭上がったり下がったりすることはざらにあります。
そんな時に短いチャートに目を奪われていると、トレンドが変わったと思い込んだり、永遠に上がり続けるような錯覚に陥りがちです。
でも冷静に考えてみればわずか5分、10分の値動きがトレンドを作ることはあり得ません。でも短いチャートに囚われているとそう思えてしまうものです。

小さいことに心を奪われて全体を見通すことができない様子を「木を見て森を見ず」と言いますが、5分足、10分足に心を奪われることは、「木を見て」どころか「顕微鏡で葉っぱの葉緑素を見るに等しい」と考えます。
顕微鏡で細胞を見ても、森全体の形は絶対にわかりません。

期間の長いチャートを見て、全体の流れをつかむことが、相場で生き残るコツだ、と考えています。

第319回 G7

今回のG7に関しては以下の通り。

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●イカルウィット(カナダ)で開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、6日午後(日本時間7日未明)、2日間の日程を終えた。

●新興国を含むG20(20カ国・地域)の台頭で、存在意義が薄れているG7の議論を活性化するため、「非公式会合」化を検討した。

●オバマ米政権が打ち出した金融規制強化策のほか、バブルが懸念される中国経済、世界的な株安の原因となっているギリシャなどの欧州の財政危機についても今回のG7で議論した。

●しかし、各国の合意内容を文書化した共同声明は、1997年9月の香港G7以来、12年半ぶりに出さなかった。

●その代わりに、カナダのフレアティ財務相が議長総括を行い、閉幕となった。

●世界経済の回復基調を確実にするため、財政に配慮しながら景気対策を継続することで合意した。

●米政府が打ち出した包括的な金融規制強化策については、強化の方向性について基本的に一致した。

●中国の人民元については、前回G7(昨年10月)の表現を踏襲し、柔軟な為替政策が望ましいとの考えを示した。

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G7の形骸化は、それが指摘されて久しい。

このところのG7の共同声明では、世界経済を安定させるために「必要なあらゆる行動をとる」といった抽象的な内容だった。
具体性に欠けるので、何をどうするのか、何のことを言っているのか、まったく分からない。

それでも、今回のように(イカルウィットG7のように)、共同声明すら出ないよりは、過去のG7は、まだ、ましだったのかも知れない。

何を言っているのか分からない共同声明も困ったものだが、共同声明すら出ないのなら、集まる意義が無い。

それなら集まらなくても良いではないか!(各国の税金の無駄使いに過ぎない!)

G7が役に立たなくなった、その大きな理由は、かつて会議の主役だった米国の力が弱くなっていることがあげられます。

G7の形骸化は、厳然たる事実だ、と考えます。

また世界経済のグローバル化によって、G7だけで合意しても、新興国を巻き込まないと、実質的な効果が伴わないという問題も生じています。

そこでG20が開催されるようになったのですが、G20は、「船頭多くして船山に上る」のたとえどおり方向感を失い、落としどころが無い状態に映ります。

先進国と発展途上国では、その利害に対立があります。
簡単に調整することは不可能でしょう。
強引に押し切ることは、横暴であり、結論は、合意不能でしょう。

何も決まらなかったG7を見たマーケットは、「失望感」を感じることになります。

その場合には(G7に対する失望感がある場合は)、結局のところ、相場を加速させる方向に動くことになりがちです。(何も変わっていないから)

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(2010年02月08日東京時間01:25記述)

第318回 テレビのコメント

歯に衣着せずに述べる。

最近はテレビで、マーケット情報を見ることが多い。
この手の番組は、朝9時ころ、日中、平日の夜11時過ぎ、と、たびたび放送されている。

コメンテーターの意見や情報に対する判断を聞いていて、腹が立つことが多い。

ことに、株が安くなると、「円高」が原因で株が売られた、と言い、株が上昇すると、「円安」を好感して、株が買われた、と説明している。

為替は、上下動を繰り返しているのだから、それに連動して株式が動いている訳ではあるまい。

他に、説明のしようが無いので、そのように言っているだけ。

日本の株式相場は、米国株式の「写真相場」で、米株が上昇したら、翌日の日本株は上昇し、米株が下落したら、翌日の日本株は下落する。

為替は、それほどに影響があるわけではない。

(日本の投資家に主体性が無く、米株ばかりを見ているのは、それはそれでだらしがない、ふがいない、と考えるが、今は、『テレビのコメント』がテーマなので、そのことは、また別に機会があれば、言及します。)


若いころ、私が20代後半のころや、30代のころ、この手のテレビを見て、
『テレビで言っているのだから、きっと正しいに違いない』
『テレビに出演している人は、それなりの経験を積んで、知識もあるに違いない』
と考えていた。

そのころは、私も経験が浅く、とてもテレビに出ている人たちにモノ申す立場ではなかった。


今、テレビに出ている人たちのコメントを聞いていて、
『全部の人がそうだとは言わないが、多くの人が、為替の経験が無い』
『経験無く、また聞き(伝聞)で、コメントしている』
と、断定できる。

困ったものだ・・・・。
それでは、事実上のウソではないか!
知らずして、経験も無くして、そんなこと言っていいのか?!

『為替を知らずに、多くの人がそう言っているから、コンセンサスがそうだから、といった根拠だけで、彼らは「円高」なら「株安」、「円安」なら「株高」とコメントしている』

こういったことが、テレビで流されているのだから、テレビの情報は、疑ってかかる必要がある。

腹も立つし、困ったものだ。

投資をするには、冷徹な現状分析が重要なのだが、テレビの情報で、それがかき乱されている。(場合によっては、情報操作に近いものを感じる)

賢明な読者の皆様においては、テレビの情報を、鵜呑みにされないように、切に願い、望みます。

(2010年02月04日)

第317回 敵を知り己を知れば百戦危うからず

FX投資のスタイルに決まりはありません。
100人の投資家がいれば100様のスタイルがあります。
自分のスタイルと、他人のスタイルが違っていても、それはまったく構いません。
スタイルに決まりはないけれど、「ダメなスタイル」は存在します。

そこで「自分の投資スタイルを事前に見極める」ことは基本中の基本。
とはいえ投資を続けていく中で気がつくことも多いので、平素から自分を見つめ、徐々に自分の性格にあった投資スタイルを自分の力で構築していくことが大切です。

投資に対するスタイルを二つに分けると、まず攻撃的に仕掛けて大きな儲けを狙うスタイルがあります。
その反対側には徹底的に守りを固め慎重に仕掛け損失を抑えようとするスタイルがあります。
この2つのスタイルを両端だとすれば、その中間にグラデーションのようにいろいろな階調のスタイルがあるわけです。

自分の性格を見極めないで、攻撃的な人が無理に守りを固めようとしたり、守りの人が攻撃ばかりしていても、投資が窮屈になり成果も得られません。

投資スタイルは普段の性格とは異なることもある

また投資のスタイルは普段の性格や、その人の見た目とも異なります。
日常生活では大人しい性格の人が、投資ではがんがん攻めるスタイルということもあります。
見た目は筋骨隆々の男性が、投資では細かく気を配る守りのスタイルだったりすることもあります。
その見極めは、(自分のことなのに)とても難しいものです。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」

中国の兵法家(戦の仕方のプロ)である孫子の言葉に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というものがあります。

FXも戦いです。
敵はマーケットであり、儲けたいという欲望であり、負けたらどうしようという恐怖心です。

敵を知ることは相場のこと、相場のクセ、あるいはファンダメンタルズ的なこと......。
そして己を知るというのが、自分の性格と投資スタイルを見極めるということにつながります。

補足しますが、『百戦危うからず』という意味は、百戦百勝できるということではありません。
百回戦ううちには負けもあるかも知れないけれど、致命傷を受けることはないということです。だから『危うからず』です。
FX投資にも通じるとても含蓄のある言葉だと思います。



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