第150回 日本円を持っていなくとも「円キャリー・トレード」は誰でもできる

円キャリー・トレードは、円金利が突出して低い(低かった)ために、低金利の円資金を借りて、その円資金を高金利通貨に交換して(つまり、外国為替取引をして)、高い利息を得ることで、利益を得ようとする行為です。

 円キャリー・トレードのお話をすると、日本人は、このように考えます。
『自分の持っている円資金を銀行に円預金として預けても、利息がほとんど付かない。けれど、その円資金を外貨に交換して預ければ、つまり、外貨預金などに外貨投資をすれば利息が付く』と。
 それは、間違いではありません。
 では、円資金を持っていなければ、円キャリー・トレードはできないのでしょうか。
 
 自分の国の通貨を対象にすると、どうしても自分の保有している『お金』をイメージしてしまいますが、円もドルも自国通貨ではない人の立場に立ってみてください。つまり、日本人でもアメリカ人でもない立場です。
 日本と米国以外なら、どこの国でもかまわないのですが、たとえば、ロシア人の立場で考えてみましょう。
ロシアの通貨はロシアン・ルーブル(RUB)です。ですから、その人は円も持っていませんし、ドルも持っていません。
そのロシア人が円金利の低いことに目を付けて、円キャリー・トレードをしようと考えます。
その人は、円資金を持っていません。しかし、持っていなければ、銀行で借りてくればよいのです。円のローン(借金)は、日本人でなければできないわけではありません。
 たとえば、そのロシア人が銀行に行って、100万円を1年間、0・5%の金利で借りてきたとします。
 この100万円をドルに交換します。ドル/円(USD/JPY)の為替レートを、1ドル=100・00円とすると、受け取り額は1万ドルです。
 この1万ドルを銀行にドル預金します。ドル金利は2・25%ですから、1年後に元利合計10,225ドルを受け取ります。
 1ドル=100・00円のまま変わらないとすると、
(10,225ドル)×(100・00)=1,022,500円
 となります。 
100万円を1年間0・5%の金利で借りていますから、元金の100万円と、利息の5000円の合計1,005,000円を銀行に返済します。
 すると、17,500円が手元に残ります。
 
もちろん、ドル/円の為替レートは変動していますし、外国為替取引をする場合には、手数料がかかります。
円資金を借りるときにも、ドル預金をするときにも、実際には手数料がかかりますから、現実の取引では、このように、まるまる17,500円を利益として受け取れるわけではありません。
 ここで言いたいのは、日本人やアメリカ人でなくても、どこの国の人でも、『同じことができる』ということです。
 ロシア人を例に挙げましたが、ロシア人でなく、イギリス人でも、フランス人でも、インド人でも、中国人でも、どこの国の人でもまったく同じです。
そして、もちろん、日本人でもアメリカ人でも、何ら変わりがないということです。

日本人は、自国通貨が円です。ですから、自分の保有している円を支払って、高金利通貨を手に入れる、といったイメージが強くなります。しかし、円を持っていなくても、こういった取引は可能です。
そして、それは、『ドルを持っていない日本人であっても、アメリカ人でなくとも、誰でもドル/円を売ることが出来る』ということも意味しています。

第149回 先進国 対 新興国

 1984年、1985年ごろからのドル/円(USD/JPY)のチャートを眺めると、1985年から1988年あたりで大きく下落し、1988年以降は、現在に至るまで、周期的な上下動を繰り返していることがわかります。
 そして、その上下動の振幅が徐々にせばまり、振れ幅が、小さくなっていることもわかります。
 もちろん、相場は何が起こるかわからないのですから、徐々に小さくなっていた振れ幅が、突如として、狂ったように大きく動き出す可能性は、常にあります。
 しかし、過去の値動きを、チャートで素直に眺めるならば、ドル/円の値動きは、確実に、おとなしく、静かになっていることは事実なのです。
 値動きがおとなしくなっているということは、「ボラティリティ」の低下傾向からも理解できることです。
 相場の動きを測る言葉に「ボラティリティ」があります。
ボラティリティの本来の意味は「揮発性」です。それを相場の専門用語に転用して、「価格の変動性」「価格の変動率」を表します。
「これから、相場が大きく動きそうだ」と考える市場参加者が増えると、ボラティリティは上昇します(大きくなります)。
逆に、「これから、相場の変動が小さくなりそうだ」と考える市場参加者が増えると、ボラティリティは下落します(小さくなります)。
ボラティリティはパーセント(%)で表示され、為替オプション市場では、ボラティリティそのものが売買されています。オプション市場では、『ボラ』と略称することも多くあります。

 今年になってのドル/円取引の『ボラ』は高い状態ですが、10年、20年といった大きな期間で眺めると、この数年のドル/円取引では、『ボラ』が低下傾向でした。
 2006年の前半から年央までは、ドル金利の引き上げが実施されて、日米金利差の拡大を材料に、ドル/円相場も相応に動いていました。
しかし、2006年の後半になると、米国の景気拡大に一服感が出て、ドル金利は据え置きが繰り返されています。
「目先、ドル金利は動かない」と考える市場参加者が増えたことが、ドル/円ボラティリティが低下したの理由の1つでしょう。
また、近年は新興国の経済発展が顕著です。
新興国や中国のように、通貨取引に対する規制があって、自由に外国為替取引をできないケースもありますが、マーケット(外国為替市場)の意識、マーケットのテーマが、「ドル(基軸通貨)対 メジャー・カレンシー(主要国通貨)」の構図から、「先進国 対 新興国」に変わってきていることも、ドル/円のボラティリティが低下したの原因に挙げてもよいかもしれません。
 ドル以外のメジャー・カレンシーに目を向けると、欧州通貨がユーロに統合されて、数年を経ました。
ユーロ/円(EUR/JPY)取引では、ユーロ統合後の最高値の更新を繰り返し、2007年7月には、168円台の高値を見ています。
このところのマーケットでは、「ドル/円レートよりも、ユーロ/円レートの注目度が高い」と言ってもよい状況です。そういったことも、相対的に、ドル/円のボラティリティを低下していたさせていた原因だろう、と考えています。

第148回 トレンドに従った方が、利益を得やすい

昨年(2007年)7月、8月に、サブプライム・ローン問題をきっかけに、ドル円は、大きく下落した。

ドル円に関しての大きな転換点は、その時期(2007年7月、8月)だった、と考えている。

「プラザ合意」以降(1985年以降)のドル円は、おおむね2〜3年ごとに、大きく上下動を繰り返している。

 直近のマーケット(外国為替市場)を振り返ると、2005年1月の1ドル=101円から、2007年6月の1ドル=124円までが上昇トレンドの期間。このスパン(期間)が、2年6ヶ月。

 2007年7月、8月の大きな下落で、ドル円の上昇トレンドは終焉を告げた、と考えている。
 通常は、上昇トレンドのスパン(期間)と、下落トレンドのスパン(期間)では、上昇トレンドのスパン(期間)の方が、若干長い。
 そう考えると、今回の下落トレンドの期間は、1年半から2年程度になる可能性が高いのではないか、と考えている。

 上述の通りに、下落トレンドに転換したのは2007年7月、8月頃と考えている。
 スタートをその時期とすると、2008年いっぱい、ないしは2009年半ば頃まで、ドル円の下落トレンドが継続するのではないか、と考えている。

 ドル円相場(外国為替相場)は、大きなトレンドに従って売買を行う方が利益を得やすい。
 つまり、上昇トレンドの場合には、「ドル買い円売り」でトレード(売買取引)を行い、下落トレンドの場合には、「ドル売り円買い」をトレード(売買取引)の中心に持ってくる、ということ。

 トレンドに逆らって売買をしてもなかなか利益に結びつかない。
 トレンドに逆らって売買を行っても勝つ方法はあるのだが、それには、かなりのテクニック(技法)が必要となる。

 トレンドに従った方が、利益を得やすいし、何よりも、精神的に楽だ。

第147回 「損切り」のポイント、「利食い」のポイント

「損切り」のポイントですが、簡単には説明することは難しい問題です。
思いつくままに要点のみ書き出します。

(1) 何かしらの「ポジションを取る」場合には、それが、外貨取引であろうと、株式・債券・商品であろうと、その取引をする人の『思惑』に過ぎない。

注:【思惑】(おもわく):いろいろな理由で、ドルが上がるだろうとか、下がるだろうと考えることを「思惑(おもわく)」という。

(2) 『相場に絶対なはい』。だから、『思惑』があたって上手くいくときもあれば、『思惑』が外れて、損をすることもある。

(3) 『思惑』があたった場合は問題ない。利食っても良いし、放っておいても良い。利益になっているのだから、考えなくても良い。

(4) 『思惑』が外れて、損になった場合だけは、考えなければならない。
『含み損』を抱えても、まだ、そのポジションを保有し続けるのか?
その場合に、どこまでの損失を認めるのか?

(5) 相場の思惑が当たる確立は、3割〜7割程度(要するに半々)なのだから、本来は、上記(4)はポジションを取る際に、考えておかなければならないこと。

(6) 「損切り」のポイントを、自分の資金繰りの都合で決めない。
そうした場合は、必ず、「損切り」は実行(エグゼキュート)される。

少し説明を加えましょう。
例えば、50万円の損失が出たら、それ以上、負けたくないので、ストップ・ロス・オーダーをいれておこう、そう考えて、最大損失の50万円を、保有しているポジションで割って、損切りのレートを計算する。
こういった、自分の都合で計算した「損切り(ストップ・ロス・オーダー)」は、必ず、エグゼキュート(実行)される。
そういった意味です。

(7) では、「損切り」のポイントはどこに置けばよいのか?
チャートで分析して、明確なチャート・ポイントの外側(10ないし20ポイント外側)に、ストップ・ロス・オーダーを置き、他者に預ける。

(8) (7)のストップ・ロス・オーダーは、オフしない。
(オフしない=キャンセルしないという意味)
こういった、的確なストップ・ロス・オーダーは、エグゼキュート(実行)してから、再度、相場を考える。

やはり、同じポジションを持とう、と判断したならば、ストップ・ロス・オーダーがついてから(損切りをしてから)「売る」なり「買う」なり、同じポジションを作れば良い。

そこで発生する手数料などは、微々たるもの。
そのようなことが気になるのならば、相場に向かない性格であることを、きちんと認識して、今後、相場を辞めた方が良い。

(9) (7)のストップ・ロス・オーダーだと、損失額が大きすぎる場合は、保有しているポジションが大きすぎるのだ、ということを認識する。

(10) 認識したのならば、速やかに、ポジションを縮める。
認識していながらその行動を取らないのは、その人の責任。
一般論として、ポジションが大き過ぎるときは、負ける可能性が非常に高い。

(11) 勝つときのポジションは小さい。
これは、当然のことなのです。
人間が取引をしているのですから、利益が出ると、余計なこともします。
したくなるのです。利益を確定しようと、「少しづつ」利食いをしたり、「半分」利食ったりするものです。
負けるときは、フル・アマウントでそのまま持っていかれます。

(12) だから、負けるときのポジションは大きいままになる。
場合によっては、難平(なんぴん)をして、さらにポジションが膨らんでいる。
それに対して、上述の通り、勝つときのポジションはいつの間にか、小さくなっている。

注:【難平(なんぴん)】:例えば、101円ニマル(101.20)で買って、さらに下がったところで、100円ハチマル(100.80)を買うと、平均レートは下がる。
買ったアマウント(金額)が同じだとすると、平均レートは、101.00になる。

しかし、100.80が買えるということは、100.80まで『相場』は下がっているのだから、実際は負けている(評価損が出ている)状態である。

このように、実際には評価損を抱えながらも、平均レートを良くする売買のやり方を「難平(ナンピン)」という。

「損切り」は、ざっと、こんなところでしょうか。

「利食い」は、自分の都合で構いません。好きにすれば良いのです。
最大効率の利益を追求するのでしたら、「損切り」の逆を斟酌・熟慮すれば、おのずと見えてくるのでしょうが、私は、そこまでギスギスとした戦い方は、趣味ではありません。

「損切り」は厳しく、「利食い」は甘く、それで良いと思っています。
いや、『それが、良い』、そうあるべきなのでしょう。
相場のことわざにも、『頭と尻尾はくれてやれ』とあります。

第146回 今回のG7では、金融システム(資金の流動性)を確保することに主眼点があった

●G7が終了し、「ドル安円高」の流れは、変わらないことが確認できた。

●週明け(4月14日)以降のマーケット(外国為替市場)では、今回のG7の内容を勘違いして、(内容を斟酌できずに、)ドルを買う向きもいるでしょうが、それは、「今回のG7声明が何を言っているのか?」を理解できない、つまり、読解力の無い人です。
(言葉がきつく、かつ、蛇足ですが・・・)

●今回のG7では、金融システム(資金の流動性)を確保することに主眼点があった。

●つまり、『信用収縮が原因で、資金を借りることが出来ずに、倒産に追い込まれる金融機関が出ないようにすること』がテーマだった。

●そのために『信用収縮が起こらないようにするには、どうすれば良いのか』を話し合った。

その意味で、(それを大前提として、)過度に為替変動が起こると、「金融システム(資金の流動性)」に悪い影響があるかも知れないので、
『前回の会合以降、主要通貨において時として急激な変動があり、われわれはこれらが経済および金融の安定へ与え得る影響について懸念している。』
と声明文で述べている。

●つまり、G7声明では、為替レートの絶対値に関しては、言及していない。


【G7声明より、抜粋引用】
世界経済は、引き続き困難な時期に直面している。
われわれの経済が長期的に回復力を有していることを確信しているが、短期的な世界経済見通しは悪化した。
われわれの経済の状況は各々異なるが、現下の米国住宅市場の低迷、国際金融市場の緊張状態、原油および一次産品価格高騰の国際的影響、そしてその結果としてのインフレ圧力によって、景気見通しに対する下方リスクが残存している。

われわれは、強固かつ安定した国際金融システムがわれわれの共通の利益であることを再確認する。
前回の会合以降、主要通貨において時として急激な変動があり、われわれはこれらが経済および金融の安定へ与え得る影響について懸念している。
われわれは、引き続き為替市場をよく注視し、適切に協力する。
われわれは、人民元の柔軟性を向上させるとの中国の方針を歓迎しているが、経常収支黒字が増加し、国内インフレが上昇していることに鑑み、人民元の実効為替レートのより速いペースでの増価を促す。


●共同声明の為替に関する部分は、前回2月の東京G7まで、
「為替レートは経済ファンダメンタルズを反映すべきとの考え方を再確認」
「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済成長にとって望ましくない」
「われわれは、引き続き為替市場をよく注視し、適切に協力する」
という文言が常に盛り込まれていた。

●今回は
『前回の会合以降、主要通貨において時として急激な変動があり、われわれはこれらが経済および金融の安定へ与え得る影響について懸念している』
という文言が盛り込まれた。

●しかし、
「為替レートは経済ファンダメンタルズを反映すべきとの考え方」
「われわれは、引き続き為替市場をよく注視し、適切に協力する」
ということは、声明文の文言に無くとも、当然のことで、大前提に変わりない。

●また、声明文にあるように、
『世界経済は、引き続き困難な時期に直面している。』
『短期的な世界経済見通しは悪化した。』
つまり、現在の世界経済は危機にあると直視している。

第145回 「外国為替レート」が表しているものは、「通貨の交換比率」

 「通常の外国為替の取引では、それぞれの通貨と、現在の基軸通貨であるドル(USD)の交換比率を使う」

 このように書くとわかりにくいのですが、新聞やテレビなどで、
「1ドル=102.50円」
のように、表示していることを思い出してください。
 為替レートは交換比率なので、1ドル=102.50円とすると、
「1円=0.009756ドル」
と表示してもかまわないのです。
 日本人にとっては、「1ドル=102.50円」の方がわかりやすいでしょう。
それは、「1ドルというもの(通貨)」が、「102円50銭なのだな」と考えるからです。

 アメリカの先物取引所であるシカゴ・マーカンタイル・エクスチェンジ(CME)では、ドル/円(USD/JPY)の先物取引(フューチャー)をする際に、
「100円=0.9756ドル」
の形式で売買を行っています。
 アメリカ人の発想では、「100円が97.56セント」ということなのでしょう。
 
このように、為替レートは交換比率に過ぎないのですから、本当は、どちらの通貨を基準にしてもかまわないのです。
 理屈ではそうなのですが、通貨間の為替レートの一般的な表示方法は、「市場慣行」で決まっています。

 通常の通貨は、「1米ドルが、いくら」と表記されます。
たとえば、「1ドル=102.50円」といった具合です。
つまり、「1USD=102.50JPY」ということです。
 これは、ドルが基軸通貨であるため、そのドルを主体にしているからです。
 ドルが基軸通貨になる前は、歴史的に見れば、ポンド(GBP)が基軸通貨でした。
 そのことを背景に、現在でも、
「1ポンド(GBP)=1.9745ドル(USD)」
と表記されます。

 どちらが基準の通貨となるかは、市場の慣行で決められています。つまり、多くの市場参加者が、そのように取引すれば、そのように決まるということです。

 外国為替取引が「通貨」と「通貨」の交換取引であるということは、つまり、「対価」対「対価」の取引ということです。そして、「外国為替レート」は何を意味するかと言うと、「その通貨間の交換比率」を表します。

第144回 外国為替取引の特徴と市場慣行

 外国為替取引が、他の取引と比べて特徴的なことは、「通貨」と「通貨」の交換取引(Currencies Exchange Deal)であるということです。
 「通貨」と「通貨」の交換取引であるということは、つまり、「対価」対「対価」の取引になる、ということです。
 ドル(USD)と円(JPY)の取引を例に取ります。
 ドルの価格上昇は、すなわち、円の価格下落になります。
 ドルの価格下落は、すなわち、円の価格上昇になります。
 ですから、外国為替取引では、一方の通貨の価格変動は、必ず、もう一方の通貨の反対の(逆の)価値変動になっているのです。
 「通貨」と「通貨」の交換取引ではなく、「もの」と「通貨」の売買取引と比較して考えてみましょう。
 「もの」と「通貨」の取引の方が、むしろ普通の取引でしょう。
 「もの」は通貨以外の何でもよいのですが、BSE問題で話題になり、その際に価格が大きく上下した『牛肉』にしましょう。
 BSE問題で一時期の需要が大きく減って、牛肉の価格は大きく下落しました。
 この場合、BSE問題で牛肉の価格は下落しましたが、それが、円の価格(価値)の上昇になるわけではありません。
 その後、BSE問題が一段落すると、牛肉価格は上昇しますが、このことが、円の価格(価値)の下落になるわけでもありません。
 外国為替取引(通貨間取引)ではない取引の場合は、一方の価格(価値)の上昇が、もう一方の価格(価値)の下落になるわけではない、ということです。

 「市場慣行」についても説明を加えておきましょう。
 外国為替取引は、市場慣行がルールです。
 市場参加者の多くが、その形式で取引を行えば、それが市場慣行になります。
 市場慣行は、理屈ではありません。そうすることが、便宜がよいからそうするのです。
 都合が悪くなれば、自然に新しい市場慣行=ルールに変わって、新しい市場慣行が成立していくことになります。
 たとえば、現在は市場慣行で、ドル(USD)が基軸通貨です。
 ドルの前は、ポンド(GBP)が基軸通貨でした。ドルよりも基軸通貨にふさわしい通貨が、市場慣行として出てくれば、その通貨が基軸通貨になります。
 一部の新聞やテレビなどの報道では、相変わらず、「ドル/円相場」のことを「円/ドル相場」と表現していることがありますが、それは、市場慣行に照らせば誤りです。
 そういった記事を書く人は、「今までは、それで通用してきた」とか、「日本では歴史的に、こう表現してきた」とか屁理屈を言うのでしょう。
 しかし、マーケット(外国為替市場)では、円(JPY)の取引は、この20年間で飛躍的に拡大し、今や円は「準基軸通貨」の地位を占めています。
 そして、国際市場の中で比較すれば、ドル/円(USD/JPY)取引における、東京市場(日本国内市場)のシェアは、3分の1程度です。
 場合によっては、ロンドン市場、ニューヨーク市場で取引される取引量の方が、多くなりつつあるのです。
 世界の主流に従うのなら、「円/ドル相場」という表現は、きわめて少数派であり、市場慣行というルールに照らして、不自然な表示と言えます。
 柔道が国際的なスポーツになった今、「柔道は日本の武道であり、お家芸だから、ルールは日本で決める」という態度は、明らかに横暴であり、認められることではありません。
 すべてが多数決だとは言いませんが、「市場慣行」というルールにもっと敬意を払うべきでしょう。
「円/ドル相場」という表現は、よっぽど頭が固いか、あるいは、どうしても自国通貨を先に表示したいという意味で、よっぽどの国粋主義者なのでしょう。
しかし、その態度は、市場慣行というルールを知らない不勉強者のすることだ、と考えます。

※それでも新聞などには、従来からの表記上のルールがあり、その世界(新聞業界)での慣行を重視しているようです。

※取材などを受けた際にも、私は正確に述べていますが、あるいは、文章で提出する場合には、外国為替市場の慣行に従って記述していますが、新聞の場合は、従来からの表記にこだわって、書き直されてしまいます。
個人的には、困ったものだ、と、思っています。

第143回 期末期初のドル/円

 先週末、3月28日(金)のニューヨーク市場は、米国個人消費が低かったことなどを材料に、99円台ミドル程度に下落。その後は持ち合いに推移した。
 ドイツ系銀行の「サブプライム・ローン問題での損失」がウワサになったこともあって、ドル/円(USD/JPY)は、99円台前半まで下落してニューヨーク・クローズとなった。

 今週になって、3月31日、週明け月曜日のウェリントン・シドニー市場では、前週のニューヨーク・クローズの流れを受けて、「ドル売り円買い」が進み、ドル/円(USD/JPY)は、98円台後半へ下落した。しかし、東京オープン前に反発して99円台前半に戻す。
 3月31日、期末の月曜日の東京市場のドル/円(USD/JPY)は、99円台前半でオープン。
 週明け月曜日の東京市場朝方のドル/円(USD/JPY)は、急反発上昇して、一気に100円台前半に乗せた。高値は、[100.10-20]レベル。
 しかし、100円台前半に乗せても、相変わらず、追随のドル買いは出ない。このところの値動きと同じく、かえって99円台後半に反落。じり安の展開。東京クローズは、[99.30-40]レベル。
 週明け月曜日のロンドン市場のドル/円(USD/JPY)は、99円台ミドルで持ち合い小動き。目だった値動きも無い。
 この日のニューヨーク市場も、目だった値動きも無く、ドル/円(USD/JPY)は、99円台後半程度で持ち合い。

 期初、4月1日(火)の東京市場のドル/円(USD/JPY)は、99円台後半で寄り付き。
 この日は日銀短観の発表もあったが、マーケット(外国為替市場)は、無視。材料にならず。
 期初の東京市場は、概して、99円台後半で推移した。
 東京市場の午後になって、スイスの大手銀行が「サブプライム・ローン」関連で、大口の評価損を追加計上したニュースから、ユーロ/ドル(EUR/USD)で「ユーロ売りドル買い」となった。
 ユーロ/円(EUR/JPY)の売りの影響から、ドル/円(USD/JPY)は、一時、下落した。
 しかし、ユーロ/ドル(EUR/USD)での「ユーロ売りドル買い」は、通貨市場全般に、「ドル買い」を促した。
 4月1日(火)のドル/円(USD/JPY)の東京クローズは、[100.05-10]レベル。

 4月1日(火)のロンドン市場では、[100.20-30]レベル、[100.50-60]レベルにあったストップ・ロス(損切りのドル買い戻し)を付けて続伸(ドル上昇)した。
 4月1日(火)のニューヨーク市場は、「ドル買い」に弾みがつき、ドルの全面高となっている。
 ドル/円(USD/JPY)は、101円台に乗せると、更なるストップ・ロス(損切りのドル買い戻し)を付けて、急騰した。一気に、[102.00]アラウンドに上昇。
 かねてから、懸念のウワサのあったリーマンブラザーズの資金調達や、スイス大手銀行の資本増強が伝えられたことなどが、「ドル買い」の材料となった。

 ISM製造業景況感指数も、事前予想よりも良かったことも、「ドル買い」の材料となった。
 ドル/円(USD/JPY)のニューヨーク・クローズは、101円台後半程度。

 4月2日(水)のシドニー市場では、若干のドルの下落。高値圏から、緩むように、ドル/円(USD/JPY)は、101円台ミドルへ。
 それで、4月2日(水)の東京市場のドル/円(USD/JPY)は、101円台ミドルでの寄り付き。
 東京市場のドル/円(USD/JPY)は、101円台ミドルから、ドルじり高に推移。
 東京市場午前中は、101円台後半程度。
 東京市場午後になって、102円台にしっかりと乗せる。
 その後は、[102.00]を挟んで、高値圏での持ち合い。

 4月2日(水)のロンドン市場でも、[102.00]を挟んで、高値圏での持ち合いが続いた。
 4月2日(水)のニューヨーク市場では、もう一段の損切り(ドル買い円売り)が出て、102円台後半に上昇している。
 バーナンキFRB議長の議会証言の内容は、そのほとんどが、「ドル売り材料」だが、ニューヨーク市場の午前中の段階では、『もう一段の損切り(ドル買い円売り)』の影響が強く、バーナンキ議長のコメントは、マーケットに織り込まれていない。
(2008年4月3日東京時間01:30記述)



 >   >  2008年04月